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【亀岡市「レジ袋禁止条例」の挑戦 #2】 民間企業など多様なステークホルダーとともに取り組む

【自治体通信Online 寄稿記事】自治体SDGs~先進事例と実践者たち②(慶應義塾大学大学院 特任助教/鎌倉市SDGs推進アドバイザー・高木 超)

【亀岡市「レジ袋禁止条例」の挑戦 #2】 民間企業など多様なステークホルダーとともに取り組む

民間の企業や組織とコラボした環境アートイベント、環境教育、プラごみ対策としてのマイボトル喚起―。亀岡市(京都)が推進している全国初の「レジ袋禁止条例」は公民連携による“新しい価値”を地域に生み出そうとしています。多様なステークホルダーとともに取り組む同市のSDGs戦略とは?
【目次】
■ 芸術(アート)×環境保護=ブランド
■ 条例だけではない!数々の魅力的な打ち手
■ 一体的な政策で亀岡を世界に誇れる環境先進都市に

芸術(アート)×環境保護=ブランド

前回で紹介したように、亀岡市では事業者や市民との対話を重ねて「レジ袋禁止」や内陸部の自治体が海洋ごみ削減に取り組みの意義や目的などの浸透を図る一方で、市内での住民説明会などへの女性や若者の参加は多くありませんでした。
(参照記事:【亀岡市「レジ袋禁止条例」の挑戦 #1】 事業者と住民の行動変容につなげる)

そこで、2018年から通年で開催されている市内のアートイベント「かめおか霧の芸術祭」の一貫として「KAMEOKA FLY BAG Project」を開始しました。

このプロジェクトでは造形作家や東京で活躍するデザイナーと連携。年数経過等により廃棄予定であったパラグライダーの生地を回収・再利用し、2019年7月に巨大なエコバッグを作成・展示しています。

さらに、この巨大なエコバッグの生地を使って、オリジナルのマイバッグを作成するワークショップ「FLY BAGワークショップ」を10月に開催。若者や親子連れなど200名の参加者が集まり、マスメディアでも注目を集めました。

女性や若者も参加しやすいプロジェクトとしてKAMEOKA FLY BAG Project(左)とFLY BAGワークショップ(右)を実施
女性や若者も参加しやすいプロジェクトとしてKAMEOKA FLY BAG Project(左)とFLY BAGワークショップ(右)を実施

そのほか、市民参加のワークショップを通じて、「環境先進都市」をイメージしたロゴマークをデザインしています(下写真参照)。

このロゴマークは、2020年の新型コロナウィルス感染拡大を受け、市内飲食店からの発案をヒントに、持ち帰りのメニューを注文する際、客が容器を持参するなど、使い捨てプラスチック削減に向けて店と共に協力していただいた場合は、ロゴマーク入りのシールを1枚配布、5枚集めれば50円を割引するといった「プラごみゼロ」クーポンキャンペーンを打ち出し、周知を図っています。

このように、亀岡市はアートやデザインの力を使うことで、環境政策に対する見方を変えることに成功しています。

ロゴマークデザインワークショップの模様(円内の写真は市民が参加して策定された環境ロゴマーク)
ロゴマークデザインワークショップの模様(円内の写真は市民が参加して策定された環境ロゴマーク)

ここで取り上げた取り組みの数々からは、レジ袋を禁止することが目的ではなく、あくまでも亀岡市の美しい環境を次世代に受け継ぐことが目的であるという姿勢が伝わってきます。

条例だけではない!数々の魅力的な打ち手

レジ袋禁止を打ち出した「亀岡市プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例(以下、レジ袋禁止条例)」ばかりが注目されますが、環境を軸にしたまちづくりを進める亀岡市は、市の環境保全に向けて様々な打ち手を実行しています。

まるで象が鼻で子象をそっと押すかのように、小さなきっかけを与えることで、人々の行動を変える戦略をナッジ(nudge)と呼びますが、このナッジ理論を取り入れた施策も打ち出しています。

例えば、国内外で社会課題や環境問題の解決に取り組む一般社団法人Social Innovation Japanや家庭用浄水器の欧米市場シェア7割を占めるBRITAとコラボし「MyMizu」呼ばれるスマートフォンのアプリで、市内の給水スポットを示し、マイボトルの需要を喚起する取り組みを立ち上げます。

また、ウォーキングをしながらゴミ拾いを行う「エコウォーカー」という新たなボランティア清掃のスタイルも提案し、市民が楽しみながらゴミの削減に取り組めるような工夫を凝らしています。スマートフォンのGPSを使って、人が動く流れとごみの散乱場所との関係を解析するなど最新技術も政策の立案に活かしています。

2019年10月にはソフトバンク社と協定を結び、市内小中学校における環境教育に人型ロボットPepperを導入しています。授業のコンテンツのひとつとして、亀岡市のプラスチックごみ削減に向けた取り組みを教材に反映し、既に国内の他地域にも配信されています。

Pepperを活用した環境教育プログラムの公開授業の模様
Pepperを活用した環境教育プログラムの公開授業の模様

こうした取り組みについて、副市長の仲山徳音さんは「プラスチックごみの削減を環境教育に含めたのは、生活に密着しているため誰でも議論を交わすことができるからです。次世代を担う子どもたちにも必要な知識で、今は種まきをしている段階です」と語ります。

こうした環境教育の主流化は、SDGsのターゲット12.8「2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする」に結びつくものです。

一体的な政策で亀岡を世界に誇れる環境先進都市に

条例だけではなく、様々な打ち手とともに一体的な政策を進めている理由について、仲山副市長は「条例のように制約を課すアプローチと、市民の行動を促すアプローチを両面で進めていく必要があると感じています。前者のように、決められたルールのもとで、みんなで取り組むべき状況にする『ルールメイキング』を進めていくのは行政機関が担う重要な役割です。一方で、根拠があるからといって必ずしも人が動くわけではありません。ナッジと組み合わせることで、ルールの押し付けにならないように注意しています。もちろん、事業者や市民と丁寧に議論を尽くしてきたことも条例化に結びついたのだと思います」と話します。

亀岡の豊かな自然を象徴する“霧”をモチーフにした「かめおか霧の芸術祭」PRシャツを着る亀岡市の仲山副市長(左)と同市環境政策課の山内課長(右)
亀岡の豊かな自然を象徴する“霧”をモチーフにした「かめおか霧の芸術祭」PRシャツを着る亀岡市の仲山副市長(左)と同市環境政策課の山内課長(右)

プラごみゼロ宣言の発表を受け、仲山副市長はSDGsを活用したいと考えたそうです。
(参照記事:【亀岡市「レジ袋禁止条例」の挑戦 #1】 事業者と住民の行動変容につなげる)

その第一歩として、環境省の「平成31年度 環境で地方を元気にする地域循環共生圏づくりプラットフォーム事業」に応募、選定されたことを皮切りに、実績を積んでいる段階だといいます。

仲山副市長は、「今まで以上に利害関係者と結束を強め、プラスチックごみを減らし、分野を超えて政策との相乗効果を生み出していきます」と、その決意を語ってくれました。

こうした多様な利害関係者を巻き込んだマルチステークホルダー・パートナーシップは、SDGsを推進する上で不可欠な要素です。

亀岡市にとっては、この条例成立はゴールではないようです。仲山副市長とともに、担当課として政策を推進する環境政策課 課長の山内剛さんは「レジ袋を使用しないことが当たり前になって、条例が不要になることこそが目指すべきことで、それこそ先進都市だと思います」と語ります。

持続可能な環境先進都市を目指す亀岡市の取り組みは、ますます加速していく予感がします。

(続く)

【亀岡市「レジ袋禁止条例」の挑戦】のバックナンバー
第1回:事業者と住民の行動変容につなげる

#1および#2の参照資料
1) Ellen Macarthur foundation(2016)The New Plastics Economy: Rethinking the future of plastics, https://www.ellenmacarthurfoundation.org/publications/the-new-plastics-economy-rethinking-the-future-of-plastics
2) 仲山徳音(2019)「『全国に一石を投じたい』レジ袋禁止条例をめぐる攻防」『地方行政』2019年10月21日(月)2-5頁.
3) 仲山徳音(2019)「エコバッグの魔力 意識の変化を生むための挑戦」『地方行政』2019年10月28日(月)10-14頁.
4) 仲山徳音(2019)「『夜明け』を迎える地域循環共生圏 対立からパートナーシップへ」『地方行政』2019年11月11日(月)10-14頁.
5) 仲山徳音(2020)「全国に投じた一石の行方 前例のないものをどう進めるか」『地方行政』2020年5月14日(木)2-5頁.

高木 超(たかぎ こすも)さんのプロフィール

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教
国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)リサーチ・アソシエイト

NPO等を経て、2012年から大和市役所(神奈川)の職員として住民協働、厚木基地問題、待機児童対策を担当。2017年9月に退職し、渡米。クレアモント評価センター・ニューヨークの研究生として「自治体におけるSDGsのローカライズ」に関する研究を行うほか、国連訓練調査研究所(UNITAR)とクレアモント大学院大学が共催する「SDGsと評価に関するリーダーシップ研修」を日本人で初めて修了。2019年4月から現職(国連大学は2019年9月着任)。鎌倉市(神奈川)「SDGs推進アドバイザー」、珠洲市(石川)「能登SDGsラボ」連携研究員のほか、ミレニアル世代を中心にSDGs の達成に向けて取り組む団体、SDGs-SWYの共同代表も務める。著書に「SDGs×自治体 実践ガイドブック 現場で活かせる知識と手法」 (学術出版社)がある。
※SDGs-SWYのサイト:https://sdgswy.wixsite.com/home

<連絡先>
下記のSDGs-SWYの「CONTACT」ページよりお願いします。
https://sdgswy.wixsite.com/home/blank-pvj6y

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