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高知県四万十町 の取り組み

独自の「移住定住施策」で転入超過を実現

「人が残る、生活ができる」環境を整え“わがまち”に人を惹きつける

四万十町長 中尾 博憲

“日本最後の清流”四万十川がその中心を流れ、豊かな自然に囲まれた四万十町。近年は移住定住の施策に意欲的で、平成28年には合併後初の転入超過を果たし、平成29年度の移住者数は過去最多の190人にのぼった。実際に、どのような取り組みを行っているのか。現在2期目を務めている町長の中尾氏に、「移住定住施策」の詳細や、同町ならではの取り組みなどを聞いた。

※下記は自治体通信 Vol.17(2019年4月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

地域おこし協力隊には明確なミッションを

―平成28年に合併後初の転入超過を実現し、平成29年度の移住者数は190人にのぼりました。移住定住における、四万十町ならではの取り組みを教えてください。

 移住定住を促進するための各種相談や情報提供、補助制度や受け入れ体制の整備はもちろん、特にチカラをいれているのは地域おこし協力隊制度の活用ですね。平成26年に、安倍総理が「現在1000人の隊員を3年で3倍の3000人にする」という意向を示されていたことから、四万十町としても積極的に取り組んでいこう、と考えたのです。

 こだわったのは、たんに「観光振興」といった漠然としたものではなく、たとえば「鍛冶屋の伝統技術を引き継ぐ」など、募集段階で職業を絞ったうえでミッションを明確にしたこと。そのほうが取り組むイメージもわきやすいですし、意欲も高まるでしょうから。

 結果、現時点でのべ40人の地域おこし協力隊を受け入れています。これは、隊員の方たちが日々の暮らしを積極的にSNSで発信し、それが新たな隊員を呼び込むという好循環が、数字にもあらわれているといえます。

 そして、任期を終えられた方の定住率は約76%。この数字は、全国平均でも高いほうですね。

―なぜそのような定住率の高さを実現しているのですか。

 仕事を絞っているので、任期終了後も仕事が続けやすいという点がひとつ。あとは、地域の人たちが非常に「温かくてウエルカム」ということでしょうね。これは行政の取り組みというよりは、町民が昔からもつ人間性であり、「できればここに住み続けたい」と思える環境が醸成され、多くの人を惹きつけているのだと思います。

 その成果のひとつというわけではないですが、今年1月に行われた町議会議員選挙において、移住者で子育て世代の若い女性議員が当選しました。今後の活躍が楽しみですね。

東京オフィスによるシティプロモーション

―ほかに取り組んでいることがあれば教えてください。

 シティプロモーションの一環として、平成30年6月から「四万十町東京オフィス」を開設しました。具体的にはフリーペーパーの発刊やWebコンテンツを運営している「ぱど」に事業委託するカタチで、同社内にオフィスを設置。われわれとしては、高い情報発信力をもつぱどの協力をえられるとともに、東京オフィスの運営コストを下げることができる。一方ぱどは、四万十町ならではの地域情報コンテンツを読者に提供できる。そういったWin-Winの関係をめざしています。町村規模で、東京オフィスを開設するのは、全国的にも珍しいと思いますね。

 東京オフィスのミッションは、四万十町への移住定住や地産外商強化に向けたPRをはじめ、同町出身者らのコミュニティづくりの拠点としての役割を担うことです。

―具体的にどのようなことを行っているのでしょう。

 たとえばInstagramで一定以上のフォロワーをもつ女性で構成された『四万十町応援女子部』を創設しました。こちらは、「オフ会」として東京で地元の飲食店の協力をえながら、地元の食材を使った料理を楽しんでもらったり。また、実際に四万十町に来てもらい、モニターツアーとしてラフティングなどの体験イベントに参加してもらったり。そうした情報を、自身のInstagramで発信してもらうのです。もちろん、こうした情報は、ぱどの情報コンテンツにも掲載されます。

UIターン者数のバランスを取ることも必要

―東京オフィスはまだ開設してまもないですが、なにか効果はありましたか。

 平成30年度の移住者数は、現時点で134人なんですが、Uターン者の割合が増加していますね。平成29年度は190人の移住者のうちUターン者の占める割合が2割だったのに対し、4割くらいに増えているんです。これは、都心部で働く地元出身者が東京のオフ会に参加したり、ぱどの情報コンテンツをみることで四万十町の情報に触れる機会が増え、それがUターンの契機になっているのではないかと思います。

 Uターン者数が増えれば、Iターン者数とのバランスもとれますから。

―バランスがとれることでどんなメリットがあるでしょう。

 住宅問題が軽減されます。もちろんIターン者は歓迎しますが、そこに偏ってしまうと、住宅不足という課題が出てくる。その点、Uターン者は実家があり、2世帯で住むことも可能ですから。事実、2世帯住宅は増えており、実家に戻って親の事業を継ぐケースは増えています。

 たとえば、鶏卵農家に戻った子どもが、実家の卵からスイーツをつくって販売し、人気商品になったり。そういった6次産業化で、新たな事業の広がりもみせています。今後も、UIターン者数のバランスはとっていきたいですね。

高校生を対象に無料の公設塾を開設

―中尾さんが行政で重視していることはなんですか。

 ありきたりの言葉になってしまいますが、「本当にこのまちに住んでよかったな」と、住民に思ってもらえる取り組みをしていくことですね。そのために、教育にもチカラをいれています。

 具体的には、町内に高等学校が2校あるのですが、その高校生を対象にした公設塾「じゆうく。」の運営を平成28年11月から行っています。子どもたちがまちづくりを担う次代の人材として活躍してもらうのを目的とし、町が運営資金をまかなって高校生に無料で開放。高知大学と連携したビジネスコンクールの開催やカナダでの海外研修など、高校だけでは学べないことも含めた教育を提供しています。現在のところ、4割以上の高校生が通っています。

―今後の行政ビジョンを教えてください。

 引き続き、このまちで活躍してもらえるような人材を移住定住の施策で呼び込むとともに、独自の教育施策によって人材を育成していきます。さらに、そういった人たちが自立して働いていけるような産業振興支援も行っていきます。たとえば最近では、ドローンなどIoTをからめた農業支援を開始しました。

 「人が残る、生活ができる」にくわえ、魅力あるまちづくりを、今後も行っていきます。

中尾 博憲(なかお ひろのり)プロフィール

昭和29年、窪川町(現:四万十町)生まれ。昭和48年、旧窪川町役場に入職。高幡西部特別養護老人ホーム組合事務局長兼窪川荘施設長、町農林水産課長などを経て、平成21年3月末に退職。平成26年、四万十町長に就任。現在は、2期目。

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