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森林環境譲与税について【自治体事例の教科書】

2020/07/03

森林環境譲与税について【自治体事例の教科書】

新しい国税として森林環境税が創設されることが決まり、その財源を使用する森林環境譲与税の運用が平成31年から始まりました。森林環境贈与税が何を目的に始められ、どんな用途で使用されているのか、そして日本の将来にどのような影響が及ぶと見込まれているのか、詳しくご紹介します。

【目次】
■森林環境譲与税とは
■森林環境譲与税が創設された背景
■森林環境譲与税の仕組み
■新しい森林管理システムの実現を目指す
■森林環境譲与税導入により見込める影響

森林環境譲与税とは

平成30年12月の「平成31年度税制改正の大綱」閣議決定を経て、森林関連法案が改正され、市町村による森林整備に必要な財源を確保するために創設されたのが、森林環境税と森林環境譲与税です。「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」によって定められました。

森林環境税は、国内に住所を持つ個人に対して課税される国税です。税率は年額1,000円で、都道府県を経由して税収の全額が交付税と譲与税配付金特別会計に直接払込みされます。令和6年1月1日に施行予定です。

森林環境譲与税は、森林環境税の収入額全額に相当する額が、市町村や都道府県に向けて譲与されます。つまり、国民から平等に集めた税金が各市町村等に回り、環境の維持や向上に役立てられることになります。同税は、平成31年4月1日に施行済みです。

森林環境税は令和6年度から課税されるようになりますが、国民からの納税が始まる令和5年までの間は、交付税及び譲与税配付金特別会計における借入金が充当されることになり、すでにこの財源を活かした取組は全国各地で始められています。

森林環境譲与税が創設された背景

日本では、温室効果ガス排出削減目標を京都議定書によって定めており、石油石炭税の税率を引き上げるなどの対策を施し、一定の成果を上げることには成功しました。しかしながら、それらの対策は目標達成に至っていません。この背景には、森林吸収源対策についての国民の理解が広まっていないことや、国と地方自治体との調整が不調に終わっていることがあり、これまでは国税新設という決断に到達することが無かったのです。

そんな中、平成27年の「パリ協定」採択や、令和元年にも見られたオーストラリアの大規模な山火事に代表される山地災害に端を発し、国民の自然に対する関心も自然と高まり始めることになります。前述したパリ協定以降は、日本としての温室効果ガス排出削減目標の達成に加え、災害防止を目的とした森林整備にかける資金を確保することを目的に据え、安定した地方財源の確保が最重要課題になりました。

森林に関する問題は国単位ではなく、より現場と密接した市町村が主体となることが理想的であり、厳しい環境に置かれている森林について市町村が管理する「新たな森林管理システム」の構築で同意します。

これらの時代背景を受け、平成29年度の与党税制改正大鋼において具体的な国税導入プロジェクトがスタートし、平成31年度に森林環境譲与税を導入、平成36年(令和6年)に森林環境税を導入することが決まりました。

森林環境譲与税の仕組み

財源となる森林環境税は国民から等しく徴収することになり、国に集められた税金を森林環境譲与税として各市町村や都道府県に譲与することにより、自然に対するさまざまな支援活動に向けて還元します。市町村と都道府県間における譲与割合は9:1が原則になりますが、制度のスタート直後に限り、経過措置として市町村8:都道府県2という割合で譲与され、その後は段階的に市町村の割合を高めるように移行していきます。

森林環境譲与税の使途としては、第一に間伐や路網などの森林整備に対して充てられます。路網整備は林業の生産性向上を図るために必要不可欠な事業であり、対災害性という面でも重大な役割を果たすことにもなります。それに加えて人材育成や担い手の確保、そして木材利用の促進と普及啓発に対するいずれかの用途が使途として認められており、各都道府県はこれらの支援を求める市町村に対して支援を実行します。

また、これらの使途に関しては国民に向けて広く共有することが義務付けられています。原資となる森林環境税は国税として徴収されるものであるため、各市町村など自治体は使途を公表しなければなりません。

新しい森林管理システムの実現を目指す

日本全国の人工林においては主伐期を迎えつつあると見られていますが、一方で後継者不足等の問題が重なり、森林所有者・森林管理者のモチベーションは低下の一途をたどっていると指摘されています。この結果として森林の手入れが行き届かず、木材生産という分野においても多大なる悪影響が生じつつありますが、森林環境譲与税を取り入れることにより森林管理システムの一新を目指すことができます。

この新システムにおいては森林所有者に適切な森林管理を促すことを目的に、伐採や造林、保育といった作業を適時行うように明確化し、森林管理者による管理が何らかの事情により不可能な場合は、当該の森林を市町村に委ねるよう求めます。その上で経済的な価値を持つ森林と判断した場合には、実力と意欲が伴う経営者に対して経営を再委託し、経済的価値が伴わないと判断される森林については各市町村が管理を行うという取り決めが定められました。

なお、所有者不明な森林が多いことも全国でしばしば問題になっていますが、こういった取り扱いが難しい案件に関しても、今後は市町村へ委託することにより監理を代行できるようにする改革案を検討中です。ここで生じる市町村の森林管理では公的な資金が必要不可欠になりますから、その費用の一部として森林環境譲与税が利用されることになり、従来と比較してより安定性が高く、優れた管理を可能にする枠組みが設けられています。

また、人材育成という局面でも森林環境贈与税の一部が使われることになるため、後継者不足などの問題解決に向けた一手を打つことができ、地球環境全般の向上に貢献できる人材を輩出する基盤を整えることも可能にしています。

森林環境譲与税導入により見込める影響

森林環境税の徴収が始まる令和5年までの間は、交付税及び譲与税配付金特別会計により予算を前借りする形を取ることから、森林環境贈与税として還元される金額は令和3年までは200億円、令和6年までは300億円の予算に止まります。しかしそれ以降は段階的に市町村・都道府県に回る予算は増加し、令和15年以降の予算は600億円に固定されることが予定されているため、安定した事業の継続を見込むことが可能で、この仕組みは民間経営者の未来を明るくしています。

すでに各地方自治体で森林環境贈与税の有効活用がスタートしており、自然災害への抵抗力の向上や土壌浸食・流出の防備、水源涵養機能の向上、生物多様性の保全、そして二酸化炭素の吸収量増加などの事業に役立てられてきました。

世界的な目標でもある二酸化炭素の削減を目指す上で貴重な取組であることは当然として、日本が今後も向き合わなければならない自然災害に強い町づくりを行えること、そして美しい自然を未来に残せることなどの好影響を見込めます。これまでは手を付けることができなかった森林に対しても管理を行き届かせられる仕組みが作られることにより、地方都市全体の保全、ひいては雇用促進などにもつなげることも可能で、地域間の格差を埋める一手にもなると期待されています。

〈参照元〉

林野庁_森林環境税(仮称)と森林環境譲与税(仮称)の創設
(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kouhou/kouhousitu/jouhoushi/attach/pdf/3002-7.pdf)

総務省_森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律の概要
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000610954.pdf)

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