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公務員に業務効率化は必要?効率化のポイントや自治体のICT導入事例を解説【自治体事例の教科書】



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人口減少・少子高齢化・厳しい地方財政という背景がある中、職員数が増やせない現状です。自治体の役割や任務は複雑化あるいは多様化し、業務の質・量ともに日々増大しています。では、この矛盾はどのようにすれば解消できるのでしょうか。実際のICT導入事例などを通じて、これからの業務効率化の必要性や導入のポイントを深掘りしていきます。

■公務員の業務効率化が求められる背景

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総務省の「地方自治体における業務の標準化・効率化に関する研究会報告書」によると、人口減少・少子高齢化・地方財政の圧迫といった厳しい現状があります。

中でも最も大きな社会的要請は労働人口減少への対策です。「国立社会保障・人口問題研究所」が2017年に発表した推計では、2015年時点では1億2,709万人だった人口は、2040年には1億1,092万人・2053年には1億人を割り込むと予想されています。同時に、出生率の低下・高齢化も急激に進んでいるため、15歳から65歳の生産年齢人口数も急激に減少することが予想されます。

その上で、自治体に求められている役割や任務を果たすためには、さまざまな業務効率化が必要であると同研究会は指摘します。また、働き方改革を起因とした人手不足の解消と、職員の負担軽減という課題もあるため、公務員の業務効率化が求められています。

■公務員の業務効率化の必要性

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総務省の「地方自治体における業務の標準化・効率化に関する研究会」でまとめられた報告書によると、以下のような点で業務効率化が必要であると指摘されています。
・「筋肉質の自治体」への進化
・進むICT化、求められる業務の一体改革
・社会保障・税番号制度の導入

・「筋肉質な自治体」への進化

地方財政がこれまでと同様、厳しい状況にある中で定数削減による努力の限界を迎える一方、少子高齢化などを背景とした行政需要は、確実に増えることが見込まれます。

このような状況に対応するためには、業務のさらなる効率化のため「ICTで処理できるものは出来る限りシステムで処理を行う」「民間委託などによる効率化を徹底的に実施する」「捻出された人的資源を公務員が自ら対応するべき分野に集中投下する」といった、筋肉質な自治体への進化が必要です。

その際には、サービス水準の公平性の確保や民間委託の円滑推進の観点から、業務に携わるのが誰であっても一定水準の行政サービスを提供できるように、BPRなどによって業務フローを見直す必要があります。

また、システムを活用する場合でも、今後のシステム改修経費の削減も含めた関係経費のコスト削減に努めていかなければなりません。

・進むICT化、求められる業務の一体改革

地方自治体では業務に情報システムが深く入り込んでいるため、行政運営において情報システムは重要な基盤であるといえます。また、庁内の情報連携による「総合窓口の実現」「コンビニにおける証明書等の交付」など、ICTを上手く活用することで、住民利便性の向上を図ることができます。

その他にも、地方自治体を取り巻く厳しい財政・定員状況の観点から考えると、情報インフラの合理化や再構築による情報システム経費の削減だけではなく、ICTを十分に活用し、「職員の働き方を見直す」「業務改革を行う」「行政サービスの向上」といった、取り組みを同時または一体的に推進しなければなりません。特に、情報システムを複数団体で共同利用する自治体クラウドの導入では、参加団体間の業務フローを統一するべく、出来る限りシステムのカスタマイズを抑制する必要があります。

・社会保障・税番号制度の導入

社会保障・税番号制度の導入に関しては、平成25年5月に行政手続における特定の個人を識別するための番号を利用する際などに関する法律や関連法案が公布され、平成27年10月に個人番号や法律番号の付番・通知、平成28年1月には個人番号および法律番号の利用・個人番号カードの交付が行われました。さらに平成29年は国や地方を通じて行政手続に関する必要情報を、それぞれの機関で電子的にやり取りできるといった情報連携がスタートしました。

一方、番号制度の導入は、一連の各種業務システムの改修に合わせた自治体クラウド導入に加え、それに伴う業務の標準化・効率化を検討する要因ともなります。今後、利用範囲の拡大なども検討されており、それぞれの地方自治体においてシステム更改の時期も考慮しながら、既存の業務についても業務標準化・効率化の検討を、時期を見て行う必要があります。

を進めることで、サービスを必要としている個人を正確に把握し、新生児の添付書類の削減といった事務の効率化・住民の利便性向上が図られています。そのため、それぞれの地方自治体は、個人番号の独自利用について積極的に検討するべきでしょう。

■RPAやAIによる業務効率化

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自治体では、業務効率化を図るためにRPAやAIといったICT技術の導入が増加しています。その背景には、働き方改革を実現できる「職場環境作り」があります。長時間労働削減に向けての取り組みを続ける自治体は多く、限られた人員と時間で、これまで以上の業績を挙げるためには、どうしても業務改善や業務効率化が必要となってきます。

RPAは、さまざまな業務に活用できる「パソコン内で動くソフトウェア型ロボット」で、専門的な知識や経験がなくても運用できます。一方AIは、人間のような知能を持ったコンピュータのようなものです。これらのICT技術を導入することで、ルーチンワークをコンピュータに任せることができます。

また、AIテクノロジーの進化に伴い、RPAそのものの質がアップしていることも導入増加の大きな要因です。近年、使いやすいユーザーインターフェイスが搭載されたことにより、より多くのユーザーが扱いやすいように改良されたこともRPAが広まった要因といえます。

■自治体におけるICT活用の事例

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実際に、自治体ではICT技術(RPA・AI)をどのように活用しているのか、以下5つの自治体を例に見ていきましょう。
・東京都港区
・福岡県宗像市
・愛知県豊橋市
・千葉県千葉市
・埼玉県さいたま市

・東京都港区

東京都港区は、平成8年時点の約15万人から人口の増加を続け、平成29年には25万人を超え、2027年には30万人に達すると推計されています。この人口増などに対応するべくICTを活用し、質の高い区民サービスを提供するとともに、業務効率化を図り、働きやすい職場環境作りを進めるためにRPAを導入しました。

具体的な取り組みとしては、職員の超過勤務管理事務や公会計システム向けデータの作成、産前産後家事・育児支援サービスの申請処理、保育園入園事務・契約事務などの業務を自動化したことが挙げられます。これにより、職員の業務時間が年間約2,000時間削減されることが見込まれ、削減された業務時間を区民サービス向上のための業務に充てるといった業務効率化が進められています。

・福岡県宗像市

RPA導入前の福岡県宗像市では、賃貸借権設定状況において、システムへのCSV一括取り込みができないため1件ずつ手入力しており、1件約10分を最大1,800件、最大300時間もかかっていました。また、農耕地の利用状況においてはシステムへのCSV一括取り込みはできても、取り込みデータの作成に手間がかかり、最大1,150時間かかっていました。

そこで、賃貸借権設定状況では宗像市農家台帳システムの個別画面から必要情報をRPAで入力、農耕地の利用状況ではエクセルから農地情報更改システムに取り込めるデータをRPAで作成したのち一括取り込みできるようにしたところ、最大1,450時間かかっていた入力業務が約40時間で完了するようになったうえ、機械による自動作業のため入力ミスもなくなるといった業務効率化を実現しています。

・愛知県豊橋市

愛知県豊橋市は、2017年度の介護給付費が2012年度と比べ約29億円も増加しており、今後も高齢化の進行による給付費増加が見込まれている。また、併せて介護関係業務の業務負担の増大が見込まれており、業務負担の軽減を実現すべくAIの活用を図りました。

具体的な取り組みとしては、ケアマネジャーがAIに74項目の認定調査項目や主治医意見書の項目を入力し、AIが提示する介護保険サービスを踏まえてケアプランを修正するようにしました。これにより、利用者の身体状況の改善・介護給付費抑制、さらにはケアマネジャーが新たな気付きを得ることを期待できます。

・千葉県千葉市

千葉県千葉市では、道路の維持管理についてこれまで職員が毎週1回、千葉市内約3,300kmのうち約400kmを、約4人の職員で3時間ほどパトロールを行い、帰庁後に道路損傷の発見・損傷程度の判定・補修の優先順位付けを約2時間かけて行っていました。

従来の「ちばレポ」にあった、市民協働での道路管理・車載カメラで撮影した画像などから、道路舗装の損傷を機械学習によって自動抽出する機能を追加したり、車両の最適資源配分などの機能を組み込んだ「MyCityReport」の開発・実証を行うなど、全国の地方自治体への展開を目指すといったAI導入の取り組みを行い、より効率的な道路管理および職員の業務量削減を図っています。

・埼玉県さいたま市

埼玉県さいたま市では、約8,000人にも及ぶ保育所への入所申請者を市内にある約300施設に割り振る際、申請者の優先順位・兄弟同一保育所入所希望などの希望を踏まえて選考するのに、延べ約1,500時間もの時間をかけていました。

そこで、ゲーム理論のモデルを利用し、最適な保育所への割当パターンを見つけるAIマッチング技術を検証に加え、市の割当ルールを学習したAIが組み合わせを点数化し、最も得点の高い組み合わせを瞬時に導出できるようになり、約1,500時間かかっていた選考が数秒で完了するようになりました。

まとめ

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これまで説明したように、RPAやAIといったICT技術を活用すれば、情報伝達が容易になり、時間や場所に縛られない作業ができるため、業務の効率化が図れます。それによるコスト削減はもちろんのこと、新しい働き方などのイノベーションを誘発する可能性も考えられます。ICTについてしっかりと学び、業務効率化に取り組んでいきましょう。