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「外部×異分野」との連携で地域にイノベーションを起こす

【自治体通信Online 寄稿連載】まちを元気にする自治体のマーケティング施策「糸島モデル」を創出した職員の仕事術④(糸島市職員・岡 祐輔)

「外部×異分野」との連携で地域にイノベーションを起こす

従来手法とは異なるアプローチで地域経済活性化に成功している糸島市(福岡)。その独自のマーケティングモデル推進事業の政策を策定、推進している同市職員で“MBA公務員”の岡 祐輔さん(企画部秘書広報課 主査)に取組みの舞台裏を公開してもらう本連載。第4回目は「市外の女子高校と連携した根拠と、その効果」についてです。

【目次】
■ 資源を広げる

■ 地方創生の鍵は「民間との連携」
■ 自治体職員はワクワクできる仕事
■ 政策チャンスは待(舞)っている

資源を広げる

糸島マーケティングモデル事業(以下、マーケティングモデル事業)では、「糸島市の事業者の販路を広げる」目的のために、糸島市内のなかだけで固まらず、販路拡大のターゲットである福岡市内の金融機関や広告代理店、百貨店などの企業との連携を考え、次に異分野の博多女子高等学校(福岡市)との連携を考えました。
(参照:ゴールは公費に依存しない「自走する公民連携」)

「どうして連携先は地元じゃないの?」「どうして博多の女子高校とマーケティングしようと思ったの?」とよく聞かれます。その理由のひとつは「資源を広げるため」です。目標に置いた福岡市内の販路開拓をするためには地元・糸島市ではなく、福岡市内に最初から販路や情報を多く持った相手と組む(連携する)方が効率的です。もし博多の女子高校と出会えなければ、マーケティングは福岡市内の企業と連携していました。

もうひとつは「新しさ(革新性)」です。「女子高生と漁師がマーケティングする」ことで新しいアイデアや仕組みが生まれ、化学反応が起きます。メディアなどから注目され、コンテストの受賞にもつながりました(※註:糸島市マーケティングモデル事業の取り組みは2016年内閣府地方創生政策アイデアコンテスト地方創生大臣賞、2017年農林水産省フードアクションニッポンアワードなどを受賞している)。話題になった「おばあちゃん」がやっている「葉っぱビジネス」も同じですよね。

【イラスト:糸島市企画部秘書広報課主幹・田中 伸治(たなか しんじ)】資源を広げるとともに「革新性」を打ち出すため福岡市の女子高校と連携した
【イラスト:糸島市企画部秘書広報課主幹・田中 伸治(たなか しんじ)】資源を広げるとともに「革新性」を打ち出すため福岡市の女子高校と連携した

地方創生の鍵は「民間との連携」

「連携する」とは「相手の力を使わせてもらえる」という意味です。異分野や市外の組織と組む方が、自分がいま持ち合わせていない資源を広げることになります。

「外部×異分野」を積極的に迎え入れることを知ってやる人と知らない人では大違いです。

知っていると、政策を考えるときに、これまでにない価値を創造したり、政策の広がりを持たせたりするために意図的に外部との交流や異分野の事業参画を図ることができるようになります(下図参照)

マーケティングモデル事業では「拡販力」と「話題性」を軸に連携先を考えた
マーケティングモデル事業では「拡販力」と「話題性」を軸に連携先を考えた

一方で、「自治体直営」は最も資源が広がらない方法です。これからの地方創生の鍵は、民間との連携で政策を作っていくことではないかと思っています。

これからぜひ、「外部×異分野」という考え方を“武器”として使ってみてください。担当者個人で見ても、このようなチャンスを活かす経験をたくさん積んだ人がいる自治体の方がイノベーションが起きるはずです。

糸島マーケティングモデル事業で初めて取り組んだ「糸島産ふともずく」(グラフ内写真)は事業開始前と比較して一気に売上が6倍に伸びた
糸島マーケティングモデル事業で初めて取り組んだ「糸島産ふともずく」(グラフ内写真)は事業開始前と比較して一気に売上が6倍に伸びた

自治体職員はワクワクできる仕事

ところで、企画を立てて実行していくためには、自分に課題意識があって、情報アンテナを張っておく必要があります。あとは普段から、自分の仕事に課題意識を持っておくだけです。
(参照:「地域経済の“牽引役”」の見つけ方)

企業の売上額の大きさは、お客様との接点の大きさを表しています。そう考えると、地方自治体に売上はありませんが、予算規模におきかえれば、大きな会社と同じです。地方に行けば、地域ではおそらく1、2を競う大きな組織です。

人口約10万人の糸島市でさえ、一般会計だけで約350億円の予算規模で、上下水道などのすべての会計を入れると600億円以上の規模です。全産業を含めた東証一部上場企業約2,000社のうち売上規模で言うと真ん中くらいに位置します。

予算規模が大きいということは、それだけ仕事の範囲や量が増える、つまり、多くの市民、企業などとの接点や関係が増えるはずです。

地方自治体職員の皆さんは、地域の中で見ると、ずっと多くの人と出会い、外にも人脈を持っています。ワクワクする仕事ができる機会に満ち溢れています

ここに気づけば、地域のためにチャンスを積極的に活かそうと考えることができます。

【イラスト:糸島市企画部秘書広報課主幹・田中 伸治(たなか しんじ)】地方自治体職員はワクワクする仕事ができる機会に満ち溢れている
【イラスト:糸島市企画部秘書広報課主幹・田中 伸治(たなか しんじ)】地方自治体職員はワクワクする仕事ができる機会に満ち溢れている

政策チャンスは待(舞)っている

「福岡市内で販路開拓ができるパートナーが必要だ」と課題を抱え、いつも考えていたことや、自治体職員だったからこそ、実際にマーケティングモデル事業の連携先を考えるときに、糸島市外の博多の高校がマーケティングの授業を持っているという情報が入ることも、実際に担当している講師に出会うことも可能だったと思います。

今回の博多の高校に限らず、東京の高校からも糸島市との連携ができないか声をかけていただいたり、関東の大学とも連携協定を結び活動を始めたり、新聞社や銀行から「一緒にプロジェクトができないか」という声もいただきます。なかには海外のまちからお声をかけてもらうことだってあります。
 
自治体職員には周りからいろいろな話が舞い込んできます。そのとき課題意識がないとチャンスに変えることができません。「自治体職員には政策チャンスが待(舞)っています」

地域課題の解決にチャンスを活かせるのは、担当のあなただけです。あたりまえのことですが、そのまちに自治体はひとつしかないのですから。

病院やレストランなどだったら地域内に複数あるので、かかりつけ医とは違う病院を紹介してもらったり、いろんな飲食店のなかから気分や好みでお店を選べます。その人の人生設計や価値観に基づいて、働く会社や職業も地域のなかで選べます。

でも、自分が暮らしている地域の自治体は選びようがありません。病院を紹介してもらったり、飲食店選びをしたり、自分にあった仕事探しをするような感覚で「自治体を取り代えよう」とは絶対になりません。

違う地域に引っ越しでもしない限り、住民のみなさんにとって自分たちの自治体は取り替えできない唯一無二の存在です。ですから、地域の課題、地域の声を拾い、あなたが政策立案しなれば地域は衰退してしまいます。
(参照:データは知っていた「華やかさの陰の危機」)

自分ができる精一杯でチャンスを活かし、自分だけの「運命の政策」を実現してほしいと願っています。

(続く)

 
本連載「まちを元気にする自治体のマーケティング施策『糸島モデル』を創出した職員の仕事術」のバックナンバー
第1回:データは知っていた「華やかさの陰の危機」
第2回:「地域経済の“牽引役”」の見つけ方
第3回:ゴールは公費に依存しない「自走する公民連携」

岡 祐輔(おか ゆうすけ)さんのプロフィール

糸島市(福岡)企画部秘書広報課主査。MBA(経営修士)。2003年に二丈町(現・糸島市)に入庁。民間の経営手法を公共経営に活かすため、仕事の傍ら、九州大学ビジネススクールに飛び込み、MBA取得。2016年に「地方創生☆政策アイデアコンテスト」で地方創生担当大臣賞を受賞。受賞した政策を実施した「糸島マーケティングモデル」は「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー2018」で地方創生賞(コト部門)を受賞。これらの功績により、地方公務員アワード2018を受賞。著書に 『スーパー公務員直伝! 糸島発! 公務員のマーケティング力』 (学陽書房)がある。

<連絡先>
電話:092-332-2079(直通)
メールアドレス:oka.y.856@city.itoshima.lg.jp

 
 

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