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オンラインセミナーレポート
先進事例2024.03.11
「地域社会DXなるほどセミナー」

「先進事例」から学ぶ、地域DX推進への取り組み方

[提供] 総務省
「先進事例」から学ぶ、地域DX推進への取り組み方
この記事の配信元
総務省

デジタル社会の実現に向けて、自治体におけるDX推進の重要性がますます高まっている。しかし、DX人材の不足や予算確保の難しさなどが原因で、その推進に苦戦している自治体は依然として多い。そうした状況を打開する一助として、総務省は令和6年1月24日、地域DXに取り組む自治体の成功事例などを紹介するオンラインセミナーを開催した。事務局であるボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)の担当者がナビゲーターを務め、四万十町(高知県)、滝上町(北海道)、徳島市(徳島県)のDX推進担当者のほか、地域DXを支援する民間企業の担当者らが登壇。それぞれの体験をもとにDX推進のポイントなどを説明した。また、総務省は地域DXの推進を総合的に支援する「地域デジタル基盤活用推進事業」を紹介した。ここでは、開催されたセミナーの要旨をレポートする。


登壇者
【ナビゲーター】
・ボストン コンサルティング グループ プリンシパル 上野 拓氏
【総務省事業の紹介】
・総務省 情報流通行政局 地域通信振興課 デジタル経済推進室 課長補佐 荒木 博和氏
【DX事例紹介】
・四万十町 企画課情報推進対策監 兼 広報情報係長 坂本 仁氏
【DX事例紹介 「計画策定支援」参加者】
・滝上町 まちづくり推進課 課長 伴 久氏
・滝上町 総務課庶務係 係長 遠山 豪氏
【DX事例紹介 「実証事業」参加者】
・住友商事 メディア・デジタル事業部門 メディア事業本部 5G事業部
 ソリューション開発チーム長 山田 晃敬氏
【DX事例紹介 「計画策定支援」「実証事業」参加者】
・徳島市 危機管理局 主幹 井水 貴之氏
・サーベイ 代表取締役 阿部 正美氏


地域DX成功の要諦は、「地域課題の徹底的な確認」

 セミナー冒頭、BCGの上野氏は、同グループが全国の地域DX事例を見てきたなかでまとめた、「成功の要諦7ヵ条」を紹介した。なかでも重要な項目として詳細に解説したのは、「地域課題の徹底的な話し合い」だった。同氏は、「『当たり前』と感じるかもしれないが、これが不十分だと、実証段階において、検討しているデジタル技術では課題解決が無理だと発覚することが多い。デジタル技術はあくまで地域課題を解決する手段であり、導入が目的ではない」とした。そのうえで、DX推進に成功している自治体の共通点として、職員が上下関係や部署の垣根を越えて地域課題を徹底的に話し合っている状況を紹介。さらに、「住民のもとに何度も足を運び、住民が悩んでいるシーンが目に浮かぶくらいまで地域課題を確認している」と説明した。

「苦い経験」から得た教訓を、その後のDX推進に活かす

 実際のDX推進事例から四万十町の坂本氏が登壇した。同町は、「ドローンを活用した防災力の強化」といった先進的な取り組みで注目されているが、最初の実証実験では苦い経験をしたという。じつは同町では当初、農業振興を目的にドローン活用を検討していた経緯があり、「上空からのドローン映像を活用して、収穫量日本一を誇る生姜の病害を早期発見できると考えていた」(同氏)。しかし、実証実験の結果、ドローン映像からは生姜の葉や根の病害を把握することは難しかったという。同氏は、「ドローン活用ありきで話を進めていたことが原因。農家さんから詳しく状況を聞き、実情を踏まえたソリューションを公募すべきだった」と当時を振り返る。その教訓を活かし、その後は地域住民の意見を徹底的にヒアリングして、ドローンの活用法を検討。その結果、「ドローンで撮影した災害危険区域の映像を活用した防災教育の推進」「災害現場のドローン映像を、町の災害対策本部へリアルタイムに配信する仕組みの構築」という、現在の活用法につなげた経緯を紹介した。

四万十町 企画課情報推進対策監 兼 広報情報係長 坂本 仁氏

「切れ目のない支援」で、地域DXを後押し

 次には総務省の荒木氏から、「地域デジタル基盤活用推進事業」について紹介された。同事業は、地域DXの推進計画の策定を支援する「計画策定支援」、具体的なDXソリューションの実証を資金面などで支援する「実証事業」、実証の先にある実運用に向けた「補助事業」の3つのメニューで構成されている。地域DX推進に向けた「切れ目のない支援」が特徴だ。令和6年度事業では、実証事業における事業規模の目安を8,000万円から1億円に引き上げる変更点などが紹介されたほか、「推進体制構築支援」という新メニューを追加すると発表。DX専門人材等を自治体に派遣し、「地域課題の洗い出しや深掘り、整理」「具体的な進め方の提案」「地域DX推進体制の構築」までを伴走支援する。同氏は、「DXを推進したい自治体と企業はぜひ事業に応募してほしい」と語った。

「計画策定支援」を、DX推進の「第一歩」に

 セミナー後半では、実際に総務省の上記事業を利用して、地域DXの推進に取り組む自治体と民間企業が登壇した。まずは、「計画策定支援」に参加した滝上町の伴氏と遠山氏が取り組みを説明。同町では、まちづくり推進課が主体となり、BCGの支援のもと、医療・福祉、産業振興、観光など各産業分野で解決したい課題を管轄する担当部署に自ら足を運んでヒアリングしたという。ときには、メールで「そっけなく」返信されるケースもあったようだが、それでも、「具体的になにが課題なのか」「どうすればその課題を解決できそうか」といったことを、しつこいくらい聞くようにしたという。そうすることで地域課題の「全体像」が見えるようになり、そこからは、「優先度」「緊急性」「効果」「コスト」「導入難易度」を総合的に判断して分野別のDX推進計画を策定した。「ソリューション候補の選定」や「DX推進のスケジュール策定」もBCGとともに進めていき、担当部署にその内容を示すことで、「分野横断的に地域全体としてDX推進の機運が高まってきた手応えを感じる」(伴氏)ようになったという。そうした経験から、遠山氏は、「当町と同じように、DXの専門人材を確保できない自治体は、この『計画策定支援』に手をあげるべき」と、DX推進の「第一歩」としての活用を呼びかけた。

滝上町 まちづくり推進課 課長 伴 久氏

滝上町 総務課庶務係 係長 遠山 豪氏

「実用化」が前提なので、多くの民間企業が前向きになれる

 次に登壇したのは、「実証事業」を活用し、複数の大手鉄道会社やベンダーとともに「省力化・省人化を図るDX」を進めている住友商事の山田氏。鉄道事業者では現在、職員が1日数時間かけて線路や沿線設備を巡回し、目視などによる点検業務を行っているが、その業務負担が大きな課題になっているという。この課題解決に向けて同社が進めているのが、「高精度カメラ」「AI」「ローカル5G」を組み合わせ、1日数十分で点検業務を完了するシステムの開発である。同氏は、「実証事業は、単に実証実験の推進ではなく、『実用化』を前提に資金などを支援してくれるスキーム」だと語り、開発・実証の投資負担の壁が厚い事業にも取り組めることを指摘。そのため、「多くの民間企業が前向きに推進できる」と語った。

住友商事 メディア・デジタル事業部門 メディア事業本部 5G事業部 ソリューション開発チーム長 山田 晃敬氏

「真の課題」を洗い出し、「実証事業」につなげられた

 最後に登壇した徳島市の井水氏とサーベイの阿部氏は、両者で進めている「ドローンを活用した災害DX」の取り組みを紹介した。プロジェクトマネージャーの阿部氏は当初、ドローンによって徳島市の物流に関する課題を解決できるのではないかと考え、まずは「計画策定支援」を利用したという。そのなかで、「地域が本当に抱えている課題の正確な把握が大切」といったBCGからのアドバイスをもとに市と協議を重ねた結果、物流ではなく災害対応の強化をテーマとすることが決まった。阿部氏は、「振り返れば、当初の目的がドローンの『技術検証』になっていた気がする。計画策定支援を受けたからこそ、取り組みの目的を『課題解決』にシフトできた」と語った。両者はその後、「実証事業」も利用し、徳島大学の協力も得ながら、南海トラフ地震時でも通信が遮断されることなく、ドローンを活用して災害情報を全庁共有できる仕組みの構築に向けて取り組んでいるという。井水氏は、「課題解決に向けたさまざまな考えが落とし込まれたソリューションになることを期待している。今回の総務省の事業を活用すれば、規模の大小を問わずあらゆる自治体が、予算的な部分であきらめずにDX推進を検討できると思う」と語り、セミナーを締めくくった。

徳島市 危機管理局 主幹 井水 貴之氏

サーベイ 代表取締役 阿部 正美氏

総務省
お問い合わせ先
03-5253-5757(直通)
digital-kiban@ml.soumu.go.jp

情報流通行政局 地域通信振興課 デジタル経済推進室
地域デジタル基盤活用推進事業担当

セミナーアーカイブ動画
セミナー投影資料 (抜粋)
■地域デジタル基盤活用推進事業 (総務省 | ICT利活用の促進 | 地域デジタル基盤活用推進事業 (soumu.go.jp))

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