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民間企業の取り組み
先進事例2023.09.05
調達業務の効率化

AIを活用した仕様書の作り込みで「悔いのないIT調達」を目指せ

[提供] 川口弘行合同会社
AIを活用した仕様書の作り込みで「悔いのないIT調達」を目指せ
この記事の配信元
川口弘行合同会社
川口弘行合同会社

※下記は自治体通信 Vol.52(2023年9月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。

DX推進の機運が高まるいま、多くの自治体業務でITシステムの調達、いわゆる「IT調達」が行われている。しかし、いざシステムを導入しても期待通りの効果が得られないといったケースは少なくない。こうした状況について、自治体へのIT調達支援で豊富な実績をもつ川口弘行合同会社の川口氏は、「仕様書の質が調達の成否を分ける」と話す。質の高い仕様書はいかに作成すべきなのか。同氏に聞いた。

インタビュー
川口 弘行
川口弘行合同会社
代表社員
川口 弘行かわぐち ひろゆき
昭和46年、福井県生まれ。芝浦工業大学大学院工学研究科博士後期課程修了。平成21年に高知県CIO補佐官、平成25年に経済産業省CIO補佐官および港区CIO補佐官、平成27年に佐賀県情報企画監を務める。平成28年にファイル無害化エンジン『サニタイザー』の提供を開始。平成29年、川口弘行合同会社を設立し、代表社員に就任。

「未知の業務」であるがゆえ、IT調達は失敗が生じやすい

―IT調達をめぐり、自治体にはどういった課題がありますか。

 圧倒的多数の職員にとって、IT調達が「未知の業務」であるがゆえに、手探り状態になってしまうことです。DX推進の機運が高まるのに伴い、庁内のいかなる部署の職員であってもIT調達にかかわる可能性は大いにあります。とは言え、単独の業務においてシステムを更新したり新規に導入したりするのは数年に1回程度の頻度で、その間には職員の異動も発生します。そのため、IT調達は依然として、自治体職員がその仕事人生において1度経験するかどうかの「レアな業務」なのです。そうした業務を手探りで進めるなか、そのプロセスに不備が発生し、大きなムダや失敗につながってしまう例は全国で数多く見られます。

―たとえば、どういった失敗例があるのですか。

 ある自治体では、防災関連システムの調達に向けたプロポーザルの実施後、提案の審査段階になってはじめて、「地図上で避難経路をシミュレーションする機能」がシステムに実装されていないことが判明しました。その機能は住民の安全確保に必須のものだったため、プロポーザルをイチから実施し直すという、時間と労力のムダが生じてしまったのです。ほかにも、いざシステムを導入しても期待通りの業務効率化の効果を得られなかったり、不要な機能の実装に費用を余分にかけてしまったりした例も少なくありません。

―そうした失敗は、どのようにすれば防げるのでしょう。

 自治体がシステムに求める要件をベンダーへ的確に伝えるために、調達仕様書の詳細さや網羅性といった、いわゆる「仕様書の質」を高めればよいのです。プロポーザルに応募するベンダーだからと言って、必ずしも自治体業務に精通しているわけではありませんから、自治体が後悔しないIT調達を目指すには、業務上の課題やニーズを抜け漏れなく仕様書に記載することが重要です。しかし、そもそもほとんどの職員にとってIT調達は「未知の業務」であるわけですから、仕様書の作成自体、簡単なことではありません。さらに、自治体がIT調達を進めるに当たっては、ある程度のスピード感も重要であり、仕様書の作成に時間をかけにくいという事情もあります。

時間的な制約があるなかで、いかに仕様書の質を高めるか

―スピード感が重要になるのはなぜですか。

 予算編成の準備に充てられる期間が限られているためです。自治体が翌年度のシステム導入を目指す場合、当年度の10月上旬頃には見積もりの徴取を終え、12月頃には予算要求と財務部門の査定を終えている必要があります。予算要求をひとつのマイルストーンと捉えた場合、職員に与えられる時間はそう多くないのです。にもかかわらず職員は、不慣れな業務に対する気後れから仕様書作成への着手を先延ばしにしてしまいがちです。その結果、2週間程度の短期間で慌てて予算要求を目指すといったケースは珍しくありません。仕様書の質を高めるには、ベンダーに意見を求める「意見招請」というプロセスも大事ですが、時間に余裕がないと、この意見招請を省略してしまうことも多いようです。

 そこで当社では、自治体が限られた時間のなかでも効率よくIT調達を進めるのを支援するために、『プロキュアテック』というサービスを提供しています。

―特徴を教えてください。

 AIの活用により、職員の負担を抑えながら質の高い仕様書の作成を目指せる点です。『プロキュアテック』ではまず、業務の状況やシステム化の目的などをまとめた「情報化企画書」を職員に作ってもらいます。職員はExcelのフォーマットに沿って各必要事項を記入していくだけなので、手軽に着手できます。各項目はできるだけ詳細に書いてもらいますが、箇条書きでもいいですし、不明な部分は空白のままでも構いません。そこに記載された情報を、生成AIが自然で論理的な文章にまとめあげ、仕様書案を作っていくのです。

仕様書作成から審査まで、生成AIが業務をサポート

―どのくらいの完成度の仕様書を作成できるのですか。

 情報化企画書に十分な内容が記載されていれば、仕様書の95%程度は生成AIが自動作成できます。情報が不足している場合は、補足が必要な事項を仕様書案の末尾に示します。仕様書の初版は50ページほどのボリュームでもおおむね15分程度で完成できるので、職員は文書作成にかかる時間と労力を抑えられるのです。

 なお、『プロキュアテック』の生成AIが自動作成できる文書は仕様書だけに限りません。

―ほかにどのような文書を自動作成できるのでしょう。

 たとえば、情報化企画書の内容をもとに、「情報提供依頼書(以下、RFI)」を自動作成できます。RFIとは、意見招請の際、技術や製品に関する情報の提示を依頼する文書のことで、要件の実現可能性に関する意見や、仕様書作成時点で提示可能な参考見積もりなども求めるものです。『プロキュアテック』ではこの工程にも生成AIを活用することで、文面作成にかかる時間を短縮しつつ、意見招請で得た情報をもとに仕様書の完成度を高めていけるのです。

 『プロキュアテック』の生成AIはほかにも、公募型プロポーザルの実施後、ベンダーからの提案内容を技術面で評価する「プロポーザル審査」において、「審査表」を作成することもできます。

―自治体はどのようなメリットを得ることができるのですか。

 プロポーザル審査の審査員は一般的に、部課長級の職員や、外部の有識者などが務めますが、その審査員が現場の業務内容を把握していなかったり、ITに関する専門知識を有していなかったりしても、調達の妥当性を審査できるようになります。具体的には、PDFなどの提案資料と仕様書の内容を、生成AIが突合。機能要件や非機能要件*に関する評価項目において、定量的な評価とコメントを記した審査表を自動作成します。審査員は、仕様書や提案書を精読する負担を軽減しながら、要点を押さえた審査が可能になるのです。

 当社ではさらに、コンサルタントが職員に伴走することでIT調達全体を網羅的にサポートします。

*非機能要件 : 機能面以外のすべての要件。性能や可用性、セキュリティなど

IT調達業務の大部分は、標準化が可能

―どういった支援が可能ですか。

 たとえば、情報化企画や仕様書作成、見積もり徴取など、IT調達における一連のプロセスを職員が迷いなく遂行できるよう、個々の自治体のニーズに合ったマニュアルを策定するお手伝いができます。多くの職員にとって「未知の業務」であるIT調達も、プロセスを標準化することで職員が不安を覚えることなく余裕をもって遂行できる仕組みを整えられるのです。私は過去10年以上にわたって数多くの自治体のIT調達を支援してきました。そこで得た知見を集約し、標準化を試みたサービスが『プロキュアテック』なのです。

―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。

 IT調達は、住民サービスの向上や職員の業務効率化、行財政運営の最適化など、自治体の大命題とも言えるテーマにかかわる重要な業務です。当社はこのIT調達を徹底的に支援することで、自治体の幅広い課題の解決に貢献していきます。とは言え、『プロキュアテック』を提案するに当たり「AIで仕様書を自動作成できる」と説明しても、なかなかイメージされにくいことも多いでしょう。そのためまずは、生成AIが作成した文書のクオリティの高さを、実際に目で見て確認してほしいです。『プロキュアテック』は無償のトライアルも実施していますので、ぜひお気軽にご連絡ください。

菊池市(熊本県)
IT調達業務の負担軽減だけでなく、職員の意識改革も促されている
[菊池市] ■人口:4万6,838人(令和5年7月31日現在) ■世帯数:2万75世帯(令和5年7月31日現在) ■予算規模:453億197万円(令和5年度当初) ■面積:276.85km²

 菊池市では、デジタル化の推進に伴い、過去に導入実績のないシステムを新規で調達する機会が増えていた。それにより、仕様書の作成に専門的な知識を要したり、業務上の課題を仕様書へ的確に反映するのに時間がかかったりと、職員の事務負担が増大していた。そうした課題を解決するため、同市は平成30年、『プロキュアテック』を活用したIT調達の効率化に着手した。

 『プロキュアテック』では、「情報化企画書」のフォーマットで示される項目を職員が箇条書きで記入するだけで、体裁の整った仕様書案が自動作成されるため、業務の大幅な効率化を実現できた。情報が不足した場合も、補足すべき情報がAIから示されるため、専門的な知識がなくとも簡単に仕様書をブラッシュアップできるようになった。

 このほか、自治体のIT調達に精通する川口氏による伴走支援が、職員の育成にもつながっている。従来は、職員がシステムの導入自体を目的化してしまう傾向があった。しかし現在では、住民サービスの向上や職員の業務効率化を実現させるというIT調達の本質を押さえながら、「最小のコストで最大の成果」を得ることを目指すようになった。職員の意識改革が促されている効果を実感しているという。

川口弘行合同会社
川口弘行合同会社
設立

平成29年12月

資本金

415万円

事業内容

自治体ICT支援事業(自治体CIO補佐官業務)、自治体業務改革支援(コンサルティング)、自治体向けソフトウェア・サービス開発

URL

https://www.kawaguchi.com/

お問い合わせ先
03-6715-2685(平日 9:00~17:00)
sales@kawaguchi.com
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