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《新連載スタート!》「自治体職員の生き方」についての新しい視座

【自治体通信Online 寄稿記事】
自治体職員の志事〈しごと〉 #1(伊勢崎市 職員・橋本 隆)

「自治体職員は、プライベートな時間の使い方を工夫することで、貴重な経験ができる素晴らしい職業ではないでしょうか。私が民間企業の会社員だった頃は、全国各地への転勤が続き、なかなか腰を据えて地元の市民活動に参加することができませんでした。自治体職員は、プライベートな時間を活用して市民活動などで地元の人脈を築くことができ、その人脈を仕事に活かせる“魅力的な職業”だと感じています」―。
こう話すのは伊勢崎市 職員の橋本 隆さん。橋本さんは、『自治体の都市計画担当になったら読む本』(学陽書房)を出版され、その書籍の中で仕事だけでなく志事(しごと)の経験を紹介して大きな反響を呼んでいます。
そこで、志事を通してさまざまな人々が経験をシェアしながら、よりよい社会を築いていくための活動を続けている橋本さんに連載してもらいます。第1回は、「志事ってナニ?」ということから…。質疑応答形式でお伝えします!

「志事」とは?

「公務員の志事」とはなんですか?
公務員の皆さんは、志を持って公務員になり、仕事を通して志を実現しているのではないかと思います。その一方で、プライベートな時間にも、志を持って取り組みたい活動を発見することもあります。私の場合は、こうした活動のことを「志事」と呼んでいます。
私は、公務員の人員削減が進む中で、公務員ひとり一人が豊かな人生を送り、その経験や学びを実務に活かすことが今後の課題になると感じています。豊かな人生を送るためには、さまざまな経験をシェアし合うことが重要。そのことが、結果的によい「地域、職場、個人」をつくることにも繋がっていくのだろうと考えています。

橋本さんは、なぜ「志事を持つ」ことにしたのですか?
私は民間出身ですが、自治体職員はプライベートな時間が充実していると感じています。そして、地域との繋がりや人脈を得ることができ、それらを仕事にも反映できます。民間時代には、全国規模の転勤が多く、腰を据えて地域の市民活動に参加することができませんでした。自治体職員になってからは、市民活動にも取り組むことができ、そこで得られた人脈も仕事に活かすことができるようになりました。

どのようにして「志事のための時間」を捻出しているのですか?
余暇を有効に利用するための時間割を考えています。自分のやるべきことが増えてきたら、やらないことを決めることも大切。マルチタスクもよいのですが、あまりに増えすぎると思考が停止し、気が散って集中できなくなります。
そのような場合は、一度立ち止まって「いつまでにはこれ、いつ以降にはこれ」というように、交通整理をする必要があります。そして、やるべきことが決まれば、集中してひとつひとつこなしていくようにしています。

【仕事×志事】は自分だけではなく、周囲にもよい影響をおよぼす

心からやりたいことを!

「志事を持つことのプラス」を教えてください
仕事ではできないことを実現することができます。例えば、仕事で疑問を持ったとしても、必ずしも勤務時間中に調査・研究できる内容ではないかもしれません。
私の場合は、夜間大学で個人的に研究することで、その成果を仕事にも反映することができるのではないかと考えました。実際、仕事の疑問を夜間大学で研究することによってモヤモヤが晴れましたし、その成果は仕事に役立つとともに、書籍出版等の新たな志事にも繋がりました。

「志事の成果」は、どのように発信すればいいのですか?
できるだけ志事の成果等を発信して、広く認知していただけるとよいでしょう。その方法も、近年ではSNSやブログなど、さまざまな方法があります。全国には、自分と同じ考え方を持つ同志がいることもありますが、発信しなければ自分の考え方が認知される機会もなくなります。それは、とても残念なことだと思いませんか。自分が発信した情報の共感が、新しい繋がりや志事に広がっていくこともあるでしょう。

「志事」を持つことで、庁内で浮いたりしませんか?
気にはしていませんが、浮いているかもしれません(笑)。志事は、あくまでも個人的な活動ですので、自分の琴線に触れた、心からやりたいことだけをやっています。そのため、志事の活動で人から高く評価されたいとは思っていません。
ものすごくシンプルに、自分がよいと思うことをやる。そしてやり続けているだけです。

「仕事と志事」を両立できる素晴らしい職業

自分にどんな志事が合っているのか」わかりません。どうすれば見つかりますか?
1日は24時間です。その大切な時間を使って、自分が余暇に何をすべきかを考えて行動すればよいでしょう。必ずしも社会的な貢献に繋がる内容ばかりでなくても、自分自身にとって真正面から向き合って、志を持って取り組めるものなら何でもよいのではないでしょうか。「家族の介護」でも「子どもの子育て」でも、そのときの自分にしかできないこともあるからです。

自分はプライベートである分野の勉強をしています。それを「志事に昇華させる」ためには、どうすればよいですか?
一生懸命に勉強しているのであれば、もちろんその勉強も立派な志事です。勉強することで着実にスキルアップでき、地域に貢献できるチャンスも広がるので、継続的に学びを深めてほしいです。例えば、実務に関係する資格の勉強でも何でもよいのです。
試験に合格して資格を取得できれば理想ですが、もし取得できなかったとしても知識としては残るはずです。失敗を恐れるのではなく、前向きに挑戦することが重要だと考えています。

本業の仕事に支障をきたしませんか?
本業の仕事に支障をきたすようであれば本末転倒です。あくまでも本業の仕事で成果を上げている前提での志事の活動を考えています。自治体職員は、仕事と志事を両立することができる素晴らしい職業であり、そのことをお伝えする機会にできればと思います。

(続く)

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■ 橋本 隆(はしもと たかし)さんのプロフィール

群馬県 伊勢崎市 都市計画部 都市開発課長
1972年生まれ。9年間勤務した建設会社を退職後、2003年伊勢崎市入庁。都市計画課、群馬県県土整備部都市計画課(派遣)、企画調整課、土木課、区画整理課長、都市計画課長を経て、現職。総合計画や都市計画マスタープランの策定のほか、県内市町村初の景観行政団体や世界遺産登録の実務を経験。
博士(工学)、技術士(建設部門)、一級土木施工管理技士。「地方公務員アワード2022」を受賞。
職員研修講師や外部講演会講師を数多く務める一方で、職員自主研究グループ「人財育成研究会」代表、全国5,000人以上の公務員が参加するオンライン市役所の「都市計画のゲンバ」自主ゼミ長を務める。
20年間ほど参加している市民団体「いせさき街並み研究会」の活動で、まちづくり功労者国土交通大臣表彰(2016年)等を受賞。
主な著書は、『自治体の都市計画担当になったら読む本』(学陽書房)、『歩いて暮らせるコンパクトなまちづくり』(共著、古今書院)、『群馬から発信する交通・まちづくり』(共著、上毛新聞社)。