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多言語音声翻訳について【自治体事例の教科書】

多言語音声翻訳について【自治体事例の教科書】

訪日外国人の数が年々増加している昨今、世界各国の人々と瞬時に意思疎通を図れる「多言語音声翻訳」の需要は高まる一方です。国も東京オリンピック・パラリンピックに向け、クラウド型翻訳サービスプラットフォームの構築・普及に力を入れています。このページでは、多言語音声翻訳の最新情報や、各地での導入事例などをご紹介します。

【目次】
■多言語音声翻訳の概要
■多言語音声翻訳の背景と目標
■多言語音声翻訳の実証・導入事例
■多言語音声翻訳プラットフォームの最新情報
■多言語音声翻訳まとめ

多言語音声翻訳の概要

多言語音声翻訳とは、スマートフォンやタブレット端末などに音声を入力すると、瞬時に外国語に翻訳されて音声が出力されるシステムのことです。そこには「声を認識して文字に変換する音声認識技術」「その文字を翻訳する機械翻訳技術」「翻訳された文を多言語で音声出力する音声合成技術」の3つの技術が利用されています。

現在は、インターネットを利用した「クラウド型翻訳サービスプラットフォーム」が主流となっており、主にスマホアプリとして開発・提供されています。中には10種類以上の言語に対応したアプリもあり、相手の国籍に関わらず同じアプリを使って会話することも可能です。

これまでの学習歴によらず、すべての人が自国語を使って世界中の人と瞬時にコミュニケーションを図れるメリットは大きく、国際化社会においては必須のテクノロジーと言えます。既に全国各地で実証も始まっており、外国人観光客のさらなる増加や、満足度の上昇につながることが期待されています。

多言語音声翻訳の背景と目標

日本滞在中に困ったこととして、多くの外国人が「言葉が通じないこと」や「コミュニケーションの不通」を挙げています。日本では、学習年数に反して英語に苦手意識を持つ人が多いことは周知の事実ですし、世界の主要言語とは語源も構造も異なる日本語を外国人が習得することも容易ではありません。かといって、いちいち辞書を調べて会話するのも手間と労力がかかります。

そこで大きな助けとなるのが、多言語音声翻訳です。訪日外国人の数が増加し、東京オリンピック・パラリンピックも控えている現在、特にその必要性は増しています。政府は2018年4月に取りまとめた「地域IoT実装推進ロードマップ(改定)」の中で、多言語音声翻訳の2020年度までの工程・手段を以下のように設定しました。

●医療やショッピングなどの旅行分野以外の会話の翻訳精度を向上させ、訪日外客の多い10言語(日・英・中・韓・タイ・ベトナム・ミャンマー・インドネシア・フランス・スペイン)について実用レベルの翻訳精度を達成する。
●産学官の連携により、多様なアプリケーションの社会実証を集中的に実施する。

2020年度までに達成すべき指標として、「翻訳システム導入機関数100」を掲げています。

東京オリンピック・パラリンピック大会が開催されるまでに、社会実装を進めていきたい考えです。また、今回実装化された翻訳技術やシステムは東京オリンピック・パラリンピック開催後も生かされ、「言葉のバリアフリー」が継続的に実現していくことが願われています。

多言語音声翻訳の実証・導入事例

多言語音声翻訳は、各地ですでに実証・導入が始まっています。その一部と成果などをご紹介します。

●自治体翻訳システムによる自治体窓口業務の効率化(神奈川県綾瀬市)
約3,400人の外国人が居住する神奈川県綾瀬市は、人口に占める外国人比率がおよそ4.3%と、県内でも2番目に高い割合です。そこで、市役所をはじめとする自治体窓口での「言葉の壁」をなくすべく、音声翻訳システムの実証実験に参加。本庁総合案内をはじめ、庁内の6カ所に7台のタブレット端末を置き、英語とベトナム語の2言語の自動翻訳の実証利用を行いました。

結果的に、日本語でのコミュニケーションが難しい外国人に対してスムーズに各種案内や事務手続きができるようになったことが報告されています。また、得られたデータをAIに学習させることで、今後さらに正確な案内ができることが期待されています。

●交通機関での導入事例
訪日外国人が必ず利用する公共交通機関は、多言語音声翻訳の必要性が特に高いことから、導入・実証が積極的に進められています。たとえば成田空港では、ターミナル内の巡回案内スタッフが多言語音声翻訳アプリ「NariTra(ナリトラ)」を使って、観光客への案内を実施。現在、英語・中国語・韓国語の3言語に対応しています。

その他、京急電鉄・東京メトロ・上信電鉄でも多言語音声翻訳が導入され、多くの駅に普及が始まっています。

●救急ボイストラ(全国の消防本部)
訪日外国人数の増加にともない、外国人傷病者の搬送件数も増えています。しかしコミュニケーションが思うように取れないことから、現場滞在時間が全体平均に比べて3~6分長いことが問題視されていました。

そこで役立てられているのが、国立研究開発法人「情報通信研究機構(NICT)」と消防研究センターが開発した多言語翻訳アプリ「救急ボイストラ」です。救急隊用の46の定型文が登録されており、15言語への翻訳が可能となっています。2017年4月から提供が開始され、2018年12月には728本部中376の消防本部で導入されています。

●警察本部での活用(岡山県警)
忘れ物や迷子などで交番を訪れる外国人観光客が増えたことから、岡山県警本部では「情報通信研究機構(NICT)」が開発した30言語対応の音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」を装備品に組み込みました。実際に利用した警察官からは、「遺失物受理の際、アプリを使って円滑に対応できた」「迷子になっている外国人にこちらから声かけできるようになった」などの声が寄せられています。

多言語音声翻訳プラットフォームの最新情報

現在さまざまな民間企業から多言語音声翻訳アプリがリリースされていますが、その基となっているのが「情報通信研究機構(NICT)」の技術です。NICTがこれまでの多言語音声翻訳技術の研究成果として、多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」を公開したのが2010年7月。以降、さらに実証実験を重ね、現行VoiceTraは中国語とポルトガル語の方言も含めて31言語に対応しています。

上でご紹介した成田空港の「NariTra(ナリトラ)」や、消防本部で導入されている「救急ボイストラ」は、このVoiceTraを基に開発されたものです。VoiceTraは、App StoreまたはGoogle Playから誰でも無償でダウンロードできます。

また、総務省の研究による公共機関向けの「多言語音声翻訳プラットフォーム」も始動しています。総務省が2015年度から進めてきた研究開発が実を結び、2019年4月、受託者である株式会社みらい翻訳が「多言語音声翻訳プラットフォーム」の一般提供を開始しました。現在、日本語と10言語間の音声翻訳に対応しています。

多言語音声翻訳まとめ

訪日外国人数は、毎年のように過去最多を記録し続けています。来るべき東京オリンピック・パラリンピックに向けても、世界各国の人とスムーズなコミュニケーションを可能にする多言語音声翻訳の技術は必要不可欠です。総務省は今後も関係団体や事業者などと幅広く連携をとりながら、多言語音声翻訳システムの利用拡大を目指していくものと思われます。近い将来には、外国人観光客が全国どの施設に行ってもコミュニケーションに困らない日が訪れるかもしれません。今後のさらなる翻訳精度の向上とシステムの普及に期待したいところです。

〈参照元〉

総務省_地域IoT実装推進ロードマップ
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000453151.pdf)

総務省_多言語音声翻訳
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000595976.pdf)

総務省_学校・自治体窓口で外国人との意思疎通をスムーズに
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000618188.pdf)

総務省_総務省ホームページ
(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000276.html)

総務省_多言語音声翻訳の動向と課題
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000649747.pdf)

神奈川県綾瀬市_綾瀬市で暮らす外国人
(https://www.city.ayase.kanagawa.jp/hp/page000033200/hpg000033135.htm)

東京都オリンピック・パラリンピック準備局_2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応評議会ポータルサイト
(https://www.2020games.metro.tokyo.lg.jp/multilingual/)

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