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危機管理型水位計の設置について【自治体事例の教科書】

2020/07/01

危機管理型水位計の設置について【自治体事例の教科書】

近年、異常気象の影響か、台風や豪雨災害により、河川の決壊による洪水被害が相次いでいます。平成30年1月23日、国土交通省は「危機管理型水位計」の観測基準をはじめて策定しました。水位データの基準等の統一化を図り、危機管理型水位計を普及させ、洪水予測や近隣住民の避難を支援します。その内容を確認していきましょう。

【目次】
■従来の水位計の設置状況
■危機管理型水位計の開発目的
■危機管理型水位計の特徴
■国管理河川における危機管理型水位計の配置について
■危機管理型水位計の観測基準・仕様について

従来の水位計の設置状況

大雨時など河川の水位を的確に把握し、危険が増さないうちに住民への適切なタイミングでの避難を促すことは欠かせません。近年増大している史上稀に見る大規模水害の発生では、避難が遅れたことで命を落とすケースや取り残されて孤立してしまうケースが目立ち、地方自治体がいかに早い段階で危険を察知し、避難を促すかが課題となっています。

もっとも、中小河川における水位計の設置は設置・維持コストの点で課題が多く、残念ながら導入は進んでいませんでした。そこで、国土交通省では洪水時のみの水位観測に特化した、小型化を図った機種を開発し、通信機器などにかかるコストを低減した水位計を提供することになりました。

国土交通省が洪水時のみに焦点を当てた水位計は危機管理型水位計と言います。国土交通省は危機管理型水位計の普及を推進するため、観測基準・仕様を策定しました。今後は危機管理型水位計の設置を推進するとともに、洪水予測や住民避難への活用とオープンデータの共有化などの有効活用が期待されます。

危機管理型水位計の開発目的

近年、大規模洪水の被害が全国各地で相次いでいますが、河川の警戒水位を超えるかどうかの観測は、極めてアナログな方法でされている場合が少なくありませんでした。その際、危険が高まっているかどうかを判断する基準は、橋梁に描かれた水位線でした。

従来では、河川管理や防災担当の職員が河川に近づいて、目視で確認していたケースが多くありました。これは極めて危険であり、職員が逃げられなくなるリスクがあります。近年は定点カメラを設置して、遠隔から水位を見守る方法がとられていますが、夜間などは見えにくく判別がしにくいのが課題でした。

近年の集中豪雨などは、過去の災害事例が参考にならないような被害をもたらすことが多く、わずかな時間で一気に水位が上昇し、危険水位を突如として超えてしまうケースも少なくありません。危険を早期に察知するには、刻々と変化する水位のデータを監視しながら、予測を図っていくことが求められます。そのためにも、適切な働きをする水位計の設置と運用が不可欠です。

国土交通省では、洪水時の水位観測に特化した水位計を低コストで開発することで、水位計が設置されなかった河川をはじめ、地先レベルできめ細やかな水位把握が必要な河川に水位計を設置して、水位観測網の充実を図り、住民避難に役立たせることとしています。

危機管理型水位計の特徴

国土交通省が開発した危機管理型水位計の特徴は、次の通りです。

小型で省スペース設計のため、堤防や橋梁などへ簡単に設置できます。堤防に設置するタイプは、計測装置であるケーブルを河川に入れて計測でき、橋梁に設置するタイプは、電波や超音波を使って河川に触れずに計測できます。両者とも無給電で5年以上の稼働ができ、長期間メンテナンスフリーのため、メンテナンスの手間やランニングコストを抑えられます。

また、洪水時のみの水位観測に機能を特化させたことで、機器の小型化や電池、通信機器などの技術開発コストも低減できました。水位計本体の費用は1台100万円以下のため、導入コストの低減が図れ、設置が普及されることが期待できます。さらに洪水時のみに特化した水位観測によりデータ量を低減でき、最新のIoT技術を駆使することで通信コストも縮小されます。つまり、初期費用だけでなく、維持管理コストも低減できるので、導入がしやすい仕様となっているのです。

水位観測は、河川管理者が指定した一定の水位を超過したときに、観測モードが切り替わります。10分以内ごとに水位データを送信し、そのデータはクラウドで閲覧できます。

国管理河川における危機管理型水位計の配置について

従来の水位計は、各河川の非常に長い区間を監視エリアとしていたため、観測所地点の水位から各地点の水位を推定する方法がとられていました。そのため、集落や氾濫ブロック単位では、氾濫の危険度がどの程度切迫しているかどうかをダイレクトに把握することが困難でした。そこで、平成30年度中に国管理河川は、以下の対象について、実際の状況を勘案しながら、危機管理型水位計の設置を進めることとしました。

第一は、堤防高さや川幅などから相対的に氾濫が発生しやすい箇所、第二は氾濫により行政施設・病院等の重要施設が浸水する可能性が高い箇所、第三は支川合流部など、既設水位計だけでは実際の水位がとらえにくい箇所です。

平成30年3月時点、全国合計2,957箇所の設置を予定しており、増設された水位計により最寄りの河川の状況を直接把握することが可能です。

危機管理型水位計の観測基準・仕様について

危機管理型水位計には、以下の2種類があります。

「自立型水位計」は常時、水位計が水位を監視し、観測・通信などの制御を水位計が判断するタイプです。「制御型水位計」は平常時、水位計が待ち受け状態となっており、降雨時などに指示して監視または観測状態へ移行します。移行後は水位計が自立的に判断します。

平常時の水位監視は、「自立型水位計」は観測開始水位に達するまで10分間隔で水位を監視し続けています。観測開始水位以下にとどまる場合は、データ送信はなされません。「制御型水位計」は、観測地点上流の水位上昇や降雨の状況や予測から水位観測のニーズが高まった場合に、外部からの制御によって監視モードへと切り替えます。

監視開始の判断基準は河川管理者があらかじめ設定しますが、モードを切り替えた場合、監視モードに2分以内で移行できる設計になっています。いずれのタイプでも、観測開始水位を上回った場合には観測モードとなり、観測停止水位を下回った場合に観測を停止し、監視モードとなります。

ダムの後期放流などの影響で、長期間にわたって水位の高い状況が継続する河川については、電源容量も考慮しつつ、観測水位を適切に設定しなくてはなりません。水位が観測開始水位を上回った場合には観測モードとなり、基本的には大河川は10分、中小河川は5分、水位が急激に上昇する河川では2分間隔で観測と計測データの送信を行います。ただし、観測時間間隔は河川の出水特性を踏まえて、各河川管理者が決定できます。

電力は、原則として太陽電池または化学電池(乾電池または充電式電池など)を用います。太陽電池を用いる場合は、河川管理者ごとに定めた観測を5年間継続できる電源容量を確保することを標準とし、平常時は監視モードで9日間無日照の後、観測モードで150回程度の観測が可能な容量以上を確保しなくてはなりません。化学電池を用いる場合は5年間にわたり電池交換不要で、平常時は監視モードとし、観測モードで年4回、それぞれ150回程度の観測が可能な容量以上を確保することが必要です。

〈参照元〉

国土交通省_危機管理型水位計の概要
(http://www.mlit.go.jp/river/mizubousaivision/pdf/honshou_kouhyoushiryou.pdf)

国土交通省_国土交通省ホームページ
(https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo03_hh_000937.html)

国土交通省_危機管理型水位計の観測基準・仕様
(https://www.mlit.go.jp/common/001218244.pdf)

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