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農福連携における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

2019/8/6

農福連携における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

農業と福祉をつなげて“ウィン・ウィン”の関係になることを目指す農福連携。政府も農福連携等推進ビジョンを策定し、全国的な普及と定着を推進する取り組みをスタートさせました。農福連携を地域で盛り上げるためにはどのような取り組みや施策が大切か? 事例などを通じ、そのポイントを探りました。

 
【目次】
■農福連携等推進ビジョンとは
■事例①【複数の部署・機関が連携】旭川市(北海道)
■事例②【見学・体験で理解向上】新潟市(新潟県)
■事例③【農業ジョブトレーナーを育成】三重県

農福連携推進ビジョンとは

農福連携とは、農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画の実現を促進する取り組みを指します。年々高齢化している農業現場での貴重な働き手となることや、障害者の生活の質の向上等が期待されています。官房長官が議長を務める農福連携等推進会議が令和元年6月に取りまとめた「農福連携等推進ビジョン」(以下、農福連携ビジョン)では、令和6年までに3,000の新たな農福連携の取り組みを全国で創出すること等を目標に掲げています。

そのため、ワンストップで相談できる窓口体制の整備やスタートアップマニュアルの作成、農作業委託などを短期間行う「お試しノウフク」の仕組みの構築、特別支援学校における農業実習の充実、農業分野における公的職業訓練などを促進することで農福連携に取り組む機会を拡大し、課題である「知られていない」「踏み出しにくい」「広がっていかない」という状況を改善していきます。

また、東京オリンピック・パラリンピックにあわせた戦略的プロモーションの実施や農福連携で生産された商品の消費者キャンペーン等のPR活動も行い、認知度の向上も働きかけることにしています。

里山再生などのソーシャルファンド事業等を行っている日本基金が農林水産省の補助事業として実施した「平成30年度 農福連携の効果と課題に関する調査結果」によると、回答のあった農福連携農家等の78%が「年間売上額が上がった」と回答しているほか、障害者を受け入れることの収益性に対する効果について「大きな効果あり」「効果あり」「どちらかといえば効果あり」との回答が83%にのぼりました。

政府は農福連携ビジョンのなかで「農福連携等を地域づくりのキーワードに据え、 地域共生社会の実現へ等を地域づくりのキーワードに据え、地域共生社会の実現」を促進していくとしています。

次に、各地域における農福連携の具体的な取り組み事例や先駆的なケーススタディを紹介します。

事例①【複数の部署・機関が連携】旭川市(北海道)

旭川市(北海道)は、地域における障害者等への支援体制の整備について協議を行う旭川市自立支援協議会(以下、協議会)の就労部会と協力し、農福連携に関心があった市内の花き生産者と障害者のマッチングを実施。農作業の試験的な委託を実施しました。

きっかけは、生産者から同市の農業振興課に対し、農福連携の提案があったこと。そこで生産者と農業振興課に加えて、障害福祉課および協議会就労部会が協議を行い、委託したい農作業の内容や時期、就労環境、請負条件等について確認し、実施に向けた準備を進めました。

協議会就労部会では市内の福祉事業所に協力を呼びかけ、軽作業などの就労訓練を行う福祉サービスを提供する勤労継続支援B型事業所がパートナーとなることが決定。同事業所の職員と利用者が実際に農作業を体験し、生産者がその様子を見た上で実施の可否や具体的な請負内容を決定することにしました。その結果、夏から秋にかけて花き・野菜の栽培管理や収穫作業、冬は寒締めホウレンソウの袋詰め作業等に従事してもらうことが決定しました。

福祉事業所の利用者が施設外就労を行う場合、「利用者○人に対し作業指導員1人以上を配置する」 等の制度上の基準があります。旭川市の事例では、その日によって作業する利用者が入れ替わるなどしましたが、作業指導員はほぼ同じ人に固定したことから、生産者との作業内容のやり取りは円滑に運び、福祉事業所利用者の農作業に対する理解度も向上していったようです。

「だいたい」「適当に」等のあいまいな表現ではなく、「○個」「○回」のように数字で示したり、道具に目安となる印をつける等、農業初心者でも具体的かつ視覚的に指示を理解しやすい工夫も行ったそうです。

事例②【見学・体験で理解向上】新潟市(新潟県)

新潟市(新潟県)は、農家と障害福祉施設のマッチングや委託契約のサポートなどを行う「新潟市あぐりサポートセンター」を市総合福祉会館内に開設し、農福連携の認知度や理解の向上に取り組んでいます。

同センターは、労働力が不足している農業分野において障害者の就農を促進することにより地域特性を活かした就労機会と訓練の場の拡大を図り、障害者が地域で自立した生活を送ることができるようにすることを目的として平成27年に開設されました。新潟市から委託を受け、就農支援員2名の体制で施設外就労のマッチングに 取り組んでいるほか、 農福連携の事例集や農業者向けパンフレットも作成しています。

同センターでは、福祉事業所側の見学・体験機会づくりになる作業説明会の実施に力を入れています。福祉事業所に実際に依頼者(農業者)の説明を聞いてもらったり、圃場の見学や作業体験の機会を設けることで具体的な作業イメージをもってもらうことで、農福連携の理解向上につなげています。

こうした同センターの地道な活動により、開設当初は関係機関の紹介や直接的な営業により受け入れ先である農業者獲得に動いていましたが、年々、口コミによる紹介も増え、農福連携への関心が高まっているそうです。 また、農作業の受委託だけではなく、農福連携による農産物の加工販売の取り組みも始まっているそうです。

事例③【農業ジョブトレーナーを育成】三重県

三重県は障害者の就農を広げるため、平成27年に「一般社団法人三重県障がい者就農促進協議会」(以下、協議会)を設立し、農業と福祉の基本的な知識・技術を身につけた「農業ジョブトレーナー」の育成を行っています。

農業ジョブトレーナーとは、企業と障害者をつなぐ「ジョブコーチ(職場適応援助者)」の農業版。認定されるためには、協議会が実施する研修を受講する必要があります。研修では障害特性の理解や障害特性に配慮した農作業の指導方法、障害者雇用制度などについて講義を実施します。

農業ジョブトレーナーを活用した就農体験研修を実施し、農業経営体と障害者とのマッチングを図っており、若者就労サポートステーションや障害者就労・生活支援センター等の支援担当者と綿密に情報交換・打ち合わせを行い、障害者一人ひとりの特性に合った作業内容を選んだうえで指導を行い、就農につなげています。特別支援学校の作業学習や現場実習に農業ジョブトレーナーを派遣し、「農業を進路選択のひとつ」に捉えてもらう働きかけも推進しています。

障害者本人に対しては、農機具の使い方や農作業の実際を学んでもらうほか、具体的な例を示しながら「働くこと」についての心がまえなども指導し、働く意欲につなげる工夫をしています。


<参照元>
官邸「農福連携等推進ビジョン」
農林水産省「農福連携における実態把握に向けた調査検討委託事業 調査報告書」(平成 30年度)
日本基金「平成30年度 農福連携の効果と課題に関する調査結果」
旭川市ホームページ
新潟市ホームページ
三重県ホームページ    等

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