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おもてなしクラウドについて【自治体事例の教科書】

おもてなしクラウドについて【自治体事例の教科書】

日本社会のICT化が進められています。その一環として政府が推進しているのが、IoT(モノのインターネット)やクラウドを活用した「IoTおもてなしクラウド」です。外国人観光客がより快適に日本に滞在するためのこのシステムについて、くわしく解説していきます。

【目次】
■おもてなしクラウド事業の概要
■おもてなしクラウド推進の背景
■IoTおもてなしクラウドの仕組み
■おもてなしクラウドの実証例
■おもてなしクラウドまとめ

おもてなしクラウド事業の概要

IoTおもてなしクラウドとは、スマートフォンやICカードなどをクラウド上で連携させることで、外国人旅行者がストレスなく日本滞在を楽しむためのさまざまなサービスを提供するシステムのことです。IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」と訳されます。スマートフォンやタブレットをはじめ、交通系ICカードやスマートウォッチ、最近では家電に至るまで、さまざまなモノがインターネットにつながるようになりました。それにより情報の共有が行われ、私たちの生活の利便性は飛躍的に向上しつつあります。

IoTおもてなしクラウド事業では、主にスマホやICカードを利用します。外国人旅行者が自分のパスポート情報や使用言語などの情報をクラウドに登録し、それを自らのスマホやICカードと紐づけると、ホテルでのチェックインやショッピングなどの際に情報が参照され、その人に最適なサービスが提供されるという仕組みです。また、火災や自然災害が起きた時におもてなしクラウドを利用すれば、スマホやデジタルサイネージを通して、自国語による避難所情報や交通情報などを受け取ることもできます。

政府の「日本再興戦略(改訂2016)」には、外国人旅行者の一人歩きや快適な滞在を可能とするため、IoTやクラウドを用いたサービス提供・決済環境の実現などに向けた実証を行い、2020年までに社会実装化を目指すことが盛り込まれています。

おもてなしクラウド推進の背景

おもてなしクラウドは、国が総力を挙げて推進している「社会のICT化」の取り組みの一つです。もちろん、その大きな契機として2020年の東京オリンピック・パラリンピックがあります。総務省がまとめた「2020年東京大会に向けた提言(案)」では、日本がこれからも繁栄を続けるためにはICTを利用した改革が必要であり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックはその成果を世界に示す大きなチャンスである、と述べられています。特に重要な5つの重点テーマの中に「『IoTおもてなしクラウド』による都市サービスの高度化」も含まれており、これを機にIoTおもてなしクラウドの社会実装を目指したい考えです。

必要な取り組みとしては、旅行客が自然な流れで属性を登録できるような仕組みの整備や、オリンピック・パラリンピック大会との連携、おもてなしクラウド事業の認知度の向上・普及展開などが挙げられています。また、将来的には外国人旅行者のみならず、日本人向けにもマイナンバーカードと連携したシステムを構築する案も出ています。

IoTおもてなしクラウドの仕組み

おもてなしクラウドを利用したサービス提供の流れは以下の通りです。

1 訪日外国人が、自らのパスポート情報や使用言語などの情報をクラウド基盤に登録する
2 クラウドに登録した情報と、スマホやICカードなどを紐づける
3 訪日外国人が各種サービスを利用する際にクラウド上の情報が呼び出され、その人に最適なサービスが提供される

クラウドに登録できる個人情報には、年齢・性別・血液型・母国語・アレルギー情報・食の禁忌などがあります。どの項目を登録するか、どの情報を誰に提供するかなどは、本人が自由に選択可能です。クラウドに情報を登録後、たとえばホテルのフロントに設置されたICカードリーダーにスマホやICカードをかざせば、パスポートを提示しなくてもすぐにチェックインができます。

また、レストランでは食の禁忌情報を参照することで安全に食事を提供できますし、免税店ではわざわざ書類を作成しなくてもすみやかに買い物してもらえるようになります。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会と連携できれば、大会のさまざまな情報も外国人旅行者にスムーズに提供できるはずです。

おもてなしクラウドの実証例

IoTおもてなしクラウド事業では、具体的なサービスを検討するために「千葉・幕張・成田地区」「渋谷地区」「港区地区(竹芝エリア、六本木・虎ノ門エリア、乃木坂エリア)」でそれぞれ地域実証を行っています。検証内容は以下の通りです。

千葉・幕張・成田地区 美術館へのチケットレス入場・宿泊施設のスムーズなチェックイン・デジタルサイネージによる自国語での観光情報や経路案内などの提供・多言語翻訳・レストランでのスムーズなサービスの提供
渋谷区 音楽イベントへのチケットレス入場・デジタルサイネージによる自国語での観光情報の提供
港区 六本木・虎ノ門エリア 空港からリムジンバスを利用してホテルに宿泊する訪日外国人に対するスムーズな情報伝達とチェックイン・レストランでのスムーズな情報提供・スムーズな免税手続き
乃木坂エリア 美術館へのチケットレス入場・デジタルサイネージによる自国語での文化情報の配信
竹芝エリア デジタルサイネージよる自国語での観光情報や経路案内・災害情報の提供

たとえば千葉市美術館での実証では、事前に旅行会社を通して外国人旅行者にICカードを配布し、訪日した際にホテルや美術館に設置した機器を使ってパスポート情報や優先言語などの情報を登録してもらいます。そして、美術館に行く前にスマホアプリから電子チケットの手配を行うことで、ICカードに発券履歴が登録され、それがチケットの代わりになるという仕組みです。さらに、展示室内のタブレット端末にICカードをかざすと、作品解説の言語が自動的に自国語へと切り替わります。

その他、地区内のデジタルサイネージにICカードをかざすと、自国語で観光地を検索できたり、目的地までのルート案内をスマホで閲覧できたりと、多種多様なサービスが検証されているところです。

おもてなしクラウドまとめ

スマホやICカードで、言語や習慣の壁を一気にクリアできるIoTおもてなしクラウドは、日本に不慣れな外国人観光客にとっては心強い助けとなるでしょう。また、インバウンド向けサービスを提供する事業者にとっても、負担の軽減や売上アップの観点からメリットが大きいと思われます。

一方で、課題もあります。たとえば欧米系の旅行者は、個人情報のセキュリティに高い意識を持っており、属性情報の登録に慎重になる人が多いため、どうしたら自発的に登録してもらえるかが大きな課題です。また、どの情報を登録するかは旅行者に委ねられているため、サービスを提供する事業者にとって実際どれだけメリットがあるのかも判然としません。

このようにさまざまな課題はあるものの、コストや設備面での負担が比較的軽いことから、おもてなしクラウドを活用する事業者は多いと思われます。近い将来、言葉でのやりとりに頼ることなく、一人ひとりの外国人旅行者に最適なサービスで「おもてなし」できる日がやってくるのではないでしょうか。

〈参照元〉

総務省_IoTおもてなしクラウド事業について
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000464450.pdf)

総務省_実証事業の内容別紙
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000464449.pdf)

総務省_「2020年東京大会に向けた提言」(案)2020年に向けた社会全体の
ICT化推進に関する懇談会
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000557657.pdf)

国土交通省_ 情報案内にかかる技術調査について
(https://www.mlit.go.jp/common/001264236.pdf)

総務省_地域IoT実装推進ロードマップ
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000453151.pdf)

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