《地域の魅力を向上させるさまざまな波及効果》亀岡市が挑戦し続ける「SDGsのまちづくり」~後編

【自治体通信Online レポート】
シン・行政〈亀岡市〉:「SDGsのまちづくり」は地域をどう変えたのか?(後編)
政策を“点”で終わらせない
―高木先生にお聞きします。亀岡市のSDGs政策は、市民・事業者・アーティストなど多様な層を巻き込んだ取り組みとなっています(参照:「《“環境先進都市”のトップランナーを目指す》亀岡市が挑戦し続ける『SDGsのまちづくり』~前編」)。こうしたケースは全国でも稀有だと思うのですが、SDGsを推進する自治体が直面している課題にどのようなものがあり、亀岡市ではSDGsの観点から、今後どのような展開が期待できるのでしょうか。
高木 特任助教(以下、T)
「SDGsの具体的な活用方法が浮かばない」と感じている自治体は多いのではないでしょうか。
これはSDGsが目指す「持続可能な姿」から逆算して自分たちのまちの未来を考えるところを起点にするのではなく、「SDGsをどう使うか」というところを起点にしてしまっているからだと感じます。そうすると「名刺にSDGsのアイコンを貼り付ければ良い」、「SDGsを各種計画に掲出すれば十分に活用できている」といった使い方に留まってしまいます。
本来大切なことは、SDGsが備えている「持続可能性の観点」からまちを見直すということです。
SDGsの観点から今後の亀岡市の展開に期待できることとしては、まず亀岡市の特徴として、目指すべき姿と目的を常に考えています。そのため、政策を単発で終わらせずに、次に繋げるステップとして捉えているようにも感じられます。
例えば、使い捨てで廃棄されてしまうペットボトルを減らすために、企業と連携しようとすると、多くの自治体で「マイボトルを提供してくれる企業」との連携協定を結んで、住民にマイボトルを提供します。
しかし、亀岡市は「使い捨てのペットボトルを使用しないライフスタイル」という中間目標から逆算して、実現に向けてするべきことを考えるので、マイボトルの提供で終わらせずに、「給水スポットを増加させる」「給水スポットを探せるアプリを導入する」といった必要な施策を次々と進めています。
並行して、ペットボトルを水平リサイクルできるようにする取り組みなども進めており、これからも「世界に誇れる環境先進都市」という目標の達成に向けた取り組みの展開が期待されます。
また、市役所の地下に設置された「開かれたアトリエ」は、世代や職業を超えて多様な人が集まる場になっており、思いもよらなかった社会課題解決のアイデアが生まれたり、具現化されたりする可能性を強く感じています。
亀岡市が2021年度からSDGsを専門とする「SDGs創生課」を市長公室に設置したことは、その原動力・推進力になると期待しています。
すべての事業等をSDGsと関連付ける
―市長の立場からは、SDGs創生課にどのようなことを期待していますか?
桂川 市長(以下、K)
SDGsって聞いたことがあるけれど、実際はどういうことなのか、よくわからない―。こう感じている市民はとても多いと思います。それをかみ砕き、市が実施しているさまざまな事業や取り組みについて、「この事業等はSDGsの達成目標のこれに当たるんですよ」と具体的に示して理解を深めていただく役割を担うなど、SDGs創生課は亀岡市におけるSDGsのエバンジェリストです。
そうしたSDGs創生課が担当している事業・取り組みは、SDGsの推進のほかに、ふるさと力向上寄附金(ふるさと納税)に関すること、定住促進対策、移住・定住促進施設に関すること、結婚支援。広範な分野にわたっており、「世界に誇れる環境先進都市」を具現化するSDGsを基盤とした地域づくりに関わっています。SDGs創生課にはその実現の核となる活躍を期待しています。
市のアドバイザーを務めていただいている高木先生にはSDGs創生課の活動についてもさまざまなアドバイスをいただいています。第5次総合計画から亀岡市のすべての事業等をSDGsと関連付ける試みを開始しましたが、これも高木先生からのアドバイスをもとに実現しました。

―高木先生は 複数の自治体でアドバイザーとして各地で活動していますが、具体的に亀岡市ではどのような業務を行っているのですか?
T
「職員や住民の皆さんと、一緒にまちの現状を分析して、一緒に悩み、一緒に解決策を考え、一緒に行動すること」が私にできることだと思っています。
今年度から庁内に設置いただいたSDGs創生課の職員の皆さまと、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を通じて小学生に、亀岡とSDGsについて一緒に学ぶ学習プログラムを開発したり、亀岡市のフォトグラファーと連携して市の広報に「市内で見つかるSDGs」を伝える記事を連載したりと、さまざまな方法で亀岡市の皆さまに“SDGsのメガネ”をかけて、まちの持続可能性の観点から考えていただけるように努めています。
ふるさとの魅力を再発見する“ルネサンス”が始まった
―地域づくりという観点から、プラごみゼロ等のSDGsの取り組みはどのような効果をもたらしていますか?
K
シビックプライドの形成につながっているほか、亀岡市の街としての魅力を向上させていく個別の“ストーリー”にSDGsの考え方が反映されるようになったと思います。「できたらいいな」という素朴なアイデアがSDGsの取り組みへと昇華していくダイナミックな動きは、とてもワクワクするというか、すごくおもしろい取り組みだと感じています。
たとえば市内の中学生を対象とした保津川下り。新たに設置した「川の駅」を出発点として京都の嵐山まで18kmを下っていくもので、途中、水のアクティビティを楽しむほか、保津川の歴史や保津川の生物多様性を学んだり、人が入れないような場所に舟で入っていき清掃活動をするなど、SDGsの取り組みの一環として行っている“ふるさと教育”です。
亀岡市で育った人は中学生になったら全員、ふるさとの川・保津川を学び、大人になっていく。まさに街の未来を創る取り組みです。
また、川を守るという観点から無農薬野菜の栽培が広がったり、アーティストの方たちとのコラボでマルシェが開催されるようになりました。
アーティストの方のおもしろい取り組みとして、農作業小屋の写真集の制作というのもあります。農作業小屋は安く上げるため、ありあわせの材料をつかって工夫しながら手作りでみなさん建てるのですが、そのため同じものがふたつとないオリジナルの個性があります。手作りなので “秘密基地”のような雰囲気もある。それが「おもしろい」ということで、アーティストの方が亀岡市の農作業小屋を写真集にしてくれたんです。これも市民のみなさんの、ふるさとの魅力再発見につながっていると思います。
「地方のチカラ」が重要!
―最後に、今後の市長のビジョンを聞かせてください。
K
今後は、SDGsに取り組む自治体間の“横のつながり”をつくっていければ、と考えています。亀岡市でできたことは、他の自治体でもできると私は思っています。
ですから、同じ想いをもつ自治体のみなさんとともに、地方から日本を変えていきたい。日本がSDGs先進国になっていくためには、地方の力が重要。そう思っています。
(前編はコチラ)
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