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SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

2019/7/31

SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

複雑な社会課題を解決に導く新しい行政手法として注目されているSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)。実際の効果やその仕組みとは? 事例などを通じて、そのポイントを探りました。

 
【目次】
■SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)とは
■事例①【特別養子縁組事業】横須賀市(神奈川県)
■事例②【アウトリーチの就労支援】尼崎市(兵庫県)
■事例③【QOL向上の可能性を実証】福岡市(福岡県)など7自治体

SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)とは

SIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)とは、行政が解決ノウハウをもっていない社会課題などについて、民間資金を活用して解決を目指す公民連携の取り組みです。

経済産業省がまとめた「新しい官民連携の仕組み:ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)の概要とその動向」によれば、SIBが向いている領域とは、
①民間事業者の方が効率的に実施可能
②革新的な取組によってコスト削減効果の変動が想定
③社会的便益に関して不確定要素が多く自治体の既存資金では実施が困難

これら3つの条件を満たした地方自治体が単独あるいは連携して実施する事業について、「事業者が自己資金を投入して実施することが難しい場合」だとしています。

国内で具体的にSIBが実施されている事業は、糖尿病性腎症者を対象とした食事療法の保健指導による人工透析移行の予防、大腸がん検診未受診者を対象とした受診勧奨による大腸がん早期発見者数の増加など、おもにヘルスケア分野を中心とした事例があります。

海外では、若者就労支援、生活困窮者支援、受刑者再犯防止などの社会課題解決を目的としたSIBが実施されており、今後、国内でも多様な領域でSIBが実施されていく可能性がありそうです。

次に、平成27年から28年かけて推進され、結果の評価も実施された国内のSIB事例を紹介します。

事例①【特別養子縁組事業】横須賀市(神奈川県)

横須賀市(神奈川県)は特別養子縁組事業についてSIBを実施しました。特別養子縁組は近年、民間団体が推進してきた分野ですが、公民連携で推進することで要保護児童の安定的養育の実現のために有意義な取り組みとなるのではないかとの観点でSIBにより事業開始されました。

横須賀市内の望まない妊娠に悩む実親と市外の養親マッチングを主に実施。年間4件以上の特別養子縁組成立を目指しました。4件達成した場合の総便益は約3,460万円、総事業費約1,830万円と見積もり、これらを差し引いた行政収支改善は1,630万円を見込みました。

特別養子縁組の実行主体は民間団体で、SIBの本来の仕組みでは成果に応じて行政が事業費と成果報酬を後から支払いますが、このケースはパイロット事業のため日本財団が資金提供しました。

結果は、特別養子縁組成立件数は3件で当初目標の4件には届かなかったものの、一定の成果が見られました。これを経済的価値に換算すると、行政収支で523.1万円の削減となりました。一方で、特別養子縁組の成立を目指した結果、家庭復帰が実現したケースおよび里親委託されたケースがそれぞれ1件ずつありました。これらは特別養子縁組が目指す家庭養護という本質的な目的に適っている事業成果だと言えるでしょう。

児童福祉行政への民間介入は関係者間の不信感がネックになることが少なくないとされています。しかし、この事例からは、受益者である家庭養護を必要としている子どものための施策が公民連携で円滑に実施できる可能性を示した、と言えそうです。

事例②【アウトリーチの就労支援】尼崎市(兵庫県)

尼崎市(兵庫県)は支援の申し出をしない引きこもりの若者を対象に、積極的な支援を働きかけるアウトリーチの就労支援について、認定NPO法人に事業委託するSIBを実施しました。

委託内容は、生活保護受給中で就労支援に至る手前の状態の市内の若者を対象に、認定NPO法人の訪問支援員が市のケースワーカーと協働でアウトリーチを行い、就労準備支援事業など既存の就労支援プログラムへ参加可能な状態まで引き上げ、つなぐというものです。年間200名を対象にアウトリーチを行い、結果6名が就労、4名の就労可能性が向上することを目指しました。

目標を達成した場合の尼崎市の得る総便益は約1,327万円、総事業費約1,300万円、行政収支は約27万円の改善を見込み、国の得る便益を考慮した行政収支は約4,400万円の改善と算定しました。また、1年間という実施期間に全ての対象者の就労が実現する可能性は低いと想定し、対象者に生じた「就労に向けたポジティブな変化」も評価し、経済価値換算しました。

結果は、アウトリーチ成功者数は20名で、そのうち就労まで至った対象者はいませんでした。しかし、対象者の半数に既存の就労支援プログラムへの参加を含む就労可能性の向上が見られたことから、一定の成果が得られました。

この事例ではケースワーカーにインタビューを行い、定性評価も実施しています。そのインタビュー結果では、ほぼ全てのケースワーカーが今回のようなアウトリーチの必要性や民間団体の持つノウハウの価値について高く評価していることがわかりました。

また、支援対象者および家族へのアンケート調査結果からは、対象者のコミュニケーションの向上や外出に代表される活動の変化など、事業実施によって対象者の人生そのものが変わる強いインパクトがあったこともわかりました。

事例③【QOL向上の可能性を実証】福岡市(福岡県)など7自治体

福岡県の4市(福岡市、大川市、うきは市、宗像市)と熊本市(熊本県)、天理市(奈良県)、松本市(長野県)の7自治体は、合計で要介護認定者約100名、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者約300名を対象に、学習療法や脳の健康教室にノウハウと実績をもつ民間企業に認知症予防事業を委託するSIBの実証実験を実施しました。

すでに学習療法や脳の健康教室は多くの民間介護施設などに導入されており、認知機能維持・予防・改善の効果が以前から確認されていました。そのため、この実証実験の目的は学習療法などの認知症予防効果の測定そのものではなく、ヘルスケア領域で実際にSIB事業を実施することで課題を抽出することに設定し、今後のSIB組成に役立てるための官民連携という位置づけで実施されました。

実証実験の結果からは、学習療法や脳の健康教室を実施することでひとりあたり年平均20万円近い介護保険サービス利用額の節減効果があるという結果が示され、コスト削減分が可視化されたことで、よりよい認知症予防サービス実施を行った介護施設に対し介護報酬の減額を補填・上乗せでき、支払の正当性を担保しつつ成果連動型支払を適用できる可能性が示唆されました。

認知症予防に積極的に取り組む施設を報酬面で優遇する施策を実施することができれば、結果として認知症で苦しむ高齢者を減らすことになり、住民のQOL(生活の質)向上につながります。7自治体が実施したSIBの実証実験は介護予防分野の発展に寄与するものだと言えそうです。


<参照元>
首相官邸「新しい官民連携の仕組み: ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB) の概要とその動向」
日本財団「SIB実証事業報告書公開」
横須賀市ホームページ
尼崎市ホームページ
福岡市ホームページ    等

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