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公営企業の経営改革における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

2019/8/6

公営企業の経営改革における自治体の課題と取組【自治体事例の教科書】

公営企業は住民の暮らしと社会の基礎を支える公益事業を担っています。しかし、近年、収支状況の悪化から、自治体財政の圧迫要因ともされています。公営企業再生には、どのような取り組みや施策が必要なのか。事例などを通じ、そのポイントを探りました。

 
【目次】
■公営企業の現状とは
■事例①【上水道のシェアードサービス】かすみがうら市(茨城県)と阿見町(同)
■事例②【公民連携で下水処理を収益化】鶴岡市(山形県)
■事例③【民営化せずに自立経営を達成】横浜市(神奈川県)

公営企業の現状とは

いま、公営企業の運営が曲がり角に差しかかっているようです。

公営企業の業種は、政令(地方財政法施行令)により、①水道、②工業用水道、③交通、④電気、⑤ガス、⑥簡易水道、⑦港湾整備、⑧病院、⑨市場、⑩と畜場、⑪観光施設、⑫宅地造成、⑬公共下水道-これら13事業に定められています。

このほか、条例により「有料道路事業」「駐車場整備事業」「介護サービス事業」および診療所・廃棄物等処理施設・自動車教習所等の「その他の事業」についても地方公営企業法を適用できます。

公営企業は、住民の暮らしや社会インフラの基礎を支えています。しかし、その運営については大きな課題があるようです。

たとえば、総務省は平成30年4月に都道府県の市町村財政担当者や政令指定都市等の担当者が参加した「公営企業の経営改革推進に向けた重点施策に関する説明会」で配布した資料「経営戦略の策定・改定について」のなかで、公営企業の現状について「これまでの延長線上での対策では、経営が成り立たなくなる可能性が高い」と厳しい指摘をしています。

その理由について、同省は「急速な人口減少と人口の低密度化」と「インフラ資産の大規模な更新時期の到来」により、公営企業の経営環境はさらに厳しさを増していくからだとしており、特に人口が低密度の地域等においては、料金回収率の低下等さらなる経営悪化のおそれがあると警鐘を鳴らしています。

そして、こうした危機を回避する“鍵”として、設備のダウンサイジングなど「持続可能な事業の維持更新のための『賢い』投資」や「広域化や民間活用」といった従来の枠組みにはない連携、あるいは抜本的な構造改革である「事業廃止や民営化・民間譲渡」といった3つの方策を同省は提示します。

これら“3つの鍵”のどれかひとつ、あるいは複数の組み合わせによる経営改革が、人口減少社会における公営サービスの持続可能性を高め、住民の安全・安心な暮らしを支えると言えそうです。

次に、さまざまな工夫で公営企業の経営改革で成果を出している事例を紹介します。

事例①【上水道のシェアードサービス】かすみがうら市(茨城県)と阿見町(同)

霞ヶ浦を挟んで向かい合う、かすみがうら市(茨城県)と阿見町(同)は水道事業の一部について広域連携を行い、事業コストの削減を実現しています。

料金等収納業務(受付、開閉栓、検針、調定、収納、滞納整理、給水停止、電算処理、その他これらに附帯する業務)について広域共同委託発注をしているもので、これにより阿見町では年間720万円、かすみがうら市では同900万円のコストダウンを実現しています。

水道事業そのものの広域化でも、業務の“共同委託”でもない点がポイントです。

両自治体が共同実施しているのは“発注”の部分のみで、委託業者との契約は個別に行っています。連名で契約を交わす場合、それぞれの議会で承認を得ないといけないなどの手続きが生じることから、スムーズな広域化を図るため共同発注方式としました。

事業統合を行わなくても周辺の自治体と共通化できる業務があれば採用しうる手法で、単独では民間事業者に参入メリットがない事業規模であっても、広域連携によってスケールメリットを創出すれば民間参入を促すことができることを示した事例だと言えそうです。

厚生労働省は、水道事業の広域連携の新しいあり方を示唆するモデルであることから、両自治体の取り組みを水道事業における“シェアードサービス”と命名し、他自治体にも導入を推奨しています。

事例

かすみがうら市と阿見町の事例を詳しくレポートした記事はコチラから




事例②【公民連携で下水処理を収益化】鶴岡市(山形県)

鶴岡市(山形県)は下水道事業の収益性を高める取り組みを公民連携で推進しています。

下水処理の過程で生成される汚泥から発生する可燃性バイオガスの「消化ガス」を民間企業に売却しているもので、買い取った企業は消化ガスで発電した電気を「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」(FIT)を活用して売電しています。

鶴岡市の下水処理施設である鶴岡浄化センター内に民間企業が発電所を建設し、平成27年10月より市から購入する消化ガスを燃料とした発電事業を開始しています。発電開始から1年間の発電量は一般家庭1万数千戸分の電力消費量に相当する191万kWhで、同期間の市による消化ガス供給量は111万ノルマルリューベ、ガス売却料などの事業収入は年間約2,700万円にのぼりました。

民間の資金とノウハウを活用する民設民営方式(DBO方式)で実施されており、市は設備投資などの追加費用なしで消化ガス売却収入などの新たな財源を確保。それを下水道インフラの長寿命化のための整備事業などに充当し、下水道事業の持続的かつ効率的な運営を促進しています。

従来、下水処理から発生する消化ガスは、一部で都市ガス原料としてガス会社に売却されているほかは、汚泥消化槽の加温用熱源として処理施設内で自家消費されたり、余剰ガスとして焼却されるなど、有効活用が進んでいませんでした。鶴岡市の取り組みは下水道事業がもつ新たな可能性を開いた事例だと言えそうです。

事例③【民営化せずに自立経営を達成】横浜市(神奈川県)

横浜市(神奈川県)は市営バス事業について、民間並みの抜本的な経営改革を行うことで黒字化を達成しました。

国土交通省の「乗合バス事業の収支状況について」(平成29年度)によれば、公営バスの経常収支率は94.0%で、およそ9割近くの公営バス事業が赤字を計上しています。かつての横浜市の市営バス事業も恒常的な赤字経営に陥っており、経営改革を開始する以前の平成14年度時点で約38億円の累積欠損金を抱えていたほか、同市の一般会計から毎年40億円程度の補助金を受け入れていました。

経営改善に踏み出すきっかけとなったのは、平成15年に発足した「横浜市市営交通事業あり方検討委員会」が今後のあるべき市営バス事業の経営形態として「完全民営化」を答申したことでした。

しかし、同市は市民の足であるバスネットワークの維持を目標に多様な観点から経営形態ビジョンを検討し、最終的に民営化ではなく「改善型公営企業」として、民間並みの自主自立の経営を目指すことを決め、次のような抜本的な経営改革に取り組むことにしました。

まず、民間バス事業者と競合している路線などの非効率なバス路線の見直しを行い、58路線について民間譲渡や区間・路線廃止などを実施。一部の営業所においては市交通局100%出資の子会社に運行管理を委託する形態とし、コスト削減を図りました。

人件費の抜本的な見直しも行い、給料表引き下げや給料カット、従来に比べ生涯賃金で2割減となる新たな給料表の導入などを実施しました。

これらの経営改革の成果により、平成22年度以降、市営バス事業は4年連続で一般会計の任意補助金を受けることなく経常黒字を計上できるまでになりました。

また、リストラ努力だけではなく、バス停ベンチを新設するなど利用者の利便性向上や貸し切りバス事業の拡大など、市場ニーズに合致した施策を実施したほか、正規職員採用を9年ぶりに再開。バス事業活性化を促進しました。

横浜市の取り組みは、地方公営企業の枠組みの中で民間並みの経営改革を行えば事業再生が図れることを示した事例だと評価されています。


<参照元>
総務省「地方公営企業の抜本的な改革等に係る先進・優良事例集」
国土交通省「乗合バス事業の収支状況について」(平成29年度)
かすみがうら市ホームページ
阿見町ホームページ
鶴岡市ホームページ
横浜市「市営交通中期計画」(平成27~30年度)
自治体通信Vol.5「水道事業の『シェアードサービス』で 大幅なコストダウンを実現」    等

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