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災害時のタイムラインについて【自治体事例の教科書】

災害時のタイムラインについて【自治体事例の教科書】

災害が発生した際、その状況に応じた柔軟な対応を行うことはとても重要です。さらにはスピードが求められることが少なくありません。そのため、災害が起こってからではなく、災害が起こる前にある程度どのような対応を行うのかを決めておく必要があります。災害発生時に起こりうることをあらかじめ想定しておき、誰がどのような行動をとるべきなのか、時系列でまとめた防災計画のことを「タイムライン」と言います。


災害時のタイムラインについて、日本ではどのような内容が取り決められているのでしょうか。地震、台風・大雨等による水災害、豪雪による雪災害などさまざまな災害が考えられますが、国土交通省によるタイムライン策定について見てみましょう。

【目次】
■国土交通省_タイムライン
■国土交通省_タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)
■国土交通省_災害対応のスケジュール表“タイムライン"

国土交通省_タイムライン

国土交通省ホームページの「タイムラインを作る」より、タイムラインの策定手順についてご紹介します。河川の多い日本では、水災害を対象にタイムライン策定を進めてきました。大雨による河川の増水による危険はもちろんですが、水災害以外の災害が起こったときにもこのタイムラインが活用される機会があるかもしれないことから、タイムラインが幅広く普及することが望まれています。

タイムライン策定の具体的な流れは、以下7つのステップによって行われます。

ステップ1・対象とする自然災害や解決したい課題を設定する
ステップ2・防災関係機関の抽出と検討を行う場を設置する
ステップ3・対象災害の想定とイメージを共有する
ステップ4・何を実施すべきか、防災行動の抽出を行う
ステップ5・何を実施すべきか、防災行動の整理を行う
ステップ6・防災行動をどの機関・誰が担当するか、いつ開始するのかという時期を決定する
ステップ7・とりまとめ

タイムラインを活用し、災害が発生した際に対応を行い、その後災害対応時の内容とタイムライン内容をふりかえり、そのときの課題や反省を生かすためにステップ1に戻ります。このような流れで進められるタイムライン策定ですが、国内では平成29年6月までに、国管理河川の沿線市町村におけるタイムライン策定が完了しており、この対象になっているのは全国730市町村です。

同ホームページではその他のタイムライン事例についても多く公開されており、過去に起こった水災害をもとにしたタイムライン策定はもちろん、今後起こるとされている南海トラフ地震の計画なども併せて掲載されています。今後もさまざまな災害が発生すると思われますが、その際に誰が・いつ・どのように適切に行動ができるかどうか、このようなタイムラインを策定しておくことで一定の効果が得られるでしょう。

国土交通省_タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)

タイムライン策定の基となる資料が、平成28年8月に策定された国土交通省による「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)」です。

平成26年1月、水災害に関する防災・減災対策本部を設置したことをきっかけに、その後大規模な洪水・高潮による被害を最小化するための対策を検討してきた国土交通省。その後、多数の機関が連携して本格的なタイムラインを全国展開すべきだとし、これまでの取り組みから得られた知見を分析・整理したのが、この「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)」です。

まず、タイムラインを構築するにあたって必要なのが災害の発生時点の設定です。タイムラインは一刻を争う緊迫した状況の中、どのような対応をすべきかを取りまとめたもののため、それぞれが決められた防災行動を実施するタイミングを合わせる必要があるからです。これを「ゼロ・アワー」と言い、防災行動に必要な時間を「リードタイム」と言います。ゼロ・アワーは台風が上陸した時点だけでなく、堤防が決壊した時点、水が堤防を越えた時点など、災害が発生するきっかけ(トリガー)が起こったときも対象になっています。

前述のタイムライン策定手順のより詳細な内容もこの指針に記載されており、防災機関や市町村で連携をとり、適切な情報共有ができるよう一つずつステップを踏んでいく必要があることが示されています。たとえば、タイムライン策定のステップ2「防災機関抽出と検討の場の設置」では、災害が大きくなればなるほど、ひとつの組織だけでできることが限られることに留意しながら、課題を解決するために必要な組織を取りまとめなくてはなりません。市町村や都道府県警察、全国の電力会社や放送局、自衛隊など幅広い関係機関を抽出し、必要に応じて防災に精通した学識経験者などをアドバイザーとして招くこともあります。

タイムラインを策定する対象となる災害はさまざまです。地震・水災害・雪害・火山噴火が考えられますが、それぞれの災害で非常に多くの被害状況を想定できます。たとえば、地震の場合は揺れによって建物が倒壊したり液状化が起こったりすることが考えられますが、二次災害として火災や津波、その後漂着したごみの大量発生や孤立地域の発生などが考えられます。このように、一つの災害で非常に幅広い状況を考慮した上でタイムライン策定を行う必要があるため、災害状況を具体的にイメージして関係機関での共有が必要です。被災経験がない地域でも、ハザードマップポータルサイトや水害レポートを用いて、具体的にどのような被害が起こりうるかを想定しなくてはなりません。

そして、実施すべき防災行動を抽出し、整理します。このステップで決められたことが実際に災害発生時に行われる行動となり、どのような状況になったときに誰がどうやって指示を出すかを決める作業です。たとえば、台風上陸時に各地区の被災状況を電話で確認する、台風の接近に伴い鉄道の運行停止手順を確認・公表するなど、どのような状況下で対応を行うかを決め、アウトプットしていく作業を行います。この内容をもとにタイムラインを構成し、実際の災害発生時に対応を行うという流れです。

また、実際にタイムラインを策定していたことによる実績もあります。平成27年関東・東北豪雨災害時、避難勧告の発令割合について見てみると、タイムラインが策定されていない地域(市町村)では発令率が33%にとどまっていますが、タイムライン策定済みの地域では発令率が72%になっています。タイムライン策定済みの地域は、早めに適切な指示を出すことができ、要援護者への方に対しても余裕を持って対応できたという市町村の声が上がっています。災害時、住民に対して避難勧告等の直接的な呼びかけを行うのは市町村です。そのため、タイムラインをあらかじめ策定しておくことで、市が一体となって落ち着いて対応ができたり、早めに設備点検を行うことができたり、大きなメリットが得られました。

国土交通省_災害対応のスケジュール表“タイムライン”

実際のタイムラインがどのようなものかを確認できるのが、国土交通省による「災害対応のスケジュール表“タイムライン”」です。これは台風による災害発生を想定した例ですが、国土交通省・交通サービス・市町村・住民の4つの区分に分けて、それぞれがやるべきことを時系列で可視化しています。

台風上陸前(3日前などで設定)は国土交通省が予報や記者会見を行い、実際に台風が上陸したタイミングをタイムラインに表し、警報発令やはん濫危険情報を市町村へ伝えるなどします。交通サービスはあらかじめ運行停止を行う旨を周知などの措置をとり、市町村は国土交通省からの指示に従い、早期に広域避難を行うとともに避難勧告・指示を出すなどの対応ができます。このように、タイムラインを策定しておくことでいつ・誰が・何をするかがわかり、災害時にも慌てず行動をとることができるのです。

〈参照元〉

国土交通省_タイムライン
(http://www.mlit.go.jp/river/bousai/timeline/index.html)

国土交通省_タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針(初版)
(http://www.mlit.go.jp/river/bousai/timeline/pdf/timeline_shishin.pdf)

国土交通省_災害対応のスケジュール表”タイムライン”
(http://www.mlit.go.jp/river/bousai/timeline/pdf/timeline01_1601.pdf)

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