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【事例解説】地震津波対策における自治体の課題と取組事例3選

【事例解説】地震津波対策における自治体の課題と取組事例3選

地震列島・日本において地震で引き起こされる津波への備えは、言うまでもなく、非常に重要な自治体の役割のひとつです。実効性のある津波対策とは? 各自治体の事例などを通じて、そのポイントを探りました。
 
【目次】
■津波の事前防災の指針とは
■事例①【5分で高台避難】串本町(和歌山県)
■事例②【きめ細かな“総力戦”の対策】黒潮町(高知県)
■事例③【車による避難訓練】山元町(宮城県)
■テーマ「#地震津波対策」に関する関連記事

津波の事前防災の指針とは

内閣府の「大規模地震防災・減災対策大綱」では、津波の事前防災について次のような指針を定めています。

①海岸堤防等の整備
防潮堤の整備強化や現在ある防波堤の老朽化調査と補強工事を実施する。水門を閉める際の逃げ遅れを防ぐため、開閉式の港の水門を無くし、それに代わるものを設置する。海岸の防災林はある程度の津波に対して被害軽減効果があり、造成や植栽等の整備を進める。交通インフラ機能と防波堤機能を兼ね備えた高速道路などの整備も進める。

②施設の耐浪化
行政機関の施設の整備、学校・高齢者施設などの耐久化や安全な場所への配置見直しなどを検討する。安全な高台への避難路や避難階段の整備などの対策も講じる。

③災害リスクに対応した土地利用計画
東日本大震災クラスの津波の被害が及ぶと想定される地域には、公的機関や医療機関を建設する際や住宅の新築に関しても人命を守るため法律を整備して一定の制限をかける。

④安全で確実な避難の確保
安全が確実な避難場所の確保や情報ツールを拡充し、適切な避難を促すための周知を行う。

⑤ハザードマップ等の整備促進
ハザードマップの見直しおよび住民への周知のほか、観光地などでは想定される浸水の表示や避難路の誘導標識などを設置する取り組みも推進する。津波災害警戒区域内では定期的避難訓練を行うよう、自治体で助言や支援を行う。

⑥津波避難計画の策定促進
安全確実な避難を徹底するために、沿岸部の自治体では町や地域ぐるみで避難計画書を作成する。避難方法は原則的に徒歩とする。港の安全管理、船舶の避難、レジャーのため海に訪れた人の避難誘導、避難所の整備なども周知や強化を図る。

⑦安全な避難空間の確保
大津波が来ることを想定して避難所、避難施設、避難路、避難階段などの施設を安全に設置するため、国有地や公用地の有効活用を図る。避難所、避難施設には災害時に備え暖房機の設備や暖房用の燃料、毛布などを備蓄する。海岸の防波堤を全て完成させるには長い年月がかかるので、確実に安全な高さの土地に避難所と避難する際の避難経路も整備を進める。

⑧情報伝達手段の多重化・多様化
防災無線やJ-ALERT(全国瞬時警報システム)など、インターネットや電波を利用したあらゆる伝達手段で多重化、多様化を推進する。

⑨適切な避難行動の周知徹底
国や地方自治体は想定外の津波に備えて、避難ためのガイドライン、マニュアルの普及、啓発を推進する。

次に、各自治体が行っている事例を紹介します。

事例①【“5分で高台に避難”を可能に】串本町(和歌山県)

本州最南端に位置し、古くから津波の来襲により大きな被害を受けてきた串本町(和歌山県)では、住民ワークショップや関係機関との協議により「串本町津波防災対策本計画」を策定し、「逃げる対策」(ソフト対策)と「避難を助ける対策」(ハード対策)の両面でさまざまな対策や施策を実施しているほか、整備目標・整備スケジュール等を盛り込んだ行動計画(アクションプラン)を定め、住民の理解と協力のもと、“津波に強い串本町”を目指しています。

その一例として、自主防災組織が2年をかけて避難経路を整備し、地震発生から約5分で安全な高台にある運動公園に住民が避難できる対策などを実施しています。

串本町では地震発生後、短時間で津波が来襲し、現状の海岸施設で津波を防ぐことは困難であるほか、被害軽減や災害時要援護者のための自助・共助、将来を見据えた長期的な津波対策も重要であるとの認識から、①「揺れたら逃げる」の徹底、②安全に避難ができるまちづくり(避難困難地域の解消)、③地域で取り組む防災対策、④津波に強いまちづくり―といった4つの津波防災対策の基本方針を定めています。

事例②【きめ細かな“総力戦”の対策】黒潮町(高知県)

平成24年3月に国が公表した「「南海トラフの巨大 地震による震度分布・津波高の推計」で、最大震度7・最大津波高が34.4mという、日本一厳しい数値が出た黒潮町(高知県)では、「総力戦」をキーワードに、20項目にわたるきめ細かなとした「防災文化(ソフト事業)」と「防災文明(ハード事業)」の構築を目指した具体的な整備事業や施策などを実施し、バランスがとれた「防災に強いまちづくり」を進めています。

たとえば、避難場所になっている高台に通じる階段には、素早く避難できるよう、手すりには畜光材を使用し、曲がり角には照度センサーを設置したほか、階段の幅は1.8mと広くとり、住民が協力して子供やお年寄りの手を引いたり、担いで登ることも想定してつくられています。土木学会と協働で地震で停電になった際も安全・確実に住民が高台に避難できることを目指した「暗闇時高台避難の誘導に関する実験」も実施しています。

黒潮町における南海トラフ地震・津波の防災計画は、避難をあきらめてしまう「避難放棄者」を出さないという基本理念をもって構築されています。

事例③【車による避難訓練】山元町(宮城県)

東日本大震災で多大な被害を被った山元町(宮城県)では、避難路の状況等のほか地域の実情を踏まえ、避難者が安全かつ確実に避難できる方策をあらかじめ検討するほか避難路等を整備などを目的とした具体的かつ実践的な避難訓練として「自動車による津波避難訓練」を実施しています。

同町では、地震発生時の避難について、原則徒歩での避難を周知していますが、避難行動要支援者など、徒歩で避難困難な場合については自動車による避難についても選択肢としています。また、海岸から平坦な地形が続き、徒歩で高台に到達するのは、時間がかかるといった地域事情もあり、車による避難経路を検討するため、この訓練が実施されました。

自動車による津波避難訓練は、津波到達時間・避難場所までの距離・避難行動要支援者の所在・避難路の状況等のほか地域の実情を踏まえ、避難に伴う危険の軽減方策を図る目的で実施されたものです。

避難訓練は住民及び工事関係車両も含めて実施され、県防災ヘリコプターによる上空からの渋滞箇所の確認や、交差点での避難経路選択の状況把握、渋滞の発生が予測される地点での交通量調査等も実施しました。

従来、津波からの避難では車を使うと渋滞を招いて逃げ遅れるおそれがあるとされていましたが、現在、中央防災会議は徒歩避難を原則としつつ、移動が困難な高齢者らや、避難所が遠く離れている場合などは車による避難を容認しています。

亘理町(宮城県)でも同様の自動車による避難訓練を平成25年に全国で初めて実施しています。

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地震などの自然災害が起きた際に住民の安全・安心を守る対策について、先進的な自治体トップや担当者、支援企業に取材した「自治体通信Online」掲載の事例記事を紹介します。是非、参考にしてください。




<参照元>
中央防災会議「大規模地震防災・減災対策大綱」
http://www.bousai.go.jp/jishin/pdf/daikibo.pdf
浜松市「津波防災地域づくり全国先進事例集」
https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/kiki/disaster/bousai/documents/02_siryou-2.pdf
串本町「串本町津波防災対策本計画」
https://www.town.kushimoto.wakayama.jp/bousai/keikaku/files/kihon_low.pdf
黒潮町「第4次 黒潮町南海トラフ地震・津波防災計画の基本的な考え方」
https://www.town.kuroshio.lg.jp/img/files/pv/bousai/2016/jisintunamibousaikeikaku_kangaekata04.pdf
山元町「山元町地域防災計画」
https://www.town.yamamoto.miyagi.jp/uploaded/attachment/1835.pdf

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