全国の自治体トップ・職員・議員に贈る 自治体の"経営力"を上げる情報サイト

DX~公務部門のワークデザインをどう変えていくべきなのか?

f:id:y-onuma2:20210810172320p:plain

【自治体通信Online 寄稿記事】
自治体DXの先にある公務部門ワークスタイルの姿 #1
(公務部門ワークスタイル改革研究会 研究主幹・箕浦 龍一)

社会全体が大きく変貌しつつあるなか、行政職員の役割・ミッション・働き方にも大転換期が訪れようとしています。そこで、総務省の働き方改革を主導し、現在は公務部門ワークスタイル改革研究会 研究主幹(一般財団法人 行政管理研究センター)を務める箕浦 龍一さん(元総務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)に、これからの公務員のワークスタイル改革の姿を連載してもらいます。1歩先の世界には広がっている光景とは…。

自治体にも迫る劇的なパラダイム転換

現在、国を挙げて進めている「働き方改革」は、ICT革命のビジネスに対するインパクトや人々の「価値観」や「知的労働」の質の変容をも背景としつつ、旧来のビジネススタイルを大きく変容させるものとなりつつあります。

2020年に始まった新型コロナウイルス感染症問題は、このような動きに拍車をかけていますが、感染症への対応にとどまらず、より本質的な将来像を考えなくてはならないタイミングといえるのではないでしょうか。

ICTの急速な進展(いわゆる「ICT革命」)は、社会のビジネスのスタイル基盤を大きく変容させるインパクトを産み出しました。これに加えて、人口構成の急速な変化や若者を中心とする社会の価値観の目まぐるしい変化には、我が国の伝統的な組織文化に劇的なパラダイム転換をもたらしつつあるのです。

クラウドサービスの登場や5Gの登場に象徴される通信技術の高度化、VRやAR、AIなどの様々なテクノロジーの登場は、公務組織においても、情報処理の質・量に留まらず、業務の形や在り方、働く環境、行政サービスの提供の在り方にまで劇的な変化をもたらしうるものです。

同時に、物を所有することから、必要とする都度シェアして利用するという人々の行動や価値観の変化も見逃せません。シェアリングエコノミーやサブスクリプションと呼ばれるこのような経済活動の動きは、身の回りのものだけでなく、持家に対する意識や居住地の選択への価値観にも影響を与えつつあります。

また、高齢社会については、その負の側面(例えば社会保障費の増嵩)のみがクローズアップされがちですが、健康意識の浸透や医療の進展もあって、健康寿命も延伸しつつあり、「人生百年時代」の到来とも言われています。

このような中で、今後、人々の生き方や暮らし方、仕事への関わり方についての行動や意識も大きく変容していくものと思います。

一方、現代社会にける人々の意識・考え方や価値観の静かな、しかし、確実な変化にも目を向けなくてはなりません。テクノロジーの急速な進展とこれを背景としたビジネス・スピードの高速化は、これまで以上に、行政サービスに対して、迅速性、簡便性、効率性を求めるようになってきているのです。

「公務人材」への深刻な懸念

他方で、行政サービスを担う公務労働者を含む世の中のワーカーの価値観にも大きな変化が生じ始めています。働くことへの「報酬」として求めるものは、かつては金銭的な処遇(賃金)や組織内での地位向上(昇進)が中心でしたが、現代社会においては、個人生活の充実により価値を求める人が多くなりつつあります。加えて、組織への関わり方にも変化が表れているのです。

かつては、就職・採用を経て、特定の組織に帰属し、与えられる職務に精励し、その職務のスキルを伸ばし、キャリアアップを目指すという他律的・組織依存的なキャリアパスが当たり前であったかもしれません。

しかし、現代の若手世代の中には、ミレニアル世代と呼ばれる人々を始めとして、現代の高度なテクノロジーを使いこなすことで、自身が組織に依存しなくとも社会に対して価値提供が可能と自覚する者も増えてきており、仮に就職したとしても、単一の組織に従属することに飽き足らず、社外の様々なコミュニティやプロジェクトへの参加を通じて、多様な価値を発揮し、自身の個人的なスキルやネットワーク形成を目指す者が多くみられるようになっています。

このような新世代のワーカーたちにとっては、年功序列的な昇進、処遇体系など、過度に同質性が求められる人事慣行・組織文化を始め、かつては当たり前と思われ、顧みられることの無かった日本の伝統的な雇用慣行や組織風土・文化は、自身の価値発揮や成長にとって足枷、重荷を感じるものかもしれず、その影響からか、近年、官公庁を志す若者の減少や質の低下、また、採用した若手職員の早期離職が急速に進んでいるのではないか、と懸念する声も多く聞かれます。

このような中で、テクノロジーの革命的進化や人々の価値観の変化、社会ニーズの変化にも対応しつつ、公務部門がその役割を果たしていくためには、公務部門におけるワークスタイル、ビジネススタイルの抜本的な改革が不可避であり、かつ、これらの変化に対応しつつテクノロジー革命の恩恵を最大限に発揮しつつある諸外国との国際競争力を考えれば、一刻も早く、今後目指すべき方向性について正しく理解し、取組を進めていく必要があるのではないでしょうか。

公務部門に必要な「組織経営の視座」とは?

しかしながら、公務部門においては、長年、法令やマニュアルに基づく定型的な業務処理であったり、公平性という名の下での前例踏襲主義がまかりとおっていたり、などと指摘されるなど、変化に対応した組織経営という視点はなおざりにされてきたように思います。

先ほど述べたような行政刷新は、まさに組織経営的な視点から断行されるべきなのですが、そのような視点からの業務の刷新が行われないまま勤務時間の上限規制が先行するなど、行政の各現場では、混乱が生じているところも見られる状況です。

新型コロナウイルス感染症への対応をめぐって、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が急速に広く認識されるようになりましたが、以上述べたように、新型コロナウイルス感染症以前から大きな課題でしたし、現在公務部門が乗り越えなくてはならない真の壁は、旧来の社会通念に基づく諸制度の抜本的な見直しであったり、人々の行動様式の静かな、しかし大きな変化に対応するための地域のデザインの変革であったりと、非常に広範にわたる根の深いものと考えられます。

同時に、インターネットやSNSを通じて様々な情報が入手・発信可能な時代にあっては、いわば「情報の民主化」が実現されているとも考えられ、社会課題や地域課題に対する行政の役割や市民との関係性も、緩やかに、しかし劇的な変化が生じ始めています。

長年「行政改革」の美名の下に定数削減を強いられてきた各地の行政現場においては、役場の業務を担う頭数が足りないことに加え、ますます広範多様化する行政課題に対処するための専門人材の確保もままならない中で、リモート人材の活用も含めた人材確保策や、行政外部の企業・事業者や個人との協働(コラボレーション)による課題解決を目指す時代(共創社会)を志向していくべき時期を迎えているのではないでしょうか。

大転換期だからこそワクワクする改革を

筆者は、上記のような問題意識の下、昨年(2020年)11月に、一般財団法人行政管理研究センターの下に「公務部門ワークスタイル改革研究会」を立ち上げ、研究主幹として、これからの公務部門が対応すべき様々な変容課題についての検討に着手することとした(http://iam.or.jp/new_ways_working.html)。

まだまだ研究は緒についたばかりですが、30社近い志ある会員企業様や官公庁会員との議論を通じて、いかに幅広い分野で、これまで当たり前と思われてきた基本的なフレームが通用しなくなりつつあるかを日々痛感しています。

明治維新や昭和敗戦に匹敵するほどの大きなパラダイムシフトが生じつつある今日ですが、そのような時期に、これからの社会や地域のグランドデザインを描ける立場にある自治体や公務員の皆さんの役割は、極めて重要でもあり、前向きに考えれば、とてもワクワクする、やり甲斐のある仕事ではないでしょうか。。

f:id:y-onuma2:20210811135213p:plain

大転換期を乗り越えていくのはワクワクする、やり甲斐のある仕事

この度、自治体通信オンラインという場に連載の機会を頂戴しましたので、今後、全国の自治体の関係者の皆さんに、これからの新しい世界観の一端などをご紹介していきたいと思います。

(続く)

自治体通信への取材のご依頼はこちら

箕浦 龍一(みのうら りゅういち)さんのプロフィール
f:id:y-onuma2:20210810173558p:plain
公務部門ワークスタイル改革研究会 研究主幹(一般財団法人 行政管理研究センター)
元総務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官
総務省 行政管理局時代に取り組んだオフィス改革を中心とする働き方改革の取組は、人事院総裁賞を受賞(両陛下に拝謁)。中央省庁初の基礎自治体との短期交換留学も実現するなど若手人材育成にも取り組む。
官僚時代から、働き方、テレワーク、食と医療など、さまざまなプロジェクト・コミュニティに参画。
2021年7月に退官。一般社団法人 日本ワーケーション協会特別顧問、一般社団法人 官民共創未来コンソーシアム理事も務める。
<連絡先>ryuichi.minoura.wkst@gmail.com
    (@を半角にしてください)