自治体通信ONLINE
  1. HOME
  2. 「バックナンバー」一覧
  3. Vol.74
  4. 「目指すべき姿」から逆算した計画で、地域未来交付金を「自立経営」の契機に
《連載企画・国と地方の未来共創 第1回》自立した地域経営を目指す、自治体の未来戦略

「目指すべき姿」から逆算した計画で、地域未来交付金を「自立経営」の契機に

「目指すべき姿」から逆算した計画で、地域未来交付金を「自立経営」の契機に

※下記は自治体通信 Vol.74(2026年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

現在、地方の活力を維持・向上させるため、国は「強い経済」の構築を目的とした「地域未来戦略」の立案を進めている。その戦略の柱の1つが「地域未来交付金」だ。この交付金は従前の交付金制度を継承しつつ、産業クラスターの形成など、より経済に重点を置いている。これを有効に活用し、地域の課題解決につなげるためには、どのような視点や計画づくりが求められるのか。本制度の設計・運用に携わる内閣官房地域未来戦略本部事務局の大矢氏に詳しく聞いた。

インタビュー
大矢 和樹
内閣府 地方創生推進事務局
内閣官房 地域未来戦略本部事務局 参事官補佐
大矢 和樹おおや かずき
平成30年、財務省に入省。同省において、おもに国の税制の企画・立案、および租税収入に関する業務や国有財産の管理に関する事務を担当。令和7年7月から現職。おもに地域未来交付金の制度設計や予算などを担当。

住民が恩恵を享受できる、「共創」の体制づくりが肝要

―地域未来交付金が創設された経緯を教えてください。

 現在、当局では令和8年夏を目途に「地域未来戦略」の取りまとめを進めていますが、これに先立ち、この戦略に資する自治体の取り組みをすみやかに支援するため、令和7年度補正予算にて「地域未来交付金」を創設しました。この交付金は、従前の「地方創生に関する総合戦略」の枠組みを継承しながら、高市総理が掲げる「強い経済」の実現に重きを置いているのが特徴です。令和8年度当初予算案では1,600億円を計上し、地域主導の産業クラスター形成を後押しする「地域未来推進型」を中核に据え、地場産業の成長を促進する仕組みを強化しました。そのほか、「デジタル実装型」「地域防災緊急整備型」「地域産業構造転換インフラ整備推進型」の3つの類型については、従前の総合戦略に基づく支援メニューをおおむね引き継いで統合し、地域の幅広い課題に切れ目なく対応できるようにしています。

―どのような特徴がありますか。

 地域未来交付金の特徴は、「申請手続きの一本化」にあります。特に「地域未来推進型」では、これまで別々の枠組みだった施設整備などの「ハード事業」とプロモーションなどの「ソフト事業」を一本の申請で受け付け、分野をまたいだ連携を一体的に支援できるようにしています。たとえば、温泉を強みとする自治体であれば、温泉拠点の整備と誘客活動を一体で申請することで、事務負担の軽減とともに施策の相乗効果を高めやすくなっています。あわせて、事業の計画検討から実施、効果検証の各段階において、住民や企業、金融機関など「多様な主体の参画」を要件に加えています。これには、地域を支える多様な関係者が計画の意義に納得し、ともにメリットを享受できる「地域共創」の体制づくりを後押ししたいという意図があります。

―多様な主体が参画する計画づくりでは、どのような点を意識すると良いのでしょう。

 大切なのは、自治体としての「目指すべき姿」を明確にし、そこに向けた論理的なストーリー、いわば「解決の矢印」をしっかりと描くことです。よく「将来像が先か、やりたい事業が先か」という議論がありますが、私たちは、具体的な事業案が先行する形でも構わないと考えています。重要なのは、その事業を行うことで「地域のなにを解決し、最終的にどのゴールへ辿り着くのか」という筋道を立てることです。この交付金制度では自治体側の負担も伴う以上、住民や議会に対して、その事業がまちの未来にどう役立つのかを責任を持って説明できなければなりません。そのためにも「目指すべき姿」に直結する、数値化されたKPIの設定が計画づくりにおけるストーリーをつなぐヒントになります。

地域の「強みと弱み」を、多角的な視点で分析する

―しかし、KPI設定に難しさを感じる自治体も多いと聞きます。

 当局でもそうした声は把握していますが、じつはなにを解決したいのかという着地点を定めることができれば、KPIを設定する糸口になると考えています。たとえば、ともに「ブドウ」の生産を強みとするA市とB市があったとします。A市は、減少する農家に課題を感じている。そこでブドウを域外へ売ることで農家の所得向上を目指すなら、その「解決の矢印」の先にあるKPIは「農業生産額」や「販売額」になります。一方のB市では、人口減少が顕著なため、ブドウをきっかけに人を呼び込み、街を活性化させたいと考えているとします。この場合は観光施設の整備などを通じた「来訪者数」や、土産品も含めた「域内総生産額」が適切なKPIになるでしょう。

 このように、同じ特産品を扱う自治体でも、目指すべき姿が違えばやるべき事業もKPIも変わります。自治体の方々と話していると、「実際この事業でなにを解決したいのか」という原点の部分で詰まってしまうケースをよく目にします。ここを突き詰めて逆算することで、真に有効なKPIが見えてくるはずです。

―つまり、適切な課題設定がカギを握るのですね。

 はい。課題設定において重要なのは、地域の強みと弱みを「主観」と「客観」の両面から分析することだと考えています。

 ここでいう「主観」とは、住民や事業者、金融機関など多様な主体が感じるニーズや課題を、対話を通じて把握することです。行政だけでなく、地域を支える人たちとまちに必要なものを語り合い、合意形成を図るプロセスが施策の実効性を高める土台となります。一方で、データや外部の視点によって自地域をとらえ直す「客観」の視点も欠かせません。国が無料で公開している地域経済分析システムの「RESAS」や「RAIDA」といったツールを活用し、数値という客観的事実に基づいて他地域と比較することで、気づいていなかった意外な強みや、克服すべき弱みが浮き彫りになるでしょう。もし、このプロセスに難しさを感じているのであれば、当局が提供する「地方創生伴走支援制度」の活用が解決の糸口になるかもしれません。

課題・KPI設定に有用な
RESAS・RAIDA

画像

地域の課題をとらえ直す際に役立つデータを収集する手段の1つが、国が提供する地域経済分析システム「RESAS」と「RAIDA」だ。産業や人口のビッグデータを地域ごとに検索できるため、現状を客観的に把握して計画を立案する際に有用だ。特に「RAIDA」は、AIがビッグデータを比較・分析し、どこに強みと弱みがあるのかをコメントしてくれるため、課題やKPIを設定するヒントになりやすい。数値に基づく客観的な指摘は、自らでは見落としがちな地域の「気づき」にもつながるだろう。自立した地域経営に向け、役立ててほしい。

最終的な目標は、自立した「地域経営」

―それはどのような制度ですか。

 この制度は、専門的な知見を持つ官民の人材や国の職員が、オンラインと現地訪問の両面で自治体に寄り添い、政策立案をサポートする仕組みです。令和7年度においては、60チーム180名体制で支援し、活用した自治体からは「新しい知見が得られた」と好評です。こうした「外からの視点」を取り入れることで精度の高い政策立案が可能になると期待しています。

―最後に、自治体に向けてメッセージをお願いします。

 地域未来交付金の活用を、単なる資金導入で終わらせるのではなく、地域の強みを引き出し、地元の経済を回していく「自立した地域経営」の視点を持つ契機にしてもらいたいと願っています。現在、国としてもそうした地域の動きを後押しするため、各都道府県の知事主導で策定される「地域産業成長プラン」への支援を進めています。このプランは、複数自治体の連携促進や中堅企業への支援といった国の施策を戦略的に活用し、地域主導の「地域産業クラスター」の形成や拡大を目指すものです。また、可能性を秘めた魅力的な地域資源を活用した付加価値向上や販路開拓を支援し、地域経済の拡大を目指す「地場産業成長プラン」もあります。自治体の方々には、こうした制度を最大限に活用し、地域のポテンシャルを引き出す挑戦を続けてほしいと考えています。

電子印鑑ならGMOサイン 導入自治体数No.1 電子契約で自治体DXを支援します