
※下記は自治体通信 Vol.50(2023年6月号)から抜粋し、記事は取材時のものです。
さまざまな自治体業務で電子化が進むなか、複数の業務フローと複雑に関係しあう請求書については、「電子化しても全体最適を図るのが難しく、業務効率化につなげにくい」と感じている自治体は多い。そうしたなか、中野市(長野県)では、請求書業務プロセスの一部を自動化し、電子化の恩恵を複数部署で得ているという。同市の担当者2人に、取り組みの詳細を聞いた。


電子請求サービスは数あれど、負担軽減の仕組みはなかった
―請求書の電子化に取り組んだ経緯を教えてください。
金井 当市では、持続可能な行財政運営を推進するため、令和3年度に「第4次中野市行政改革集中改革プラン」を策定しました。そのなかで、具体的な取り組みのひとつに「電子請求サービスの導入」を掲げました。これは、請求書の電子化を通じて、請求書を作成する事業者と、支払処理を行う職員の双方の負担を軽減することなどが目的です。しかし、いざ検討を始めると、請求書の電子化は難しいテーマであることがわかってきました。
―どういった難しさがあるのでしょう。
小林 請求書の電子化を、いかに職員の業務負担軽減につなげるかという点です。請求書自体を電子化できても、その後の業務フローでは、予算執行課が財務会計システムを使って「支出命令伝票」を起こす必要があります。さらにその後は、会計課が伝票を審査する作業が続きます。電子請求サービスは世の中に数多く存在しますが、起票や審査といったその後に続く業務の負担まで軽減できる仕組みは確立されていないという印象をもちました。そこで注目したのが、AmbiRise社の『Haratte』というソリューションでした。
―どのようなところに注目したのですか。
小林 起票と審査にかかる負担まで同時に軽減できる仕組みです。『Haratte』ではまず、事業者に専用システムを用いて請求書のPDFを発行してもらいます。自治体の予算執行課は、PDFに記載された二次元コードを『Haratte』で読み取ることで、請求書情報を財務会計システムに取り込めるのです。請求書情報はデジタルで機械的に転記されるわけですから、そこから起こされる支出命令伝票は、自ずと正しい内容が記載されることになります。そのため、会計課の職員も、請求金額の検算など一部の審査を省略できるのです。
金井 まずは実証実験を行い、予算執行課と会計課のいずれにおいても大きな業務効率化の効果が確認できたことから、今年4月に『Haratte』を本格導入しました。
起票と審査にかかる時間を、最大72%削減
―実証実験では、具体的にどのような効果を確認できましたか。
金井 予算執行課では従来、伝票1枚の起票に3~4分かかっていた時間を1分5秒に短縮できました。また、会計課でも、審査時間を従来の30秒から10秒にまで縮められました。起票と審査にかかる時間の削減率は64~72%で、年間5,000枚の伝票に適用した場合、人件費を年間で最大190万円削減できる計算となります。
小林 今後は、実際に多くの事業者や庁内の部署に『Haratte』の活用を広め、実証実験で見込めた効果を実現させていく方針です。


―請求書の電子化を検討する自治体は増えていますか。
確実に増えています。しかし、「請求書の電子化だけでは業務効率化につながりにくい」と、検討を躊躇するケースも少なくありません。かと言って、効率化を目指して一連の業務プロセスを一気に電子化しようとすると、業務変更のための庁内調整やシステム導入費用の面から、実現の難度が高まります。そこで当社では、導入が容易な『Haratte』を提案しています。
―特徴を教えてください。
単なる請求書の電子化だけでなく、職員の業務効率化も同時に図れる点です。請求書を発行する仕組みと支出命令伝票の起票を自動化できる仕組みを提供することで、職員は財務会計システムに手入力して伝票を起こす負担を軽減できます。また、請求書作成と伝票の起票がシステム化されることで転記ミスがなくなり、結果的に、後続の支払処理を行う会計担当課も審査を簡略化できるDXを実現します。『Haratte』は、「請求書発行をシステム化する」「起票作業のみを自動化する」というシンプルな仕組みのため、既存の業務フローやシステムを変えることなく、無理なく電子化と業務効率化を目指せるのです。
―自治体に対する今後の支援方針を聞かせてください。
私はかつて札幌市の職員として、財務会計システムの電子化をはじめとした業務効率化に取り組んできた経験があります。今後も、自治体業務に対する知見を活かし、BPRと電子化の両面で自治体の業務効率化を支えていきます。
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設立 | 令和2年5月 |
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事業内容 | 自治体向けクラウドサービスの提供およびサービスを活用した業務コンサルティングなど |
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