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栽培漁業における自治体の課題と取組事例【自治体事例の教科書】

2019/4/26

栽培漁業における自治体の課題と取組事例【自治体事例の教科書】

気候変動などで水産資源の減少が報じられるなか、人間の管理下で魚介類の生息数を増やす栽培漁業が消費者からも注目されています。その活動は水産資源の持続的な利用だけではなく、地域にさまざまな価値をもたらす場合もあります。公民連携で地域活性につながる栽培漁業のあり方とは? 事例などを通じて、そのポイントを探りました。
 
【目次】
■栽培漁業における第七次基本方針とは
■事例①【“幻のブランド魚”が復活】伊達市(北海道)
■事例②【地域活性の核】富山市(富山県)
■事例③【地域舵を向上】桑名市(三重県)

栽培漁業における第七次基本方針とは

栽培漁業とは、魚介類を卵から育て水産資源の回復を期する取り組みです。自然界の魚介類の数を増やす目的で魚を育てる点が養殖とは異なるところ点です。

栽培漁業の基本方針は、約5年に1度開かれる水産政策審議会の意見をまとめ、最終的に農林水産大臣によって策定されます。現在は平成27年度に策定された第七次栽培漁業基本方針に則って栽培漁業が推進されています。

第七次栽培漁業基本方針の内容は多岐にわたりますが、主な7つの推進内容を下記のとおりです。

①資源造成型栽培漁業の推進
②漁獲管理との連携強化
③対象種の重点化等による効率的かつ効果的な栽培漁業の推進
④他先種に係る継続的な実地体制の確立に向けた取り組み
⑤広域プランに基づく広域種の種苗放流の推進
⑥共同種苗生産体制の構築
⑦放流の効果の把握と生物多様性の保全への配慮

このように、人間の管理下で稚魚を育てて放流することで、水産資源の枯渇を防ぎ、持続的な利用を図ろうとしている点に基本方針の重心が置かれています。

次に、全国各地で行われている栽培漁業のなかから特徴のある事例を紹介します。

事例①【“幻のブランド魚”が復活】えりも以西栽培漁業推進協議会(北海道)

北海道えりも以西太平洋海域では、マツカワというカレイの仲間の栽培漁業が行われています。マツカワはもともと漁獲量が安定していた魚でしたが、1970年代に“幻の魚”と呼ばれるほどその数が激減しました。

再びマツカワを馴染みの魚とするために、15の漁協と20の市町村の協力で「えりも以西栽培漁業推進協議会」が設立され、平成18年マツカワの稚魚100万尾の放流事業を実施し、マツカワの栽培漁業を開始しました。その後、平成20年以降には年間漁獲量が100トン水準まで回復し、平成25年度には126トンまで増加しています。

マツカワの水揚げによる収益により、えりも以西の沿岸漁業者の経営安定化につながっています。この取り組みは全国的にも評価され、平成22年度「全国豊かな海づくり大会」の栽培漁業部門で大会会長賞を授与されました。

市場に出回っているマツカワは調査の結果、ほとんどが栽培漁業によって育てられたものだとわかっています。えりも以西海域で水揚げされたマツワカは「王鰈(おうちょう)」というブランド名で販売され、大都市圏での販促活動も行われています。

事例②【地域活性の核】富山漁協(富山県)

栽培漁業の現場は海ばかりではありません。富山市(富山県)の富山漁協は、県内を流れる一級河川、神通川に漁業権漁場を持つ漁協です。同漁協は明治17年からサケの人工ふ化放流やアユ・サクラマスの増殖事業に取り組むなど、長年、栽培漁業に取り組んできました。

また、同漁業では魚道づくりや産卵場所の保護、釣り団体や地域企業も加わった清掃活動など、神通川の環境保全活動にも熱心に取り組んでいます。子どもたちを対象にした稚魚の放流体験や人工ふ化の見学会なども行い、神通川の大切さや増殖事業の重要性を教えています。

こうした活動の成果が実を結び、神通川はアユやサクラマスが数多く遡上する川として全国的な知名度を誇り、全国から観光客が訪れます。富山漁協の活動は、水産資源の持続的な利用だけにとどまらず、地域活性の核ともなっています。

事例③【地域価値を向上】桑名市(三重県)

「その手は桑名の焼き蛤(ハマグリ)」という有名な口上(こうじょう)があるほど、桑名市(三重県)の特産品であるハマグリは全国的な知名度があります。しかし、高度成長期の埋め立てや地盤沈下による干潟の消失によって、一時期、桑名のハマグリの収穫量が激減しました。

こうした事態を受け、ハマグリ資源の復活に立ち上がったのが、赤須賀漁業青壮年部研究会です。同研究会は、種苗生産技術の確立や放流などのさまざまな取り組みを行いました。

また、漁業規制や人工干潟の造成でも中心的な活動を行い、桑名のハマグリは平成24年までに年間188トンまで水揚げ量が回復。ハマグリ資源の回復で地元を離れていた漁業関係者が赤須賀に戻るなど、地域活性化にもつながりました。

現在、研究会の活動は密漁防止のパトロール、地域住民を対象とした干潟観察会、操業・漁場見学会の実施などに広がり、地域価値の向上に貢献しています。

また、ハマグリ料理のレシピ開発を行うなど、ハマグリのPR活動も積極的に行い、これらの活動により、同漁協は平成25年度「全国青年・女性漁業者交流大会」で農林水産大臣賞を受賞しました。
 

<引用>
水産庁栽培養殖課 「第7次栽培漁業基本方針の概要」平成27年3月
水産庁 「漁村活性化優良事例集」平成26年11月    等

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