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長崎県東彼杵町 /京都府宇治田原町 の取り組み

【長崎県東彼杵町、京都府宇治田原町】防災情報システムの整備の取組事例

長崎県東彼杵町 総務課防災交通係 係長 松山 幸一郎
京都府宇治田原町 総務部 総務課長 清水 清

自治体にとって、住民の安心安全を守ることは、重要な責務である。そのための第一歩は、いかに住民に災害情報を正確に伝達し、適切に避難誘導するか。そうした背景から昨今、「情報伝達手段の整備」を重視する自治体が増えている。東彼杵町(長崎県)もそのひとつだ。ここでは同町で防災対策を担当する松山氏に、整備のポイントなどを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.12(2018年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

長崎県東彼杵町データ

人口: 8,105人(平成30年2月28日現在) 世帯数: 3,130世帯(平成30年2月28日現在) 予算規模: 81億3,067万円(平成29年度当初) 面積: 74.29km² 概要: 三方を国見岳、遠目岳、虚空蔵岳を主峰とする山々に囲まれている。町の大半を山林が占め、平野部は少なく棚田が発達している。旧石器時代の遺跡や、長崎街道、平戸街道が伝えるように、遥か昔から海陸交通の要所として栄えた。江戸時代には大村藩の所領。昭和34年5月に彼杵町と千綿村が合併し、東彼杵町が誕生した。

京都府宇治田原町データ

人口: 9,392人(平成30年3月1日現在) 世帯数: 3,671世帯(平成30年3月1日現在) 予算規模: 85億3,792万7,000円(平成30年度当初) 面積: 58.16km² 概要: 宇治市、城陽市、井手町、和束町に隣接し、滋賀県との県境にあたる京都府の東南部に位置する。元文4(1738)年、現在の湯屋谷地区の茶農、永谷宗円が「青製煎茶製法」を考案。「宇治田原の煎茶」を全国に広めたことから、宇治田原町は「日本緑茶発祥の地」と呼ばれている。

―東彼杵町ではどのような防災対策を進めてきたのでしょう。

 年に数回発生する風水害の対策を主眼に、急傾斜地の崩壊対策や地滑り対策といったハード面の整備を進めてきました。一方、ソフト面の対策としては、防災情報システムの整備に力を入れてきました。これまではアナログ電話回線網を利用した地域情報の放送サービス「オフトーク」を防災情報の発信としても使ってきました。しかし、平成29年度をもってサービスが終了することもあり、町として、必要な防災情報を一人ひとりの住民のもとに届けられる、確実な手段が必要と考え、システムの刷新をはかりました。

―防災情報システム刷新にあたって、重視したことはなんですか。

 まずは、住民にもれなく情報を届けられること。防災情報を届ける手段ですから、そこが最も重要です。くわえて、これまで利用してきた放送サービスは、町の全世帯約3000のうち約1500世帯に利用されてきたもので、住民に広く浸透してきたシステムです。これを置き換えるという意味でも、だれもが利用できるシステムである必要がありました。

 また、予算上の制約があり、初期導入費用は「できる限り抑えたい」という事情もありました。

―東彼杵町ではどのようなシステムを導入したのですか。

 大手通信会社グループのIT企業が開発した双方向・マルチデバイス対応の情報配信サービスの導入を決めました。携帯電話やWi-FiなどのIP通信網を利用するため、初期投資を大きく抑えられる利点があります。さらに消防庁の緊急防災減災事業債の起債が認められたことで、初期投資をさらに抑えることができました。

 また、人口カバー率が高い携帯電話網であれば、不感地帯が生じる心配もなく、広く住民に情報を伝達できます。情報を受信するデバイスは、専用の戸別受信機、タブレット端末、スマートフォンの3種類用意されている点も、「より確実な伝達手段」という期待にかなったものです。高齢者、若者世代など受信者の属性に合わせて、いろいろな手段で受信できます。

双方向性の特徴を活かし「高齢者の見守り」にも活用へ

―今後、どのように活用していく計画ですか。

 春までには戸別受信機配布約1000台、スマホ登録1000台をめざしています。独自の情報を地域ごとに個別配信できる仕組みを構築しますので、地域のカラーが出る情報配信が可能です。配信情報の質を高めることで、住民の生活に根ざしたシステムにしていきたいですね。平時でも日常的に使いこなしてもらうことが、いざという災害時での利用につながると考えています。導入した情報配信サービスが地域コミュニティ形成の核となり、住民の防災意識を高める基盤となってくれることを期待します。

 また、この情報配信サービスには双方向性という大きな特徴があります。住民のボタン操作を通じて、いつ、どこで、どの端末に情報が「到達」したか、「既読」されたかが分かります。この特徴を活かして、災害時の安否確認のほか、平時でも高齢者の見守りといった使い方もできるかもしれませんね。

防災機能の強化にあたっては、「システムの導入ありき」ではなく、基本計画の根本的な検証・見直しが必要―。前ページで浮き彫りになった防災対策でのポイントだ。これをすでに実践している自治体がある。そのひとつが宇治田原町(京都府)だ。ここでは、同町で基本構想の策定を担当した総務部の清水氏に、その背景や実感する効果などについて聞いた。

自治体職員では知りえない民間の知見からの助言も

―防災対策の基本計画を民間企業とともに策定したそうですね。

 ええ。コンサルへの委託により、平成27年11月に「宇治田原町情報伝達システム整備基本構想」としてまとめました。それまでは、防災情報システムの整備は十分ではありませんでした。実際に、平成24年の京都南部豪雨災害や平成25年の台風18号で大きな被害が出た際、町からの災害情報伝達に時間を要した苦い経験もありました。情報伝達システムの整備が必要だとの認識は、住民のあいだにも広まっていたんです。

―基本構想から策定しようと考えた理由はなんですか。

 当初は、近隣自治体の例なども参考に、同報系防災行政無線の整備を急ごうと考えましたが、整備計画を検討する過程で、他の自治体の事例は参考にならないことが分かったのです。町域が広大で、山間部も多い当町には不感地帯も多く、無線設備は適さない。それならば、「当町にあったシステムとはなにか」を根本的に検討する必要があるとの認識に至ったのです。

―構想策定によって、どのような効果を実感していますか。

 策定にあたってパートナーとなった大手通信会社のおかげで、地理的条件や人口分布など地域特性を加味した防災対策上の課題を詳細に分析できました。それが基本構想を策定するうえで貴重な検討材料になりました。また、市場に現在どのようなソリューションがあり、町の課題解決にはどのシステムをどの順番で整備していくのが最適か、新技術の開発動向までふまえ、自治体職員では知りえない、この大手通信会社がもつ知見をもって助言ももらえました。基本構想ができたことで、システム導入の必要性や整備スケジュールを明確に打ち出すことができ、システム整備上の最大の課題となる予算確保もスムーズに進んだことも大きな効果として実感しています。

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