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地方創生・経済活性化を狙うグリーン・ツーリズム【自治体事例の教科書】

地方創生・経済活性化を狙うグリーン・ツーリズム【自治体事例の教科書】

日本は先進国でありながらも自然が豊かな国であり、稀少な動物や植物も数多く生息しています。そのため、雄大な自然を求めて国内外からの観光客も毎年増加傾向にあり、今後のさらなる需要増加に期待が集まっています。そこで今回は自然を活かしたグリーン・ツーリズムについて解説をします。

【目次】
■グリーン・ツーリズムとは

グリーン・ツーリズムとは

グリーン・ツーリズムとは、自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動であり、農林漁家の所得の確保や就業機会の創出を図り、地域活性化に資する取組を指します。グリーン・ツーリズムは、英国ではルーラル・ツーリズムやグリーン・ツーリズム、フランスではツーリズム・ベール(緑の旅行)と呼ばれており、欧州では農村でバカンスを過ごす人々が多くいます。

日本においては、雄大な自然を活かしたグリーン・ツーリズムを推進し、農山漁村地域の活性化を図るためには、規制や環境などさまざまな整備が必要になることから、平成6年に「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律」(略称「農山漁村余暇法」)が制定されています。

その後、平成17年には農林漁業体験民宿業者の登録制度の一層の活用を図ることなどを目的として法改正が行われています。農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律により、農山漁村滞在型余暇活動のための基盤の整備を促進、機能整備の促進、農林漁業体験民宿業の登録制度が実施されています。

また、政府はグリーン・ツーリズムの普及を促進するためにグリーン・ツーリズム促進等緊急雇用対策を制定しています。これは、グリーン・ツーリズムや子ども農山漁村交流プロジェクトの受け入れ等に意欲を持っている地域を対象にした政策であり、グリーン・ツーリズム普及促進のためのノウハウの提供や、受け入れ環境の整備支援を行います。

子ども農山漁村交流プロジェクトとは、総務省、文部科学省、農林水産省の3省が連携して行う施策であり、将来的に全国の小学生が農山漁村を訪れ、1週間程度の宿泊体験活動を行うことを目的とした取組のことです。

グリーン・ツーリズムや子ども農山漁村交流プロジェクトを通して以下の3点の目標達成を図ります。

・都市と農山漁村の交流事業による新たな雇用創出
・グリーン・ツーリズムや都市と農山漁村の共生・対流、農商工連携等を基盤とした
 アグリビジネスの展開
・新鮮で安全な農産物の供給や体験・交流の場の提供を求める都市住民の期待に対応

グリーン・ツーリズム促進等緊急雇用対策の具体的な取組は「グリーン・ツーリズム促進等緊急対策事業」と「広域連携共生・対流等整備交付金」の2つが挙げられます。

グリーン・ツーリズム促進等緊急対策事業は、グリーン・ツーリズムの推進を行いたくても、ノウハウが乏しい、受け入れ環境が整っていない等の課題を抱える地域を対象としたものであり、受け入れ環境の整備や人材の創出を支援するものです。

広域連携共生・対流等整備交付金は、グリーン・ツーリズムや都市と農山漁村の共生・対流、農商工連携等を基盤としたアグリビジネスの展開に必要な街中をはじめとする農林水産物直売施設(インショップを含む)や農林水産物食材供給施設、都市農村交流促進施設等の整備を支援するものです。

グリーン・ツーリズムを推進するためには、農林漁業体験民宿が重要な役割を担っています。そこで、農林漁業体験民宿の経営安定を維持するとともに開業しやすい環境とするため、特区制度の活用等さまざまな規制緩和が行われてきました。国レベルの規制緩和だけでなく都道府県レベルの規制緩和も進んでおり、地域一体となったグリーン・ツーリズムの推進が図られています。

全国レベルの農家民宿に関する規制緩和は7つ挙げられています。

1つ目が、平成15年、農林漁家が民宿を行う場合の旅館業法上の面積要件の撤廃です。簡易宿所の民宿を開業する場合33㎡以上の客室面積が必要でしたが、33㎡に満たない客室面積でも簡易宿所営業の許可を得ることが可能となりました。

2つ目が、平成15年、平成23年改正により、農家民宿が行う送迎輸送等を道路運送法の許可対象外として明確化したことです。宿泊サービスの一環として行う送迎輸送やその一環として行う周遊案内は原則として許可対象外であり、道路運送法上の問題はないこととなりました。

3つ目が、平成15年、農家民宿が行う農業体験サービスを旅行業法の対象外として明確化したことです。農家民宿が自ら提供する運送・宿泊サービスに農業体験を付加して販売・広告することは、旅行業法に抵触しないこととなりました。

4つ目が、平成16年、平成19年改正による、農家民宿における消防法の消防用設備等の設置基準の柔軟な対応です。農家民宿も通常の民宿と同じ消防用設備等の設置を義務付けられていましたが、地元の消防長または消防署長の判断により、誘導灯等を設置しないことが可能となりました。

5つ目が、平成17年、農家民宿に関する建築基準法上の取扱いの明確化です。農家が囲炉裏や茅葺き屋根のある自らの住宅を民宿として利用する場合、火災時の延焼を防ぐ内装を義務付けられていましたが、小規模で避難上支障がなければ、新たな内装制限は適用しないことを明確化しました。

6つ目が、平成17年、農地法施行規則に農業生産法人の業務に民宿経営等を追加です。民宿経営は農業生産法人の行う農業関連事業の範囲外とされていましたが、農業生産法人の行う事業に農作業体験施設の設置・運営や民宿経営を追加しています。

7つ目が、平成17年に改正された余暇法における農林漁業体験民宿業者の登録対象範囲の拡大です。登録の対象である農林漁業体験民宿業者の範囲を農林漁業者またはその組織する団体に限定されていましたが、登録対象を「農林漁業者またはその組織する団体」以外の者が運営するものにも拡大されました。

また、構造改革特区における規制緩和では平成15年に農家民宿等による濁酒の製造事業の特区が制定されています。これにより製造量が6キロリットルに達しない場合は雑酒(濁酒)の製造免許を受けることができなかったのに対し、農家民宿等を営む農業者が自ら生産した米を原料として濁酒を製造する場合は最低製造数量(6キロリットル)を適用しないものとなりました。

都道府県レベルの規制緩和では、平成17年に農家民宿に関する食品衛生法上の取扱いに関する条例改正等が要請されています。これにより厚生労働省、農林水産省から各都道府県等へ要請通知が送られています。

従来の規制では、農家民宿において飲食物を提供する場合には飲食店営業の許可が必要で、その際、都道府県等が条例で定める通常の飲食店営業と同じ許可基準を適用していました。それに対し既存の家屋で農家民宿を行う場合には、1回に提供する食事数や講習会の受講等により施設基準の緩和が可能であることから、都道府県等に対し条例の改正の検討や弾力的な運用について要請しています。

これらのさまざまな規制緩和により平成15年以降の農林漁家民宿の開業率は増加傾向にあります。

〈参照元〉

農林水産省_農林水産省ホームページ
(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_gt/)

農林水産省_農林水産省ホームページ
(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_gt/yokaho.html)

農林水産省_農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律
(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_gt/pdf/yokaho_gaiyo.pdf)

農林水産省_農林水産省ホームページ
(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_kyotai/gtkinkyu.html)

農林水産省_農林水産省ホームページ
(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_gt/kisei_kanwa.html)

農林水産省_農家民宿関係の規制緩和
(https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kyose_tairyu/k_gt/pdf/siryou2_101.pdf)

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