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地方公共団体の内部統制とは|4つの目的と6つの要素、導入プロセス、事例を解説【自治体事例の教科書】


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近年では、企業活動において、業績だけでなくコンプライアンスも重要視されています。しかし毎年のように企業の不祥事は絶えず発生しており、内部統制制度導入の重要性が認識されているのです。

地方公共団体においても内部統制は重要であり、内部統制の概要や事例を抑えておくことをおすすめします。

内部統制とは

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内部統制とは、以下の4つの目的が達成される合理的保証を得るために、業務に組み込まれ組織内の全員が遂行するプロセスのことです。

  • 業務の有効性及び効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 事業活動にかかわる法令等の遵守
  • 資産の保全

地方公共団体では近年でも不祥事件が続発し、地方分権改革の進展や行政改革、財政健全化法の施行なども見据えて、信頼性を高めることが重要視されています。つまり、地方公共団体は地方分権や行政改革を進めるためにも住民からの信頼を得る必要があり、不正・不祥事をなくすために内部統制が必要とされるに至っているのです。

内部統制の目的

「業務の有効性・効率性」とは、業務目的を達成するために効率的・効果的に担当する業務を遂行することです。地方公共団体では、事務処理にあたり最小の経費で最大の効果を挙げ、同時に組織及び運営の合理化に努め続けることが地方自治法第2条第14項及び15項で求められています。

そのためには業務を職員1人1人の能力や経験に頼りすぎて俗人化してしまうのではなく、組織全体で一定以上の業務水準を保ちつつ遅滞なく業務を進められるようにすることが大切なのです。

内部統制の目的

内部統制の目的は、以下の4つの目的を達成される合理的保証を得ることにあります。

  • 業務の有効性・効率性
  • 財務報告の信頼性
  • 法令等の遵守
  • 資産の保全
1.業務の有効性・効率性

「業務の有効性・効率性」とは、業務目的を達成するために効率的・効果的に担当する業務を遂行することです。地方公共団体では、事務処理にあたり最小の経費で最大の効果を挙げ、同時に組織及び運営の合理化に努め続けることが地方自治法第2条第14項及び15項で求められています。

そのためには業務を職員1人1人の能力や経験に頼りすぎて俗人化してしまうのではなく、組織全体で一定以上の業務水準を保ちつつ遅滞なく業務を進められるようにすることが大切なのです。

2.財務報告の信頼性

「財務報告の信頼性」とは、組織の財務報告や非財務報告に重要な影響を及ぼす可能性がある情報の信頼性のことであり、内部統制においてはその確保が求められます。地方公共団体が作る予算・予算の説明書や決算等による財務報告は、議会や住民や地方公共団体の活動を確認したり監視したりするために非常に重要なツールであると言えます。

そのため、財務報告の信頼性を確保することは地方公共団体に対する社会的信用の回復・維持・向上につながる大切な要素だと言えるでしょう。万が一誤った財務報告を行ってしまえば、管轄地域の住民やその他多くのステークホルダーに想定外の損害を与えるだけでなく、全国の地方公共団体に対する信頼を失墜させかねません。

さらに、地方公共団体の活動実績を把握するには財務報告だけでなく非財務報告も重要であり、こちらの信頼性確保も重要な要素です。

3.法令等の遵守

「法令等の遵守」とは、地方公共団体の業務にかかわる法令やその他一切の規範を遵守することを指します。地方自治法第2条第16項において、地方公共団体は法令に違反して事務処理を行ってはいけないと定められています。

また、公金を扱う主体となる公務員に対しては、住民の信頼を得るための基礎となる法令等の遵守にはより一層の高いレベルが求められると考えて良いでしょう。さらに地方公務員法第32条に定められている法令等の遵守義務規定や、同法第33条の信用失墜行為の禁止などからも、法令等遵守の重要性は高いと言えます。

4.資産の保全

「資産の保全」とは、資産の取得や使用、処分が正当な手続き・承認のもとに行われるように資産の保全を図ることを指します。税を主な財源として取得された資産である財産や現金が、不正にまたは誤って取得・使用・処分された場合、地方公共団体の財産基盤や社会的信用に大きな損害を与える可能性があります。

そのため、こうした事態を防ぐために体制を整える必要があるでしょう。なお、資産には有形の資産だけでなく、知的財産や住民に関する情報などの無形財産も含まれます。

内部統制の基本要素

内部統制の目的を達成するためには、以下に挙げる6つの基本的要素が必要とされます。

  • 情報と伝達
  • モニタリング(監視活動)
  • ITへの対応
  • 統制環境
  • リスクの評価と対応
  • 統制活動
1.情報と伝達

「情報と伝達」とは、活動に必要な情報が識別・把握・処理され、組織内外や関係者に正しく伝わるようにすることを指します。地方公共団体内の者が職務遂行に必要と考えられる情報は、適切かつタイムリーに識別・把握・処理され伝えられなくてはなりません。

さらに、必要な情報が伝達されるだけでは不十分であり、受けた側が正しく理解し情報を必要とする組織内の全てのものに共有されることが重要です。
具体的には首長の方針や指示を全ての職員に適切に伝達する体制の整備、住民や関係団体、その他外部者からもたらされた情報を首長や管理職に適切に伝達できる仕組みの整備が求められるでしょう。

2.モニタリング(監視活動)

「モニタリング」とは、内部統制制度が正しく機能していることを継続的に評価するプロセスのことです。モニタリングには、業務に組み込まれて実施される日常的モニタリングと、業務から独立した視点から実施される独立的評価の2つがあります。

日常的モニタリングでは、通常の業務に組み込まれた手続きを実施することで内部統制が正常に機能していることを継続的に評価します。そして独立的評価は、日常的モニタリングによっては見つけられない問題がないかを別の視点から評価するため、定期的または随時に実施されます。

具体的には、モニタリングの結果を首長がタイムリーに受け取り、適切な検討や指示を行える体制なども求められるでしょう。

3.ITへの対応

「ITへの対応」とは、地方公共団体の目的を達成するためあらかじめ適切な方針や手続きを定め、その内容に応じて組織内外のITテクノロジーを適切に使いこなすことを指します。ITへの対応は他の基本的要素と密接にかかわっており、業務内容が大きくITに依存しているケースや高度な情報通信システムを取り入れている場合には不可欠の要素だと言えます。

具体的には組織内外のIT利用状況を整理して対応し、内部統制の他の基本要素の適切性を確保するためにITを有効活用することが求められるでしょう。

4.統制環境

「統制環境」とは、組織文化を決定して全ての職員の統制に対する意識に影響を与える、内部統制の基盤のことを指します。組織が持つ価値基準や基本的な人事・職務制度などを含む考え方であり、内部統制の考え方に対して重要な影響を与えます。

組織文化とは組織を構成する者の意識や行動、組織の強みや特徴を指し、首長の移行や姿勢が色濃く反映されるものです。首長は自らが誠実かつ倫理的に職責を果たすことはもちろん、事務遂行においても誠実性や倫理観の重要性を組織内外に示さなくてはなりません。そのために具体的な行動基準等を策定し、適切な運用を行っていかなくてはならないのです。

5.リスクの評価と対応

「リスクの評価と対応」とは、組織目的の達成に影響を与える事柄をリスクとして識別・分析・評価し、適切な対応をとるプロセスのことです。

具体的な流れは、以下の通りです。

  1. 内部統制の目的に合わせて、リスクを適切に識別する
  2. 識別したリスクを「全庁的なリスク・個別リスク」や「経験済みのリスク・未経験のリスク」に分ける
  3. 分類したリスクの発生可能性や影響度を分析・評価する
  4. 評価されたリスクに対し、回避や低減、移転や受容など適切な対応を選択する

また、リスクの評価と対応の中では、社会情勢の変化や組織の変更などの要因を踏まえて、適切に再評価することも求められます。

6.統制活動

「統制活動」とは、首長の命令や指示が適切に行われるように定める方針や手続きのことです。具体的には権限や職責の付与、職務の分掌など幅広い方針や手続きが含まれます。

首長は各担当者の権限や職責を明確にし、その範囲において適切に職務遂行ができる体制を整えていくことが求められるでしょう。具体的には、契約の承認や記録、資産の管理にかかわる職務を複数の担当者間で分散させるなどして、不正やミスが発生してしまうリスクを抑えることが大切です。

また、リスクが発生した場合でも、被害を最小限に抑えるための方針や手続きを定めておくことも求められます。

地方公共団体における内部統制の導入プロセス

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地方公共団体における内部統制導入プロセスは、おおむね以下の通りです。

  • 経営戦略会議等での協議・調整を行い、基本方針を決定する
  • 各部局で基本方針の具体化・リスクへの対応を行う(本部は支援を実施)
  • 評価やモニタリング、議会や市民への報告を実施する
  • 首長がモニタリングや監査の指摘を踏まえて見直しや改善を指示

内部統制においては、整備・運用が重要です。整備・運用を行うことによって、不適正や事務処理の改善や法令等の遵守、業務効率化や意識改革、首長の戦略的業務への専念などが進み、住民からの信頼を得る効果が期待できます。

ただし、整備・運用時には完ぺきな実施は困難なことや新たな取り組みではないことを念頭におき、過剰な統制を避けることや柔軟に行うことなどが求められるでしょう。

地方公共団体における内部統制の事例

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各地方公共団体における内部統制事例は、以下のように多数あります。

  • 大阪市(内部統制におけるPDCAサイクルの確立)
  • 静岡市(不適正事務の削減に向けた内部統制制度の充実)
  • 豊橋市(地方分権改革の進展を見据えた住民からの信頼回復策)
1.大阪市

大阪市では、職員厚遇問題を発端として2006年に市政改革マニフェストを策定し、マネジメントとコンプライアンス、ガバナンスを3本柱にして改革に取り組んでいた経緯があります。そのため内部統制に関してはコンプライアンスの確保を重視し、制度構築を行いました。

そして、その後には内部統制における他3つの目的も含むものとの認識に基づき、2014年11月に新たな内部統制として構築しています。内部統制の運用にあたっては、以下のPDCAサイクルを1年で回し、自律的なリスク管理体制を構築しています。

  • リスク把握・評価(Plan)
  • 対応策の整備・実施(Do)
  • 対応策の有効性の自己点検(Check)
  • 対応策の改善(Action)
2.静岡市

静岡市では2008年から2010年にかけて、内部調査や監査委員による定期監査、会計検査院による検査で相次いで不適正な事務処理が発覚していました。そのためこのことを契機とし、内部統制の整備・運用を図る取り組みを開始しています。

同市では全庁的な取り組みとして共通業務の標準化や情報共有、各種研修等を行っており、個別の取り組みとしてはマニュアルや業務フローの作成、チェックリストを活用したリスク対応策などの運用行っています。全ての事務事業をリスク識別の対象としており、取り組み開始当初は町内検討委員会でリスクの例を出し、各課の実情に合わせて柔軟に変更していました。

3.豊橋市

豊橋市では、「地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」が公表した報告書を受けて、地方分権改革の進展を睨んで市民に信頼される自治体を目指す必要があると考えました。

内部統制制度の構築の場合には外部の有識者の意見を取り入れ、リスク識別の場合には事務を共通事務と固有事務に分類しています。そして共有事務では財務事務に関するリスクに絞って識別を行い、固有事務では自然災害などを除いた全てのリスクに対して識別を行いました。

まとめ

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内部統制とは、地方自治体の法令等遵守や業務の有効性・効率性の確保などの目的を達成するために業務に組み込まれ、組織内の全員が遂行するプロセスのことです。

地方自治体の内部統制について考える際には事例も参考にし、目的やプロセスを踏まえて実施することが重要だと認識すべきでしょう。