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国土強靱化地域計画策定ガイドライン・実施事例【自治体事例の教科書】

国土強靱化地域計画策定ガイドライン・実施事例【自治体事例の教科書】

平成23年に発生した東日本大震災では、不測の事態に対する社会経済システムの脆弱さが明るみに出ました。今後想定される首都直下型地震や南海トラフ地震等の大規模自然災害への備えは、国家の重要課題として認知されています。こうした中、平成25年に「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」が施行され、平成26年には、基本法に基づく「国土強靱化基本計画」が閣議決定されました。今、市町村における国土強靱化地域計画策定も進みつつあります。各自治体はどのような計画の策定をしているのか見ていきましょう。

【目次】
■事例1.【信頼される大都市へ】大阪府
■事例2.【強靱化の観点から村の役割を整理】北海道中礼内村
■事例3.【千曲川氾濫リスクも想定】長野県東御市

事例1.【信頼される大都市へ】大阪府

大阪府は、大都市としての機能が集まっており、府の内外から信頼される安全・安心の確保に取り組んでいます。日本の成長をけん引する東西二極の一極として、世界で存在感を発揮する都市を目指すという「大阪の成長戦略」も踏まえ、いかなる事態が発生しても人命を守るとともに、都市・社会が機能不全に陥らない経済社会のシステムの確保が求められています。これらのことから、大阪府は、平成28年3月に「大阪府強靱化地域計画」を策定しました。

大阪府強靱化地域計画では、「起きてはならない最悪の事態」を43ケース想定しています。これらの事態を回避し、より適正に対応するために、既存の施策を総点検して、漏れがないように体系的に整理した上で取り組みを推進することになっています。近年の災害の教訓や南海トラフ地震対応強化策検討委員会の提言等を踏まえ、大阪府地域防災計画や新・大阪府地震防災アクションプランといった計画の見直しを行い、災害対応力の強化に取り組みます。

大阪府強靱化地域計画の関連計画である「新・大阪府地震防災アクションプラン」では、南海トラフ巨大地震を対象に、被害軽減目標を以下のように設定しています。

防潮堤の津波浸水対策といったハード対策(防潮堤の津波浸水対策等)により、「人的被害(死者数)9割減」を目指し、加えて、府民の迅速な避難によって、「人的被害(死者数)を限りなくゼロに近づけること」を目指します。ハード対策、府民との協働によるソフト対策の着実な推進で、「経済被害(被害額)5割減」を目指します。これらの目標に向け強靱化の取り組みを進めたいとしています。

大阪府では、平成31年3月時点において、強靱化地域計画を策定している市町村は、大阪市、堺市、泉佐野市の3市のみとなっています。市町村にとっても強靱化への取り組みは重要ですので、強靱化地域計画の策定を推進するとしています。

事例2.【強靱化の観点から村の役割を整理】北海道中礼内村

北海道は「北海道強靱化計画」を平成27年3月に策定し、高い確率で発生が想定されている日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震をはじめ、火山噴火や豪雨・豪雪などの自然災害リスクに対する取り組みを進めています。今後の大規模自然災害等に備え、事前防災及び減災に係る施策を総合的に推進するための枠組みが順次整備されてきています。

中札内村でも、中札内村における国土強靱化に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、「中札内村強靱化計画」を策定しました。自然災害に対する脆弱さを見つめ直し、強靱化を図ることは、今後想定される大規模自然災害から村民の生命・財産を守り、村の持続的な成長を実現するために必要です。国、北海道、民間事業者、村民等の総力を結集し、これまでの取り組みをさらに加速していく必要があるとしています。

中札内村は、「リスク分散の受け皿」と「食料・エネルギーの安定供給」という2つの役割があると分析しています。

リスク分散の受け皿というのは、災害時の経済的な損失の最小化に向けて、経済活動を継続するための重要機能を事前に遠隔地に配置するなど、リスクの分散化を図ることです。中札内村は、首都圏等から遠距離にあるため、同時被災リスクが低く、加えて、低廉な投資・運営コスト、良好な景観や住環境といった点から、立地企業からの評価が高くなっています。

食料・エネルギーの安定供給については、中札内村が、日本における食料の安定供給に果たす役割は大きく、道内外の大災害時において、担うべき役割はさらに大きくなると考えられています。また、再生可能エネルギーをはじめ多様な国産エネルギー資源を有するため、中長期的な視点から、国全体のエネルギー需給の安定化を図ることが期待されています。

中礼内村は、国全体の強靱化の助けとなる大きなポテンシャルを有している一方、村内では、人口減少や少子高齢化の進行といった地域の課題があります。地震や豪雨・豪雪などさまざまな自然災害の際、地域課題と相まって激甚な被害が生じることが懸念されています。

国の基本計画では「人命の保護」、「国家及び社会の重要な機能の維持」、「国民の財産及び公共施設の被害の最小化」、「迅速な復旧復興」という4つの基本目標が掲げられ、北海道強靱化計画では、「生命・財産と社会経済システムを守る」、「北海道の強みを活かし、国全体の強靱化に貢献する」、「持続的成長を促進する」という3つの目標が掲げられています。

これらを踏まえ、中札内村強靱化では、次の3つを村独自の目標として掲げ、関連施策の推進に努めることとしています。1つ目は、大規模自然災害から村民の生命・財産と中札内村の社会経済システムを守るというものです。2つ目は、中札内村の強みを活かし、国・北海道全体の強靱化に貢献するというものです。3つ目は、中札内村の持続的成長を促進することです。

首都圏からの距離の遠さや陸続きでないこと、冬季における寒冷多雪の気候など、これまで不利とされてきた要因についても、強靱化の観点からは、村の魅力へと転換できるため、移動の利便性を向上させるなど不利要因を解消するための取り組みを進めたいとしています。

事例3.【千曲川氾濫リスクも想定】長野県東御市

東御市は、東御市総合計画における基本目標の1つとして「安心・安全の社会基盤が支える暮らしやすいまち」づくりを掲げており、それを達成するための施策の1つである「災害に強い地域づくりの推進」を重点プロジェクトと位置づけ、さまざまな事業を展開してきました。災害が発生しても、生命を失わず、迅速に元の生活に戻るために、最悪の事態を念頭に置いて、平時からの備えを行い、市全体が災害に強くしなやかに対応できるよう、東御市においても、平成28年に「東御市国土強靱化地域計画」を策定しました。

急峻な山岳地に囲まれ、多くの河川と傾斜地からなる東御市は、土砂災害や河川氾濫による水害の発生、「糸魚川-静岡構造線断層帯」や「南海トラフ」等を震源とする地震が発生した場合の被害についても懸念されています。自然災害を予想し、事前の準備や対策を行うことで、市民の生命、財産、生活を守り抜きたいとしています。

長野県は、長野県強靱化計画において、32項目の「起きてはならない最悪の事態」を設定し、項目ごとに施策と指標の洗い出し、現状と問題点を整理した上で、対応施策の検討を実施しました。

東御市においては、具体的な災害リスクとして、千曲川の洪水を挙げています。千曲川は太古から度々洪水を起こしており、上田小県地方では18~19世紀の200年間に千曲川沿岸の田畑が流出した洪水は、記録に残るだけでも40回を数えています。中でも「戌の満水」と呼ばれている寛保2年(1742年)夏の大洪水では、千曲川流域で死者2,800人を出す大災害となりました。

また、台風、大雪、地震も過去の事例からリスクであるとされており、これらのリスクに対して「市民の生命、財産、生活を、ともに守り抜く」を目標に東御市の強靱化を行いたいとしています。

〈参照元〉

大阪府_『市町村における強靱化地域計画の策定の促進について』
(http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/15682/00325565/word.2hayashio.pdf)

北海道中礼内村_中札内村強靱化計画
(http://www.vill.nakasatsunai.hokkaido.jp/sonsei/gyousei/kakusyu_keikaku/
files/kyojinka.pdf
)

長野県東御市_第2次東御市国土強靱化地域計画
(https://www.city.tomi.nagano.jp/file/120009.pdf)

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