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Iターン支援における自治体の課題と取組事例【自治体事例の教科書】

Iターン支援における自治体の課題と取組事例【自治体事例の教科書】

価値観の多様化やICT技術の普及・発展を背景に、Iターンで地方移住を検討する都市生活者が増えています。若年層から高齢者まで幅広い世代に分布しているIターン希望者を支援し、地方移住を促進・活性化するためには、どのような施策や取り組みが必要か? 事例などを通じて、そのポイントを探りました。
 
【目次】
■Iターン活性化の施策とは
■事例①【雇用創出】西興部村(北海道)
■事例②【みらい創りカレッジ】遠野市(岩手県)
■事例③【ゆるい移住】鯖江市(福井県)
■事例④【ビジョン共感】西粟倉村(岡山県)

Iターン希望者が移住先に求めるニーズとは

多くの自治体が都市部の出身者が地方に移住する「Iターン」を支援しています。Iターンを考える人が地方移住を検討している理由はさまざまです。まずはIターン希望者がどのような支援を望んでいるのかを把握し、移住者目線での支援を行うことが大切です。

国土交通省は、農山漁村地域への移住希望者が移住地域へ求めるものとして、①仕事、②生活の利便性、③自治体のサポート、④地域や人の魅力―これら4点をあげています。

例えば、都会からの脱却と自然を求める若い世代は自然産業や地域との交流が豊富な仕事を求め、生活の利便性についてはそれほど重視しない傾向があり、健康でアクティブな生活を求める高齢者の移住希望者は病院などの施設が近いなど、生活の利便性を重視する傾向があります。また、子育て世帯の移住希望者は、仕事や利便性のほか、子育てに不安がない自治体のサポートを求める傾向があります。

こうした傾向に合致し、それぞれのニーズにあった自治体による支援がIターン活性化のポイントです。

次に、さまざまな工夫をしているIターン支援の事例を紹介します。

事例①【雇用創出】西興部村(北海道)

かつて5,000人近くあった人口が1,500人まで減少した西興部(にしおこっぺ)村(北海道)では、雇用の創出や総合的な子育て支援の強化でIターンを活性化したことなどにより、平成22年からの5年間で6%近くの人口増加に成功しています。

具体的な取り組みとして、若者の就業機会の増加を図るため、地場産業である木材加工業と楽器製造を組み合わせた会社を設立しました。

また、グループホームや障害者施設などの福祉施設の設立を積極的に実施することで“福祉の村づくり”を推進し、雇用の創出や福祉従事者の定住を促進。平成23年からは起業家への助成を行うなど、新たな産業を生み出すことにも力を入れています。

子育て支援では、18歳まで医療費無料や第一子からのお祝い金、小・中学生の給食費無料化などを導入しています。

事例②【みらい創りカレッジ】遠野市(岩手県)

遠野市(岩手県)では、民間事業者が拠点を同市へ移したことをきっかけに移住促進の事業や取り組みを積極的に実施しました。

そのひとつが「遠野みらい創りカレッジ」です。これは、それぞれに課題を持った地域の企業や学校、市や住民たちが知恵を集め、異文化交流や地域課題の解決に取り組む事業です。

また、平成29年にテレワークセンターを開設したほか、サテライトオフィスやコワーキングスペースなどを設置し、多様な働き方を支援する環境を整備しました。

地域おこし協力隊を活用した起業家人材育成事業にも力を入れています。地域資源や文化を生かしたプロジェクトを事前に公開し、地域おこし協力隊として募集することで、目的意識のある人が集まり、Iターンを促進しながら、起業家人材を育成しています。

さらに、平成18年には移住や定住を応援する組織「で・くらす遠野」が発足。移住希望者が必要とする情報を一元的に集約し、定住までをワンストップでサポートする体制を完備しました。

これらの施策により、遠野市では平成28年までの10年間で160人の移住者を集めることに成功しています。

事例③【ゆるい移住】鯖江市(福井県)

古くから眼鏡産業や繊維産業、漆器産業などものづくりが盛んな鯖江市(福井県)では、仕事などの移住サポートなしで住む場所だけを提供する「ゆるい移住プロジェクト」を実施しています。

同プロジェクトでは「参加者同士での半年の共同生活」や「月1回のワークショップ参加 」などを実施。プロジェクト終了後には6名が県内に移住。移住しなかった参加者もPRに貢献するなど、同市の魅力を発信する機会となりました。

「次世代産業育成支援事業」による雇用機会の創出もIターンなどの移住を活性化させています。同事業では「めがねのまちさばえ」の知名度を向上させるため、東京ガールズコレクションなどとの協働を図り鯖江産メガネの出荷額の低迷を打破するなどの効果が出ています。同市では、既存産業だけでなく地域の産業構造の強みを応用し、医療分野に新規参入するなど、新たな産業創出が着々と進んでいます。

事例④【ビジョン共感】西粟倉村(岡山県)

西粟倉村(岡山県) では、同村のビジョンに共感したIターン移住者などが次々と起業し、多くのローカルベンチャーが誕生しています。

同村では、かつて林業が栄えたものの、輸入木材の増加や木材の低価格化などにより低迷が続いていました。転機となったのが、樹齢百年の森林に囲まれた田舎の実現を目的とした「百年の森林構想」を平成20年に策定したことでした。

この構想に共感した移住希望者が増え、間伐などを行う森林組合が雇用などの受け皿となり、平成21年から平成28年にかけての移住者数は約90名に急増しました。

<参照元>
国土交通省「地方への移住・定住等の促進に向けた戦略的な支援や地域側コネクションハブの強化について」
内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局「移住・定住施策の好事例集」
東京市町村自治調査会「定住促進に関する全国的な現状と対策事例」    等

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