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医療情報連携ネットワーク(EHR)について【自治体事例の教科書】

医療情報連携ネットワーク(EHR)について【自治体事例の教科書】

超高齢社会に突入した日本では医療費や介護費、年金など社会保障費の増大をはじめ、少子化に伴い人口減少地域と都市部での医療機関の偏在、医療や介護の担い手不足などの問題が生じています。総務省では医療費・介護費の増大や医療資源の偏在といった課題を解決するため、医療情報連携ネットワーク(EHR)化や、ICT利活用を進め、相互連携を通じた健康寿命の延伸や医療や介護サービスの強化を目指しています。高度化が求められる医療情報連携ネットワーク(EHR)化について、見ていきましょう。

【目次】
■医療や介護分野におけるICT活用の3本柱
■医療情報連携ネットワーク(EHR)の推進について
■地域医療情報連携ネットワーク(EHR)の高度化に向けた取り組みについて
■全国保健医療情報ネットワーク構築に向けて
■国民を中心とした医療・健康データの流通環境を構築

医療や介護分野におけるICT活用の3本柱

総務省が掲げる医療や介護分野におけるICT活用の3本柱は次の3点です。

第一に医療情報連携ネットワーク(EHR)による情報の共有・活用の高度化が求められます。地域の病院や診療所、歯科や薬局、介護施設などをネットワークでつなぎ、患者や利用者情報などを共有・活用する地域医療連携ネットワーク(EHR)の高度化と標準化による低コスト運用を図り、相互接続化を強化していくことが必要です。相互接続により医療情報の交換による、より適切な医療や介護サービスの提供をはじめ、知識やノウハウ共有による遠隔地医療の支援や充実を図ろうとする取り組みです。

第二にPHR等の医療等データの利活用を推し進めていきます。マイナンバーカードなどを活用することで、個々の国民の生涯にわたる健康診断や医療の治療履歴、投薬履歴などのデータを自らが時系列で管理できるようにします。各人の健康管理に役立てるほか、適切な医療や介護サービス、予防サービスの受診につなげることができる取り組みです。また、AIを活用した保健指導施策立案モデルも構築していきます。

第三に8Kなどの高精細映像技術の医療応用を推進することも大切です。外科医からのニーズが高い8K内視鏡の開発に取り組むとともに、高精細映像データやAIを活用した診断支援システムの構築、過疎地や離島等における8K画像を用いた遠隔医療の実現にも取り組んでいきます。

医療情報連携ネットワーク(EHR)の推進について

医療・介護・健康分野のネットワーク化を推進するため、情報連携基盤の構築と高度化が必要です。政府ではレセプトに基づく薬剤情報や特定健診情報など患者の保健医療情報を、患者本人や全国の医療機関などで確認できるよう、基盤整備を行っているところです。総務省では政府と連携する形で医療・介護・健康分野の情報連携基盤の整備と具体的なネットワーク利活用モデルを導入するための実証事業に取り組んでいます。

地域医療情報連携ネットワーク(EHR)の高度化に向けた取り組みについて

全国ではすでに、約270の地域医療情報連携ネットワーク(EHR)が存在しています。もっとも、一方向の情報閲覧であることがほとんどで、運用コストもかさむことから、施設や患者の参加率が低く、十分に活用されていません。

そこで、総務省ではクラウド活用型の双方向かつ低コストなEHRを整備するための取り組みに対して補助を行うこととしました。現在運用されている従来型のEHRは次のような問題があります。一方通行で提供された情報を閲覧することしかできません。中核病院は参加しているほかの病院や診療所の情報を得ることができず、相互に情報交換や連携が図れないのが問題です。閉じたネットワークによる重いコスト負担が発生し、参加率も低く、十分な利活用がなされていません。医療情報ネットワークと介護情報ネットワークは別々に運用されているため、両ネットワークに参加すると回線コストは倍増し、参加に二の足を踏むケースがほとんどです。EHR間の連携を図ろうとすれば、EHRごとに異なるデータ管理形式であることが多いため、その都度連結コストが発生します。その結果、医療や介護データの広域利用が困難となり、個々の患者に対するきめ細やかなサービスの提供を阻み、お互いの知見やノウハウの共有もできていません。

そこで、EHRの高度化を図る事業に総務省が支援を行うことで、以下のクラウド型高度化EHRの実現を目指します。クラウド型高度化EHRでは双方向の情報連携を実現できます。クラウドの活用と標準準拠によりコストを低廉化し、参加率を高めるとともに、データの広域利用を推進することが可能です。薬局や介護施設なども連結するほか、EHR未実装地域の病院・診療所とも連結可能な状態を目指します。

全国保健医療情報ネットワーク構築に向けて

全国のEHRを相互に接続する基盤形成として、2020年には全国保健医療情報ネットワークの構築を実現することを目指しています。総務省と厚生労働省が連携して実証事業を実施しており、その内容は以下のとおりです。

ネットワークの相互接続を図ること、共通ルールに基づき患者情報を流通させるための標準規約によるデータ交換を実現すること、安全な通信を実現するためのセキュリティを確保するとともに、実運用フェーズに移行するための運用ルールの策定を図ります。相互接続基盤モデルにおいては、5つの実証フィールドが設けられました。その内容は以下のとおりです。

第一に8Kなどの高精細映像技術の医療応用を推進します。日本で開発された放送技術である8Kをはじめとした高精細映像技術は、医療分野への応用が強く期待されている先端技術です。外科医からのニーズが極めて高い8K内視鏡の開発をはじめ、収集した高精細映像データやAIを活用した診断支援システムの開発、遠隔診療の実用化に向けた実証実験を進行中です。

第二に8Kなど高精細映像データ共有基盤の構築を推進していきます。8Kなどの高精細映像データを共有、収集、活用するための基盤の整備をはじめ、ネットワーク間でスムーズに接続のできる仕組みを構築していきます。これにより、大学や研究所、研究機関や病院、診療所などとの臨床現場をつなぎ、医学教育や遠隔医療などの実現を図ろうとする取り組みです。

第三に8K画像を用いた遠隔診療の実用化を推進します。8K技術で画質が向上することで、判断ミスの回避が期待できるようになります。すでに行った実験の実証成果として、目視診断と同程度の精度が確保でき、現時点で遠隔病理診断の対象となっている疾患以外に拡大可能であることがわかりました。

第四に遠隔診療の支援が挙げられます。遠隔地の医師が8Kモニターを通じた遠隔診療を行い、細かな病変や色を大学病などの専門医に伝達することが可能です。実際に実証実験を行った結果、対面診断と同程度の診断精度を確保でき、他診療科への拡大に期待できることがわかりました。

第五は遠隔在宅診療の実現です。テレビやセンサーなどを活用し、対面診療と同等の診療を在宅で実現することを目指します。

国民を中心とした医療・健康データの流通環境を構築

総務省では健康寿命の延伸、医療費の適正化をはじめ、医療分野の新産業や新たなサービスの創出に向け、ICTによる医療・介護等分野でのネットワーク化やデータの利活用を推進しています。EHR相互接続基盤を整備することで、病院や診療所、介護施設、歯科、薬局などを連携し、クラウドを活用して双方向かつ多職種の連携を通じて医療や介護の地域包括ケアの形成を目指すことが重要です。個人を中心としたPHRの活用基盤を構築し、個々人のライフステージやライフスタイルに合わせた医療や健康データの活用を進めます。8K、AI、IoTなどの先進的ICTを高度利用し、現場で活用可能なモデルの構築に取り組みます。本人確認へのマイナンバーカードの利用やセキュリティの強化を図り、安全で円滑なデータ流通の促進を図り、医療や介護の充実を図ることが狙いです。

〈参照元〉

総務省_総務省ホームページ
(https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/iryou_kaigo_kenkou.html)

総務省_「医療・介護・健康×ICT」の推進について
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/jisedai_kiban/iryoujyoho_wg/dai1/
siryou3.pdf
)

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