
※下記は自治体通信 Vol.53(2023年10月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
いま多くの自治体では、地元企業におけるDX推進をサポートするべく、デジタル人材育成に向けたリスキリング支援が行われている。しかし、思うような成果をあげられていないケースもあるという。そうしたなか、「DX施策を組み立てる『デザイン思考』の人材育成に向けた支援が重要」と語るのは、IT研修を手がけるFunTre代表の谷田部氏だ。その理由について、同氏に聞いた。

スペシャリストではなく、ジェネラリストの育成が必要
―自治体のリスキリング支援には、どのような課題がありますか。
多くの自治体が地元企業に対してITに関連したリスキリング支援を行っていますが、そこで学んだ人材が思うように社内でDXを進められていないケースが少なくないことです。支援の成果をあげるためには、自らの高度な専門スキルで課題解決を図るITスキルの「スペシャリスト」ではなく、ITスキル活用の「ジェネラリスト」の育成を支援していく必要があると私は考えています。
―ITスキル活用のジェネラリストとは、どのような人材ですか。
ITに関する幅広い知見で、経営課題の解決に必要なスキルやシステムを見極め、効果的なDX施策を組み立てられる、「デザイン思考」を持つ人材です。多岐にわたる経営課題を解決するには、多種多様なITスキルやシステムの活用が有効です。とはいえ、経営課題ごとに最適なITスキルのスペシャリストをそろえるのは、中小企業、特にIT人材が不足しがちな地方の企業には困難です。そこで当社では、社内外のリソースをフル活用してDX施策を立案する、ITスキル活用のジェネラリストを育成する研修を提供しています。
―研修の特徴を教えてください。
経営課題を洗い出し、ITスキルや各種システムを駆使して解決するプロセスの学習に特化している点です。具体的には、各種ツールの特徴や活用方法、DX施策立案用の企画書の書き方、プロジェクトマネジメントなどを学びます。ITスキルのスペシャリストを育てる趣旨ではないので、ITに不慣れな人材でも実践レベルに到達できる点も特徴です。そして、学んだ知識を実践的なスキルへと昇華させるために、当社の研修ではケーススタディを重視しています。
成功企業を訪問し、課題解決のプロセスを学ぶ
―どのような内容ですか。
たとえば、DXで経営改善に成功した企業での現場研修です。その際、受講者は訪問先の社員からDX推進のノウハウを具体的に聞きながら、課題把握から解決策の立案・実施までのプロセスを学びます。訪問先には、受講者の所属企業に規模と地域が近い企業を選びます。書類のデータ化から始めるといった等身大のDX施策をイメージしやすく、「自分たちにもできる」という実感を持ちやすいからです。そうした実感のもと、現場研修で学んだ成功プロセスを自社で実践して改善策をまとめ、DXのロードマップを作成することで、受講者はDX推進の軸となる人材へと育つのです。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
今後はリスキリング研修に加え、テレワークで働くIT人材と企業をマッチングするサービスも手がけていきます。テレワークならば、全国から人材を探せるので、大都市と比べてIT人材が少ない地方の企業でも採用しやすいはずです。そうやってIT人材が活躍できる場をつくることで、地域のIT人材育成に貢献していきます。


当県では今年10月から、地元企業に対して行っているリスキリング支援の効果を高めるために、FunTreの研修を導入する予定です。当県が令和3年度から行っている「オンライン学習受講促進事業」では、IT領域を中心に約1万のオンライン講座を用意。学んだスキルを経営改善に活かす企業が現れる一方で、「どのようなスキルを身につければ、DXを効率的に進められるのか判断できない」という声も寄せられていました。そこで、まずは各企業が自社のDX推進に必要なITスキルを把握できるように、DX施策立案のための「デザイン思考」を学べる研修の実施を検討したのです。
さまざまな事業者の人材育成サービスの中からFunTreの研修を選んだ決め手は、「実践学習」を重視している点です。特に、県内の中小企業での現場研修を評価しました。身近な成功企業で学べば、自社での具体的な実践のイメージがわくだろうと考えたからです。DXを力強く推進するリーダーが、地元企業に数多く生まれると期待しています。

設立 | 平成23年5月 |
---|---|
資本金 | 1,000万円 |
営業収益 | 5億2,000万円(令和5年3月期) |
従業員数 | 80人(パート含む) |
事業内容 | DX推進支援、デジタルマーケティングコンサルティング、教育事業、保育園の経営 |
URL |