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《“環境先進都市”のトップランナーを目指す》亀岡市が挑戦し続ける「SDGsのまちづくり」~前編

    《“環境先進都市”のトップランナーを目指す》亀岡市が挑戦し続ける「SDGsのまちづくり」~前編

    【自治体通信Online レポート】
    シン・行政〈亀岡市〉:「SDGsのまちづくり」は地域をどう変えたのか?(前編)

    全国で広がる「SDGsのまちづくり」。それを条例で強力に進めている自治体があります。有償ならぬ、レジ袋の“提供禁止”を実施している亀岡市(京都)です。有償提供は可とする国の指針の先を行く踏み込んだ施策を進める理由、地域にもたらした価値などを、亀岡市の桂川 孝裕(かつらがわ たかひろ)市長と同市参与(SDGsアドバイザー)を務める高木 超(たかぎ こすも)慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教のおふたりに聞きました。SDGsの実践は自治体のあり方をどう変えたのか?

    「レジ袋」が消えた街

    ―亀岡市は「世界に誇れる環境先進都市」を目指しています。その実現に向けて、これまでどのようなことに力を入れてきたのですか?

    桂川 市長(以下、K)
    象徴的なのは2020年3月に「亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例(以下、レジ袋提供禁止条例)」が市議会で可決、成立し、2021年1月から施行していることです。

    亀岡市の桂川市長

    これは、有償無償を問わず、市内ではプラスチック製レジ袋の提供を禁止する、というもの。どうしても袋がほしいという方には有償で紙袋を提供します。施行年の6月からは、違反事業者が市の立ち入り調査や是正勧告に従わない場合、市は事業者名を公表できる仕組みとなっています。

    ―レジ袋の無償提供廃止の先を行く強い施策ですね。なぜ、レジ袋を禁止することに?

    K
    2018年に亀岡市と亀岡市議会は、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言(以下、プラスチックごみゼロ宣言)」を行い、2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指しているからです。

    この宣言のきっかけは、市内を流れる保津川のごみ問題。市では長い間、川の清掃活動をやってきたんですが、川の岸にはレジ袋に入ったごみ、ペットボトルだとか、農業用のマルチ、肥料袋など、たくさんのプラスチックごみが捨てられていたり、漂着している状況がありました。

    左上から時計回りに、夏の深緑の保津川、秋の紅葉に彩られる保津川、レジ袋提供禁止条例制定以前の保津川の清掃活動の様子、プラごみ問題が深刻だった頃の保津川の岸辺(画像はレジ袋提供禁止条例制定以前の様子)

    保津川は亀岡市と名勝・嵐山を結ぶ川下りで知られ、コロナ禍以前は年間20万人以上の観光客が訪れる重要な地域資源です。そのため、ボランティア活動でそうした保津川の清掃活動をやってきたのですが、到底追いつかない。それほどプラスチックごみ問題は深刻でした。

    また、気持ちよく観光してもらうためだけではなく、保津川には国の天然記念物「アユモドキ」をはじめとする多様な川の生態系があります。そうした豊かな“亀岡の自然”を守るためにも、なんとかしなければいけなかった。

    そこで、状況を大きく変えるため、プラスチックごみゼロ宣言~レジ袋提供禁止条例という市民・事業者を巻き込んだ取り組みを開始したのです。

    条例が成立した2020年には、議員提案により「亀岡市ポイ捨て等禁止条例」も制定しました。

    ~亀岡市の概要~
    京都市の西方約20㎞、京都府中央にある亀岡盆地に位置。人口は京都府第3位の約8万8,000人。丹波亀山城と城下町を築いた戦国武将・明智光秀ゆかりの史跡が多い。
    自然が豊かであり、市の森林面積は15,302haと、市面積の7割を占める。
    市域の中央部には北から東に貫流する一級河川の桂川(保津川)が流れる。保津川は、「保津川下り」で有名な京都観光ルートのひとつ。
    古来より大嘗祭の奉祝田を務めてきた歴史から、「京都府の穀倉地」と称される。

    「いま必要なことなんです」

    ―有償化ではなく禁止、つまり亀岡市内からレジ袋を無くすという取り組みは、ある意味、ショッキングです。市民や事業者から「なぜ?」という声もあったのではないでしょうか?

    K
    説明会を繰り返し実施し、市民や事業者と対話を重ね、「母なる川、保津川」を守る意義をお話しました。担当職員が頑張ってくれましたし、もちろん私も自ら説明にいろんなところに行きました。当初は「そんなことをしたらお客さんがもう来ないんじゃないか。」そんな強い懸念も聞かれました。

    私たちも事業者の立場に立ちながら意見交換をしていく中で、「将来、自分たちのふるさとをよい形で、次の世代にバトンタッチしていくためには、いま必要なことなんです。」と訴え続け、だんだんとご理解を得られるようになっていきました。

    そして、市内で最大手のスーパーの社長さんがわれわれの想いに賛同してくれ、積極的に協力してくれまして、そこから一気に皆さんの理解が進み、2019年に市内事業者を中心に日本フランチャイズチェーン協会や保津川遊船企業組合など30以上の団体から構成される「世界に誇れる環境先進都市かめおか協議会(以下、協議会)」が設置され、集中的な会合での議論を経て、レジ袋提供禁止条例の素案が形作られました。

    施行から1年以上たった今 スーパーでは98%ぐらいの方が、コンビニエンスストアにおいても93~95%の方がマイバック・エコバッグでお買い物をしていただいています。

    亀岡市の「プラスチックごみゼロ宣言」から「レジ袋提供禁止条例」までの流れ。左の切り込み画像は環境先進都市に向けた取り組みを表す亀岡市の環境ロゴマーク

    地域を束ねた「政策×アート」のチカラ

    ―高木先生にお聞きします。多くの自治体で持続可能性を高める環境問題への取り組み等、SDGs推進に向けた取り組みが行われています。そうしたなかで亀岡市の特徴はどのような点にあると考えていますか。

    高木 特任助教(以下、T)
    例えば、政策とアートを掛け合わせて分かりやすく市民に伝え、行動を促していることが挙げられます。

    亀岡市参与(SDGsアドバイザー)を務める高木 特任助教(元・神奈川県 大和市役所職員)

    住民にとっては、いきなりSDGsという世界共通の目標を掲げられても、そこで示されている世界の変化と、自分の行動がどのようにつながっているか理解することは難しいため、何をすれば良いか分かりません。

    亀岡市では、この持続可能な未来の姿を「世界に誇れる環境先進都市」という明確な目標として市民に示されていて、プラスチック製レジ袋の提供禁止といった具体的な行動に落とし込まれています。

    さらに、このレジ袋の提供禁止という行動を、駅前に巨大なパラグライダー生地をアップサイクルして作ったエコバッグ型のアート作品として掲示したり、その生地を活用して市民がオリジナルのエコバッグを作成できるワークショップを開催したりするなどして、住民とコミュニケーションを取りながら政策の意義を伝えています

    このように、アートの力も活用しながら、住民が政策に関わることができる「余白」を作っていることは、ほかの自治体にない特徴と言えます。

    ―アートの力を利用してということですが、どのような取り組みをしているのですか?

    K
    象徴的な活動として、2018年から通年で開催されている市内のアートイベント「かめおか霧の芸術祭」の一貫として実施している「KAMEOKA FLY BAG Project」があります。

    ~「かめおか霧の芸術祭」と「KAMEOKA FLY BAG Project」~
    「かめおか霧の芸術祭」のサイトのトップページ(https://kameoka-kiri.jp/)。亀岡市では気候的特徴として、11月から3月の朝方に放射冷却現象により市域全体を包み込む濃霧が発生する
    かめおか霧の芸術祭は、文化芸術の振興だけでなく、アートの力を活かして課題解決や地方創生を実現することを目的に、2018年から亀岡市が毎年度取り組んでいるプロジェクト。通年で、アートを通じたさまざまな体験・販売が行われるマルシェや、暮らしを見つめなおし知を共有するトークイベント KIRI WISDOM(キリウィズダム)、市民誰もが芸術を身近に感じることができるワークショップ KIRI2芸術大学(きりきりげいじゅつだいがく)などが開催されている。
    KAMEOKA FLY BAG Projectの模様
    KAMEOKA FLY BAG Projectは、市民のライフスタイル変革に向けて、環境問題だけでなく、アートの視点を取り入れた「環境×芸術」という切り口で推進している亀岡市独自の取り組みのひとつで、廃棄予定のパラグライダーの生地を有効活用し、素敵なエコバッグ・マイバッグとして生まれ変わらせる取り組み。カラフルでファッション性が高いほか、「軽くて丈夫」と人気が高い。

    このプロジェクトは、エコバッグの普及・啓発方法について環境施策担当課の職員がかめおか霧の芸術祭のアーティストに相談して提案されたアイデアをもとに実現したものです。2019年に亀岡市が芸術家やファッションブランドと連携して、年数経過等により廃棄予定であったパラグライダーの生地を回収・再利用し、巨大なエコバッグを作成・展示した後、その生地を使って、オリジナルのマイバッグを作成しました。多くの市民が参加したほか、マスメディアでも注目を集め、「亀岡市は環境先進都市を目指している街なんだ」という認識が広がるきっかけになりました。

    このほか、レジ袋の代わりに有償で用意している紙袋のデザイン、プラごみゼロを含めた亀岡市の環境シンボルマークもアーティストの方たちとコラボしています。

    亀岡市は「かめおか霧の芸術祭」と何かをかけ合わせる「芸術祭×X(エックス)」の取り組みを行っており、レジ袋提供禁止条例の取り組みも芸術祭とかけ合わせることで市民の認知度が高まるなど、大きな推進力になりました。これらの取り組みが評価され、亀岡市は内閣府から「2020年度 SDGs未来都市」に選定されました。

    「かめおか霧の芸術祭×X(エックス)」の概要(亀岡市が内閣府の自治体SDGs推進評価・調査検討会に提出した資料より)

    後編に続く)

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