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公と民の地域資源フル活用で介護給付費「年間3億円超削減」

【自治体通信Online 寄稿連載】高齢者が続々と介護を“修了”できる「大東市式総合事業」の仕組み①(大東市職員・逢坂 伸子)

公と民の地域資源フル活用で介護給付費「年間3億円超削減」

介護予防の分野に大きな変化が起きそうです。その兆しのひとつは、政府が2020年度の当初予算案で介護予防等の取組みに消極的な自治体への交付金配分を減額し、成果を上げた自治体には大幅拡充する方針を打ち出したこと。自治体は“不都合な真実”と向き合い、要介護の状態にできるだけならないよう「高齢者を元気にする」ための施策や取組みがますます求められるようになるのは間違いありません。その先進事例にして大きな成果を上げている自治体があります。大東市(大阪)が推進している「大東市式総合事業」です。この方式を生み出した同市職員の逢坂 伸子さん(保健医療部高齢介護室 課長参事/理学療法士・保健学博士)に、介護を“修了”する元気な高齢者を次々と生み出し、さまざまな“介護の課題”を解決した仕組みを徹底解説してもらいました。


【目次】
■ すぐに現れた効果
■ 認定を受けなくてもチェックリストでサービス利用
■ 住民主体のサービス
■ 「介護のプロ」による短時間サービスを設定
■ 5割引の訪問サービスと食事提供を取りやめた通所サービス
■ 具体的な体力目標を設定してからサービス開始
■ 分岐点は事業者たちの“気づき“だった

すぐに現れた効果

大東市(大阪)では平成28年4月から介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)を開始しました。

総合事業によって、要支援レベルへの通所介護・訪問介護・ケアマネジメントの給付は、平成28年度以降、同年度で約1億4,000万円、翌29年度に約3億円(27年度実績の45%に圧縮)、30年度には3億5,000万円と、総合事業移行後3年間の累計で約8億円が減額されています(平成27年度までの3年間の平均伸び率からの推計値と実績との差額)。

大東市の介護給付費推移
大東市の介護給付費推移

認定を受けなくてもチェックリストでサービスを利用できる

高齢者のうちの要介護認定者の割合を示す介護認定率は、総合事業移行を開始した平成28年度に大きく下がりました(※下グラフ「介護認定率推移」参照)。

その後は再び上昇していますが、新規で要支援1および2認定を受けた人のほとんどが、いわゆる“お守り認定”なので、サービスを使っていません。

本市では本当にサービスが必要な要支援レベルは、認定を受けなくても25項目のチェックリストで訪問・通所サービスが利用できます。

なので、これまでのように医師に介護を受けるための意見書を書いてもらいに受診する必要も、介護認定の認定調査や介護認定審査会を経て、認定結果を1ヵ月近く待たなくても、相談に来たその場で25項目のアンケートに回答するだけでいいのです。

25項目チェックリストで総合事業対象者としてサービスが利用できるのに、そうではなく、わざわざ受診をして認定結果を待つということは「緊急性がそう高くない場合が多い」ということが、新規認定者のサービス利用状況を追うと見えてきました

介護認定には自己負担はありません。介護保険料も入っていませんが、大事な税金で賄われています。

医師の意見書料、認定調査費用、介護認定審査会費用、その他諸々の経費で、本市では新規認定に必要な経費はひとり約1万5,000円、更新認定で同1万2, 000円かかっています。

これまでは要支援レベルの人だと介護申請をしても非該当となる場合があり、認定結果が出るまでにサービスを使うと全額自己負担となる場合があります。

そのため、認定結果を待ってからサービスを開始することになるため、申請からサービス開始まで約1ヵ月待たなければなりませんでした。

しかし、総合事業が開始された今、ヘルパーなどの生活支援は25項目のアンケートの回答でよく、総合事業対象者の判定はその場でわかりますし、お守り認定は必要ではなくなったはず。なのに、何故、未だにお守り認定を取ることを勧める人が存在するのでしょうか。

この、お守り認定に費やされている税金が全国でいくらになっているかを考えると、本当にもったいないことになっています。

住民主体のサービス

本市の総合事業ではまず第一に住民主体のサービスから試すこととなっています。

住民主体のサービスで対応できないと判断された場合は、次に無資格者が提供する緩和型サービスAを試し、そのサービスでも対応しきれないとなった場合に、いよいよ“介護のプロ”が提供するサービスの利用となります。

不足する介護のプロを重度者へのサービスにシフトさせることが、介護人材不足の解消には必要と考え、軽度者の生活支援や通所介護は可能な限り介護のプロの手を使わないで対応する方法を考えました。そこで、介護のプロの手を大切に残し、介護のプロでなければ対応できない作業に集中させるために、軽度者の支援は住民もしくは無資格者がサービス提供する体制を整備していきました。

「介護のプロ」による短時間サービスを設定

総合事業では、これまでの全国一律の介護保険サービスを自治体の判断によって基準を緩和するとともに、サービスの料金設定や自己負担額も、自治体の判断で決めることができるようになっています。

そこで、本市では訪問サービスの現行相当を残しながら、緩和型サービスでは、もともとプロの介護サービスを利用していた人が緩和型サービスに移行しやすいように、プロの介護職による20分サービス、30分サービスを設定しました。

これによりどんな支援内容でも一律に45~60分程度の訪問サービスだったものを、本当に本人ができないところだけ支援する支援内容に整理をしていきました。

なぜなら、プランに目を通すと「対象者本人の生活機能からすると支援しすぎではないか」というケースが少なからず見受けられたためでした。洗面所で顔を洗えている人に、なぜかヘルパーが洗面台の掃除をしている等、不思議なことだらけでした。

なぜ、このようなことが発生していたのかを紐解いてみると“45分以上サービスを提供しなければならない”とカン違いしていたからでした。

本当は床掃除だけでよかったはずが、それだけでは45分の作業にならないから余った時間に他の作業もやってしまっていた―。その「よかれ」と思ってやってしまっていたことが、実は利用者の役割や活動をより減らしてしまい、自立支援をしているはずが、自立を削ぐ支援となってしまっていたということです。

もともと、プロの介護サービスを利用していた人は、プロとかプロで無いとかの問題よりも、慣れたヘルパーさんがいいのです。なので、同じ事業所の同じヘルパーさんに少し作業を整理していただくために、介護のプロによる短時間サービスを設定しました。

5割引の訪問サービスと食事提供を取りやめた通所サービス

もうひとつの緩和型訪問サービスでは、掃除の専門業者に参入してもらっています。それと、長年家事をやってきた“家事のベテラン”である高齢女性をシルバー人材センターが出してくれています。

どちらも介護事業所ではありません。掃除の専門業者とシルバー人材センターから出してもらっている無資格者の訪問サービスはプロのサービスのほぼ半額です。自己負担は定率ではなく、定額としています。

通所サービスの緩和型では、通所介護や通所リハビリの事業者たちが送迎つきの「大東元気でまっせ体操」と口腔機能向上のための「健口体操」をすることになっています。こちらはプロのサービスの2割引です。

高齢者を元気にした「大東元気でまっせ体操」
高齢者を元気にした「大東元気でまっせ体操」

食事の提供はありません。週に21食ある食事(1日3食×7日間)をどのようなものを食べれば元気になれるかの栄養教育をしてもらっています。

週に1~2回だけ栄養バランスがよい昼食を食べても誰も元気にはなれず、毎食を自分で栄養バランスを考えて食べられるようになるためには、本人の食事への意識と知識が必要なのです。

これまでの通所介護や通所リハビリではランチを提供するだけで、自宅での食事内容には無関心ということに陥りがちだったのではないでしょうか。

具体的な体力目標を設定してからサービス開始

通所サービスも、まずは地域で開催されている「大東元気でまっせ体操」を試してもらいます。

その対象者の身体機能では自力で行ける範囲に「“通いの場”がない」もしくは「近所だから行きたくない」などの事情で通いの場に通えない場合に、緩和型通所サービスを利用することになっています。

ただし、利用する際には、どこの通いの場、どこのスーパーなどに行くために体力をどれだけ上げるのか等、具体的な目標を利用者とサービス提供事業者および担当ケアマネジャーで決めてからサービスを開始することになっています。

この緩和型通所サービスではカラオケやマッサージは禁止です。緩和型通所サービスでは楽しいことはしない、シンプルな体力づくりをする場としています。この緩和型通所サービスは「楽しい、ここにずっと通いたい」と思っていただかなくてよいのです。

本市には楽しい地域の通いの場があるのですから。「早く元気を取り戻して、楽しい地域の通いの場に行きたい」と思っていただくことこそが大切なのです。

分岐点は事業者たちの“気づき“だった

介護保険導入前は、重度で寝たきりの人の家族のレスパイト(介護者の負担軽減を目指す仕組み)中心に提供されてきた通所サービスでした。

それゆえ「楽しい」「おいしい」「気持ちいい」といったホスピタリティを売りに家から出てきてもらう必要がありました。

介護保険導入後は家族のレスパイトではなく、ご本人が元気になって元の生活を取り戻すための軽度者向けに介護予防を目的とする予防給付の通所サービスの提供が開始されました。

しかし、誰もそんなサービスを提供したことがなかったので、そのまま重度者向けの「楽しい」「おいしい」「気持ちいい」サービスだけが提供され続けてきたのです。

軽度者にはこの3つに加えて、「あぁ、ちょっときつかった」という負荷がかかる筋力向上のためのトレーニングがなければ元の生活に戻ることは難しいにも関わらず、楽しいだけのレクリエーションを提供している事業所が多くなってしまっています。

ですから、本市では繰り返し、介護サービス提供事業者向けに自立支援への意識づくりと技術向上を行ってきたのです。

これまで利用者に喜んでもらっていて、保険者の定期監査、実施指導でも文句を言われることもなく、あたり前にやってきたサービスが、実は軽度者をどんどんと悪化させてしまっていた―。その事実を事業者たちが知った時が、本市の介護サービスの分岐点だったように思います。

(住民と事業者に『意識改革をしてもらう』」に続く)

逢坂 伸子(おうさか のぶこ)さんのプロフィール

医療法人 恒昭会 藍野病院に勤務後、大東市役所に入庁。IBU 四天王寺大学人文社会学研究科 人間福祉社会専攻 博士前期課程 修了、大阪府立大学総合リハビリテーション学部研究科 生活機能・社会参加支援領域 博士後期課程 修了。厚生労働省「地域づくりによる介護予防推進支援モデル事業」広域アドバイザー(2014年4月~2016年3月)、同省「地域づくりによる介護予防推進事業検討委員会」検討委員(2016年4月~2017年3月)などを歴任。現職は大東市役所 保健医療部高齢介護室 課長参事(2019年11月末現在)。

<連絡先>
電話:072-870-0513(大東市 保健医療部高齢介護室 直通)
メールアドレス:ohsaka@city.daito.lg.jp

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