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「基本」を押さえれば成果は出てくる

【自治体通信Online 寄稿連載】成功するシティプロモーション、失敗するシティプロモーション③(関東学院大学准教授・牧瀬 稔)

「基本」を押さえれば成果は出てくる

数多くの自治体のシティプロモーションに携わっている関東学院大学・牧瀬稔准教授(法学部地域創生学科)による本連載の3回目は「シティプロモーションを成功させる条件」について。その鍵を握っている“4つのP”とは…。
 
【目次】
■ 目標達成している事例の共通点
■ 売る商品がない!?
■ 「基本の4P」とは?
■ 相互に関連付ける
■ “本物”にするための視点
■ 根拠に基づいたシティプロモーション
■ 矮小化を避けよう
■ 自治体もイノベーションを起こせる

目標達成している事例の共通点

今日、多くの地方自治体がシティプロモーションに取り組んでいる。しかしながら、設定した政策目標を達成している事例は少ないようだ。シティプロモーションがうまく行かない理由は、いろいろと考えることができる。
(連載第1回「「負の連鎖」がシティプロモーションを失敗させる」 および連載第2回「成功しないシティプロモーションの共通項」 参照)

その中で、筆者は「基本を押さえていない」からと捉えている。

何事もそうであるが「基本」さえ押さえていれば、ある程度の成果は出てくる。今回はシティプロモーションを進める上での「基本」を言及する。

売る商品がない!?

唐突だが、読者に質問である。「ある企業は売る商品がないのに営業活動している」と聞いて、おかしいところはどこだろうか。

多くの読者は「売る商品がない」のに「営業活動をしている」と聞くと、その企業は「いったい何を売っているんだ?」と思うだろう。一読して、おかしいことが理解できる。

しかし、地方自治体が取り組むシティプロモーションは、「売る商品がない」のに「営業活動をしている」というケースが多い。

シティプロモーションを成功の軌道に乗せるためには、まずは「売る商品を構築することが大事」である。ところが、少なくない自治体は「売る商品がない」状態で「プロモーション」を進めている。

この実態の意味するところは、シティプロモーションが「目的化」しているのである。これでは、当然、失敗するだろう。

「基本の4P」とは?

民間企業の売る商品を自治体に当てはめると地域資源や政策(施策や事業も含む)などになる。さらに言うと「ブランド」も該当する。ブランドとは地域(自治体)の持つイメージである。売る商品の構築やブランドを形成しないと、プロモーションを進めても、うまく進展することはない。

さらに指摘すると、プロモーションは「マーケティングにおける4P」のひとつにすぎない。

4Pとは「Product(製品)」、「Price(価格)」、「Place(流通)」、「Promotion(販促)」のそれぞれの頭文字を意味している(図表1「マーケティングの4P」を参照)。

民間企業が市場の中で生き残っていくためには、4Pを考えて経営活動を実施することになる。そして4Pは相互に密接にかかわっている。

相互に関連付ける

本来は、プロモーション(Promotion)だけではなく、プロダクト(Product)、プライス(Price)、プレイス(Place)を関連付けて進めなくてはいけない。

4Pを意識して、しっかり進めていけば、ある程度の成果はでる。ところが、自治体が取り組むのは「プロモーション」(Promotion)だけ、という現状がある。

繰り返しになるが、シティプロモーションは4Pを徹底させないとうまくいかにいかない。しかし、自治体のシティプロモーションは「Promotion」(販促)しかやっていない。そのため失敗していく。

さらに付言すると、実は4Pの前には多くの段階がある(後述)。それをすべてすっとばして「Promotion」(販促)しかやっていないため失敗していく。

教科書に書かれている通りに、基本に忠実にシティプロモーションを進めていけば、ある程度、成果がでるというのが私の持論である。

ちなみに、具体的なプロモーションは、大きく5つの手段がある。それは、①広告、②人的販売、③パブリシティ(広報活動)、④セールス・プロモーション(販売促進)、⑤クチコミ、である。

“本物”にするための視点

シティプロモーションを成功の軌道に乗せるためには、4Pという基本を押さえることが重要である。

4Pの前には、①環境の分析・市場(顧客)の発見、②セグメンテーション(市場(顧客)の細分化)、③メイン・ターゲティング(顧客と地域等の決定)、④ポジショニング、を経ることになる(図表2「自治体マーケティングの視点」を参照)。

ところが、自治体のシティプロモーションは、①から④を検討することなく、しかも4Pの中のプロモーションしか取り組んでいない。それが失敗する大きな原因である。

4P(図表1)や自治体マーケティングの視点(図表2)を経ていないシティプロモーションは「ごっこ遊び」をしている状態である。一見すると、見た目はしっかりとしているが、その中身は真似ごと、偽装であり、内容が伴わないため、本物のシティプロモーションにはかなわない。

その結果、シティプロモーションの所期の政策目標が達成できずにいる。

根拠に基づいたシティプロモーション

特に重要なのは「①環境の分析・市場(顧客)の発見」である。ここでは多くのデータを収集し分析していくことになる。最近流行っている「EBPM」である。

このEBPMという4字を目あるいは耳にしたことがあるだろうか。ここ数年、自治体に浸透しつつある概念である。

EBPMとは「Evidence Based Policy Making」の略称である。しばしば「証拠に基づく政策立案」と訳される。EBPMを筆者なりに解釈すると「データという根拠をしっかり確保して、政策づくりをしよう」と理解している。この考えは政策づくりでは当たり前である(政策づくりに限定されず、すべてに言えることと思われる)。

ところが、筆者が自治体の現場に行くと、同じEBPMでも「Experience Based Policy Making」のケースが多くある。これは「(個人的な)経験に基づく政策立案」と訳すことができる(EvidenceではなくExperienceである)。

確かに、政策づくりにおいて経験値は重要である。しかし、経験だけではうまくいかない。経験(Experience)に加え、確固たる証拠(Evidence)を用意することにより、政策づくりの成功率が高まる。

シティプロモーションを成功させるためには、データという根拠をもって方向性を決定し、具体的事業を立案しなくてはいけない。

しかし、昨今のシティプロモーションは、どの自治体も同じ取り組みばかりである。ロゴマークをつくったり、ブランドメッセージを決定したり、ゆるキャラやプロモーション動画であったりと、根拠を持って進めているとは思えない。

ここにシティプロモーションが失敗する原因がある。

矮小化を避けよう

シティプロモーションのひとつの醍醐味は、既存の地域の魅力に付加価値をつけていく能動的な活動である。そして地域の魅力というものは、地域に応じて異なるというのが前提である。

ところが、最近のシティプロモーションは画一化しつつある。どの自治体も同じことをしている。それが前述したロゴマークをつくったり、ブランドメッセージを決定したり、プロモーション動画などの多発である。

地方自治体の悪しき傾向として、ロゴマークやブランドメッセージを用意すると、「それを使うこと」が目的化されることがある。

「ロゴマークを作ったのだから使わなくてはいけない」や「プロモーション動画を制作したのだから流さなくてはいけない」という感じである(ゆるキャラなども当てはまる)。その結果、シティプロモーションが矮小化されていくことになる。

自治体もイノベーションを起こせる

筆者は、シティプロモーションは「自治体の在り方を変える取組み」と理解している。

シティプロモーションは、本来はダイナミズムのある活動である。そして、自治体にイノベーションを起こすのがシティプロモーションと考えている。

ところが、ロゴマークやブランドメッセージをつくると、シティプロモーションは矮小化され、所期の政策目標が忘れられていく。この点は注意しなくてはいけないだろう。

余談になるが、プロモーション動画を製作して「何十万回見られた」と誇っている自治体があるが、そういう自治体に限って、設定した政策目標―例えば、定住人口や交流人口の増加―を達成できていない(この点は、過去、筆者が論文としてまとめている)。

その理由は、プロモーション動画を流すことが目的化しているからである。矮小化したシティプロモーションに未来はない。

筆者は、シティプロモーションとは自治体にイノベーションを起こし、自治体に新しい見地を提供する取り組みと考えている。再度、シティプロモーションも意義を考える時期に来ているだろう。

次回は、シティプロモーションに成功している自治体のひとつである川崎市の記事を掲載する。筆者のゼミナールに所属する学生たちがインタビューしてきた。学生が捉えるシティプロモーションの視点というものも知ってもらいたい。

(第4回「『実体を伝えることがイメージアップに』川崎市シティプロモーション推進室の戦略」に続く)

本連載のバックナンバー

第1回 「負の連鎖」がシティプロモーションを失敗させる
第2回 成功しないシティプロモーションの共通項

牧瀬 稔(まきせ みのる)さんのプロフィール

法政大学大学院人間社会研究科博士課程修了。民間シンクタンク、横須賀市都市政策研究所(横須賀市役所)、公益財団法人 日本都市センター研究室(総務省外郭団体)、一般財団法人 地域開発研究所(国土交通省外郭団体)を経て、2017年4月より関東学院大学法学部地域創生学科准教授。現在、社会情報大学院大学特任教授、東京大学高齢社会研究機構客員研究員、沖縄大学地域研究所特別研究員等を兼ねる。
北上市、中野市、日光市、戸田市、春日部市、東大和市、新宿区、東大阪市、西条市などの政策アドバイザー、厚木市自治基本条例推進委員会委員(会長)、相模原市緑区区民会議委員(会長)、厚生労働省「地域包括マッチング事業」委員会委員、スポーツ庁参事官付技術審査委員会技術審査専門員などを歴任。
「シティプロモーションとシビックプライド事業の実践」(東京法令出版)、「共感される政策をデザインする」(同)、「地域創生を成功させた20の方法」(秀和システム)など、自治体関連の著書多数。
牧瀬稔研究室  https://makise.biz/

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