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心の地図を埋めていこう

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【自治体通信Online 寄稿記事】
自治体職員のための心の運転方法 #5(寝屋川市 職員・岡元 譲史)

前回は「心のエアバッグを用意しよう」というお話をしました。「心のドライブ」とも言うべき人生の旅路において、突発的な事故に巻き込まれた時に致命傷を負わないよう、事前に準備をしておこうという考え方ですね(私が大切にしている「ほめる達人」という生き方についても触れていますので、ぜひ前回もご覧ください)。
今回は、皆さんの心のドライブを更に安心・安全、快適なものにするために重要な、「心の地図」という概念について解説したいと思います。

「道が分からない」と不安

突然ですが、皆さんは初めての場所に車で行く時、どうしますか?とりあえず車に乗って、なんとなく進むでしょうか? それとも、地図を確認して、現在地と目的地の位置関係を把握し、道筋を立ててから車に乗りますか?

私は、後者です。車の運転技術に自信がないこともあり、かなり念入りに地図を見てからでないと安心して車に乗れません。特に遠方や普段行ったことのない道を車で走る時には、曲がるポイントなど要所、要所について『Google map』で確認し、イメージトレーニングをしてから乗車します。

ここまではやり過ぎかもしれませんが、少なくとも「地図は確認する」「カーナビをセットする」といったように、目的地に辿(たど)り着くために何かしらの『地図』を用いる方が多いと思います。「心の運転」においても、こうした「地図」という概念は非常に役立ちます。

例えば、「これまで会ったことのない人と話す」、「やったことのない仕事をする」、これら経験したことのないことは、心にとって「未開の地」と言えるでしょう。何も手掛かりがないと不安じゃないですか?

想像してみてください。「事前情報がまったくない状態で、目の前にいる気難しそうな自治会長にお願いをしなければならない」、「知識も何もない状態で、選挙の投票所の代表者を務めなければならない」といった状況。私なら、不安で仕方がありません。

この場合、自治会長と喋った経験のある人から話を聞いたり、選挙の流れが書かれたマニュアルを手に入れて読んだりすることで、その不安は和らぐと思います。未知の状態から既知の状態へと更新される。そう、まさに「心の地図」が埋まる瞬間。多少安心感を持って進むことができるわけですね。

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地図があれば…

あなたは、心における「伊能忠敬」である

しかし、日本地図や世界地図は販売されていますが、あなたの「心の地図」はどこにも売られていません。あなたが自ら、あなた自身の心の地図を埋めていく必要があります。

言うなれば、あなたは心における「伊能忠敬」。未開の地である心を旅し、心の地図を完成させていく探検者です。

余談ですが、江戸期に伊能忠敬が中心となって作った日本全土の実測地図「大日本沿海輿地全図」(完成は文政4年=1821年)。は、現代の技術で測量した地図とほぼ同じだそうです。地球の緯度1度分の長さについての誤差がわずか0.2%という驚異の精度。伊能忠敬、恐るべしですね。

しかしながら、伊能忠敬もひとりで地図を完成させたわけではありません。間宮林蔵といった弟子たちが、彼を支えました。同様に、あなたも孤軍奮闘する必要はありません。心の地図は自ら経験することで埋めていくことができますが、人から話を聞いたり、本を読んだりして、「他人の経験」を借りることでも埋めることができます。

「私、大阪の新世界なら詳しいから任せて! この先に美味しい串カツ屋さんがあって、あそこのミックスジュースが絶品で…」
というように、その場所に詳しい専門家の経験・知見を共有してもらうことで、あなたの心の地図はますます充実していきます。

あなたの心の地図が、誰かの心の地図を補完する

同じ場所に何度も足を運ぶと道を覚えてしまうように、繰り返し経験したことについて、あなたの心の地図の精度は非常に高いものとなっています。この状態になると、誰かが地図がなく道に迷っている時、道案内ができるようになります。あなたの心の地図が、誰かの心の地図を補完することができるんですね。

具体例として、滞納整理時代に私がつけていた「罵詈雑言ノート」を紹介します。

罵詈雑言ノートに書くのは、まさに「滞納者からぶつけられた罵詈雑言」です。例えば「お前ら、税金で飯食ってるくせに!!」といった、これまで言われたことのないような罵詈雑言。最初はどう反応していいか分からないけど、経験を重ねることで、「こう言われたら、こう返そう」と心の余裕がでてくる。まさに白紙だった「心の地図」が埋められ、どんどん精度が上がっていくわけですね。

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最初はどう反応していいわからなくても経験を重ねれば余裕が生まれる

次のステップとして、この「罵詈雑言ノート」が新人の子にとって役に立つようになりました。「こういう言葉をぶつけられることがあるけど、こういう風に切り返せばいいよ」といった具合です。

実際、新人の子に「罵詈雑言ノート」の内容を共有したところ、「岡元さんのおかげで、心が折れずに済んだ」と大変感謝されました。

このように、自分の心の地図が誰かの役に立つことの喜びを味わうと、自分の心の地図の精度を高めたり、今まで未開だった部分についても埋めるべくチャレンジしたりすることになります。ちなみに、自分の辛い・苦しい経験を誰かに話し、その誰かの心の地図を埋めて(擬似体験させて)、同じような辛い・苦しい状況に備えてもらうことを、私は「心の予防接種」と呼んでいます。自分にとっては毒のような経験が、誰かを救う結果に繋がる。これも、覚えておいて損はない概念ですね!

あなたの「心の地図」は今、どれくらい埋まっていますか?

あなた自身の心の運転を快適なものにするために、また迷子になっている他の人の役に立つためにも、「心の地図」の範囲を広げて、精度を高めていきましょう。

次回のテーマは、「あなたの心は、どんなタイプの乗り物ですか?」。自分の特性を理解することから始めましょう、というお話をします。お楽しみに!

(続く) 

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岡元 譲史(おかもと じょうじ)さんのプロフィール
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寝屋川市(大阪)経営企画部 企画四課 課長代理 兼係長
1983年生まれ。2006年に同市入庁後、12年間にわたり、様々な債権の滞納整理に従事し、市税滞納額70%(約25億円)削減に貢献。2020年より現職。
「滞納整理に価値を見出して伝えることで、受講者の不安や葛藤を取り除く」という独自スタイルによる研修を全国で実施し、6年間で延べ3,700人が参加。受講者が給食費の滞納ゼロを達成するなど、すぐに使えて再現性の高いノウハウを伝えている。
執筆に「滞納整理のための空地・空家対策」(『税』2018年2月号)など。
「地方公務員が本当にすごい! と思う地方公務員アワード2018」受賞。
プライベートでは2男児の父。PTA会長を務めるなど地域の活動も行う。
2021年5月21日に『現場のプロがやさしく書いた 自治体の滞納整理術』(学陽書房)を刊行。同書の印税は「全額、寝屋川市の発展のために使う」としている。
<連絡先>okamoto.joji@city.neyagawa.osaka.jp