
自治体クラウドとは、簡単に言うと外部にデータセンターを設置し複数の自治体で共同管理、運営をする仕組みです。

もう少し詳しく説明をすると、従来は各自治体が自庁舎内にハーディスク等を設置して情報管理システムを運営していました。
自治体の個別管理や運営ではコスト面やセキュリティ、災害対策に課題があり、複数の自治体で共同管理、運営する自治体クラウドの導入が進められています。
自治体クラウドでは外部にサーバーセンターを設けるため災害対策やセキュリティ対策を強化しやすく、大切なデータを慎重に管理できます。また、クラウド導入に必要な費用やランニングコストを複数の自治体で賄うため経費負担が減少できるところもメリットです。
しかし、自治体クラウドは複数の自治体の協力が必要なので仕組みや導入手順を知り適切な方法で導入を検討しないと、なかなか前に進みません。
そこでこの記事では
◎自治体クラウドとは
◎自治体クラウドを導入すべき5つの理由
◎自治体クラウドの導入手順
◎自治体クラウドの導入事例
◎自治体クラウドを導入するときの4つのポイント
をまとめて解説していきます。この記事を最後まで読めば自治体クラウドとはどのような仕組みなのか適切に把握でき、具体的に導入を検討できるようになるはずです。
2020年4月時点で全国の導入率は全国平均61.3%となっているため、遅れを取らないためにもぜひ参考にしてみてください。
1.自治体クラウドとは

冒頭でも解説したとおり自治体クラウドとは自庁舎で情報システムの管理や運用をしないで、高度なセキュリティレベルを維持できるデータセンターを設置し複数の自治体が共同で管理、運営をする仕組みです。

従来は自治体が管理する設備にハードディスクを設置し、そのハードウェアにソフトウェアを導入するオンプレミス型が一般的でした。各庁舎ごとに異なるシステムなので共同利用しにくいのはもちろんのこと、セキュリティ対策や運営コストの面で課題がありました。
その後、IT技術の進歩により自庁舎にハードウェアを設置せず、インターネット経由でクラウド上のハードウェアやソフトウェアを利用できるクラウド型が登場し注目を集めるようになりました。クラウド型はデータセンターを独立させることで高いセキュリティを確保し、災害時などに備えられるところが大きなメリットです。
企業でのクラウド型普及に伴い自治体でも導入を促進するため、複数の地方自治体が一丸となって情報システムの集約化、共同利用を進めていく仕組みが自治体クラウドです。
「2.自治体クラウドを導入するべき5つの理由」でも詳しく解説しますが、自治体クラウドを導入することで
・費用削減効果
・情報管理システムの管理・運用の手間の削減
・セキュリティの強化
・.災害時の対策ができる
・.自治体間での連携
というメリットがあります。
自治体クラウドは2009年より実証実験が開始され、2020年4月時点で全国の導入率は全国平均61.3%となっています。

2019年6月に日本政府が宣言した「世界最先端デジタル国家創造宣言」では2023年度末までに自治体クラウド導入団体を約1,100団体にするという目標を設定しており、今後も自治体クラウドを導入する自治体は増えていく見込みです。

2.自治体クラウドを導入するべき5つの理由

自治体クラウドの概要が把握できたところで、なぜ自治体クラウドを導入すべきなのか気になっている人も多いかと思います。
ここでは、自治体クラウドを導入すべき理由として
・費用削減効果が見込める
・情報管理システムの管理・運用の手間を削減できる
・セキュリティを強化できる
・災害時の対策ができる
・多様な自治体間での連携がしやすくなる
という5つをご紹介します。自治体クラウドならではの強みが把握できると思うので、ぜひ参考にしてみてください。
2-1.費用削減効果が見込める
自治体クラウドは複数の自治体が協力して導入や運営をするため、導入費とランニングコストを抑えられます。
自治体の情報システム基盤をオンプレミス型からクラウド型に変更しようとすると、
・計画立案
・仕様の検討やシステム選定
・システムの導入や移行
などで費用がかかります。一つの自治体で賄おうとすると費用がかさみ導入が難しいかもしれませんが、複数の自治体で一緒に導入すると割り勘効果により一団体当たりの経費負担が少なくなります。その結果、低コストで最新のクラウドサービスを導入できるようになるのです。
また、実際に自治体クラウドを導入した自治体の70%以上が、費用削減効果を実感しています。4割以上の費用削減効果を実感している自治体は11.2%にものぼり、複数の自治体で共同運営することでランニングコストも削減できているようです。

参考:総務省「自治体クラウドの現状分析とその導入に 当たっての手順とポイント 」
このように、新たな情報システムを導入するときに負担となる導入コストやランニングコストが削減できるのは、自治体クラウドならではの大きな強みだと言えます。
2-2情報管理システムの管理・運用の手間を削減できる
自庁舎内に情報管理するシステムが設置されている場合、職員が中心となり管理や運用をする必要がありました。
情報管理システムは専門的な知識や技術を要する部分が多く、外部の業者と連携しながら時間や労力をかけて安定した運用を目指していた自治体も多いかと思います。
自治体クラウドは外部にデータセンターを設置するため、運用や保守点検などを一括して委託できます。職員は自らの業務に集中することができ、システム管理や運用の手間が大幅に削減できるでしょう。外部にデータセンターを設置することで職員の業務を削減し、専門性の高い技術者に委託することが可能です。
2-3.セキュリティを強化できる
個人情報や機密情報を扱う自治体では、セキュリティ対策が大きな課題となります。自治体クラウドなら、下記の図のように機密性、完全性、可用性の3つの視点においてセキュリティが強化できます。

自庁舎内に情報管理システムを設置すると自由に人が出入りできるため機密性を高めることは難しいですが、データセンターは入退出管理をしているため徹底して機密性を高めることが可能です。
データセンターは定期的なバックアップを実施していますが、自庁舎内に情報管理システムを設置している場合はバックアップシステムの導入や職員でバックアップを実施しない限り定期的なバックアップができません。
また、データセンターは基本的に非常用電源などを備えており、周囲の環境に左右されず運用できる性能を持ち合わせています。コンピューターウイルスや大規模障害など万が一のときに備えて、セキュリティを強化した運用ができるのは自治体クラウドの大きなポイントだと言えるでしょう。
2-4.災害時の対策ができる
大切なデータを管理するデータセンターを外部に設けることで、災害対策ができるところも自治体クラウドの特徴です。
総務省が公表している情報通信白書平成24年版によると、2011年の東日本大震災では自治体の30%でデータの損失や業務システム被害が発生していたことが分かりました。
自治体では住民の生活や重要な手続きに関するデータや個人情報を扱っているため、災害時にダメージを受けてしまうと情報流出や業務への支障など大きな問題に繋がりかねません。
自治体クラウドは一般的に外部のデータセンターに
・耐震・免震構造に優れた施設であること
・無停電電源や非常用電源を確保していること
・有人による24時間監視を行っていること
・定期的に情報のバックアップをしていること
という基準を設けているため、災害時にも迅速な対応が取れるようになっています。自庁舎内に情報管理システムを設置していると災害に向けて特別な対策をすることが難しいですが、自治体クラウドなら万が一の事態にしっかりと備えられます。
2-5.多様な自治体間での連携がしやすくなる
自治体クラウドは必ずしも同質な自治体で構成する必要はなく、構成団体の組み合わせは多彩です。例えば、下記のように中枢都市同士での構成や県を越えた構成、島が位置する自治体同士の構成なども存在します。
自治体クラウドの構成自治体は自治体間での情報のやり取りやサービス連携がしやすくなり、より充実した住民サポートや効率的なサービス提供ができるようになります。
実際に自治体クラウドを導入した自治体の構成団体数を見てみると、5~10団体のグループで構成されていることが多いです。

参考:総務省「自治体クラウドの現状分析とその導入に 当たっての手順とポイント」
構成団体同士で情報共有やシステム連携をしながら、よりよいサービス提供ができるのも自治体クラウドならではだと言えるでしょう。
3.自治体クラウドを導入する手順
自治体クラウドは、下記のような手順で導入していきます。

ここでは、総務省が公表している「自治体クラウドの現状分析とその導入 当たっての手順とポイント」をもとに具体的な手順を解説していきます。
3-1.事前の検討
事前検討は、自治体クラウドの本格的な導入を目指して情報入手や方向性を決める準備段階のことです。
主に
・構成自治体を決める
・自治体クラウド導入のスケジュールを決める
・クラウド化する業務範囲を決める
という3つのことを検討します。
①構成自治体を決める
自治体クラウドは構成自治体数によってコストや費用削減効果、システム導入の業務量が大きく異なるため、事前にある程度構成自治体を固めることが大切です。
「2-5.自治体間での連携がしやすくなる」でも述べたように、構成自治体は自由に組み合わせができます。
連携しやすい地域や目的などに合わせて、検討を進めるといいでしょう。具体的には
・県の取り組みの一環として自治体クラウドを進めることを表明し勉強会や説明会を開催。自治体クラウドの必要性を浸透させ、参加自治体を募った。
・県内の市町村に呼びかけて、クラウドの共同化に賛同する地域で自治体クラウド検討会を立ち上げた。
などの事例があります。自治体クラウドの概要やメリットを知らない自治体も多いため、勉強会や説明会など興味を持ってもらえそうな取り組みから始めるといいでしょう。
②自治体クラウド導入のタイミングを決める
自治体クラウドは、現在利用している情報システムの更改のタイミングで導入するケースが多いです。構成自治体が同じタイミングで更改の時期を迎えればいいですが、なかなか難しいのが現状です。
そこで、過去には自治体ごとの更新タイミングで参加できる五月雨方式を採用しているケースが見受けられます。どのタイミングで参加にするのかによってコスト等に不平等が生まれないよう、あらかじめルールを決めておきましょう。
③クラウド化する業務範囲を決める
構成自治体によってクラウド化したい範囲が異なると、足並みを揃えることが難しいです。どのような業務をクラウドするのか大きな枠組みを決めておきましょう。
例えば、下記のような自治体業務のどこまでを自治体クラウドで実施するのか明確化しておくことが必要です。
業務の範囲が決まらないとコストや導入すべきクラウドサービスが定まらないため、早い段階で決めておくほうがいいでしょう。
3-2.計画の立案
自治体クラウドの大枠が決まったら、具体的な計画を立てていきます。
・推進体制の構築
・費用や業務に関する調整
・具体的なスケジュールの決定
という3つを柱に、本格的に自治体クラウドが導入できる体制を整えていきます。
①推進体制の構築
自治体クラウドは複数の自治体が関係するため、あらかじめ意思決定の仕組みや責任者を決めて円滑に進められるようにしましょう。
今までの事例では既存の組織(協議会・委員会など)の傘下に新たなグループを立ち上げる、自治体クラウドに参加する自治体で新たな協議会を組成することが多かったようです。
最終的な意思決定時には各自治体の代表者で話し合うなど、組織内での運営方法も細かく決めておくことでトラブルが防げます。
②費用や業務に関する調整
自治体クラウドを具体的に進めていくにあたって、費用や業務に関する調整を行います。費用においては、導入コストとランニングコストをどのように負担するのか細かく決めていきます。とくに導入後の費用負担が曖昧だと、導入後にトラブルとなる可能性あるため細かく定めておきましょう。
事例では
・費用科目ごとに費用負担方法の詳細を記載
・自治体クラウドの導入効果が高かった自治体は、費用対効果が少なかった団体に利益を按分する
などの規定を設けて取り組んでいます。
また、後発的な参加が可能かどうかを明確にして、後発的な参加が可能な場合の費用負担や参加基準なども用意しておくと後から問題が起こりにくくなります。
業務に関する調整では、専門家の配置や選出について決めておく必要があります。自治体クラウドは専門的な知見や技術がないと具体的に検討できない部分があるので、専門家の配置や専門家中心の組織を立ち上げるなど検討してみてください。
③具体的なスケジュールの決定
計画立案の最終段階として、自治体クラウド導入の具体的なスケジュールを決定します。自治体クラウドの導入にかかる期間は構成組織数や計画内容によって大きく異なるため一概には言えませんが、無理なく進められるスケジュールを模索していきましょう。
このときに大切なのが
・どのような費用がどのタイミングで発生するのか
・どのタイミングでどの自治体に導入するのか
を明確にしておくことです。とくに、各自治体に五月雨式で自治体クラウドを導入していく場合はスケジュール管理が重要となるため、あらかじめ明確にしてみてください。
3-3.仕様の検討
自治体クラウド導入の骨子ができたところで、続いてシステムなどの具体的な検討に入ります。
2019年に総務省が公表した「地方公共団体の自治体クラウド導入における情報システムのカスタマイズ抑制等に関する基本方針」によると、原則としてパッケージソフトへのカスタマイズは行わないこととしています。
そのため、ノンカスタマイズで使用できるパッケージソフトを選定することがとても重要です。今までの事例では自治体クラウドに導入すべき業務を選定し複数の業者からパッケージソフトの提案を受けて、利用しやすいものを選んでいくという方法がありました。
パッケージソフトは自治体クラウドの質を決める基盤となるので、慎重に検討していきましょう。パッケージソフトの選定が終わったら使用時の規定などをルール化し、各自治体に導入できる体制を整えます。
参考:「総務省「地方公共団体の自治体クラウド導入における情報システムのカスタマイズ抑制等に関する基本方針」
3-4.導入・データ移行
自治体クラウドのベンダーや作業業者が選定できたところで、導入を進めていきます。自治体クラウドの導入は大きく
・時自治体クラウドの設置・導入
・データ移行
の2つに分かれます。どちらも構成自治体間で密に連携を取りながら、スムーズに導入ができるようにしましょう。
自治体クラウドの導入ができたら利用方法の説明会やテスト運用を実施し、課題や問題点を解決したうえで本格的な運用ができるように準備をしていきます。
3-5.運用
自治体クラウドの運用を開始したら、ベンダーと交わしたサービスレベル合意書の基準に達しているか定期的に確認します。基準に満たない場合には改善を求めて、適切な運用ができるようにしていくことが大切です。
また、自治体クラウド運用開始後も構成自治体で定期的に報告会や講習会などを実施しながら、安定した運用ができるよう努めていく必要があります。
このように、自治体クラウドが検討開始から運用までさまざまなフェーズがあります。今回ご紹介した手順はあくまでも一例なので、構成自治体と話し合いを重ねながら取り組みやすい方法で進めていくようにしましょう。
4.自治体クラウドの導入事例

自治体クラウドの導入方法が把握できたところで、実際にはどのように導入されているのか気になるところですよね。
ここでは、自治体クラウドの導入事例を3つご紹介します。自治体クラウドの導入方法は目的や規模に応じて大きく異なるため、一例として参考にしてみてください。
4-1.和歌山県みなべ町・日高川町・白浜町・串本町
和歌山県のみなべ町・日高川町・白浜町・串本町の4町では基本協定を締結し、自治体クラウド導入検討委員会を立ち上げて具体的な検討を進めました。
全町の情報管理主管課がマネジメントを行い、現状の把握や具体的な仕様の検討を実施したそうです。自治体クラウドの導入では
①経費削減
4町で15%程度の運用コスト削減の見込み
②業務効率化
クラウドサービス導入により各業務の見直しを実施し手続きの効率化に繋げる
③安全性の確保
データセンターの活用により、セキュリティ対策や災害時の安全性を確保
を目指しました。自治体クラウド導入後も自治体クラウド導入検討委員会を継続し、事業者とともに保守点検や改善を行っているそうです。
また、新たな自治体が後発でも参加できる仕組みを導入しており、長い運用の中で参加自治体が増えていくことも念頭に置いています。
4-2.広島県市町情報システム共同利用推進会議
広島県では2011年10月より市町基盤業務系システム部会を設置し、県内全体で自治体クラウドの検討を開始しました。
県主導の推進により廿日市市・江田島市・安芸太田町・北広島町の4市長で自治体クラウドを本格的に検討することが決定。(熊野町は追加で参加)2012月には情報システム共同利用検討会議を設置し、人口が多い廿日市市を事務局として仕様やクラウド化の範囲の話し合いを開始しました。
自治体クラウドの導入では
①経費削減
・5年間で約22%の経費削減を予定
・システム改修による手間や経費削減
・システムの共同化による業務の削減
②災害対策
・サーバーを民間のデータセンターで保管
・同一システムの利用で、災害時のお職員相互派遣や構成市長議員の連携が可能
・自庁にバックアップサーバーを設置
の強化を軸に進めていきました。共同業務範囲には、下記のような26業務をあげています。(市町によって実施している業務範囲は異なります)
4~5年をかけて五月雨式で導入を実施し、中国地方の先行モデルとなったそうです。
4-3.愛知県豊橋市・岡崎市
愛知県豊橋市と岡崎市は、国民年金・国民健康保険・その他税関連のシステムを共同で管理運営していく自治体クラウドの導入を開始しています。
その背景には
①費用削減
・国民年金
・国民健康保険において初期費用は56%削減、5年間のランニングコストは25%削減を目指す
②安全性の確保
・データセンターの活用によるセキュリティ対策や災害時の備え
・データのバックアップ
という目標を掲げました。とくに、データのバックアップでは共同運用という強みを活かしてバックアップテープを相互の自治体で保管し、単市の災害時にはデータの復旧が迅速にできる計画を検討し注目を集めました。
自治体クラウドの検討から導入までいは4~5年かかるスケジュールを提示し、計画的に取り組んでいったそうです。
参考:地方公共団体情報システム機構「自治体クラウドの導入推進方法」
5.自治体クラウドを導入するときの4つのポイント

最後に、自治体クラウドを導入するときに知っておきたい
・パッケージソフトをカスタマイズしなくてもいい仕様にする
・中間標準レイアウト仕様の活用
・費用負担を明確にする
・システム障害等が発生したときの対策を考えておく
という4つのポイントをご紹介します。自治体クラウドの導入で失敗しないためにも、ぜひ参考にしてみてください。
5-1.パッケージソフトをカスタマイズしなくてもいい仕様にする
「3.自治体クラウドを導入する手順」でも解説しましたが、パッケージソフトは原則としてカスタマイズをしないことと提言されています。
これは、パッケージソフトにカスタマイズを重ねていくと追加経費の発生や不安定な稼働、そして自治体間での意見の食い違いなどが発生しやすくなるためです。
そのため、自治体クラウドを導入するときに決定するパッケージソフトで滞りなく標準業務ができる仕様にしておく必要があります。
既に自治体クラウドを導入した富山県情報システム共同利用推進協議会では、カスタマイズを制御するために下記の4つの施策を実施したそうです。
ノンカスタマイズの周知やカスタマイズの経費は共同調達費に含まないなど、明確な施策を実施。その結果、カスタマイズを最小限に抑えることができたとのことです。
このように、原則としてカスタマイズができないことを念頭に置いて、パッケージソフトを選定していくことが欠かせません。
5-2.中間標準レイアウト仕様の活用
中間標準レイアウト仕様とは自治体クラウド導入時にデータ移⾏を円滑に⾏うため、移⾏データの項⽬名称、データ型などを標準的な形式として定めた移⾏ファイルのレイアウトを指します。

2014年6月より総務省が公開しており、地方公共団体情報システム機構で維持管理をしています。自治体クラウド導入時のデータ移行には多額の費用がかかりますが、中間標準レイアウト仕様を活用することでデータ移行の費用削減が可能です。
実際に自治体クラウドを導入している自治体では、中間標準レイアウト仕様を活用しデータ移行を実施している事例が数多くあります。自治体クラウド導入時の費用削減や安全なデータ移行を検討したい場合は、活用を検討してみてください。
参考:地方公共団体情報システム機構「自治体クラウドの導入推進方法」
5-3.費用負担を明確にする
自治体クラウドは複数の自治体で共同管理、運営をしていくことになるため、あらかじめ費用負担を明確にしておきましょう。
・自治体クラウド導入時のコスト
・ランニングコスト
・メンテナンスコスト
はもちろんのこと、自治体クラウドを運営していく中で追加で発生する費用や故障などのトラブル対応時費用などイレギュラーな費用の対応も決めておくのが無難です。
また、自治体クラウド導入後の費用対効果は自治体によって差が出るかと思います。その際に、費用対効果が高い自治体と費用対効果の少ない自治体の実質的な負担が同様になるような調整をしている自治体もあります。
長い間問題なく共同で運用していくためにも、互いが納得できる費用負担を決めてから導入の検討を進めるといいでしょう。
5-4.システム障害等が発生したときの対策を考えておく
自治体クラウドは複数の自治体が共同利用しているため、どこかでトラブルが発生すると影響が広範囲に及ぶ可能性があります。
データセンターの管理業者やベンダーなどの有識者を交えて、システム障害時の対応方法をしっかりと決めておきましょう。同時にシステム障害や災害などのトラブル発生時の連絡方法や連携方法も共有しておくと、いざという時に慌てずに済みます。
実際に2019年12月4日には日本電子計算の自治体向けクラウドが停止し、システムが一斉にダウンする障害が発生しました。このときには、バックアップ機能や住民サービスに支障が出たそうです。
自治体クラウドの導入時からシステム障害や災害が発生したときの備えを取り入れながら、検討していくことが大切です。
参考:日経クロステック「動かないコンピュータ」緊急版、自治体クラウド大規模障害の深層」
6.まとめ
いかがでしたか?自治体クラウドはどのような仕組みか把握でき、導入すべきか検討できたかと思います。
最後に、この記事の内容をまとめてみると
◎自治体クラウドとは自庁舎で情報システムの管理や運用をしないで、高度なセキュリティレベルを維持できるデータセンターを設置し複数の自治体が共同で管理、運営をする仕組み
◎2020年4月時点で自治体クラウドの全国の導入率は全国平均61.3%
◎自治体クラウドを導入すべき理由は次の5つ
1)複数の自治体で共同運営をするため費用削減効果が見込める
2)外部にデータセンターを設けて管理やメンテナンスを委託できるので、情報管理システムの管理・運用の手間を削減できる
3)データやシステムを外部のデータセンターで管理することで、セキュリティを強化できる
4)データのバックアップや仮電源の用意などで災害時の対策ができる
5)都道府県の境を越えて多様な自治体間での連携がしやすくなる
◎自治体クラウドの導入方法は次のとおり
1)事前の検討:自治体クラウドの本格的な導入を目指し、情報入手や方向性を決める準備段階
2)計画の立案:具体的なスケジュールや体制を整える
3)仕様の検討:システムなどの具体的な検討をしてベンダーに発注をする
4)導入・データ移行:自治体クラウドを導入、必要に応じてデータ移行を行う
5)運用:実際に運用を開始し、ベンダーと交わしたサービスレベル合意書の基準に達しているか定期的に確認
◎自治体クラウドの導入事例は次の3つ
◎自治体クラウドを導入するときに知っておきたいポイントは次の4つ
1)原則として、パッケージソフトをカスタマイズしなくてもいい仕様にする
2)データ移行には中間標準レイアウト仕様の活用を検討する
3)自治体ごとの費用負担を明確にする
4)システム障害や災害等が発生したときの対策を考えておく
この記事をもとに自治体クラウドの仕組みを把握し、各自治体に合う方法で導入検討ができるようになることを願っています。
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