※下記は自治体通信 Vol.51(2023年7月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
新型コロナウイルスの感染症対策のため、庁舎でも自宅でも業務を行える「ハイブリッドワーク」に対応した通信ネットワーク基盤の整備を、急ピッチで進めた自治体は少なくない。そうして整備した通信ネットワーク基盤を改めて見直す動きがいま、自治体で広がっている。それはなぜなのか。通信ネットワーク基盤を刷新する際のポイントとあわせ、通信インフラ整備を手がけるAPRESIA Systemsの鈴木氏に聞いた。
APRESIA Systems株式会社
次世代推進本部 第一部 第二グループ 主任
鈴木 雄介すずき ゆうすけ
平成22年、APRESIA Systems株式会社の前身となる、日立電線株式会社に入社。営業企画やパートナーセールスに従事したのち、令和4年より現職。総務省主催の「MRA国際ワークショップ2023」では講師として招かれ、『ApresiaKOKOMO』などを活用した通信ネットワーク整備に関する講演を行った。
ネットワーク環境が混在し、長期運用に向かないケースも
―通信ネットワーク基盤を見直す自治体は多いのでしょうか。
当社には、「『ハイブリッドワーク』に対応した通信ネットワーク基盤を改めて整備したい」という相談が、多く寄せられています。コロナ禍における感染症対策として職員の登庁を制限せざるを得ない事態が起こり、各自治体はハイブリッドワークに対応したネットワーク環境を急ピッチで整備しました。たとえば、本庁舎のLAN環境に加えて、支所では拠点間VPNを、職員の自宅ではリモートデスクトップを利用するといった形です。現在、アフターコロナに向かいつつあるなか、BCP対策のためにハイブリッドワークの環境を今後も維持する方針の自治体が増えています。しかし、その多くが、そのまま長期運用するには問題があると感じているのです。
―どのような問題でしょう。
先にあげた例のように、「庁内LAN」「拠点間VPN」「リモートデスクトップ」など、複数のネットワーク環境が混在しているという問題です。それらを1つずつ管理したり、更新したりするには、大きな手間と費用がかかります。また、更新のタイミングが異なる場合は、各ネットワーク環境と端末の互換性の維持に手間がかかることもあります。そのため、長期的な運用を見据え、通信ネットワーク基盤の見直しを検討する自治体が増えているのです。その見直しの際には重要なポイントがあります。
―どういったポイントですか。
ハイブリッドワークに対応した通信ネットワークを、一括して整備することができるかどうかです。それができれば、複数のネットワーク環境が混在する場合と比べて、管理や更新などの手間と費用を抑えられます。たとえば当社の『ApresiaKOKOMO』の場合、「ソフトSIM」をインストールした業務用端末とインターネット環境さえあれば、端末認証と暗号化を行いながら、すべての業務通信をコアサーバに集約して管理できます。それだけではなく、ソフトSIMを介した通信は、高い情報セキュリティを担保することが可能なのです。
固有番号による端末認証で、なりすましや漏洩を防ぐ
―それはなぜでしょう。
ソフトSIMごとに割り振られた複数の値が完全に合致しないと認証が通らないうえに、通信の暗号化に使う「事前共有鍵」がセッションごとに自動生成される仕組みになっているからです。そのため、なりすましや情報漏洩を防ぐ能力が非常に高いのです。また、通信はソフトSIMごとに独立しているため、マルウェアの内部感染を抑止する効果も期待できます。さらに、ソフトSIMを活用することで得られるメリットは、その情報セキュリティの高さだけにとどまりません。
―具体的には、どのようなメリットがあるのですか。
たとえば、ソフトSIMが適用可能なOSであれば、SIMスロットのない端末でも利用可能なため、ハードの面でも導入の手間と費用を抑えられます。そのほか、端末の起動時にソフトSIMが端末認証と通信の暗号化を自動で始めるため、利用の際にIDやパスワードの入力は不要で、すぐに業務に取りかかれるといったメリットもあります。そのうえ、当社の『ApresiaKOKOMO』はオンプレミス型なので、情報セキュリティなどに対する懸念から、クラウドサービスの利用を避けたい場合には特に有用です。
―自治体に対する、今後の支援方針を教えてください。
『ApresiaKOKOMO』は、端末ごとの通信状況から職員の労働状況を「見える化」する機能も実装しています。そうした機能の活用も提案しながら、ハイブリッドワークだけでなく、広く職員の「働き方改革」を支援していきたいです。