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地方公共団体の働き方改革の事例【自治体事例の教科書】

地方公共団体の働き方改革の事例【自治体事例の教科書】

近年の日本国内では、働き方改革の推進が注目事項となっています。限られた時間で最大限の成果を挙げることが、地方公共団体の評価ポイントになってきているのです。しかし、地方公共団体が抱える問題は日本全国一律ではなく、地方によって対処すべき事柄は異なっていると言えます。

各地方公共団体の取り組み事例を確認し、効果的な施策実施につなげましょう。

1.地方公共団体の働き方改革の事例:広島県

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広島県は中国・四国地方の中核に位置する県です。広島都市圏と備後都市圏を中心に自動車産業を中心とした工業や商業が活発に行われており、一方で海や山にも恵まれて農業や漁業も盛んに行われています。県全域では280万人程度の人口を抱え、県庁所在地である広島市は政令指定都市に指定されています。

広島県では女性の就業率が全国平均よりも高かったものの、結婚や出産の後も長く働き続けたいと考える女性の割合が低く問題視されていました。そのため県を挙げて働く女性の支援に特化した活動を進めています。

働き方改革の取組内容

2014年度には、地域女性活躍推進交付金を利用し、「女性の活躍推進先進事例ノウハウ導入ブック」を作成しました。同誌では経営的観点における女性活用の重要性や先進企業の取り組み共有、「広島県版女性の活躍診断ツール」の使用マニュアルが掲載されています。

2015年度には県内の社労士や中小企業診断士等を対象にした「広島県女性活躍推進アドバイザー」養成プログラムを始めました。こちらの実践研修においては、活動報酬として目標達成度に応じて最大4万円の報奨金を用意しています。2016年度には全250社の女性活躍推進部署設置等の支援を行うことを目標に定め、現在も活動を続けています。

また、同県では「広島県働き方改革実践企業認定制度」を設け、長時間労働の削減や休暇の取得促進、仕事と育児・介護の両立支援などの成果が出ている企業の認定を行っています。

働き方改革の成果

2014年度の女性活躍推進アドバイザーの養成プログラムは当初の予定を上回る32名が参加し、最終的に19名が「広島県女性活躍推進アドバイザー」として認定を受けました。そして、アドバイザーからのアドバイスを受けて女性の活躍を推進する部署を設置した企業は、203社(2016年3月末現在)にのぼっています。同研修に参加した企業にはノウハウ導入ブックの内容を実践した結果のアンケートを実施し、今後の普及に努めています。

また、「広島県働き方改革実践企業認定制度」の認定企業は、2020年9月3日現在で310社になっています。

2.地方公共団体の働き方改革の事例:兵庫県

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兵庫県は日本のほぼ中央に位置し、国内の各都市と高速道路や航空、鉄道でつながっている県です。1868年に神戸港が開港して以降は日本の玄関口としての役割を果たしており、兵庫県を通じて欧米の文化が日本に入ってくるという側面もあります。人口は県全体で540万人以上であり、鉄鋼業や化学工業、電気機器などの産業を中心に栄えている県です。

兵庫県では1995年の阪神淡路大震災後に有効求人倍率が県政史上最低を記録し、1999年に「雇用対策三者会議」を発足させて雇用課題の解決に当たっていました。そして2000年代後半には政労使一丸となってワークライフバランスを推進するため、その推進拠点として「ひょうご仕事と生活センター」を開設しています。

働き方改革の取組内容

1999年には兵庫県雇用対策三者会議を発足させ、政労使による雇用の打開策を検討する取り組みをスタートさせています。そして2008年 には「仕事と生活のバランスひょうご共同宣言」を出し、仕事と生活の調和の実現を図るため労働者と経営者が共に豊かさを実感できる地域社会の実現を政労使一体で目指すことを宣言しました。

その翌年の2009年に「ひょうご仕事と生活センター」を設置し、ワークライフバランスを推進する拠点として機能させています。ひょうご仕事と生活センターの事業は普及啓発や情報発信、各種の相談対応、研修企画や助成金の設置など多岐に渡っています。

働き方改革の成果

「ひょうご仕事と生活センター」はワークライフバランスの「宣言→認定→表彰」制度を設けており、ワークライフバランスに取り組むと宣言した企業は、2021年3月現在で2,500社を超えています。

また、ワークライフバランスを推進していると認定された企業は2021年3月末現在で270社を超えており、特に先進的な取り組みを行っているとして表彰された企業は2021年3月末現在で127社になっています。
(参考:ひょうご仕事と生活センターHP

年度を追うごとにそれぞれの数値は増加しており、ワークライフバランス推進の取り組みは一定の浸透を見せていると言えるでしょう。

3.地方公共団体の働き方改革の事例:福岡県

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福岡県は九州地方の北に位置し、人口約510万人で福岡市と北九州市という2つの政令指定都市を持つ県です。中心地は東京や大阪に引けを取らない程に都市化が進んでおり、その一方で博多湾や脊振産地、三郡山地などの美しい自然にも囲まれている地域になっています。釜山やソウル、上海、北京等東アジアの主要都市から地理的に近く、これらの地域からの玄関口にもなっています。

福岡県では働く女性の半数以上が妊娠や出産を機に退職している点が問題視され、育児休暇を取得しやすい職場の雰囲気づくりや意識改革が急務だと捉えられていました。

働き方改革の取組内容

同県では2003年に「子育て応援宣言企業登録制度」を開始し、登録企業に登録証を発行し、同県の入札参加資格審査にて加点制度が設けられるなどのメリットを設けました。
子育て応援宣言をすると企業のイメージアップにつながり、従業員の離職率改善や多様な人材の確保に好影響を及ぼすと考えられます。

また、登録した企業への独自の支援策として商工組合中央金庫の子育て応援企業ローンの優遇制度や日本学術行使会のインターネット自宅学習システムの受講料割引制度なども挙げられます。

2013年度からは学生や子育て中の女性などを対象として「子育て応援宣言企業合同会社説明会」を実施し、2014 年度からは大学と共催で大学生だけを対象とした説明会も開催しました。さらに2015年度からは登録企業を紹介する「仕事と子育ての両立応援企業就活ガイド」を周辺大学に配布し、宣言をした企業のイメージアップを図っています。

働き方改革の成果

「子育て応援宣言企業登録制度」に登録する企業は年々増加し、2016年には6,000社、2021年3月22日現在では7,546社が登録するに至っています。また、女性の育児休暇取得率は1996年度で49.1%、男性が0.12%でしたが、2018年度では女性が82.2%、男性が6.16%と飛躍的に増加しました。
(参考:西日本新聞HP

現状では「働きやすい職場づくり」に効果を出していると評価され、今後も登録企業の拡大や内容の充実を図っていくと思われます。

4.地方公共団体の働き方改革の事例:岐阜県

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岐阜県は日本の中心に位置する「日本のへそ」として知られる県であり、200万人以上の人口を抱える全国的にみても大きな県だと言えます。飛騨山脈や美濃地方の水郷地帯などに囲まれる好立地であり大消費地である名古屋や関西圏に近いことから農業が盛んです。

ただし2005年を境に現在では人口減少傾向が続いており、転出者が転入者を上回る状況だけでなく死亡数が出生数を上回る自然減少が深刻化してきています。こうした状況を鑑みて、県では2005年に少子化対策推進本部を設置し2007年には「安心して子どもを生み育てることができる岐阜県づくり条例」を制定するに至っています。

働き方改革の取組内容

少子化対策の一環として働き方改革を捉えた同県では2007年に「子育て支援企業登録制度」を開始し、仕事と家庭を共に大切にする職場環境づくりに取り組む企業への支援を行っています。

同制度に登録すると県の中小企業資金融資制度「子育て支援資金」での優遇や従業員の金利優遇制度(マイカーローン等)の対象となる、県入札参加資格審査で加点が得られるなどのメリットを享受可能です。

また、2011年には登録企業の中から他の模範となる企業を「子育て支援エクセレント企業」として認定する活動を始めており、年休取得率アップや所定外労働時間の削減策などを審査基準にしています。子育て支援エクセレント企業に認定されると、シンボルマークの入ったステッカー等が配布される、PRをしてもらえる等のメリットがあります。

働き方改革の成果

子育て支援エクセレント企業として認定された企業は令和2年度までで160社を超えており、中には内閣府からの企業表彰を受ける企業もあるなど、全国的に見ても高レベルな成果が上がっていると考えられます。

例えば、岐阜市にあるアース・クリエイト有限会社では子育て中の女性が短時間でも働きやすいチーム制システムを導入し、「平成26年度内閣府匿名担当大臣表彰」を受賞しています。また、育児休暇取得率は令和2年度で男性が9.1%で前年度から2.8ポイント上昇、女性が98.1%で前年度から4.2ポイント上昇など成果がしっかりと数値にも表れています。

5.地方公共団体の働き方改革の事例:静岡県

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静岡県は本州の太平洋側で神奈川県の西隣、愛知県の東隣に位置する人口約370万人の県です。様々な産業を行っていることから「産業のデパート」と呼ばれており、特に第二次産業の比率が高いという特徴を持ちます。

具体的には輸送用機器や電気機器を中心に化学工業や食料品、パルプや紙などさまざまな産業をバランスよく行っています。特に医療用機械器具装置やお茶、ピアノなどの生産量や出荷額では全国1位になっており、隠れた産業都市となっています。静岡県は現状人口減少に悩まされており、総務省が2020年8月に発表した人口動態調査によると前年比で1万7981人減です(参考:日本経済新聞オンライン)。

働き方改革の取組内容

静岡県では、働き方改革の推進に向けて中小企業・小規模事業者を中心に以下の取り組みを行っています。

  • 長時間労働是正
  • 同一労働・同一賃金など非正規雇用労働者の処遇改善
  • 賃金引き上げと生産性向上
  • 人材確保等を目的とした雇用管理改善などのセミナー、相談会等の実施
  • 無料での専門家派遣

具体的には、ワークライフバランスの普及のため企業経営者や人事担当者等が先進企業を訪問し職場を体験する視察研修、職場づくりアドバイザーの派遣などの活動を行っています。

働き方改革の成果

まず、先進企業視察研修に関しては参加者にアンケート調査を実施し、好意的な評価を受けています。また、「静岡県総合計画後期アクションプラン」ではワークライフバランスの数値目標の1つに「1人平均月間所定内労働時間」を挙げています。

令和3年3月に静岡県経営管理部が出した調査結果によると、事務所規模5人以上の企業では令和2年の1人平均月間総実労働時間は137.5 時間でした。これは前年比3.4%減であり、5年連続で減少しているとのことです。また、事務所規模30人以上の企業では令和2年の1人平均月間総実労働時間は142.1時間で前年比4.0%減、3年連続で減少でした。こうした数値からも、県の取り組みの成果が出てきていると考えられるでしょう。
(出典:静岡県経営管理部ICT推進局統計調査課『毎月勤労統計調査令和2年地方調査結果』)

まとめ

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近年では日本中の地方公共団体がさまざまな働き方改革支援策を打ち立てており、一定の成果を挙げ出している地方公共団体も出てきています。

現在、日本はまだまだ働き方改革推進の途上にいると言えますが、こうした地方公共団体の事例が他の地方公共団体等の参考になることも考えられるでしょう。

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