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ソーシャル・トランスフォーメーション実現に向けた公民連携の重要性 ~後編~

ソーシャル・トランスフォーメーション実現に向けた公民連携の重要性 ~後編~

【自治通信Online 寄稿記事】自治体Transformation~再考“自治体のあるべき姿”~#3(PwCコンサルティング合同会社 Public Services・下條 美智子/犬飼 健一朗)

ソーシャル・トランスフォーメーション実現に向けた公民連携の重要性 ~後編~

自治体にも求められている行動変容のあり方を各地の実例に詳しいPwCコンサルティング合同会社(以下、PwC)の専門家たちが俯瞰し、独自分析する本連載。前編に引き続き、後編では女川町(宮城)の実例から「公民連携」がどのような新しい価値を生み出すのかについて探ります。
【目次】
■ 重要性増す「公民連携」
■ コレクティブ・インパクト・アプローチの事例~女川町×PwC
■ まとめ

重要性増す「公民連携」

PwCでは、社会にポジティブなインパクトを創出するだけでなく、既存事業も含めた新たな事業機会を獲得し、成長を維持するサービスプロダクトを創出することが重要であると考えている。

成熟した世界において新たな事業機会を獲得するためには、複数の課題が入り組み、一見すると解決が不可能に思える社会課題にアプローチすることが必要である。

この取り組みを進めるためには1社だけで完結させることは難しく、競合を含む他の民間企業や非営利活動法人など“他者”と同じビジョンを共有し、協働を行う「コレクティブ・インパクト・アプローチ」が重要である。そしてこれを最もイメージしやすいのは、公民連携である。

実際、コレクティブ・インパクト・アプローチの必要性に気が付いている民間企業は多く、また、内閣府が上場企業を対象にしたアンケート では、地方創生SDGsの達成に向けた取り組みを行う際に重視する連携先として、62%の方が市町村を挙げている(下のグラフ参照)

内閣府 地方創生推進事務局 「令和元年度上場企業及び機関投資家等における地方創生SDGsに関する調査」よりPwCにて作成
内閣府 地方創生推進事務局 「令和元年度上場企業及び機関投資家等における地方創生SDGsに関する調査」よりPwCにて作成

コレクティブ・インパクト・アプローチの事例~女川町×PwC

コレクティブ・インパクト・アプローチについて理解を深めていただくために、ここでは、PwCと宮城県女川町で取り組んだ事例を紹介する。

当アプローチを進める上では、3つの重要なポイントがある。

1つ目は共通ビジョンを基に認識合わせや他のプレイヤーとの協働を促す起点、2つ目は双方の価値観を認め包含する意識、そして3点目はそれらの連携を持続させる仕組みの構築である。

また、自治体と企業との公民連携だけでなく、教育機関や住民といった新たなプレイヤーを加えることで、より多くのインパクトを創出できることも是非付け加えておきたい。

東日本大震災により多くの方が亡くなり、街自体も大きく壊されてしまった女川町は、復興を通し、より強固な街に生まれ変わるために行政、議会、産業界、民間の協動による“四輪駆動の街づくり”を推進したことで知られる。実際今では、東北地方有数のコンパクトシティを立ち上げることに成功している(下画像参照)

画像は女川町(宮城)の「女川町まち・ひと・しごと創生総合戦略」(令和2年3月改定)からの抜粋。「使い勝手の良いコンパクトシティの実現」などを基本目標に据えている
画像は女川町(宮城)の「女川町まち・ひと・しごと創生総合戦略」(令和2年3月改定)からの抜粋。「使い勝手の良いコンパクトシティの実現」などを基本目標に据えている

しかし、復興を通してより強固な街作りを実現できた手応えを感じる一方で、推進者個々に溜まっているナレッジを可視化し、女川町の知見やノウハウを体系的にまとめることに苦慮されており、その点を、PwCがご支援することになった、というのが事例の背景である。

PwCが取り組んだのは、役場・現地のNPO・地域企業へのヒアリングとロジックモデルでの整理を基に女川町の強みの洗い出しと、データアナリティクスを通じた持続可能な街であり続けるための注力ポイントの分析だ。そして、それらを基に、社会課題解決に向けたフレームワークを開発した。

社会的インパクト創出のステップ
社会的インパクト創出のステップ
ロジックモデルを用いた強みの洗い出し
ロジックモデルを用いた強みの洗い出し
全国の市町村のクラスタリング分析結果
全国の市町村のクラスタリング分析結果

多くのステークホルダーと議論を行う土台を整理することができた女川町は、今後この可視化された土台を基に、ますます多くのステークホルダーと継続的に議論し、街づくりをさらに推進していくだろう。

まとめ

前回と今回の2回にわけてお伝えした本稿「ソーシャル・トランスフォーメーション実現に向けた公民連携の重要性」のポイントは、以下の4点である。

①SDGs・ESGがメインストリームとなり、コーポレートサステナビリティがより注目されている
②コーポレートサステナビリティを検討する際に押さえるべき重要なコンポーネントは、外部環境・戦略・ビジネスモデル・ガバナンス・長期的見通し・成果評価、および自社が注力すべき個別テーマである
③コミュニティ社会全体の持続可能性を追求するためには、コーポレートサステナビリティの先を見据えたソサエタル・サステナビリティ(社会の持続性)の重要性を捉える必要がある
④コミュニティ社会での価値共創・新しい協働の在り方を考えるにあたってはコレクティブ・インパクト・アプローチが有効である。これにより、共通のVisionを見据え、議論を行うにあたっての土台作りを行うことができる

今後企業は、経営アジェンダ(経済価値の向上)だけでなく、社会・環境アジェンダ(社会・環境価値)の双方を統合し企業価値を高めることが求められる。

その際には、コレクティブ・インパクト・アプローチでの協働推進ができるか否かが大きな鍵を握る。公民連携でスマートシティの取り組みを推進することもコレクティブ・インパクト・アプローチのひとつである。そこで獲得した進め方のナレッジは、企業価値を高めるための重要な財産となるだろう。

SDGsに謳われている“だれ一人取り残さない”の精神は、“社会における信頼を構築し、重要な課題を解決する”というPwCのPurpose(存在意義)と合致する。これからもPwCは、社会課題解決を推進し、重要な課題を解決する取り組みに注力していく。

(続く)

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本連載「自治体Transformation~再考“自治体のあるべき姿”」のバックナンバー
第1回:いま求められる「自治体Transformationのカタチ」とは?
第2回:ソーシャル・トランスフォーメーション実現に向けた公民連携の重要性 ~前編~

下條 美智子(しもじょう みちこ)さんのプロフィール

PwCコンサルティング合同会社 シニアマネージャー
社会課題の解決に関わるプロジェクトの立ち上げに参画。2017年にはPwC Japanグループ内のプロボノ活動を手掛け、活動の企画や運営、各種ソーシャルプロジェクトに従事。2019年には企業のソーシャルイノベーションを推進する「ソーシャル・インパクト・イニシアチブ」を発足し、リード。

犬飼 健一朗(いぬかい けんいちろう)さんのプロフィール

PwCコンサルティング合同会社 シニアアソシエイト
民間企業の新規事業・新業態開発を始め、業務効率改善や官公庁における事務局運営に従事。「ソーシャル・インパクト・イニシアチブ」と「次世代自治体推進プログラム」を発足し、ソーシャルインパクトマネジメント手法の開発、民間企業と地方自治体の協働を推進する地方創生を推進。