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大詰めを迎えた自治体DX推進の今後のかじ取り

住民接点に立つ自治体とともに、住みよい地域をつくっていきたい

住民接点に立つ自治体とともに、住みよい地域をつくっていきたい

※下記は自治体通信 Vol.66(2025年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

社会全体のデジタル化を推進する役割を担うデジタル庁が発足して、3年あまり。その成果が期待されるなか、この間、同庁が主導してきた「基幹業務システムの標準化」や「ガバメントクラウドへの移行」といった自治体を取り巻くDX推進の動きはいま、大詰めを迎えている。最終局面に入りつつある自治体DX推進をいかに成功へと導くのか。同庁における司令塔のひとりである、デジタル大臣政務官の岸信千世氏に、自治体DXの現状や今後の支援策などを聞いた。
※取材は令和7年3月5日に行いました

インタビュー
岸 信千世
デジタル大臣政務官
岸 信千世きし のぶちよ
平成3年生まれ。平成26年3月に慶應義塾大学商学部を卒業し、同年4月に株式会社フジテレビジョンに入社。令和2年11月から、岸信夫衆議院議員の秘書・防衛大臣秘書官を務める。令和5年4月に衆議院山口県第2区補欠選挙で初当選。令和6年10月、第50回衆議院議員総選挙において2期目の当選を果たす。令和6年11月、デジタル大臣政務官兼内閣府大臣政務官(第2次石破内閣)に就任。

直面する現実により即して、「システム標準化」を支援

―デジタル化を後押しする立場から、現在の自治体DXを取り巻く状況をどのように見ていますか。

 我が国が人口減少社会に突入しているなかで、多様化する行政ニーズに対応するためには、デジタルの活用を早急に進める必要があります。一方で、全国には小規模自治体が数多くあり、なかにはたったひとりの担当者が情報システムのすべてを担っている、いわゆる「ひとり情シス」という実態もあります。こうした小規模自治体も含めて、足並みを揃えてデジタル化を推進できるよう後押しすることが、デジタル庁としての役割だと認識しています。

―令和7年度末が期限となる自治体の「基幹業務システムの標準化」の進捗状況はいかがですか。

 幸いなことに現在まで大きな問題や障害の報告は受けておらず、基本的には移行は順調に進んでいると認識しています。令和7年1月末時点で、全システムの8.6%にあたる2,989システムについては、この期限での移行が間に合わないと判明していますが、その理由は明確なものがほとんどです。デジタル庁では、これらのシステムを「特定移行支援システム」と位置づけ、引き続き、丁寧な個別対応によって完全な移行を実現していく考えです。

 そこで、令和6年末にはシステム標準化をめぐる基本方針を改定し、各自治体が直面する現実により即したかたちで標準化を支援していきたいと考えています。

―改定のポイントは、どのようなものでしょうか。

 ポイントは大きく4つあります。1つ目は、ガバメントクラウドの利用料低廉化や移行後の経過措置などを柱とする「円滑かつ安全な移行の実現」です。2つ目は、「特定移行支援システムへの対応」です。3つ目は、標準仕様書の改定や運用ルールの明確化などによる「移行後の安定的な制度運営に向けた対応」です。標準仕様書の改定に関しては、施行日の1年以上前をめざし、できる限り早期に内容を公開することを徹底していきます。そして最後は、「確実な移行経費の支援」として、令和7年度末としていた「デジタル基盤改革支援基金」の設置年限について、5年間をめどに延長することを検討しています。

法改正で環境を整えた、ガバメントクラウド移行

―いまの基本方針にもありました「ガバメントクラウドへの移行」をめぐっては、令和6年末に法改正がありました。

 ガバメントクラウドは、国や自治体が共同利用する情報システムの利用環境として、デジタル庁が整備・運用するクラウド基盤であり、高度な情報セキュリティレベルが確保されたものです。デジタル庁としては、このメリットを自治体のみなさんに最適なかたちで享受していただくうえで必要となる法改正を進めてきました。

 令和6年の臨時国会で成立した法改正のポイントは2つあります。1つは、自治体にはガバメントクラウドの利用を検討する努力義務が課せられたこと。もう1つは、利用料を国がまとめ、一括してクラウドサービス提供事業者へ支払うことを可能にしたことです。これにより、大口割引の適用によって各自治体の利用料を低く抑える道が開かれています。

 こうした法改正は、全国の自治体がデジタル化を推進していくうえでの「環境整備」の1つと考えていますが、これとは別に、デジタル庁ではもう1つの重要な環境整備を推進しています。それは、従来の法律やルールによって規定されている「人の目による確認」や「現地での調査」、「書面での掲示」といった、アナログ的な手法を前提とする、いわゆる「アナログ規制」の見直しです。

「アナログ規制」の見直しでは、各地で成果も

―詳しく聞かせてください。

 現在、デジタル庁がリーダーシップをとり、各省庁における法律や政省令で定められた「アナログ規制」は順次見直されており、令和7年2月時点で約97%の見直しが完了しています。今後は、自治体の条例等に係る「アナログ規制」の見直しをデジタル庁としてさらに支援していきます。石破茂総理からも、2月の「デジタル行財政改革会議」において、デジタル技術の活用を可能にするルールの見直しを自治体に働きかけるよう関係閣僚へ指示がありました。デジタル庁としても、各分野で自治体のアナログ規制の見直しを後押ししてきましたが、そうした成果は徐々に出始めています。

―具体的に教えてください。

 たとえば、各自治体が行う産後ケア事業に関連して、福岡県古賀市での要綱改正の事例があります。従来、申請手続きの際に母子健康手帳の原本を役所の窓口で提示することを前提としていた要綱を改正し、オンラインによる写真送付も可能とすることで、利用者の負担を大きく減らしています。また、農林水産省関連では、農作物の作付面積等の確認の際に、目視による現地確認を前提としていた通知を改正したところ、福島県南相馬市では衛星データを活用する事例が登場しています。過去には、真夏の猛暑の中、約300人を動員して現地確認をしていたと聞きますが、それが室内で手軽に確認ができるようになっています。

 デジタル庁としては、こうした事例を増やすため、自治体への支援メニューを強化する方針です。「アナログ規制」の見直しに前向きな自治体に担当のデジタル庁職員を設定し、団体固有の課題に沿った支援を提供する「個別型支援」はその一例です。さらに、自治体が活用可能な要素技術を可視化する「テクノロジーマップ」や、具体的な製品・サービスについてまとめた「技術カタログ」の整備なども行っています。

「自治体のみなさんの声を、積極的にくみ取る」

―最後に、今後の行政ビジョンを聞かせてください。

 この間のデジタル化施策へのご協力に対し、自治体のみなさんにあらためて感謝申し上げます。デジタル庁では、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」というミッションを掲げ、国民一人ひとりが多様な幸せを実現できる社会をめざして取り組んでいますが、それには自治体のみなさんの協力が不可欠です。

 これからも、住民サービスの最前線に立つ自治体のみなさんならではの声を積極的にくみ取りながら、ともに住みよい地域をつくっていきたいと考えています。

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