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《“社会課題解決×スポーツ”の可能性》「シャレン!」から学んだ新しい政策~前編

    《“社会課題解決×スポーツ”の可能性》「シャレン!」から学んだ新しい政策~前編

    【自治体通信Online 寄稿記事】
    社会課題を解決する新しい政策「スポーツ×自治体」#2(宮代町 職員・伊藤 遼平)

    スポーツチームとのコラボで地域に新しい価値を創造した“スポーツ系公務員”こと宮代町(埼玉)職員・伊藤遼平さんに一連の事業の“裏側”を明かしてもらう本連載。今回と次回はJリーグの取り組み「シャレン!」(社会連携活動)をヒントに実施した取り組みをお伝えします。

    Jリーグの理念と地域スポーツ

    Jリーグは理念として「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」すると掲げています。豊かなスポーツ文化を育て、みんなが心も身体も健康でいられるように、そして街を元気にしようと行う「シャレン!」(社会連携活動)活動に、スポーツを通じた社会課題解決のヒントがあると考えています。

    今回の記事では、2つのクラブの「シャレン!」の地域活動をご紹介するとともに、それがどんなヒントとなって公共政策(地域)に活かしたかを書いていきます。

    読者の皆様の地域にあるスポーツチームや出身選手、もしくはスポーツ業界の皆様が新たに自治体と活動する際の参考にしてみてください。どうぞよろしくお願いします。

    「シャレン!」を知ってますか?

    「Jリーグと聞いて思い浮かべることはなんですか?」
    前回の記事の最後にみなさんに問いを投げかけましたが、どんなことが思い浮かんだでしょうか?
    (参照記事:Jリーグなどスポーツチームとの連携で社会課題を解決!)

    好きなチームや憧れの選手、試合観戦ための旅行や、スタジアムでの美味しいグルメ、忘れられない感動のゴールシーンなどなど、サッカーに関係する様々なことが思い浮かんだのではないでしょうか。

    私の場合、Jリーグと聞かれて思い浮かべるのは、社会連携活動「シャレン!」です。

    ◎「シャレン!」(社会連携活動)とは?
    「シャレン! Jリーグ社会連携」(https://www.jleague.jp/sharen/)のトップページより引用
    「シャレン!」とは『社会課題や共通のテーマ(教育、ダイバーシティ、まちづくり、健康、世代間交流など)に、地域の人・企業や団体(営利・非営利問わず)・自治体・学校などとJリーグ・Jクラブが連携して、取り組む活動』です。
    『3社以上の協働者と、共通価値を創る活動を想定しており、これらの社会貢献活動等を通じて、地域社会の持続可能性の確保、関係性の構築と学びの獲得、それぞれのステークホルダーの価値の再発見』に繋がっており、Jリーグは「シャレン!」を通じて、SDGsにも貢献しています。
    ※二重カッコ内はサイト「シャレン! Jリーグ社会連携」(https://www.jleague.jp/sharen/)より引用

    上は解説動画「Sharen ConceptMovie 2021」(上のリンクから視聴できます)

    全国のJクラブは、地域との接点である年間21,000回を超えるホームタウン活動に象徴されるように、地域を、たくさんの人たちをハッピーにしたいと願いサッカーだけじゃない活動しています。私は元クラブスタッフなので、この「シャレン!」活動から生まれる笑顔の景色が大好きで、世界中に誇れる素晴らしい活動だと胸を張っています!

    実は、この年間21,000回超えの数字。コロナ禍での活動回数なんです!1クラブあたり年間平均380回超! 1日1回を超えていて驚きですね!

    選手だけではなくクラブスタッフ全員が、地域に対して情熱や愛情を持ち日頃から様々な活動に携わっていることが数字に現れていますね。

    2つのクラブの「シャレン!」

    次に、具体的な「シャレン!」の事例を2つご紹介します。

    ①ガイナーレ鳥取~復活!公園遊び

    上の画像は「ガイナーレ鳥取」の公式サイト(https://www.gainare.co.jp/)の「復活!公園遊び」 (https://www.gainare.co.jp/hometown/koenasobi/)より

    少子化により首都圏にある宮代町でも、近所に同世代の子どもが住んでいないという課題が生じています。「集団遊びをする機会が減っている」―。そういう相談を地域の保護者から受けたことがあります。集団で体を動かして楽しく遊ぶ機会が無ければ、家でゲームをする機会が増え、運動能力の低下や社会性の欠如など様々な影響が危惧されています。
    ガイナーレ鳥取が取り組む「復活!公園遊び」では、Jリーガーやスタッフが「ガキ大将のお兄ちゃん」となり遊びに関わってくれることで、地域の中に集団で遊ぶ機会が生まれるという素敵な取り組みです。
    これまでスポーツ選手と自治体で取り組む事業のほとんどが「スポーツ教室」に限定されており、ガイナーレ鳥取の取り組みは、まさに目から鱗が落ちる衝撃でした。
    当時、子育て支援センターの担当だったので、スポーツ選手を「スポーツ教室」目的で講師として呼ぶのではなく、もっと気軽な遊び相手(プレイリーダー)として地域の子育て世代のコミュニティー作りに協力してもらえないかと考えるようなりました。

    ②ツエーゲン金沢~フードドライブ

    画像はツエーゲン金沢公式サイト(https://www.zweigen-kanazawa.jp/)「11/1(日)北九州戦 金沢星稜大学と共同で『子どもの未来を応援する活動』を実施しました」より

    「スポーツ観戦で人が集まる場」を活用した活動として、特に注目しているツエーゲン金沢の「子どもの未来を応援する活動」です。
    こちらの活動がスタートしたきっかけを聞いたところ、ツエーゲン金沢のクラブスタッフの灰田さんが、金沢市の子育て支援課から子どもの貧困報告書という冊子で「全国7人に1人の子どもは相対的貧困状態にある」という情報を得たところから始まったそうです。
    この現状を知ったことで「何かできることはないか」と、クラブオフィシャルグッズのゲンゾイヤーカレーを100個、フードバンクへ寄贈を行いました。この活動は、安全に食べられるのに包装の破損や過剰在庫、印字ミスなどの理由で、流通に出すことができない食品を廃棄してしまうのではなく、必要としている施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動として、SDGsにも貢献しています。
    そこからさらに発展させて、スタジアムでの集荷活動や大学生による普及啓発など、子どもの貧困解決に向けて非常に熱心で参考になる活動を行っています。

    「子どもの貧困は目に見えにくい」―。
    選手が学ぶ様子や個人の発信に加えて、クラブの発信力を活かして課題を解決しようと、多くの人に知ってもらう機会にもしているそうです。地域の一員でもあるスポーツクラブが、地域課題を自らの課題と捉えて、次々に主体を増やしながら継続的な活動へと繋げていて本当に素晴らしい取り組みです。

    子どもの貧困は見えにくい…

    私が担当していた際も、食料に困っていると相談を受けることもありましたが、こうした助けを求める声はプライバシー配慮のため実情が知られることが少なく、結果的に困っている人へ支援が届きにくいと感じていました。

    次回は、「シャレン!」をヒントに宮代町で私が担当した事業について、企画・提案から実施までの詳細等をお伝えします。

    (後編に続く)

     ★本連載の記事一覧

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    ■ 伊藤 遼平(いとう りょうへい)さんのプロフィール

    宮代町(埼玉県)教育推進課 生涯学習・スポーツ振興担当
    1991年生まれ。2014年FC東京(東京フットボールクラブ株式会社)へ就職。同クラブバレーボールチームに所属。2017年宮代町へ入庁。2部署目となる子育て支援課で、子育て支援センター・児童館の担当となり、地域の親子イベントにプロスポーツチームや選手と連携した「スポーツ×社会課題解決」型事業を多数企画。「地方公務員が本当にすごい! と思う地方公務員アワード2021」受賞。
    プライベートでは、子育て中のパパ。バレーボールトップリーグのコーチ経験を活かしたイベント講師や「スポーツ×社会課題解決」をテーマにした講演など〈スポーツ系公務員〉として活動を行う。
    <連絡先>ito626@town.miyashiro.saitama.jp

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