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職員採用の多様化における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

職員採用の多様化における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

従来の公務員試験を廃止して面接重視に切り替えるなど、自治体職員の採用多様化が進んでいます。これからの自治体職員採用のあり方とは? 事例などを通じて、そのポイントを探りました。

 
【目次】
■職員採用の多様化が進んでいる背景とは
■事例①【根底から覆すような手法】生駒市(奈良県)
■事例②【公務員試験対策は不要】明石市(兵庫県)
■事例③【受験者7倍増の取り組み】羽島市(岐阜県)
■総務人事関連ソリューションまとめ

職員採用の多様化が進んでいる背景とは

地方分権の推進に伴い、事務・権限が各自治体に移譲されるとともに、市町村合併や住民ニーズの多様化などにより、市区町村は住民に最も身近な行政主体として、これまで以上に自立性の高い行政主体となることが求められているとされます。

一方で、事務や権限が増えたことで市区町村が実施しなければならない業務量は増加しているものの、定数管理や民営化・指定管理者制度の導入などによる行財政改革の推進により、地方公共団体の総職員数は減少傾向にあります。

こうした“矛盾”を解決するため、公益財団法人 東京市町村自治調査会が平成26 年に都の自治体向けにまとめた「職員の採用と育成手法に関する調査報告書」は、「少数精鋭による行政運営が必要となっている」と分析します。

しかし、同調査報告書は“少数精鋭”による行政を運営の推進を妨げている事象のひとつとして採用の課題を指摘し、具体的な問題点として以下の指摘をしています。

まず、公務員試験の受験者の中には「合格することが目的となってしまい、実際の仕事の内容を十分に理解しないまま入庁」しているケースがあると分析します。その要因は「従来の筆記試験や面接試験による画一的な採用手法に限界が生じている」ためだとし、「地方分権や行財政改革に対応できる多様な人材を確保するための情報発信や求める人物像を採用する手法の確立ができていない」を現状に警鐘を鳴らします。

そして、今後の採用手法として、従来の公務員採用試験だけではなく、
①より多くの人が受験しやすい試験制度の導入
②人物重視の一層の徹底
③情報発信などの徹底
という3点を提言します。

次に、さまざまな工夫を行い、職員採用の多様化を促進している事例を紹介します。

事例①【根底から覆すような手法】生駒市(奈良県)

生駒市(奈良県)は、
①採用試験の抜本的な見直し
②採用マーケティングの導入
③わかりやすいビジョン発信
といった、従来の手法を根底から覆すような手法で職員採用を進め、受験者数はそれまでの4倍以上の毎年1,000人超となるなどの成果を出しています。

採用試験の見直しでは、まず公務員試験を止めました。かわって導入したのが民間企業でも広く採用されている適正試験のSPI。これにより、公務員にも民間企業にも興味がある学生を集められるようにしました。

採用マーケティングについては、メッセージ性とインパクトが強い採用ポスターを導入したほか、職員採用サイトも開設。若手職員の活躍ぶりを伝える職員採用ムービーなどを発信し、「生駒市役所で働く魅力」を訴求しています。

ちなみに、2019年の採用ポスターのキャッチコピーは「『お役所仕事』と本品(編集部註:本品とは生駒市役所のことを指している)を絶対に混同しないでください」という強烈なもの。

ビジョン発信では、市長自ら「生駒市役所を日本一の職場に」「チーム生駒市役所」「プロフェッショナル集団」「全国一、最強の自治体に」など、わかりやすくて力強いメッセージを打ち出しています。

事例②【公務員試験対策は不要】明石市(兵庫県)

明石市(兵庫県)は、「公務員試験対策は不要です」をキャッチフレーズに、より優秀な人材をより多く採用するため人物重視の採用試験を行っています。

具体的には、1次試験はエントリーシートの作成のみで、2次試験のペーパーテストは択一式の教養試験と公務員試験の選択式としています(平成30年度までは教養試験のみ)。面接を重視しており、筆記試験で50点以上を取った人には面接試験を実施しています。

また、同市では認知症などで成年後見人や保佐人がいる職員も失職しないよう条例で定めました。地方公務員法では、家庭裁判所で被後見人や被保佐人の認定を受けると業務を行う適正がないとして地方公務員になることができないと定められていますが、自治体が条例で定めればその限りではない、という規定があります。同市では被後見人になったからといって職員として活躍する道を閉ざすのではなく、平等な社会参画という観点から総合的に検討し、この条例を制定しました。

また、令和2年度採用から事務職の上限年齢を34歳から40歳に引き上げしました。すでに技術職については平成31年度採用から上限年齢を40歳に引き上げています。上限年齢引き上げには、民間企業や他市町との獲得競争が激しくなっていることが背景にあり、より多様な経験を積んだ人材を採用するねらいもあるようです。

事例③【受験者7倍増の取り組み】羽島市(岐阜県)

羽島市(岐阜県)は平成31年度採用から「公務員試験対策不要」を打ち出しました。職員採用の門戸を広く開いたことで、受験者数が前年度比で約7倍に増えるなどの効果が出ています。また、高校卒業程度の技術系職員やスポーツ・文化・芸術等で優れた成果を収めた人等の採用も積極的に進めています。

採用試験では、従来の公務員試験に替えて、知的能力と学力・応用力を測定する基礎能力試験を実施します。民間の就職活動を行っている人や企業等で働いている人も受験しやすいようにして人物本位の選考を行うためです。

また、令和元年度からは就学前の子どもを持つ職員の勤務時間を短縮する「部分休業制度」と同内容の「子ども時間」制度を実施。小学生の子どもを持つ職員も毎日最大2時間の休暇(無給)を取得できるようなったことから、市では子育て中の人の受験も呼びかけています。

ほかにも受験者数増を図る施策として、同市では多くの自治体が試験を実施する統一試験日ではなく、独自日程で試験を実施しています。

総務人事関連ソリューションまとめ

人材育成などの総務人事関連のソリューションをまとめています。是非、参考にしてください。

 


<参照元>
東京市町村自治調査会「職員の採用と育成手法に関する調査報告書」
生駒市ホームページ
明石市ホームページ
羽島市ホームページ    等

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