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「環境未来都市」構想について【自治体事例の教科書】

「環境未来都市」構想について【自治体事例の教科書】

今世界中で都市部での人口が増え続けており、人口が集中しすぎていることが問題となっています。この人口の偏りを改善する打開策として日本で発表されたのが、地方都市を対象とした「環境未来都市」構想です。ここでは「環境未来都市」構想の概要、どうして「環境未来都市」が必要なのか、実施することで地方都市に期待できる効果、「環境未来都市」構想を実施している地方都市の取り組み例などを解説していきます。

【目次】
■「環境未来都市」構想とは
■「環境未来都市」構想の取り組み
■「環境未来都市」構想が必要な背景
■「環境未来都市」構想の流れ

「環境未来都市」構想とは

「環境未来都市」構想とは、特定の都市を「環境未来都市」として選定し、21世紀における課題を解決して持続可能な経済社会の発展の実現を目指すものです。「環境・超高齢化対応等に向けた、人間中心の新たな価値を創造する都市」が基本コンセプトです。環境、社会、経済の3側面がバランスよく高いレベルで成り立っている都市を、地方につくることを目的としています。2011年度には、被災地を含む11都市・地域が選定されました。世界に類を見ない高レベルな地方都市を限られた自治体で実現し、世界に普及・展開するという狙いがあります。

「環境未来都市」構想を実現し、地方都市の需要と雇用を増やす効果を期待すると共に、日本だけでなく世界に普及することで国際的な課題の解決を目指します。「環境未来都市」構想で重要なのは、少子高齢化に対応した街づくりです。自分で運転できない高齢者への配慮もある「誰もが暮らしたいまち」を実現します。また地方という特性を生かした「緑豊かな街づくり」も重要な課題です。

「環境未来都市」構想の骨組みは、まず土台として生活の基盤となる教育機関、医療・介護機関、通信環境、モビリティ、住宅環境などを整えることです。さらに子育て支援、健康促進活動、福祉施設などの「社会的価値」の創造、低炭素・省エネルギーなどの「環境的価値」の創造、雇用・所得の創出、観光地の整備など「経済的価値」の創造などを行います。「社会的価値」「環境的価値」「経済的価値」の3つを実現した街づくりを高齢化社会への適合性、環境への配慮などを考慮しながら進めていきます。

「環境未来都市」構想の取り組み

地方都市環境を整える際、膨大な費用が必要となり、街全体をつくり替えるには長い期間が必要となります。そのため、「環境未来都市」構想の基本的な取り組み姿勢は「社会経済システムイノベーション」です。もともとある街並みや地方自治体の公共交通、地域住民のネットワークなどを生かし、大規模なイノベーションを行います。2011年に「環境未来都市」構造に指定されたのは、北海道から福岡県まで11都市です。具体的な取り組みは、以下の通りです。

・北海道下川市-資源を生かした自立型総合産業の創設、集住化モデルの自立型コミュニティの構築
・岩手県釜石市-エネルギー地産地消や生活応援センターでの産業福祉都市構想
・岩手県大船渡市・陸前高田市・住田町-高齢者に配慮した環境防災未来都市の創設
・宮城県東松島市-再生可能エネルギーを活用した自立分散型電源の構築や健康住宅の推進
・宮城県岩沼市-交通の要所という立地を生かした国際福祉都市
・福島県新地町-ICTを利用した情報通信インフラ、ソフトインフラである地域コミュニティの構築
・福島県南相馬市-一次産業を核とした「循環型地域産業」の創造
・千葉県柏市-大学などの「先端の知」を生かし、「公民学連携による自律した都市経営」
・神奈川県横浜市-大都市課題を地域・住民・企業の原動力で改善する取り組み
・富山県富山市-コンパクトシティの構築、高齢者・障碍者・児童のための総合デイサービス
・福岡県北九州市-公害克服や環境国際協力を生かした市民・企業・行政の連携

「環境未来都市」で高齢者をはじめとする全ての人が暮らしやすい環境づくりと、緑豊かな街づくりを実現するためには、低炭素化と継続的発展を行う必要があります。そのため、コンパクトシティ、交通体系の整備、再生可能エネルギー、環境教育などが重要です。特にコンパクトシティの実現は都市開発が行いやすく、住民が暮らしやすいので、多くの地方都市で取り入れられています。

「環境未来都市」構想が必要な背景

「環境未来都市」構想が必要な背景には日本の少子高齢化以外にも、アジアが将来的に抱えることになる少子高齢化社会に対する解決策の基盤を作る目的もあります。少子高齢化社会は、現在日本が直面している問題で、2050年には65歳以上の高齢者が4割に達しているといわれています。地方都市での高齢者が健康に安心して生活できる環境づくりは必須です。

そしてアジア諸国の多くが近い将来、高齢化社会になるため、アジア全体に先駆けて「環境未来都市」構想を進める必要があるのです。特に中国の人口規模で少子高齢化社会に直面した時に日本が先駆けて行った「環境未来都市」を指導することができれば、日本は国際社会で大きな存在感を発揮できます。今後、アジア全体で行う可能性がある超高齢化社会への対策は、具体的に以下のようなものです。

・バリアフリーや手すりなどの設備、保温機能などが整った住宅環境
・情報通信技術を使った遠隔的な医療・生活支援
・高齢者用パーソナルモビリティ、医療・介護ロボットなどの研究開発や実用
・これまで積極的に行われてこなかった海外からの来訪者への医療・検診サービスの導入
・魅力的な街づくりに欠かせない利便性の高い公共交通機関の整備

「環境未来都市」構想の中でも、環境面に配慮した取り組みには最新の知識と技術が用いられます。3Rの中の「リユース」に関して、有識者からEU諸国の最新事情や経済学視点を取り入れ、計画を実行しています。

「環境未来都市」構想の流れ

「環境未来都市」構想の流れは地方都市の中から実施する都市を指定し、体制を整え、計画を決め、実施して評価を得ます。そして国際フォーラムなどで発表することで、アジア諸国へアピールします。「環境未来都市」構想を実施する都市の指定方法は、指定する都市の条件を公開し、公募します。

プロジェクトマネジメントとして全体レベル、各都市レベル、各取り組みレベルで構想の視点が決められ、「環境未来都市」化に必要な通信環境や技術を持っている企業、個人、大学・研究機関、公共団体などでコンソーシアムを結成します。そしてコンソーシアムと国の推進組織が連携し執行体制を整え、具体的な計画の工程表を作成します。計画が完成したら優れた人材によるリーダーシップの元、副次的効果や相乗効果も考慮しつつ、計画を行います。「環境未来都市」は姉妹都市などを活かし、国際的な知のプラットフォームとして情報や人材をオープン化することで、計画をスムーズに進めます。

こうした流れの中で「環境未来都市」の構想推進協議会を行い、情報を発信していきます。2016年には「エコプロ2016」で、協議会構成員計8団体が協力して「環境モデル都市・環境未来都市ゾーン」を展示し、PRを行いました。また再生可能エネルギーの最新情報を発信する「再生可能エネルギー世界展示会」でも、内閣府が「環境未来都市」構想推進協議会ブースを出展しました。

このような情報発信の場は、世界から「環境未来都市」構想に役立つ情報を得る貴重な機会でもあり、定期的に情報発信をすることで、より良い街づくりを実現するヒントが得られる機会でもあります。「環境未来都市」構想にはライフスタイルやビジネススタイルの大幅な変化が伴うので、多種多様なライフスタイル・ビジネススタイルの情報を取得し、地域住民に合った新しいライフスタイル・ビジネススタイルを実現しましょう。

〈参照元〉

内閣府_「環境未来都市構想」とは
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/kousou.html)

首相官邸_環境モデル都市と環境未来都市
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/pdf/kankyo_gaiyo.pdf)

首相官邸_「環境未来都市」構想のコンセプト中間取りまとめ
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/pdf/mirai_concept.pdf)

首相官邸_環境モデル都市の概要
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/pdf/model_gaiyo.pdf)

首相官邸_平成29年度「環境未来都市」構想推進協議会総会資料
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/torikumi/pdf/pclcc_soukai_h29.pdf)

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