【3D都市モデル】公民連携の取り組みを深化させる、デジタルツイン活用の最前線
(PLATEAU / 日本HP)


※下記は自治体通信 Vol.75(2026年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
現実の都市をデジタル空間に再現する「デジタルツイン」。国土交通省が主導する「Project PLATEAU」により3D都市モデルの整備が進む一方、自治体ではシステム構築やデータ活用といった実務上の壁に直面するケースも少なくない。そこで本誌『自治体通信』は日本HPと共同で、デジタルツインをテーマにした自治体向けウェビナーを開催した。ここでは、その先進的な取り組み事例など講演内容の一部を紹介する。次世代のまちづくりや地域経営の参考にしてほしい。

さまざまな分野へ広がる、自治体での活用事例
国土交通省の小林氏は「Project PLATEAU」の概要と展望について語った。同プロジェクトは、サイバー空間とフィジカル空間を融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立する「ソサエティー5.0」の到来に向けて、3D都市モデルの整備と活用、オープンデータ化を推進するものだ。同氏は、自治体における地域課題解決に向けたデジタルツイン活用例として、まちづくり、防災・防犯、環境・エネルギーの各分野の事例を紹介。施設整備計画の立案や、浸水リスクの可視化、ヒートアイランド対策への応用などが示された。小林氏は「自治体の実務で定常的に活用されることが重要」と述べ、今後は最新技術の導入によるモデル整備コストの縮減なども図り、本格的な社会実装を支援していく方針を強調した。


関係者全員が同じイメージを共有しながら対話できる
岡崎市(愛知県)の鈴木氏は、自治体財政の視点から地域の「経営資源」としてのデジタルツインの可能性について語った。同氏は、自治体が自主財源である固定資産税や住民税を安定的に確保するためには、不動産活用を起点としたまちづくりによる経済活動の誘導が有効だと指摘。その実現に向けて、事業を通じて利益を共有できる不動産デベロッパーや電力、通信などのインフラ各社との連携を深める重要性を説いた。
具体的なデジタルツインの活用シーンとして鈴木氏が強調したのが、民間による土地開発の誘導と、それに伴うステークホルダー間の合意形成における効果だ。同氏によると、実際の都市開発において地権者や周辺住民と合意形成を図る際、従来のような紙の図面やパースでは、建物の高さや圧迫感に対するイメージが住民ごとに異なり、議論がすれ違うことも多い。しかし、デジタルツインの3Dモデルを用いれば、建物を50メートルの高さにした場合と30メートルに下げた場合で景観がどう変化するのかといったシミュレーションを可視化できる。関係者全員が同じイメージを共有しながら対話できるため、合意形成が格段に円滑に進む効果が期待できるという。
また鈴木氏は、3D空間に人流データを掛け合わせた合意形成の事例も紹介。たとえば、乗降客の多い駅の改札前に新たなモニュメントを設置する際、通勤ラッシュ時やイベント時に歩行者の妨げにならないかという懸念が生じる。これに対しても、過去の人流データを3D空間上で再現することで、混雑状況を誰もが直感的に把握でき、設置位置や規模についてエビデンスに基づいた合理的な話し合いが可能になるという。さらに、新しい商業施設やオフィスビルが建設された際の人流の変化も視覚化できるため、不動産事業者がテナントの入居を誘導しやすくする用途にも応用できると説明した。
最後に鈴木氏は、現在多くの自治体で使われている2次元のGISから3次元のデジタルツインへの移行を、日本社会における「ガラケー」からスマートフォンへの転換にたとえて語った。当時スマホが普及したのは、端末や通信インフラが整備され、受け入れやすい料金メニューが提示されたのが要因だったと指摘。これと同様に、高精細な3Dモデルや人流データを快適に動かすにはハードウエアの性能向上や通信環境の改善が必要だとした。さらに、GISの運用にかかっている航空写真の判読作業などの多額のコストが技術進歩によって圧縮されれば、捻出した財源を移行費用に充てられると説明。こうした財源の確保に加え、民間事業者を巻き込んでツールを共用化していけば、デジタルツインの実装は一気に進むはずだと展望を述べた。


直感的な操作感と実用性で、誰でも活用できる手段に
大成建設の村上氏は、「シン・デジタルツイン」の取り組みについて紹介した。このプロジェクトでは、PLATEAUなどの広域データと、点群データ*やBIMデータ*などの詳細な空間データを組み合わせることで、バリアフリーの検証にも活用できるほどの高精度モデルを都市スケールで整備していると説明。また、まちづくりにかかわる多様な主体に活用を広げるため、直感的に操作できるようゲームエンジンを用いて開発した点も特徴として挙げた。同氏によると、こうした精緻なモデルに都市データを重ね合わせ、人流や環境のシミュレーションを行うなど、まちづくりに直結する機能も実装。実写と遜色ないグラフィックやシミュレーション機能を活かし、新宿や岡崎市をはじめとするまちづくりの現場で活用が進められている。村上氏は、シン・デジタルツインを新たなまちづくりのツールとして広く一般化し、行政や地域住民など多様な関係者間の合意形成を支援していきたいと語った。
*点群データ : 地形や建物など地物の形状を複数の点で表したデータ
*BIMデータ : 建築物の3Dモデルに、建材の材質・性能・コスト・設備機器の情報など、さまざまな属性を付加したデジタルデータ

◆国土交通省
小林 真大
◆岡崎市
鈴木 昌幸
◆大成建設株式会社
村上 拓也
◆株式会社日本HP
若宮 明日香
データと技術が揃い、始めやすい環境は整った
ウェビナーの後半では、国土交通省の小林氏、岡崎市の鈴木氏、大成建設の村上氏に加え、主催者である日本HPの若宮氏を交えた4人によるパネルディスカッションが行われた。
これからデジタルツインに取り組むウェビナー参加者へのメッセージとして、国土交通省の小林氏は、「デジタルツインはなんでもできる技術だからこそ、まずは地域が抱える具体的な課題の解決を軸に据えるべき」と指摘。従来の都市政策以上に民間企業との連携が不可欠になるとしたうえで、「取り組みで得られた成果や直面している悩みをオープンに発信し、多様なステークホルダーとコミュニケーションを図ることで、関心をもつ層が増え、プレイヤーが集まり、できることが増えていくという好循環を生み出してほしい」と期待を寄せた。
岡崎市の鈴木氏は、2次元のマップから3次元のデジタルツインへ置き換える意義について、企画部門や財政部門を巻き込んで議論することで、固定資産税の確保や民間事業者との連携といった新たな価値が見出しやすくなると語った。また、事業を円滑に進めるために、国土交通省や熱意ある民間企業に加え、自身が地域情報化アドバイザーを務める総務省などに対して、早い段階から積極的に相談や声がけを行ってほしいと呼びかけた。
大成建設の村上氏はデジタルツインについて、特にまちづくりの分野において多くの関係者との合意形成で大きなパフォーマンスを発揮できる優れたツールだと語った。そのうえで、「未経験者にとっては難しく心理的ハードルがあるかもしれないが、現在は国土交通省が主導する『Project PLATEAU』によって扱いやすいデータが各地で整備されている」と指摘。データと技術が揃ったいま、どの都市でも非常に始めやすい状況にあるとし、ニーズがあれば同社としても全力で支援していきたいと意気込んだ。
高度な都市DXの取り組みを、メーカーとして下支え
日本HPの若宮氏は、公民連携による高度な都市DXの取り組みを下支えする基盤として、同社の高性能PCである『HP ワークステーション』を紹介した。デジタルツインを用いたまちづくりでは、数十ギガバイトにおよぶ膨大な点群データやBIMデータを取り込み、気象条件などをリアルタイムに反映させた高度なシミュレーションを行う必要があると説明。同氏によると、『ワークステーション』は、そうした大容量データの処理に耐えうるCPUとグラフィックス性能を実装。加えて、内部に多数のセンサーを搭載した高度な冷却機構を有しているため、高負荷のレンダリングを長時間行っても効果的に排熱をコントロールし、静音性を保ちながらフル稼働時でも処理性能を落とさない安定性を実現しているという。最後に、ハードウエアメーカーの立場から、「今後も官民が一体となって推進するデジタルツインの活用を盛り上げていく役割を担っていきたい」と語り、パネルディスカッションを締めくくった。


デジタルツインは、リアルな現場の動きや天候、光などの表現をデジタル上に再現する技術ですが、扱う情報量が圧倒的に大きいため、通常のPCでは起動すら困難です。リアルタイムに遅延なく処理し、その価値を最大限に発揮させるには、高いCPU性能とグラフィックス性能を備えたPCが欠かせません。たとえば、当社の『HP ワークステーション』の最上位モデルでは、高いクロック数を誇る『インテル® Core™ Ultra 9 プロセッサー』や高性能なGPUを搭載しています。『HP ワークステーション』は、専用アプリケーションのベンダーとの長年の協調から生まれる高い信頼性により、国内で高い市場シェアを得ています。また、GPUは生成AIの処理にも適しており、自治体にはセキュアな「ローカルAI」としての活用もおすすめしています。自治体が扱う個人情報などの機微なデータはクラウドにアップロードできませんが、高性能な『ワークステーション』内であれば安全に独自のAIモデルを構築し、学習から出力までを完結できます。当社ではパートナー企業とともに「AI推進コミッティ」を立ち上げ、機材の貸出やPoC環境の構築といった伴走支援を提供しています。今後も、自治体のみなさんのテクノロジー活用を支援していきます。


| 設立 | 平成26年12月 |
|---|---|
| 資本金 | 5億円 |
| 事業内容 | PC、プリンティングおよび付随するサービス、ソリューション事業 |
| URL |

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