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地方創生のリアルな現状!地域活性化事業の成功例・失敗例を紹介【自治体事例の教科書】


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新型コロナウイルスの影響もあり、これまで以上に地方に目を向けている人は増えています。そんな中で、地方創生によって、地方の人口や経済がどのように変わったのか気になっている方は多いでしょう。

地方創生は、自治体が抱える問題を解消し、住みよい環境を作るための施策・取り組みです。この取り組みが成功するか否かで、地方の将来は変わります。

ここでは、地方創生のリアルな現状や地域活性化事業の成功例・失敗例について解説します。

地方創生のリアルな現状

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地方創生とは、以下のようなことを目的として行われる取り組みです。

  • 東京など大都市圏の人口過密化を防ぐ
  • 地方の雇用機会の創出
  • 地方の人口減少の歯止め・人口増加
  • 活力に溢れた地域経済の実現
  • 魅力的なまちづくり

自治体が抱える人口減少や少子高齢化、地域衰退の問題を解消するために、各自治体は様々な地域活性化事業を行っています。

しかし、一部の地域では人口増や地域活性化に成功しているものの、全体で見れば大きな成果は現れていません。

国内の人口増減率はマイナスとなっており、2019年10月1日時点の総人口は1億2616万7,000人で前年から27万6,000人減と、9年連続で減少しています。

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引用:総務省統計局| 人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)結果の要約

また、東

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引用:厚生労働省 平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)

地域別の人口増減率を見ても、改善されている地域はあまりありません。

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引用:総務省統計局| 人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)結果の要約

15歳未満、15歳〜64歳の人口割合は減っているのに対し、65歳以上の割合は右肩上がりであり、年々少子高齢化が進んでいます。

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引用:総務省統計局| 人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)結果の要約

このように、地方創生の施策・取り組みはあるものの、目立った成果につながっていないのがリアルな現状です。

地方創生はなぜ失敗が多いのか?

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地方創生は、人口の一極化防止、地方の雇用機会創出、地域活性化の3つの目的を持った取り組みです。しかし、日本全体の人口は減少し続けています。全体の人口が減っているなかで、自治体の人口は増加・維持させることはリアルな話とは言いがたいでしょう。

地域の雇用機会の創出と地域活性化は、地方創生関係交付金の金額によって大きく変わります。交付金は人口ビジョンや総合戦略に基づく事業のKPI設定やPDCAサイクルを組み込んだ取り組みを支援するものですが、人口減少の中では成果を出すことは難しいものがあります。

実態を把握していないコンサルが総合戦略策定に絡み、ビジネスのロジックでKPIを設定し、表面上の成功だけを追い求めて失敗するケースも少なくありません。

人口減少が続く日本において、地方創生の成功は簡単なものではないのです。

地域活性化事業のリアルを事例別に解説

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地方創生の取り組みには、成功例もあれば失敗例もあります。サテライトオフィス誘致に成功して雇用を増やした自治体もあれば、活性化事業が市民に認知されないまま終了した自治体もあります。

成功・失敗の両方の事例を知ることで、地域活性化事業のリアルな状況を把握できるでしょう。

ここでは、地域活性化事業の成功・失敗事例を以下のように分けて紹介しています。

成功例

  1. 徳島県神山町
  2. 岐阜県可児市
  3. 福井県鯖江市

 

失敗例

  1. 青森県青森市
  2. 山梨県の南アルプス市
  3. 福島県会津若松市

1つずつ、確認していきましょう。

成功例1:徳島県神山町

徳島県神山町は人口6,000人足らずの小さな町ですが、多数のICTベンチャー系企業のサテライトオフィス誘致に成功したことで、地方創生のロールモデルとして注目を集めています。

徳島県と神山町は地方における安定した雇用の創出と新しい人の流れをつくるために、高速ブロードバンド環境の実現とオフィス開設・運営費用の補助支援を行うことで、サテライトオフィス誘致に成功しました。

徳島県は、カバー率98.8%のFTTH網と公設民営 方式の光CATV(加入率88.3%)を全県域に整備して、全国屈指の高速ブロードバンド環境を早くから実現しています。また、古民家の改修費や通信費などに手厚い支援を行ったことで、神山町を含めた県内8市町へ40社が36拠点に進出しています。(2016年9月時点)

徳島市を除く企業進出市町内では、2016年4月〜9月の間で、156世帯234名が移住し、60名以上の地元雇用が生まれました。神山町においては、2011年に1970年以降はじめて社会増が社会減を超過しています。

成功例2:岐阜県可児市

少子高齢化による人口減少の問題を抱える岐阜県可児市は、国史跡美濃金山城跡を始め市内10ヶ所に残る城跡を活用した取り組みにより地域活性化に成功しています。

具体的には、NPO法人・民間企業と協働して参加型の地域活性化事業である「戦国城跡巡り事業-可児市の乱-」を実施し、城跡の活用やチャンバラ合戦、ワークショップを通じて地域の活動人口や観光交流人口増加を目指した取り組みです。

  • 組織を立ち上げ史跡ガイドの受付や環境整備
  • 年間20回以上「チャンバラ合戦-戦 IKUSA-」を実施
  • チャンバラをキーワードとしたPR動画や甲冑の作成

チャンバラ合戦は渋谷ヒカリエでも実施されました。可児市の人口は、事業スタート前の2015年9月に39,945世帯・人口100,917人でしたが、事業スタート後の2016年9月には40,730世帯・101,413人まで増加しています。

成功例3:福井県鯖江市

今後の少子高齢化と自然減の拡大に備え、福井県鯖江市は2015年10月に「鯖江市まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定し、世界にはばたく地域ブランド「めがねのまちさばえ」を総合戦略のコンセプトとして地方創生の取り組みを始めました。

具体的には、国内生産シェア9割を占めるメガネフレーム産地であることを活かし、メガネを前面に打ち出すブランド戦略の推進です。「めがねのまちさばえ」を国内外にPRすることで、関係人口や交流人口、定住人口の増加を目指しています。

プロモーションの効果もあり、2016年に実施された民間調査機関のWebアンケートにおいて、鯖江市の認知度は約7割と高水準でした。2014年からの2年間で7%以上向上しています。また、メガネ産地としての認知度も約4割あり、2008年から15%以上向上しています。

このように、福井県鯖江市では「めがねのまちさばえ」としてブランドを確立することで、地域活性を図っています。

失敗例1:青森県青森市

青森県青森市は、今後の人口減少を見据えてコンパクトシティ化を推進するために、2001年にJR青森駅前の商業ビル「アウガ」を開業しました。青森市は1999年から中心市街の活性化と郊外開発の抑制を行い、市街地をコンパクトに保つコンパクトシティ政策を実行しており、その中核として期待された施設がアウガです。

アウガは、地下1階地上9階建てで、低層階部分にはレストランやアパレルなどの商業テナント、高層階部分には図書館などの公共施設が入っており約185億円を投じて作られました。

しかし、開業初年度の売上は目標額を大きく下回ります。売上目標は52億円でしたが、半分以下の23億円にとどまりました。

市は三セク会社の金利負担軽減や増資、経営戦略委員会を設立して再生計画見直しを進めましたが、状況は改善されず、2015年度に約24億円の債務超過に陥ります。そして、市はアウガの立て直しを断念し、2018年1月に市の窓口機能が移転して市庁舎として再出発しています。

失敗例2:山梨県南アルプス市

山梨県の南アルプス市では、地域活性化・農家の増収を目的として観光農園を開業しましたが、1年も経たないうちに営業断念となりました。

市の三セク会社である南アルプスプロデュースが運営し、2015年6月に開園した南アルプス完熟農園では農産物の加工販売や農園カフェなどを展開します。しかし、客足は伸びず、開業当初から赤字が続き、わずか3ヶ月で経営破綻の危機に直面します。市は運営会社設立等に8億円を注ぎ込みましたが、開業3ヶ月で運転資金が枯渇したことになります。

その後、融資や社長交代などを行いますが、増収に転じることはありませんでした。そして、2016年1月に営業を断念し、従業員は全員解雇となっています。開業からわずか3ヶ月で資金ショートするなど、元々の計画が甘くずさんだったことが、失敗の原因と言われています。

失敗例3:福島県会津若松市

福島県会津若松市は、地域経済の活性化を目指す取り組みとして「地域限定の電子マネー」の施策を実行しましたが、失敗に終わります。

電子マネーを使い地域の加盟店で買い物をすれば、ポイントが貯まる仕組みです。健康診断の受診やボランティアへの参加でもポイントが貯まります。お得な電子マネーではありますが、まったく普及しませんでした。

なぜなら、会津若松市民の多くが、電子マネーの取り組みやカードの存在を知らなかったからです。また、ポイントが使える店舗自体が少なかったことも原因です。市は、当初電子マネーが使える店を100店舗確保する考えでしたが、実際に導入したのはわずか11店舗でした。

このように、市民に認知されず、利用できる店舗も少なかったことから、電子マネー事業はまったく機能せずに終了します。

地域活性化事業の3つのポイント

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地方創生・地域活性化事業に取り組む際は、地域資源を活かし、自治体の事情に合う長期的な視点での取り組みを行うことが大切です。

そうすることで、自治体の特色を活かした魅力的な事業が生まれる可能性は高くなります。地域活性化事業で押さえておきたい3つのポイントは以下のとおりです。

  1. 成功事例をむやみに取り入れない
  2. 地域資源を活かす
  3. 長期的な事業モデル作成する

それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。

1.成功事例をむやみに取り入れない

他の地域の成功事例をむやみに取り入れても、次の3つの理由により、地域活性化事業は成功しません。

  • 先行者優位になりやすく埋もれてしまう
  • 地域の特色を活かせない可能性が高い
  • 地域ごとで風土や文化など環境が異なる

まったく同じ取り組みをしても、先に始めている自治体のように注目を集めることは難しく、地域の特性を活かせずに大勢の中に埋もれてしまうだけです。ノウハウもないため、新たな課題に対する適切な対応も難しくなります。

地域によって特性が異なるため、他地域の成功事例を横展開してもうまくいくとは限りません。成功事例をむやみに取り入れるのではなく、他地域の失敗事例を取り入れ、同じような失敗をしないように対策することの方が大切です。そうすることで、失敗のリスクを軽減できるでしょう。

自治体の現状に合った地域活性化事業を考えることが良い結果につながります。

2.地域資源を活かす

地域活性化事業は新事業ばかりに目を向けるのではなく、地域の特色を伸ばしていくことも大切です。地域資源は他地域にはない特色であり、ノウハウや歴史があるからです。地域住民の理解も得られやすいでしょう。

また、新事業の多くはノウハウや資源がない状態から始めるため膨大なコストと時間がかかりますが、地域資源を活かせばコストや時間を抑制できます。

可児市の城跡を活用した地方創生、北九州市のリノベーションによる施設再生、北海道乙部町の漁業・農業振興施策など、地域資源を活かしている地域はたくさんあります。

新規事業だけでなく、地域資源を活かした地域活性化事業も検討すべきです。

3.長期的な事業モデル作成する

地域活性化事業は、人口減少や地域衰退などの問題を解消するために、魅力的なまちづくりを行う取り組みです。短期的な視点で事業モデルを作成するのではなく、長期的な視点で取り組むことが大切です。

短期的な視点だと、半ば強引に人を集めるような施策になり無理が生じます。たとえ結果が出ても、一過性のものであり、すぐに元の状態に戻ってしまうでしょう。

まちづくりや地域活性化事業は、住民の生活・行政サービスの質などにも関わるため大切なもので、すぐに結果が出るものではありません。

長期的な視点で事業モデルを作成し、地域が持続的な発展や成長を遂げることが重要です。

まとめ

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自治体では人口減少や少子高齢化による地域衰退を解消するため、さまざまな地方創生の取り組みを行っています。しかし、国内の総人口が減少を続けるなかで、地方の人口増加や維持は難しく、雇用創出や地域活性化についても簡単なものではありません。

ただし、そんな中でも、地域資源を活かして自治体の事情に合う長期的な視点で事業に取り組み成功している地域もあります。

コロナの影響もあり地方が注目されている今だからこそ、地方創生の現状や自治体の成功事例・失敗事例に目を向けましょう。