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「愚直さ」と「ある仕掛け」で地域が一丸に

【自治体通信Online 寄稿連載】小さな自治体の大胆インバウンド戦略④(みなかみ町職員・阿部 真行)

「愚直さ」と「ある仕掛け」で地域が一丸に

「役所がなにかやっているけど、自分たちには関係ない」「外国人の受け入れなんて、やったことがないからムリムリ…」。取り組み開始5年で台湾インバウンドが10倍超に急拡大したみなかみ町(群馬県)も、当初は地元の受け入れ体制整備や住民理解を得るのにひと苦労があったようです。このプロジェクトを担当した同町職員で本連載の筆者である阿部さんは、どのようにしてそんな “壁”を克服していったのか? 連載第4回は肝心かなめの受け入れ側、地元の環境整備についてです。
 
【目次】
■ 受け入れ側の“半信半疑”という壁
■ まずは地道に誘客
■ 文化・習慣の違いを事前に理解してもらう
■ 勇気をもらった「何とかするから」の声
■ “いち度の経験”で熱量は急上昇する

受け入れ側の“半信半疑”という壁

前回までは台湾からの送客でしたが、今回は日本側の受け入れ体制について紹介いたします。
(連載第2回「『知名度ゼロ』だから新たな観光資源になる」および連載第3回「『儲けてもらう仕組み』をつくる」 参照)

まずは「役所や観光協会の担当者だけがインバウンド推進に躍起になっているが、事業者さんとの温度差があってなかなか進まない。みなかみ町はこの点どうやっているのか?」という質問を何度か受けたことがあります。

実際に現地視察をするためにみなかみ町を訪れてくれた自治体や研究所の方達もいます。

今はかなり順調ですが、担当した当初は町内事業者さんに外国人観光客の受け入れをお願いに行っても「インバウンドって何?」「こんなところに外国人が来るわけねえっぺ(町の方言)」といった反応が多く、役場内部からも「また阿部がバカなことやろうとしている」と冷やかされた事もあります(^^;)
(第1回「たった5年で台湾インバウンドを10倍超に増やした“前例のない方法“」参照 」

まずは地道に誘客

当時は町として積極的に、と言うよりは群馬県からの海外業者モニターツアーの受け入れが主でした。

一般ツアー客ではなく人数も少なく、その割に洋式トイレ、ベッド、イスとテーブルでの食事等々の条件があった為に受け入れ施設側としてはやはり面倒だったのと、あと単純に外国人客の受け入れをしたことがない、という理由で断る事業者さんも少なくありませんでした。

「受け入れたことがない」のが理由であれば、まず受け入れてもらえばよいのですが、実際お客が来なければ話になりません。

町から直接海外へ情報発信する発想も予算もなかったので、モニターツアーを通じて知り合った海外事業者さんとメールや年賀状のやり取りをしたり、群馬県庁担当者に可能性のある旅行社を紹介してもらってポツポツと誘客を始めました。

文化・習慣の違いを事前に理解してもらう

海外からのお客さんは文化・習慣が違うので確かに面倒と感じるかも知れません。

例えば台湾のお客さんだと、素食(ベジタリアン)や牛肉不可の人が多い。バイキング料理の宿なら問題ありませんが、お膳料理を出す温泉旅館にはやはり負担をかけてしまう。

はじめは私も旅行社も慣れていなかったために事前の確認不足で宿や昼食施設に迷惑を掛けてしまうこともありました。

また、一般的な懐石料理だとご飯ものは最後に出て来ますが、台湾人は最初にご飯を欲しがります。「板前さんも私たちも美味しく料理を楽しんでもらう為に考えている献立なので、順番を変更するのは出来ることであればしたくない」というお宿さんもいましたが、その度に間に入って何とか対応してもらうという繰り返しでした。

日本人と台湾人ではお酒を飲む順番も違います。日本人は主食を食べる前にお酒を飲みますが、台湾人はお腹いっぱいになってから飲み始めます。懐石料理でも先にご飯を食べれば安心して飲みだすので、お酒の売り上げにも繋がります。

このような習慣の違いを紹介したり、受け入れをお願いするために、しょっちゅう町内施設を回って施設の社長や女将さんたちと話をしていました

勇気をもらった「何とかするから」の声

群馬県の協力もあり、少しずつ海外団体客の受け入れ機会も増え、協力してくれる宿や観光施設も増えてきました。初期の頃からインバウンドを支持してくれた施設のひとつに猿ヶ京ホテルさんがあります。

今は台湾をはじめ、タイやネパールのスタッフもおり、万全な受け入れ体制を整えておられますが、インバウンドが実際に動き出した当初は、言葉の壁があっても「大丈夫。何とかするから」と言って海外からのお客さん受け入れを支持してくれました。

このような女将さんなので実際お客さんからの評判もよく、今では多くの国からお客さんが訪れています。地元の協力者、理解者をつくることが大きなポイントのひとつだと思います。私も女将さんにはいろいろ助けていただきました。

いまではホテルで受け入れてくれている研修生を連れて町内観光や餃子づくり、地元の祭りなどに参加され、女将さん自身、台湾にもよく営業や交流に来られています。

台湾からの実習生に囲まれる「猿ヶ京ホテル」女将の持谷美奈子さん(上写真の後列左から2人目)と研修生(下写真)
台湾からの実習生に囲まれる「猿ヶ京ホテル」女将の持谷美奈子さん(上写真の後列左から2人目)と研修生(下写真)

この猿ヶ京ホテルをはじめ、「ホテル聚楽(現・みなかみホテルジュラク)」「ホテルサンバード」「宝川温泉」等々の宿のみなさんも外国人受け入れに積極的に動いていただきました。

ただ受け入れ施設が固定になってしまうと町として推進することが難しくなる心配もありました。

“いち度の経験”で熱量は急上昇する

そんな時、本当に偶然ですが200人以上の団体をもらえる機会がありました。

大型宿設で受け入れるという選択もありましたが、多くの宿に何とか台湾からの観光客を受け入れる「いち度目」を受け入れて欲しいという気持ちもあった為に猿ヶ京ホテルを主として、泊まり切れないお客さんを周辺のいくつかの旅館に分宿してもらう方法を取りました。

事前調整で役場や観光協会、そして旅館の皆さんに苦労を掛けましたが、収穫もありました。

それは、宿と宿を台湾観光客が移動している騒ぎを目の当たりにした一般町民の方に「本当に海外からのお客さんが来ている」ことを実感してもらった事です。

また、泊まる前は役場側からお願いして何とか受け入れてもらったある旅館の女将さんから「次回もこのような機会があったら受け入れてみたい」との手紙もいただきました。

いち度受け入れてもらえれば、多くの心配事が解消できることを実践で証明できました。

みなかみ町のスキー場で台湾の現地学校の教育旅行(日本の修学旅行に相当) が行われた時の様子。役場職員がコーチ、町にいる研修生が通訳を務めた。役場内部での海外交流理解者をふやすことにも繋がる
みなかみ町のスキー場で台湾の現地学校の教育旅行(日本の修学旅行に相当) が行われた時の様子。役場職員がコーチ、町にいる研修生が通訳を務めた。役場内部での海外交流理解者をふやすことにも繋がる

(第5回「『インバウンド効果』は観光関連だけではない」に続く)

本連載「小さな自治体の大胆インバウンド戦略」バックナンバー
第1回 たった5年で台湾インバウンドを10倍超に増やした “前例のない方法”
第2回 「知名度ゼロ」だから新たな観光資源になる
第3回 「儲けてもらう仕組み」をつくる

阿部 真行(あべ まさゆき)さんのプロフィール

大東文化大学外国語学部卒、高校講師などを経て、2005年からみなかみ町(群馬県)の職員に。2013年6月から台南市へ渡る。現地での役職は「みなかみ町台湾事務局長」。台南市政府の「台南市政府対日事務相談顧問」も務める。日台双方の国家資格などを取得し、インバウンドを主とした交流を推進中。現地大学でも講師を務める。著書に「台湾・台南そして安平!」(上毛新聞社)

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