自治体通信ONLINE
  1. HOME
  2. 先進事例
  3. データ活用による地域一体の連携で、持続可能な観光地経営を実現する
広島県廿日市市の取り組み
先進事例2024.03.18
データを活用した観光振興策

データ活用による地域一体の連携で、持続可能な観光地経営を実現する

[提供] 株式会社地域創生Coデザイン研究所
データ活用による地域一体の連携で、持続可能な観光地経営を実現する
この記事の配信元
株式会社地域創生Coデザイン研究所
株式会社地域創生Coデザイン研究所

※下記は自治体通信 Vol.56(2024年3月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

コロナ禍が収束し、国内外の観光需要が顕著な回復傾向を見せるなか、観光振興策の再構築に乗り出す自治体が増えている。そこでは、コロナ禍の需要激減で苦しんだ観光業界を中心に、産業体質の強化と、効果的かつスピーディな施策立案・効果検証に向けて、データを活用する動きが進んでいる。世界文化遺産の宮島・嚴島神社を擁する廿日市市(広島県)も、そうした地域のひとつである。取り組みの概要を、同市担当者の空氏に聞いた。

[廿日市市] ■人口:11万5,904人(令和6年2月1日現在) ■世帯数:5万3,487世帯(令和6年2月1日現在) ■予算規模:919億7,000万円(令和5年度当初) ■面積:489.49km² ■概要:広島県西部に位置し、中心部は広島駅から電車で約20分。世界遺産の嚴島神社を擁し、けん玉発祥の地としても知られる。市の沿岸部は、瀬戸内海気候特有の温暖な気候。年間を通じて天気や湿度が安定しており、まさに瀬戸内海の凪いだ景色のように、温暖少雨で過ごしやすい。一方、中山間部は、日本海側気候に属し、沿岸部に比べて気温が5度も低く、冷涼多雨な豪雪地帯もあり、スキー場もある。
インタビュー
空 正夫
廿日市市
産業部 観光課 観光振興係 係長
空 正夫そら まさお

勘と経験に頼った施策では、環境変化に対応できない

―観光振興におけるデータ活用に着手した経緯を教えてください。

 当市の観光振興策では、強い集客力を誇る世界文化遺産の宮島とそれ以外の地域をいかにつなぎ、市全域として交流人口や経済効果を高めていくかが課題となってきました。とはいえ、宮島は国内有数の集客力を誇る観光コンテンツであり、特別な施策を実行しなくても、年間460万人にも達する高い集客数を誇ってきました。その状況が一変したのが先般のコロナ禍であり、地元観光業界だけではなく、我々行政にも危機感が高まりました。こうしたことを背景に、戦略的に市の観光振興に取り組む体制づくりとして、DMO*の設立へと動き始め、その動きと連動して着手を決めたのが、観光振興策におけるデータ活用でした。

―データ活用に着目した理由は、なんだったのですか。

 従来の勘と経験に頼った施策では、激しい環境変化には対応できず、より効果的な観光施策を実施するためには、データに基づく合理的な施策立案と効果検証こそが必要だと考えたからです。また、関係する多くのステークホルダーが共通の目的のもと連携を構築していくには、客観的データが相互理解を醸成するための共通言語になりうるとの期待もありました。そうした事情から、観光振興へのデータ活用を最優先課題と位置づけ、その具体策として、情報収集の核となる観光DMP*の構築を事業化することを決定。令和5年8月の公募型プロポーザルによりDMP構築・運用を行う支援事業者として、地域創生Coデザイン研究所を選定し、事業を進めています。

*DMO : 観光地域づくり法人。地域経営の視点に立った観光地域づくりの司令塔機能を担う
*DMP : インターネット上に蓄積された情報を一元管理するプラットフォーム

新たな「気づき」で高まる、データ活用への期待

―具体的に、現在はどのような作業を進めているのでしょう。

 2ヵ年事業の初年度となる現在は、施策立案のために必要な各種データを観光DMPに集積しているところです。その内容は各種観光統計、国や関係機関からのオープンデータのほか、市や観光協会のWebサイト分析データ、宿泊データなど多岐にわたります。

 同時に、地域創生Coデザイン研究所の支援を受け、市および観光協会の職員による勉強会を重ねており、データ分析を通じて現状認識や「なりたい姿」、将来の観光DMPの活用イメージなどの合意形成を図っています。そこでは、これまで感覚的に捉えていたことをデータで確認でき、新たな「気づき」を得ることも多く、データ活用への期待が高まっています。

―廿日市市における今後の観光振興ビジョンを教えてください。

 宮島をはじめとする当市の観光地にはそれぞれ地域の特性があり、その特性により観光資産が形成され、守られてきた歴史があります。目まぐるしく変化する社会情勢や環境の中、地域の伝統と新しい挑戦がベストバランスで融合したまちづくりを進めることで初めて持続可能な観光地経営が実現すると考えています。当市ではデータ活用を通じて、地域一体の連携を構築しながら、スピード感を持った施策展開に挑戦していきます。

支援企業の視点
観光地域づくりへの最適解は、地域に根差したコミュニティから
インタビュー
細井 正善
株式会社地域創生Coデザイン研究所
主任研究員 チーフCoクリエイター
細井 正善ほそい まさよし
昭和59年、徳島県生まれ。大手通信キャリア、大手IT企業などを経て、平成31年に西日本電信電話株式会社に入社。観光を起点とした持続可能なまちづくり実現に向けて、各地域の課題に応じたアプローチで複数のプロジェクトを推進中。

―観光振興に取り組む自治体を取り巻く課題はなんですか。

 地域の観光産業の持続可能性をいかに担保するかです。観光産業の問題は、担い手不足や低生産性といった経済面のほか、文化の継承などの社会面、ごみ問題などの環境面など多岐にわたり、いずれも地域一体の取り組みが不可欠です。しかし、観光産業はステークホルダーが特に多いことから、地域のコミュニティ内で何に取り組むかの意思決定が難しい場合があります。そのため、地域連携を図る際には共通言語としてデータを活用する方法が有効です。また、コロナ禍で人々の行動が変わる中、従来の施策が通用しない場面も増え、データに基づいた効果的な施策立案や迅速な効果検証が重要になっています。そこで当社では、データ活用で自治体の観光振興を支援しています。

―具体的にどのような支援を行っているのでしょう。

 データ活用の基盤となるシステム導入支援はもちろん、地域ビジョンの策定や観光コンテンツの造成、データ活用人材の育成など、地域にデータ活用が定着するためのあらゆる支援を一気通貫で提供しています。そこで当社が大事にしているのが伴走支援と、各地域の実情に合った課題解決策を生み出す前提となる深い地域理解です。当社はNTT西日本のグループ企業として、同社の全30支店の地域創生を支援してきた実績があります。その実績を背景に、地域の課題に合わせた最適解を一緒につくり出し、地域の発展に貢献していきたいと考えています。ぜひお問い合わせください。

株式会社地域創生Coデザイン研究所
株式会社地域創生Coデザイン研究所
設立

令和3年7月

資本金

1億円

従業員数

52人(令和5年7月現在)

事業内容

地域課題解決コンサルティング、自治体・国に対する政策策定支援、地域データを活用したデジタルデータビジネス、上記に付帯又は関連する一切の事業など

URL

https://codips.jp/

お問い合わせ先
vitamin-tourism@west.ntt.co.jp
サービス資料を確認する
電子印鑑ならGMOサイン 導入自治体数No.1 電子契約で自治体DXを支援します
自治体通信 事例ライブラリー