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先進事例2024.04.12

群馬県が目指す日本最先端デジタル県:AI技術で交通量調査を効率化

[提供] 株式会社サイバーエージェント
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株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェント

左から、株式会社サイバーエージェント 淵之上弘、群馬県 黒澤由昇氏、群馬県 岡田亜衣子氏、
株式会社サイバーエージェント 三宿仁(ファシリテーター)

〜県民の利便性向上を目指すデジタル化の取り組みと労働力不足解消・業務改革の一環としてのAI導入事例〜

いまや聞き慣れた言葉、デジタルトランスフォーメーション(DX)。日本のDXは、2018年に経済産業省がガイドラインを取りまとめたことを契機に広がり始めました。群馬県では2020年に「デジタルトランスフォーメーション戦略課(DX課)」と「業務プロセス改革課」が新設され、様々な行政DXに取り組んでいます。
 
なかでも、2021年からAIを活用した交通量調査無人化に向けた動きは全国的にみても先進性があり注目を浴びています。国内における行政DXは意思決定に時間がかかる上、課内で完結してしまうことが多い。群馬県の場合は進め方もスピーディーかつ課をまたいで行われているのが特徴。
 
実証事業を実施するなかで、ある一定の成果が得られているのみならず、行政DXにおいて重要な「組織内の変革」にも寄与しているのだそう。
 
群馬県を取り巻くDXの環境や弊社の提供するサービス「センサスAI(※1)」の可能性について、群馬県DX推進監の岡田亜衣子氏と県土整備部の黒澤由昇氏にお話を伺いました。
 
(※1)株式会社サイバーエージェントが提供するAIによる交通量解析サービス。サービスサイトはこちら

日本最先端クラスのデジタル県を目指す群馬県

ーー全国的にも珍しいAIを活用した交通量調査の実施にはどのような背景があったのでしょうか。


岡田氏: まず、群馬県では2020年に「新・群馬県総合計画」を策定し、2023年度末までに日本最先端クラスのデジタル県を目指すという壮大な目標を立て、そこに向けて体制を整えてきました。これはあくまでも目標であって、目的としては県民の利便性を向上させるところにあります。

例えば、皆さんが日常的に使われているインターネットやスマートフォンなどのデジタルツールを取り入れることで、役所関係の煩わしい手続きを改善できるようになります。また、体制を整えることで庁内の環境や職員の意識を変えていこうと取り組んでいます。「ぐんまDX加速化プログラム」では、「新・群馬県総合計画」の中で謳われている19の分野それぞれにおいて自立的なDXの流れを作っていくために、各事業の3年間の工程表を作り、確実にゴールに向かって進んでいく過程を公表しています。
 

黒澤氏: 建設業界は労働者の高齢化に伴い新たな人材が必要とされる産業ながら、3K(きつい・汚い・危険)のイメージが拭えず人材確保に苦労しているという課題がありました。県としてDX化に力を入れていくという方針の中で、人が集まらないのであれば、デジタルを活用することで人材不足を解消していこうという取組を始めています。


「道路交通センサス(※2)」について言えば、天候に関わらず12時間以上、人が路上で計測するという、過酷な仕事なんです。最近では計測する調査員の確保が課題になっていました。もしビデオ等の機械で計測できるならば、調査員の確保もいらないし、効率的でいいよねという発想から、サイバーエージェントさんに相談させてもらいました。

淵之上: 弊社としては2020年に行政さま向けの組織を編成したタイミングでした。群馬県の取り組みは全国的にみても早いなと感じていて、2020年の時点で「デジタルトランスフォーメーション戦略課(DX課)」「業務プロセス改革課」と、それぞれ新しい価値を生み出す組織と効率化を進める組織の両軸で始動した点は珍しいですよね。

ーー推進体制については各部局にDX担当をつけているといった点も非常に先進的だと感じました。結果として目に見えるもの・見えないものがあると思うのですが、組織内の共通認識として意識されている点はありますか?


黒澤氏: やはりどちらか一方ではなく、セットでやっていくことが重要ですよね。業務改善だけだと職員に夢は語れないので、DX化していくことで「これだけ未来は良くなるんだよ」といったところを見せていきたいです。おっしゃる通り、効率化していくことは目に見えないからこそ、新しい価値を生むこともできるのだということを示してあげることが大切だと思います。私の場合は、これまで培ってきた人との繋がりがあったうえにDXが重なったことで相乗効果を感じています。
 
 
(※2)全国の道路と道路利用の実態を捉え、将来の道路整備の方向を明らかにするため、全国の道路状況、交通量、旅行速度、自動車運行の出発地・目的地、運行目的等を調査するもので、道路に関する国勢調査ともいうべきもの。

組織にDXを浸透させていくために重要なこととは

ーー行政機関は全体的に保守的なイメージが強くあります。特に道路インフラは命にも関わる分野なので選定には厳密な基準があるかと思います。そのうえで、AIやソフトウェアとの融合など、新しいものを取り入れる体制についてはどのように捉えていますか。


黒澤氏: 新しいことにチャレンジしていくといった点で、山本知事や岡田さんがいてくれることが大きいです。トップがメッセージを発信することで職員たちにも浸透していきますから。逆に実行力があるトップがいなければ組織は何も変わらないと思います。現場にいる人が、皆さん意識の高い人であれば、簡単に浸透するのでしょうが、なかなかそういう訳ではないですから。
 
淵之上: トップのメッセージだけで現場まで浸透させるのって本当に難しいですよね。だからこそトップの実行力は重要で、上からの落とし込みと下からの押し上げのサンドイッチがより浸透を加速させているのかなと感じています。

岡田氏: まさにその通りかと。どこの部署でも困っていることとやりたいことがマッチングすれば実行に移せると思います。実際は現場がやりたいと思っても上司の理解を得られないなど説明しても決裁が下りない、といった現場の声をよく聞きます。黒澤さんが今回の取り組みをやりたいと相談したとき、上司の反応はどうでしたか?
 
黒澤氏: まず、相手が理解できていない場合、伝える側の問題だと捉えています。言葉が伝わらないのであれば、お互いが理解できる共通言語まで噛み砕いてあげる必要があります。よく、「人間の心は15秒で掴みなさい」というように、企画を説明するときに100%を語る必要はなくて、本当に言いたいことを簡潔に伝えるべきです。実際、私も言葉だけで説明するのではなく、企画のスキームをイメージ図で見せる等、一目で伝わる資料作りを意識しています。もし理解してもらえなかった時はどこがわかりづらかったのか必ず尋ねるようにして、資料だけでなく考え方をブラッシュアップするよう心掛けています。
 
淵之上: 共通言語を使い端的に伝えることが重要といったところは、民間企業で働く私も頷けます。先ほども言葉の重要性をお話しさせていただきましたが、我々で言えば「ひと言メソッド」ですよね。ひと言でアイデアのコアを端的に表現できれば、理解や共感を得られ、結果的にプレゼンなどがうまくいくという。
 
岡田氏: 確かに聞く側は100%説明されても全部を汲み取るのは難しい。上辺ではなく、何度も自問自答していくと自ずとコアの目的が見えてきますよね。そのためには日頃の訓練や習慣づけが必要だと思います。
 
黒澤氏: センサスAIのことで言えば、天候が悪い中、わざわざ人力で数えるよりも機械に任せて数えてもらった方が「正確かつ楽にできませんか?」という話で。

ーー今回の場合、様々な課をまたいだ連携が必要だったかと思います。これらは他自治体では大きな課題のように感じますが、群馬県ではどのようにして実現に至ったのでしょうか?


黒澤氏: 私の所属している県土整備部は3年に一度程度、部署の異動や課の行き来があり、ポジションも変わるので横のつながりが強いと感じています。また、インフラを守っている部署でもあるので、台風や災害などが起きた際はみんなで泊まり込みをして地域のパトロールなど警戒を行っています。常に業務の中で一体となって作りあげていくなど、協力して取り組むという土壌ができています。

また、県土整備では独自でDXアクションを策定していて、県民のより良い生活、建設業界や職員にとっても良くなることを目指したプログラムを掲げていることもあり、DXに取り組もうという職員の根底の意識があるのが大きいと思います。

ーーすでに受け入れる土壌が整っていたとのことですが、DXを浸透させていくための良い方法などはありますか。


岡田氏: 山本知事には「新・群馬県総合計画」で目標を掲げていただいたので、それらを実現するのが私たちの役目です。私が民間で経験してきたものと行政機関で感じた大きなギャップを埋め合わせて、現代に合わせた形にアップデートしていくことが求められています。ツールを使い、業務の効率化が捗ることを身をもって体験してもらうことで浸透していくのかなと。
 
黒澤氏: 浸透させようと思って話すよりも、優秀な人材が揃っているので道具を与えてあげればいいのです。例えばサッカーゴールとボールを置いておけばサッカーをやり始めるように、フィールドを用意してあげることで自ずと浸透していくと思います。フリーアドレスに切り替えた際も環境が整えば順応していきましたしね。
 
淵之上: 「浸透させること」に集中しすぎた結果、うまく浸透しなかったという話は行政に関わらず民間企業の中でもよくある話です。ある程度の環境整備も必須ですよね。
 
岡田氏: そうですね、ガイドラインは出しすぎるのは良くないから注意したところではあります。そうなってしまうと通知する所属側の「仕事をした」という自己満足で終わってしまうので。

ーートップからの落とし込み、そして環境が意識を変えると。


黒澤氏: そうですね、各部局内で多少の差はあるかと思いますが。頼れる岡田さんのような存在がいてくれるのも大きいと感じています。
 
岡田氏: たかがハコ、されどハコだと思います。私自身も最初は「DX」という看板をつけただけで本当に変わるのかと懐疑的でした。2020年の設立当初、DX課に配属された方々が不安そうな表情だったのを鮮明に覚えていますが、今年異動してきた職員たちの誇らしい顔を見てちゃんと浸透してきているのだと安心しました。

些細なことから始まる、誰一人取り残さない環境づくり

黒澤氏: 今回、センサスAIはサイバーエージェントさんにかなり迅速に対応してもらえたこともあり順調に進んでいます。その他は一進一退しながらやっていて、周りを巻き込みながら取り組んでいます。何より組織として「一人にさせない」ということが大切ですよね。
 
岡田氏: そこは本当に重要。今年、次長以上のメンバーと顔合わせをした際に他の組織から来た人も多いので「一人で悩まないでね」と伝えました。それなりに年を重ねると「自分で解決しなきゃ」と頭を悩ませる人が多いのです。一人で考えるのはいいけれど、悩むのはいけませんよと。対話することで新たな発想を得られることもありますからね。
 
黒澤氏: 理解してもらうためには言い続けることも大切ですよね。群馬県に限らずですけど、現代社会は抑圧されていることが多いです。縮こまって何もしなければ安全、失敗すると叩かれる社会です。だからこそ、一歩踏み出して失敗してもいいという人材がいてくれると嬉しいです。
 
岡田氏: 今の群馬県は知事が「新しい発想を取り入れましょう」という方針なので、様々なことに挑戦できる環境だと思います。だからこそ、みんなもっと自由に解放してもいいなと思うのです。ことあるごとに、知事が何かあったときは責任を取るとも言ってくれているのは本当に心強いですよね。

センサスAI導入が秘める行政DXの可能性

淵之上: 便利かつ正確で、運用していくとコストを削減できる。弊社としても、センサスAIは自信を持って全国に広めていける良いモノ・サービスになったと自負しています。他都道府県の視察にもご同行いただいたことがありましたが、今後、当サービスを他自治体へ展開させていくためにはどのようなことが求められると思いますか?

黒澤氏: 道路交通センサス自体は毎年ではなく、5年に1度実施しているものなのでタイミングもあると思います。また、やってみたい気持ちはあるけど、自らで発想している訳ではないので、説明しても追いついてこられない自治体は出てくるかもしれませんね。費用面も課題になりますが、目的やイメージの共有ができていれば広められる可能性はあると思っています。群馬県もまだ実証実験の段階なので、成果がだんだん表に出てくると説得力が増すし、もうすぐそこまできているのではないでしょうか。
 
それから、県が実際やって見せて落とし込むことで裾野を広げていき、市町村の意識の改革に繋げたいですね。一番は電動付き自転車のように、便利だぞという体験をしてもらうことが大切なのかなと。各自治体はそれぞれ置かれている立場や役割が異なるので、都会には都会の田舎には田舎のDXがあります。まずはその発想を与えてあげることが大切ではないでしょうか。

ーーセンサスAIを今後どのように活かしたいですか?

岡田氏: 今年はデジタル県の仕上げの年なので、名実ともに自分たちの自己満足で終わらないように、客観的に見て意味のあるものにしたいです。センサスAIの取り組みは全国初なので、様々なメディアに取り上げられることでさらに広まってくれることを願います。
 
黒澤氏: 「こんなことができたらいいな」をセンサスAIを通して形にしてもらえた上、予定よりも早くデータセンターを立ち上げてもらえたことに、サイバーエージェントさんには本当に感謝しています。実証実験の段階と言いつつも、すでに結果は出てきていますし、DX化によってより多くの感動を与えられたらいいなと考えています。
 
淵之上: 全国初の取り組みって、本当に生み出すことが難しいですよね。今回のような課題解決のための事例があることで、社内の活性化に繋がります。「チャレンジしたい」という優秀な社員がプロジェクトに集まってくれて、半年かかるデータセンターの開発も1ヶ月で立ち上げることができました。私たちは皆さんにデジタルを使ってもらうように広く促すことはできませんが、初めて使った人たちが「デジタルいいじゃん」と感じてもらえる体験は提供できます。これからも群馬県に住む皆さんにとってデジタルを使った方が便利になるモノやサービスを生み出していきますし、DXによって今後の群馬県がさらにどう変わっていくのか楽しみです。

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岡田 亜衣子(群馬県 デジタルトランスフォーメーション推進監)
東京外国語大学卒。芝浦工業大学専門職大学院修了。NTT、インテルなどを経て、2020年1月群馬県CDOに就任。2021年4月から現職。
 
黒澤 由昇(群馬県 県土整備部 都市計画課 補佐(道路計画係長))
日本大学理工学部卒。同大学院理工学研究科修了。1998年群馬県庁入庁。二度の国土交通省道路局への出向などを経て、2019年4月より現職。群馬県内の広域道路交通計画等、道路計画部門を担当。
 
淵之上 弘(インターネット広告事業本部 デジタル・ガバメント推進室長 / AI事業本部 GovTech開発センター長)
人材業界を経て、2008年サイバーエージェント入社。マネージャー、局長を経験し2015年に営業統括に就任。Webマーケティング、運用コンサル部門、オペレーション設計部門、オペレーションエンジニア部門の官公庁向け組織の責任者として従事。
 
三宿 仁(AI事業本部 GovTech開発センタープロダクトマネージャー)
プログラマーからシリコンバレースタートアップを経て、2011年サイバーエージェント入社。システムディレクターとして広告計測における特許出願、Ameba内サービスの開発責任者を経験、GovTech開発センターでは交通量調査におけるAI観測サービス「センサスAI」と、アプリやホームページCMSによる住民・職員DXのプロダクトを担当。
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株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェント
設立1998年3月18日
資本金72憶300万円
代表者名藤田 晋
本社所在地

〒150-0042
東京都渋谷区宇田川町40-1 AbemaTowers

事業内容

1998年の創業以来インターネット広告事業を展開し、顧客の広告効果最大化を図り技術力と運用力を強みに国内トップシェアを誇ります。
現在は、インターネット広告事業、「ABEMA」などのメディア事業、ゲーム事業、投資育成事業の事業を展開し、インターネット総合サービス企業として、企業・インターネットユーザーの皆さまに対し有益なサービスを提供しています。

<おもな事業領域>
メディア事業
インターネット広告事業
ゲーム事業
投資育成事業

URLhttps://www.cyberagent.co.jp/

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