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「i-都市再生」の推進について【自治体事例の教科書】

「i-都市再生」の推進について【自治体事例の教科書】

「i-都市再生」は、都市再生のシナリオに応じた将来像や効果、過去から現在までの状況や課題について、データに基づく分析、シミュレーション等を実施し、これらを可視化して関係者の理解・納得を促して合意形成を図り、都市再生に寄与する民間投資を呼び込む支援をするための基盤を言います。令和元年6~7月にかけてモデル調査が募集されました。ここでは、「i-都市再生」とは具体的にどういうものなのか、その目的と推進などについて見ていきましょう。

【目次】
■国土交通省_「i-都市再生」を活用した都市構造の可視化
■首相官邸_首相官邸ホームページ
■首相官邸_「i-都市再生」の推進
■内閣府_都市再生推進経費 ロジックモデル
■首相官邸_i-都市再生 モデル調査 概要

国土交通省_「i-都市再生」を活用した都市構造の可視化

国土交通省及び内閣府では、「i-都市再生」を利用した都市構造の可視化を目指すとしています。「i-都市再生」の内容は以下の3つです。

・まちづくりの計画や効果を3Dの地図によって「見える化」する情報基盤(骨太方針:経済財政運営と改革の基本方針2018)
・VR技術や地球地図、ビッグデータ等を活用し、都市再生についての空間的、数値的な理解が直感的に得られる、見える化情報基盤(都市再生に取り組む基本的考え方平成30年4月26日)
・まちづくりの課題や効果、将来像を、地理情報やVR技術等を用いて住民や投資家等に対して分かりやすく示す都市再生の見える化情報基盤(まち・ひと・しごと創生基本方針2018)

これに対し、都市再生本部会合(平成30年4月26日)では「東京一極集中を是正するためには、各地方のエンジンとも言える中枢、中核都市の活性化が極めて重要。人工知能、IoTなどSociety5.0の革新的技術の社会実装を進めていく」必要があるとしています。

また、都市再開発促進議員連盟会合(平成30年5月30日)では「「i-都市再生は、これからの都市開発に大いに役立つものだと感じるが、活用していく中で何かモデル都市のようなものがあるのか、それに伴い広く推進していくつもりか」という疑問が出され、それに対して「i-都市再生は、いわば近未来技術の実装であり、各省庁、関係機関が横串で連携しながら今後も様々な活用を検討・提案していく必要がある」とされました。

「i-都市再生」を活用した都市構造の可視化はすでに都市構造可視化ウェブサイト(https://mieruka.city)で公開されていますが、これをさらに「コンパクトシティ形成支援」に展開していくことを目標としています。都市構造可視化は、コンパクトシティ形成支援の有力なツールであり、課題の把握、政策立案、合意形成のために活用を促進していくというのが具体的な内容です。

都市構造の可視化の特徴として、国土交通省と内閣府は大きく2つ挙げています。
・都市構造の歴史と将来(経年変化)を連続的に可視化できる
市町村内の「小さなエリア」ごとに人口や販売額等の分布を可視化し、過去から未来までの「経年変化」を地図上で可視化することによって都市構造を直感的に理解できるようになることが特徴です。
・地域の特性とデータを同時に可視化できる
地域の特性(公共交通利用圏、インフラの整備状況、災害危険度など)を「色」人口、小売業販売額などのデータを「高さ」で表現することによって、立体的に理解できるようになるとしています。

今後の活用例としては、空き家対策、耕作放棄地の課題の把握、公共施設の維持管理、福祉施設の立地誘導、人口と公共交通の関係把握などが挙げられます。多岐にわたる都市構造の可視化を活用し、さらに多分野での可視化を進め、都市構造を踏まえた政策を展開する、また、地域の特性を活かした持続的なまちづくりを推進するという政策につなげ、そのための支援を行うとしています。

首相官邸_首相官邸ホームページ

内閣府地方創生推進事務局は、都市再生を支えるための柱のひとつとして「i-都市再生」を「未来技術社会実装」とともに重点分野に挙げています。

首相官邸ホームページでは、サンプル動画とともに、「i-都市再生」について見解を述べています。その内容は、以下の通りです。
・都市再生にあたっては以下に戦略的に投資し、質の高い投資を呼び込み「未来の発展基盤」を構築していくかが重要な課題であること
・しかし、日本の不動産市場は透明性が低く、情報活用が進んでおらず、対内投資は世界的に見てもかなり低くなっている
・銀行の預貸率は低下傾向が続いており、地域にお金を回すためにも投資案件を形成し、質の高い民間投資を喚起することが重要であること

「i-都市再生」は、都市再生のシナリオに応じた将来像や効果、過去から現在までの状況や課題について、データに基づく分析、シミュレーション等を実施し、これらを可視化することにより、都市再生に寄与する民間投資を呼び込むことを支援する情報基盤であると位置づけています。さらに、インターネット上で可視化することにより、将来ビジョンや開発案件等を広く公開し、全国、世界中からの投資を呼び込むことが可能になるとしています。

首相官邸_「i-都市再生」の推進

内閣府では、民間投資を喚起する「i-都市再生」を推進する方針を固めています。その背景にあるのは「日本経済の課題」と「新たな仕組みの構築の必要性」という2点です。

「日本経済の課題」としては、質の高い民間投資案件の不足(預貸率の低下等)、東京一極集中の是正(災害リスク、ローカルアベノミクスの推進)等の事情を挙げて「地方中枢・中核都市等への質の高い都市再生投資」を推進する必要性を指摘しています。基本方針は「選択と集中」と「地域の意向の尊重」です。

「新たな仕組みの構築の必要性」については、都市再生緊急整備地域(都市再生本部)の「候補地域」を設定し、ICT等活用イノベーション・情報基盤「i‐都市再生」の構築と活用がその内容となっています。すでに「未来投資戦略(成長戦略)2017、骨太方針2017」および「まちひとしごと総合戦略2017改定」に位置付け済みです。

都市再生の「見える化」情報基盤の構築とは、具体的には地球地図(Google-Earth等)上で都市再生を見える化することによって「i-都市再生」を実現することです。これには2つの目的があります。「都市再生の社会的合意形成・投資環境のイノベーションにより民間投資を喚起」「都市再生緊急整備地域の再生事業KPIの設定・評価・検証によってEBPMを支援する」ということです。

こうした「i-都市再生」の推進の目的は、住民、投資家、行政、事業者といったステークホルダーの意識を変えて民間投資を呼び込むための基盤を作ることにあります。また、従来から進めている都市再生とセットでさらに推進することとしています。

内閣府_都市再生推進経費ロジックモデル

内閣府による都市再生推進経費のロジックモデルは、事業の目的とそれに沿った推進方法から成っています。事業の目的は「質と量の両面から都市再生緊急整備地域における民間投資を一層喚起するため、候補地域の早期公表と産学官金連携による議論の充実、都市再生の見える化情報基盤の整備と候補地域における活用等を行う」ことです。

この考え方に基づいて、大きく4つの段階を設定しています。具体的には以下の通りです。

・課題把握・目標設定
政府の都市再生本部では、都市の諸機能が国力の源泉であると考え、緊急かつ重点的に市街地整備を推進すべき地域として都市再生緊急整備地域を政令で指定し、都市計画特例を適用すること等により、年間1兆円規模の民間投資を実現し、大きな成果を上げてきました。しかし、民間投資1兆円のうち約5割は東京であり、アベノミクスをさらに推し進め、より強力な我が国経済の基盤を形成するためには、中枢・中核都市等に対しより質が高く集中的な投資が重要だとしています。そのためには、都市再生の質の向上、都市再生のビジョンの共有、民間投資の呼び込み地域ごとのKPIを活用した都市再生の推進と評価を行うことによって都市再生緊急整備地域にさらに質の高い投資を呼び込むことが必要です。東京並の投資が他の都市再生緊急整備地域に波及すると仮定すると、年間1.25兆円の投資額となると試算しています。

・政策手段の比較・検討
都市再生緊急整備地域にさらに質の高い投資を呼び込むため、都市再生施策の効果や課題等に関する検討を行うための調査を実施し、その結果をもとに取り組みを進めることを重視しています。まず可能な限り早期の段階から各地の産官学金の関係者が情報を共有し、民間からの提案を幅広く集めるための手段として都市再生緊急整備地域の候補となる地域を公表し「産学官金」によるオープンな議論が有効だとしています。また、近年インターネットや情報通信技術の普及によりフィンテックが発達するなど、投資環境は大きく変化しており、都市再生のために投資を呼び込むには、これらの変化に対応した情報面での取組が必要です。こうした観点から、地理情報やバーチャルリアリティ技術等を活用した、都市への投資の質の向上や社会的合意の形成等を支援するための情報基盤である「i-都市再生」構築の検討・構築・活用等が有効だとしています。

・手段と目標の因果関係の検討
「i-都市再生」について、都市の過去から現在に至る地理情報データをインターネット上の地球地図で再現し、将来取り得る施策の選択肢とその効果を比較・分析して、都市再生の質の向上や空間的理解、民間投資の喚起、今後の都市再生ビジョンに関する合意形成等が想定されるとしています。そのうえで、都市再生ビジョンを関係者で共有し、地域ごとに必要な機能(商業、産業、居住、公表施設等)をKPIとして設定し、官民連携して都市再生を推進し、民間投資の一層の促進を見込んでいます。

・効果の測定
今後、これらの準備協議会や説明会の参加自治体において、まず「KPIを設定した地域数が増加したか」「民間投資が拡大したか」「投資の質が向上したか」を測定の基準としています。民間投資の拡大については、都市再生緊急整備地域の民間投資額の推移を測定し、東京における民間投資額と比較することによって中枢・中核都市等への投資が拡大しているかを測定することが目標です。投資の質の向上については、「i-都市再生」を活用した都市再生緊急整備地域において、KPIの設定・評価・検証によりEBPMを推進し、都市開発事業による効果検証を通じて投資の質の向上を検証することとしています。

首相官邸_i-都市再生モデル調査概要

内閣府は、令和元年6~7月にかけて「i-都市再生」モデル調査を募集しました。その主旨は、以下の2点です。
・「i-都市再生」の活用・普及のモデル調査として、「、都市再生」の技術仕様案(i-UR 1.0)を有効に活用し、「i-都市再生」普及に資する取組についての提案を募集すること
・募集した提案の中から、持続性や横展開性の優れたものについて、取組の開発費を支援し、その成果を踏まえて今後の「i-都市再生」の構築、活用、普及について検討すること

モデル調査は、取り組みの提案・選定・提案の開発という手順を踏みます。それぞれの手順は以下の通りです。
・取り組みの提案
提案者は、民間事業者、大学等研究組織、地方公共団体とされています。提案内容としては、都市再生」の技術仕様案(i-UR 1.0)を活用し、「i-都市再生」の普及に資する取り組みであること、横展開できる活用パッケージであることが求められています。
・選定
取り組みの提案の中から、モデル調査の対象案を選定し、開発費を支援します。
・提案の開発
実際の開発においては、タイプAとタイプBによって支援の金額が変わります。タイプAは、実現性を有し「i-都市再生」の普及に資する取組(サービス、ビジネスモデル等)のプロトタイプ作成を図るもので、提案団体あたり上限3,000万円の支援が行われます。タイプBはアイデアの熟度向上を図り、プロトタイプの作成の基礎検討を実施するもので、提案団体あたり上限300万円が支援されます。

〈参照元〉

国土交通省_「i-都市再生」を活用した都市構造の可視化
(https://www.mlit.go.jp/common/001239914.pdf)

首相官邸_首相官邸ホームページ
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/toshisaisei/#itoshisaisei)

首相官邸_「i-都市再生」の推進
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/toshisaisei/itoshisaisei/itoshisaisei.pdf)

内閣府_都市再生推進経費 ロジックモデル
(https://www.cao.go.jp/others/kichou/ebpm/h30/pdf/ebpm_h30_tisou.pdf)

首相官邸_i-都市再生 モデル調査 概要
(https://www.city.mitaka.lg.jp/c_service/030/attached/attach_30996_4.pdf)

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