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予算ゼロで素早く新型コロナ対策「まちメシ」の仕組みと始め方 #1

    予算ゼロで素早く新型コロナ対策「まちメシ」の仕組みと始め方 #1

    【自治体通信Online 寄稿記事】あなたの自治体でもできる館林市式「まちメシ」プロジェクト全解説~前編~(館林市職員・早川 純)

    新型コロナウイルス感染拡大の影響で“外食自粛”の動きが全国的に広がっています。そうしたなか、館林市(群馬)が新型コロナ対策の一環として3月初旬から取り組みを開始した市内飲食店支援プロジェクト「まちメシTATEBAYASHI」(以下、まちメシ)が多くの自治体や地方公務員から注目されています。群馬県内や他県の自治体にも広がっている「まちメシ」の仕組みとその始め方について、プロジェクト発案者で環境整備および取り組みを推進している館林市 商工課 商業振興係の早川 純さんに全解説してもらいます。
    【目次】
    ■ 「まちメシ」とはこんな取り組み
    ■ 情報の収集
    ■ 小さく始めて大きく放つ
    ■ 感染拡大の予防が大前提

    「まちメシ」とはこんな取り組み

    最近、他自治体の職員の方などから「まちメシプロジェクトはどういう仕組みなの?」といった問い合わせをいただくことが増えてきました。

    そこで、まちメシの仕組みと状況について、ここで共有したいと思います。何かの参考になれば幸いです。

    事業者向けの「まちメシ」参加募集チラシ(写真左)と参加申込みフォーム(写真右)
    事業者向けの「まちメシ」参加募集チラシ(写真左)と参加申込みフォーム(写真右)

    【まちメシとは何か】
    まちメシは、新型コロナウイルスの影響で宴会のキャンセルや客足が遠のいた地元の飲食店をデリバリーやテイクアウトで応援する取り組みで、お客様を待つ「お店」と美味しいものを待つ「お客」をマッチングする、まちぐるみのプロジェクトです。3月10日に情報収集を開始し、3月16日にはスタートをしました。

    なぜ、まちメシを思いついたのか、どういった庁内調整を経て市全体の取り組みとなっていたのか、といった取り組み開始までの経緯については、自治体通信Onlineのレポート記事「『まちメシ』で新型コロナを打ち破れ!~館林市が始めたお互いさまプロジェクト~」 を読んでいただければと思います。

    【誰が飲食店を応援するのか】
    まずは、経済的に影響が少ない方(つまり、公務員や議員さんなど。公務員や議員さんは地域を守り、育てることが役目でもあるので)から素早く飲食店の応援がスタートできるということ、そして、最終的には“まちぐるみ”で応援する風土と仕組みを広げていくという考えで流れを作っています。ただ食べるだけでなく、これを機会にもっと地域の人が自分の地域を育てる視点を持ってもらうチャンスだともとらえています。

    情報の発信と収集はおもにSNSで

    デリバリーやテイクアウトの飲食店情報を持っている人は圧倒的少数であるため、その情報を素早く収集して、拡散することを狙いました。飲食店からの情報だけでなく、日頃、飲食店に行かれている、まちの人からも情報が集まってくる仕組みです。

    まずは、Facebookでデリバリーやテイクアウトの情報提供を広く投げかけました。すると、ここで思った以上にシェアされ、「みんな助け合いの方法を探していたのだ」ということに気付かされ、取り組みを推進するパワーになりました。

    ご参考まで、乱文ですけれど、Facebookでの発信文も上げておきます。自分の正直な想いを詰め込みました。

    ~最初の呼びかけ~早川さんのFB投稿文全文(3/10)(原文ママ)
    【出前またはテイクアウトできる店鋪情報を集めてます】
    館林の方と公務員に広がって欲しいこと
    (※シェア、コピペ、口コミ大歓迎です)
    これまで聞きまわった飲食店は宴会が全てキャンセル。思った以上にすごい影響!リーマンショックとはちょっと違う、個人店鋪、飲食店に直接影響するコロナショックです。
    個人的に飲食店で食べまくってますが、どうも僕の財布からも諭吉が引っ越しはじめたので、全職員を巻き込みます笑
    ということで、経済的影響の少ない公務員や議員さんなどが効率的にまちの飲食店でお金を落とす仕組みとして「選択肢」を増やします。
    まずは、なぜか市役所内で禁止されている「出前注文」をスタートできないかと提案したところ通りました。(ちなみにUber Eatsなどは地域外、公務員のクラウドファンディングはグレーということでこの方法に着地しました)
    なので出前が可能な、またはやってもいいよ、というお店の方いましたら情報をください!人手不足ならテイクアウト可でも構いません。
    コメント欄でもOKですし、私宛のメッセージでも構いません。
    このまちでは最大瞬間風速で500人オーバーの職員の胃袋があります。みんなで「まちのメシを食うプロジェクト」を仕掛けていきたいと思ってます。
    (この活動しなくても、日頃からまちでお金を使うマインドが職員にあれば問題ないのですが、それは今は置いといて。)
    加えて、「今まで許可の降りなかった屋外の公共空間に机と椅子を並べ、そこに出前できないか」の提案を進めています。
    そんで、なんでこれらをやるのか整理しておきますけども、これから国や県、市町村からの支援策が決まってくるかと思いますが、それらの支援策を打つには、時間とコストがかかります。
    例えば、経済的措置として、「全ての店舗に30万円支給!」となったとしたら、それに向けて動く職員の人件費や仕組みづくり、消耗品、調整にかかる会議など、大変な時間とコストを必要とするでしょう。もしかしたら、30万円を配るために35万円くらいかかって、時間もたくさん浪費するんじゃないの?ということです。
    実際に増税の影響を緩和するために、一斉に仕掛けた「プレミアム付商品券」は1人あたり最大25,000円を渡すために、ものすごい時間とコストをかけてやってます。
    つまりは、経済的な影響が大きくなればなるほど、より大規模な支援策の打つ必要性が出てくることが考えられ、その分、時間とコストがかかるようになるわけです。
    時間は本来の向き合うべきことに使えたわけだし、コストは今の子どもたちにツケを払わせることになるでしょう。
    だからこそ、影響が大きくなる前に、素早い支援をする必要があるのです。支援策を待ってるうちにやれることはたくさんあるはずです。
    ちなみに、みんなでメシ食べて、新コロが終息する時期には僕らをはじめ、お太りになられた市職員が誕生します笑
    お太りになれば、自粛が解除されたスポーツジムやヨガ教室などにも通う動機が生まれます。より健康的に歌うごとに消費カロリーが表示されるカラオケも、ストレス発散効果も重なって人が戻るでしょう。
    健康と幸福の相関関係が1番高いという研究結果もありますからね。
    すみません、長くなりました。
    最後になりますが、まずは、仕組みができるまでに店鋪の情報を集めておきたいので、自分のお店で「出前」「テイクアウト」ができるよ!という方、または知り合いのお店でもいいです。たくさんの館林の人に伝えてください。
    顔の見える、小さなまちだからできることがあります!
    ピンチはチャンス。やるぞ、館林の公務員たち。
    #経済をとめるな
    #公務員がまちでお金をおとそう

    初めてFacebookで情報発信したときの投稿画面
    初めてFacebookで情報発信したときの投稿画面

    小さく始めて大きく放つ

    最初は個人的な活動として、応援と情報収集のために地元の飲食店をグルグルして食べまくりました。しかし、自分ひとりの財布と胃袋に限界を感じてきました。

    それなら、単純に胃袋と財布をデカくすればいい話で、先がけて行政が飲食店のデリバリーやテイクアウトを利用することによって、一気に飲食店を助けるための流れが作っていけるのではないかと考えました。

    しかし、ここには問題があって市役所の庁舎管理規則で庁舎内での金銭授受が禁止されていたため、デリバリーができませんでした。そこを市長が暫定的に許可したことで、まちメシは実現しました。
    (参照記事:「まちメシ」で新型コロナを打ち破れ!~館林市が始めたお互いさまプロジェクト~)

    まずは試験的に市役所でデリバリーを始めて、飲食店側が慣れてきたと思われるタイミングで、市内事業所や県の出先機関、金融機関などにメニュー表を行き渡らせ、広域での注文がスタートしました。

    このように、いきなり全域ではなく、最初は市役所からのスモールスタートにすることで、今までデリバリーやテイクアウトをやっていなかったお店については「お店側の注文体制を作る時間」と「必ず注文が来る」という確実性を持たせた設計をしています。

    結果、今までデリバリーやテイクアウトをやっていなかった飲食店も変化したほうがいいという動きが生まれました。

    感染拡大の予防が大前提

    面倒なおつりが出ないように100円単位での価格設定をお願いしています。デリバリー先でゴソゴソとおつりのやりとりをするより、密接時間を減らせます。まちメシは、感染拡大の予防が大前提であり、健康第一での取り組みです。

    また、まちメシのメニューはお店の規模にもよりますが原則、一品に絞っています。お店側として注文が5種類とかのオーダーが入ると、調理時間がかかると想定しています。一品にしておけば、同じものを20個とか30個つくれるため効率が良くなり、効率がよくなれば別のところへの配達ができるかもしれないし、コストやロスも下げられるのではと考えています。
     
     
    後編に続く~市役所内の調整や状況などを解説します)

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    早川 純(はやかわ じゅん)さんのプロフィール

    荒川区(東京)職員、公益財団法人荒川区自治総合研究所を経て、館林市(群馬)に入庁(商工課商業振興係)。「たてばやしリノベーションまちづくり」を推進している。

    <連絡先>
    shoko@city.tatebayashi.gunma.jp
    ※新型コロナ対策で業務が多忙をきわめており、お電話でのお問い合わせ等はご遠慮ください。

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