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「エアコン」×「輻射パネル」で、学校体育館は効率よく冷やせる

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埼玉県志木市の取り組み

体育館空調の整備①

「エアコン」×「輻射パネル」で、学校体育館は効率よく冷やせる

志木市教育委員会 教育政策部 教育総務課長 成田 樹哉
志木市 総務部参事兼 防災危機管理課長 篠崎 勉
[提供]株式会社エコファクトリー

※下記は自治体通信 Vol.32(2021年8月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。


近年、猛暑日の発生頻度が増加し、高まる一方の熱中症リスク。学校現場では、体育館に空調を整備することで、熱中症対策を強化する動きが広がっている。志木市(埼玉県)もそういった自治体のひとつで、「エアコン」と「輻射パネル」を組み合わせた空調システムを導入した。同市担当者の2人に、整備内容やその効果などを聞いた。

[志木市] ■人口:7万6,707人(令和3年6月30日現在) ■世帯数:3万5,785世帯(令和3年6月30日現在) ■予算規模:490億2,973万5,000円(令和3年度当初) ■面積:9.05km2 ■概要:埼玉県南西部に位置する。都心まで電車で約20分と近いベッドタウン。市内には、新河岸川、柳瀬川、荒川といった3本の河川が流れている。歴史的には、新河岸川の舟運で栄えた商業都市として発展した。
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志木市教育委員会
教育政策部 教育総務課長
成田 樹哉 なりた たつや
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志木市
総務部参事兼 防災危機管理課長
篠崎 勉 しのざき つとむ

「体育館が暑すぎる」防災訓練で強まる市民の声

―公立小中学校の体育館に空調を整備した経緯を教えてください。

成田 近年、学校現場から夏場の異常な暑さへの悲鳴が届いています。特に体育館は、屋外と違い風通しが悪く、熱がこもりやすい。そういう環境で運動をすれば、熱中症の危険性は一段と高まります。

篠崎 また、市が行う「市民総合防災訓練」において、地域の避難所である学校体育館に集まった市民から、「体育館が暑すぎる」といった声が年々高まっているのです。災害時に、多くの避難者が集まる学校体育館で、暑さによる二次被害を起こさないためにも、空調整備の必要性を強く感じていました。そういったなか、「エアコン」に「輻射パネル」を組み合わせたハイブリッド型の空調システムを整備し、効果をあげている自治体があると聞き、当市でも検討することにしたのです。

―「輻射パネル」とはどのようなものですか。

成田 一般的には、冷水や温水などが流れる配管を張り巡らせて、空調効果を生み出すパネルのことです。その空調効果は、パネルの表面温度と室内にあるモノの温度の差によって生まれる「輻射*1」を利用して生み出されるため、「輻射空調」と呼ばれます。もっともイメージしやすい輻射空調はパネルヒーターですね。パネルヒーターとは逆に、周囲よりもパネルが冷たければ、周りの熱を吸収することで冷房効果が生まれるのです。

 輻射空調の特徴は、輻射熱を利用することで空調時に風が発生しないため、身体に風が当たりすぎるといった不快感がないことです。また、原理上、空調効果を空間全体にムラなく行き渡らせることができ、空調効果を持続させられる特徴もあります。

エアコンの運転を弱めても、空調効果は持続

―エアコンと組み合わせるメリットはなんでしょう。

成田 輻射空調の効果を、短時間で生み出せることです。輻射パネルによる空調のみだと、空間に輻射熱が行き渡るまで、どうしてもある程度の時間を要します。今回のハイブリッド型空調システムは、エアコンで使う冷媒ガスがそのまま、配管でつながった輻射パネルにも流れる仕組みです。そのため、エアコンを稼働すれば輻射空調の効果も生まれ、空調効果の立ち上がりが早くなります。そして、一定程度の空調効果が表れ始めれば、エアコンの運転を弱めても輻射パネルにより効果は持続します。

篠崎 かりにエアコン空調だけだと、たとえば夏場は強風で冷たい風を送り続けなければ冷房効果を維持できません。体育館という大空間ゆえに、多額のランニングコストがかかります。その点、輻射空調にエアコンの冷媒ガスを活用する今回のハイブリッド型空調システムでは、輻射パネル自体は無動力で起動します。そのため、ランニングコストを大幅に低減できるのです。体育館を効率的に空調できるシステムだと考え、市内11の公立小中学校への導入を決め、昨年夏から運用を始めています。

―稼働後の状況はいかがですか。

成田 学校現場からは、「子どもたちの熱中症リスクを抑えられる」「直接冷たい風に当たらなくてすむので、身体が冷えすぎて体調を崩すこともない」といった声があがっています。また、このシステムは暖房としても使えるため、冬場の集会や卒業式など年間を通じて活用できます。そのほか、エアコンから吹き出される風が弱いことから、バドミントンや卓球といった球技を心配なく行えるメリットもあるようです。

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熊本県菊陽町の取り組み

体育館空調の整備②

大勢の住民が避難する体育館には、短時間で効果を得られる空調が必要

菊陽町 町長 後藤 三雄
[提供]株式会社エコファクトリー

ここまでは、学校体育館にエアコンと輻射パネルを組み合わせた、ハイブリッド型の空調システムを導入した志木市(埼玉県)の事例を紹介した。ここでは、同じシステムで学校体育館の空調を整備した、菊陽町(熊本県)の町長である後藤氏を取材。「体育館に空調は必須の機能」と話す同氏に、整備の内容や整備するうえで重視した点などを聞いた。

[菊陽町] ■人口:4万2,998人(令和3年5月末現在) ■世帯数:1万8,357世帯(令和3年5月末現在) ■予算規模:266億6,865万4,000円(令和3年度当初) ■面積:37.46km2 ■概要:熊本市の北東部に位置する。熊本市のベッドタウンとして発展し、人口はいまも増加基調。平成27年の国勢調査では、人口増加率が全国16位となった。町の特産物である人参は国の産地指定を受け、「菊陽にんじん」のブランドで全国に出荷されている。菊陽町のマスコットキャラクターは、人参をモチーフにした「キャロッピー」。
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菊陽町
町長
後藤 三雄 ごとう みつお

熊本地震の体験から、「空調は必須」と痛感

―学校体育館に空調を整備したそうですね。

 はい。熱中症の危険性は年々増しています。そのため、普通教室や特別教室だけでなく、身体を動かす学校体育館にも空調を整備しなければ、児童・生徒の安全を守ることはできないと強く感じました。

 さらに、平成28年4月に起きた熊本地震の際には、避難所となった学校体育館に、空調の設置は必須だと痛感することになりました。

―なにがあったのですか。

 自然災害が少ない当町で、あの時ほど多くの住民が避難するケースは初めてと言ってよく、4月にもかかわらず、体育館内には大変な熱気がこもってしまったのです。地震発生後、避難所となっている学校体育館を訪問し、住民の無事を確認しながらも、「いまが真夏や真冬だったらどうなっていたか」という不安が頭をよぎりました。今後、大規模災害がいつ起きてもおかしくない状況を考えると、空調の整備は急務だと。まずは、町役場にもっとも近く、災害時には避難所となる菊陽中学校体育館への整備に向けて検討を進めました。

―検討にあたって、どのような点を重視しましたか。

 災害に強いエネルギーインフラを活用するとともに、避難者が大勢集まるケースを想定し、できるだけ短時間に体育館全体へ空調効果を行き渡らせたいと考えました。
そこで、空調システムとしては、発電機能を備えた自立型ガスヒートポンプ(GHP)の導入を決めました。かりに停電が発生しても、発電した電力でエアコンを稼働し続けられるほか、一部の照明やコンセントへの電力供給も可能となります。

 また、エアコンについては、風が避難者に当たりすぎたり、ほこりが舞ってしまったりすることで生じる、健康被害の心配がありました。そんななか、風を出さずに空調効果を生み出す「輻射パネル」と、エアコンを組み合わせたハイブリッド型の空調システムがあることを知りました。どのような導入効果が得られるか、今回空調設計を委託した設計事務所とともに、検討しました。

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エアコン台数を、3割強減らせる

―検討の結果はいかがでしたか。

 輻射パネルを組み合わせることで、エアコンの風とともに短時間で室内温度を適温にできることが明らかになりました。そのうえ、エアコンのみで整備した場合にくらべて、室内機の台数を3割強減らせることがわかったのです。風が発生することで心配される健康被害のリスクを減らしながら、十分な空調効果が得られると判断しました。

 また、輻射熱は、避難者の身体だけでなく、体育館の壁や床といった物体にも直接届くため、体育館全体にムラなく効果をおよぼします。これらの理由から、災害時に多くの避難者が集まる学校体育館の空調に最適だと考え、令和3年春から運用を開始しています。

―今後の学校体育館の空調整備方針を聞かせてください。

 残りの学校体育館への整備も検討していきます。今回のハイブリッド型の空調システムは、エアコンを弱運転にしても輻射パネルによる空調効果が続きます。そのため、ランニングコストを抑えられることから、整備にあたって懸案であった費用面の課題もクリアできるものと期待しています。


支援企業の視点

ハイブリッド型なら短時間で、身体にやさしい空調効果を得られる

株式会社エコファクトリー 取締役 村上 尊由
[提供]株式会社エコファクトリー

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株式会社エコファクトリー
取締役
村上 尊由 むらかみ たかよし

 当社が提供する輻射パネル『エコウィン』とエアコンを組み合わせた、ハイブリッド型の空調システムは、民間を含めると、すでに100を超える体育館に導入されています。そもそも、風が直接当たらずに空調効果が得られる輻射パネルは、「身体にやさしい」と高く評価されています。その輻射パネルにエアコンを組み合わせることで、短時間で身体にやさしい空調効果を行き渡らせることができるのです。この2つを組み合わせた空調システムは現在、当社が特許を保有する技術となっています。

 今後も「脱炭素化」に向けて、省エネ性と快適性を兼ね備えた『エコウィン』を、国内外へ積極的に展開していきたいと考えています。

村上 尊由 (むらかみ たかよし) プロフィール
平成3年、熊本県生まれ。佐賀大学大学院都市工学専攻博士前期課程修了。一級建築士事務所を経て、株式会社エコファクトリーに入社。一級建築士。
株式会社エコファクトリー
設立 平成8年4月
資本金 4,350万円
売上高 8億6,135万円(令和2年12月期)
従業員数 27人(令和3年5月現在)
事業内容 輻射式(放射式)暖冷房装置の製造・販売および保守点検、省エネルギー機器・自然エネルギー利用機器の研究・開発・製造・販売および保守
URL https://ecofactory.jp/
お問い合わせ電話番号 0120-539-666(平日9:00〜18:00)
Webからの問い合わせはこちら https://ecofactory.jp/contact_main/
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*1:※ 輻射:温度の高いほうから低いほうへ、モノからモノ、人からモノなど、物体から物体に直接熱が伝わる現象のこと