全国の自治体トップ・職員・議員に贈る
自治体の"経営力"を上げる情報サイト
自治体通信Online
地域も自分もガチで変える! 逆転人生の糸島ブランド戦略

【自治体通信Online 寄稿】今夜読むべき公務員本!(中野区広報アドバイザー・佐久間 智之)

地域も自分もガチで変える! 逆転人生の糸島ブランド戦略

公務員が公務員目線で公務員本を書評する「今夜読むべき公務員本!」。今回は、女子高生や生産者を巻き込み、糸島産太もずくを全国区に押し上げるなど、糸島市(福岡)マーケティングモデル推進事業を立ち上げ、推進している同市職員・岡 祐輔さんの新著「地域も自分もガチで変える! 逆転人生の糸島ブランド戦略」 を中野区(東京)広報アドバイザーで元三芳町職員(埼玉)の佐久間 智之さんに書評してもらいました。「“個”ではなく、自治体という組織のなかでやりきった軌跡と想いは、公務員と公務員を目指す人にとって大きな刺激になるはず」(佐久間さん)。同書の“読みどころ”をお届けします。
【目次】
■ 命を懸けて戦いに挑むストーリー
■ 生々しい現場の苦悩も克明に
■ 周りを巻き込み本気にさせる
■“地域愛”という原動力
■ 公務員としての誇り

命を懸けて戦いに挑むストーリー

『優秀な若手職員が入ってきては、仕事のやりがいを知らないまま次々と辞めていく姿を見るのは、本当にいたたまれない思いです。』(264p、第8章「公務員としてのモチベーションを上げる」より)

「地域も自分もガチで変える! 逆転人生の糸島ブランド戦略」 の著者である糸島市(福岡)職員の岡 祐輔(おか ゆうすけ)さんは、公務員の未来にこのように警鐘を鳴らす。

本書の著者である岡さんは、公務員にも関わらずMBAの資格を有し、「内閣府地方創生☆政策アイデアコンテスト」で地方創生大臣賞受賞をはじめ、数々の賞を受賞している。

必然的に民間のマーケティングやブランディングのノウハウが列挙されているハウツー本であると思っていたが、そうではないとすぐに気が付いた。

この本は「地域に命を懸けて戦いに挑む、公務員のストーリー」なのだ。

「地域も自分もガチで変える! 逆転人生の糸島ブランド戦略」
著者・岡 祐輔さん(上写真)のプロフィール

2003年に二丈町(現・糸島市)に入庁。民間の経営手法を公共経営に活かすため、仕事の傍ら、九州大学ビジネススクールに飛び込み、MBA取得。2016年に「地方創生☆政策アイデアコンテスト」で地方創生担当大臣賞を受賞。受賞した政策を実施した「糸島マーケティングモデル」は「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー2018」で地方創生賞(コト部門)を受賞。これらの功績により、地方公務員アワード2018を受賞。著書は本書のほかに 『スーパー公務員直伝! 糸島発! 公務員のマーケティング力』 (学陽書房)がある。

 

生々しい現場の苦悩も克明に

もちろん本書の大半は著者が勤める糸島市が「人気観光スポットランキング1位」「住みたいまちランキング1位」になるまでに歩んできた軌跡、そして岡さんが行ってきたマーケティングの手法や戦略が惜しげもなく列挙されている。

その一方で、成功の裏にある地域や議会との軋轢など、生々しい現場の苦悩が克明に描かれている。「ここまで書いて大丈夫なのか」と心配してしまうほどだが、すべてに共感できる。

なぜか。

本書を読めばわかるように、結果を出し続けることができた要因は、岡さんが運やMBAの資格をもっているからではない。地域に飛び出し、住民に寄り添い、職場内でも共感者を巻き込み、地域、職場全てをひとつにまとめる手腕、人目につかないところで泥臭いことをし続けたからこそ結果を出すことができたのだ。

白鳥は優雅に水面を泳いでいるように見えるが、水面下では必死に足をもがいている。それと岡さんも同じなのだ。

周りを巻き込み本気にさせる

岡さんの凄いところは、決してひとりの力ではなく、周りを巻き込み本気にさせてしまうところにある。

『仕事の成果は30%が個人の実力で70%は組織のおかげ。(中略)企画を実現するために最も重要な資源はやはり「人」です。個人が能力を発揮するには、職場の資源が鍵。そして自分を助けてくれる人は、本人が一番理解しているはずです。日頃から、若いときから、近い人たちを大切にしなければなりません。』(83p、第3章「地方創生大臣賞『糸島マーケティングモデル』が始まった」より)

徹底的に自分を俯瞰で客観視することができるか否か、そして個人プレーではなく組織として結果を出し地域や職場が共感する。それは、本書の端々で見受けられ、且つ理論的で合理的。さすが日本一のMBA公務員だ。地域や職場が自走することも念頭に置きながら物事を組み立てている。

それは次の岡さんのメッセージから伝わってくる。

『公平性を一緒くたに捉えて「結果の平等」を求めてはいけない。『機会の平等』が重要で、チャンスを活かした人たちが突き抜けてくる、地域全体のためになる事例として、まずは小さく成功させる発想を変え、後から地域全体に発展させていくほうが、政策を成功させるためには合理的なやり方です。』(110p、第3章「地方創生大臣賞『糸島マーケティングモデル』が始まった」より)

『「補助金がなくなったら」「担当者が変わったら」継続しないという話をよく耳にします。だから事業を立ち上げるときは、市以外にプレーヤーになり得る人たちに最初から入ってもらいます。軌道に乗れば、後は役所は必要ないという立ち位置のほうがいいのです。』(111p、第3章「地方創生大臣賞『糸島マーケティングモデル』が始まった」より)

~糸島市の概要~
人口は約10万人、福岡県最西端の糸島半島に位置し、福岡市中心部から電車、車ともに約30分の距離。市北側には玄界灘に面した美しい海岸線が広がり、市南側には背振山系の1,000m弱の山々が連なる。中間部には糸島平野と呼ばれるなだらかな田園地帯が広がり、JRと国道沿線を中心に市街地が形成されている。

“地域愛”という原動力

私は「スーパー公務員」というキラキラした言葉に違和感がある。「個」が必要以上に際立ちすぎているからだ。一方で、岡さんは糸島市という「組織」の枠で結果を出している。だから岡さんは「スーパー公務員」ではないし、そう言われる必要もない。愚直でピュアに地域を愛する糸島市の職員のひとりなのだ。

新しい事業を始めると壁にぶち当たる。それを突破できるかできないかは、地域に命を懸けられるのか、本気になれるのか、である。

岡さんも本書のなかで、こう記す。

『組織内の壁を超えると、組織外の壁が訪れる。だから内にも外にも支援してくれる仲間が必要。単なる公務員バッシングは、自分の地域にマイナスの効果をもたらし、地域の首を絞める構図になっている。僕はそうなってほしくないので、企画した事業を簡単にやめたりしません。元気なまちは、必ず役所の職員も元気があります。』(143ページ、第4章「糸島ファームtoテーブルは戦略立案だった」より)

自治体職員は失敗を恐れて弱腰になりがちだ。しかし何もしない職員ばかりになってしまうと人口減少にも繋がると危機感を唱える。

『まちのために失敗のリスクを恐れずに挑戦する自治体職員こそまちの組織や地域の生産性を上げ、人口減少に立ち向かう施策を打ち出す可能性の高い人。チャレンジする自治体職員を地域に増やしていかなければならない。』(144p、第4章「糸島ファームtoテーブルは戦略立案だった」より)

公務員だから何もしなくても給料が変わるわけではない。しかし岡さんは、時には後ろ指をさされながらも、「地域のために」汗をかいているのだ。

公務員としての誇り

本書の副題「税金ドロボーと言われた町役場職員が、日本一のMBA公務員になれたわけ」という刺激的な言葉のとおり、劣等感の塊で、志が高くなかった頃の公務員生活をも岡さんは赤裸々に語っている。

“意識高い系”に見える岡さんだが、実は「意識低い系」の公務員だったのだ。そこからなぜ、今のように世間を席捲する公務員になったのか。その理由は本書を読んでほしい。

その理由を知ったとき、きっと公務員としての仕事を誇りに思えるようになるはずだ。

本書は地域の未来を担う人たちが希望を持てる、そんな素晴らしい1冊。読み終えた時は、公務員であれば、公務員としての誇りを持つことができる。そしてきっと岡さんの、糸島市のファンになっていることであろう。

* * *

「地域も自分もガチで変える! 逆転人生の糸島ブランド戦略」
~内容紹介~

福岡県の最西端に位置する「糸島市」。海があるだけ・自然があるだけ、だったまちが「行ってみたい」「住んでみたい」人気のまちへ。置かれた場所で挑戦しては壁に当たり乗り越えてきた公務員の実話。お役所仕事のイメージを覆し、「糸島ブランド」を発信し続ける著者が、若手公務員・若手サラリーマンへ、その手の内を明かします!
(版元の実務教育出版のサイトより)
 

この記事を書いた佐久間 智之(さくま ともゆき、上写真)さんのプロフィール

PRDESIGN JAPAN株式会社 代表取締役
中野区広報アドバイザー
元三芳町(埼玉)職員

1976年10月21日生まれ、東京都出身。ヴィジュアル系バンドを経て2002年に三芳町に入庁。独学でデザインを学び、印刷以外全て手作りで町の広報紙「広報みよし」を手掛け、広報コンクールで内閣総理大臣賞を受賞。2019年地方公務員アワード受賞。2020年2月退職。自治体の広報支援などを行うためPRDESIGN JAPAN株式会社を三芳町に設立。同年4月より中野区(東京)広報アドバイザー。自治体の職員研修講師・広報PRデザインアドバイザー、デザイナーやライター(LOCAL LETTER)として活動中。「広報はラブレター」の想いを胸に、日本を変える公務員、人、コトを写真と共に届けている。著書に「パッと伝わる! 公務員のデザイン術」 (学陽書房)、「すぐに使える! 公務員のデザイン大全」(同)、「最強効率仕事術 公務員の速攻ライフハック」(同)、「図解 公務員1年目の仕事術」(ナツメ社)がある。写真家としても金澤朋子写真集「#いいね三芳町」を出版。地域フォトグラファーやライブフォトグラファーとしても活動中。最新刊は「Officeで簡単! 公務員のための『1枚デザイン』作成術」 (学陽書房)。

<PRDESIGN JAPAN株式会社のサイト>
PRDESIGN JAPAN株式会社
https://prdesign-japan.co.jp/

<連絡先>
tsakuma@prdesign-japan.co.jp

自治体通信メール版

「自治体通信オンライン」の最新記事や、イベント情報などをいち早くお届けします。

※このサイトは取材先の企業から提供されているコンテンツを忠実に掲載しております。ユーザーは提供情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(イシン株式会社)は何ら保証しないことをご了承ください。自己の責任において就職、転職、投資、業務提携、受発注などを行ってください。くれぐれも慎重にご判断ください。

【特別号】~いま注目のRPAを読み解く~
新形コロナウイルス感染症対策
[PR]

自治体の取り組みを探す

課題から探す
地域から探す

自治体通信

自治体通信

自治体通信は経営感覚をもって課題解決に取り組む自治体とそれをサポートする民間企業を紹介する情報誌です。
自治体関係者の方に無料配布しております。

自治体通信への取材希望の方

自治体通信編集部では、「自治体の"経営力"を上げる」というテーマのもと紙面に登場いただける自治体関係者・自治体支援企業の方を募集しております。

取材のご依頼はこちら
地域別ケーススタディ
課題別ケーススタディ
【特別号】~いま注目のRPAを読み解く~
新形コロナウイルス感染症対策
pagetop