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災害時の蓄電システムについて【自治体事例の教科書】

災害時の蓄電システムについて【自治体事例の教科書】

国土強靱化に基づく電力インフラの強靱化を図るため、災害時に備え、各家庭や個人事業主、事業者などに蓄電システムの導入促進を図る対策を国は進めています。その背景や現状などを振り返ります。

【目次】
■国土強靱化に基づく電力インフラの強靱化に向けた緊急対策
■災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金
■災害時に役立つ再エネ・蓄エネシステムに関する緊急対策について

国土強靱化に基づく電力インフラの強靱化に向けた緊急対策

平成30年北海道胆振東部地震により、北海道全域が大規模停電、いわゆるブラックアウトしました。これを受け、経済産業省では電力供給の強靱化に向けて、供給力・予備力の確保や地域間連系の強化に加えて、電力やガス、燃料の安定供給をはじめ、サプライチェーンにおいて重要となるガソリンスタンドなどの事業所や工場、スーパーなど生活必需品の生産・供給拠点などの経済活動が継続できるよう、約55万kW分の自家用発電設備や蓄電システムの導入促進と、省電力設備の導入を支援する全国を対象にした取り組みをスタートさせることになりました。

令和元年には台風19号の影響を受け、送電線が切断された結果、千葉を中心に神奈川や東京、茨城などの関東エリアでも大規模停電が発生しました。地域によっては復旧まで1ヵ月以上も停電が続くなど、住民生活に支障が生じたのは記憶に新しいところです。

先述した経産省の取り組みは、一般個人や個人事業主、法人などの事業所で一定の条件を満たす蓄電システムを導入する場合に、補助金を支給するものです。

災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金

この取り組みのポイントは、停電の影響緩和策としての補助金制度として災害時にも活躍する自家発・蓄電池・省電力設備などの導入支援を図ること。エネルギー需給構造の強靱化のため、2020年度までに約55万kW分の分散型電源の導入を目指しています。

資源エネルギー庁では、太陽光発電(10kW未満)を所持している人や事業者を対象に、家庭用蓄電システム導入時費用の一部を補助するため、平成31年度の臨時・特別の措置として38.5億円の予算を見込んでいます。

補助の対象となるための家庭用蓄電システムは、次の条件を満たさなくてはなりません。

災害時などに国または電力会社が供給力不足による節電を要請した際に、導入した家庭用蓄電システムが遠隔でグリーンモードへの切り替えが可能であり、動作状況の確認ができること、もしくは、グリーンモード固定の運転ができることが求められます。グリーンモードとは太陽光発電で発電された余剰電力を蓄電システムに充電し、夜間などに活用できる自家消費を優先したモードのことを指します。

次の要件を満たすことも必要です。

10kW未満の太陽光発電設備がすでに設置されているか、新たに設置し、蓄電システムと連動させることが求められます。太陽光発電設備を新設した場合でも、太陽光発電設備の導入費用は補助の対象外です。また、節電要請窓口が提供するサービスへの加入および登録、または節電要請時の対応に同意しなくてはなりません。災害時のグリーンモード運転が求められます。さらに実際に大規模停電などの災害が生じた場合には、対応報告が必要です。

蓄電システムは高性能で高額のものを導入すればいいとは限りません。高性能で災害時に自律運転ができ、適切な電源供給ができる能力を持つことはもちろん重要ですが、機器ごとに設定した目標価格以下の蓄電システムでないと補助の対象とはなりません。その理由は、補助制度には将来、自立的に普及する蓄電システム市場が形成され、市場の活性化と量産体制整備後のコストダウンを加速させ、家庭用蓄電池システムのさらなる普及促進を目指す目的もあるからです。

災害時に役立つ再エネ・蓄エネシステムに関する緊急対策について

環境省では平成30年の北海道胆振東部地震による大規模災害を踏まえ、全国の太陽光発電や蓄電池等の破損状況や災害時の機能発揮状況について緊急点検を実施し、発電量の不足や蓄電容量の不足、停電時の自立運転が不可能といった課題が判明しました。そこで、大規模災害時においても発電や電力供給の機能が発揮できる再エネ・蓄エネシステムの整備に向けて緊急対策を実施することになりました。

1つ目の対策は公共施設における再エネ・蓄エネ設備の設置です。47都道府県における避難所としても使われる公共施設において、災害時等にエネルギー供給途絶で避難所としての機能を発揮できない恐れがある約250ヵ所について、2020年度までに整備を求めます。実施主体は都道府県等です。地域防災計画に避難施設等として位置づけられた公共施設において、再エネ・蓄エネ設備を導入することで、停電時における電源供給機能を確保することが目的です。再エネ・蓄エネ設備を導入することで、平時には温室効果ガスの削減に寄与し、大規模災害時には避難所への電力供給を確保することを目指します。

2つ目の対策は民間施設における再エネ・蓄エネ設備の設置です。災害時の電源確保が必要な民間施設など約270ヵ所について2020年度までに、再エネ・蓄エネ設備を導入することを達成目標に掲げています。食料、飲料、生活必需品、燃料など災害時にも必要となる物資を販売する商業施設や、避難所等の防災拠点となるような民間施設が対象です。地域防災計画に避難施設等として位置づけられた民間施設に、再エネ・蓄エネ等の設備等を導入することで災害時における電源確保を目指すとともに、平時にも太陽光発電を利用することで、地球温暖化防止に貢献することを目指します。

【参考文献】

首相官邸 電力インフラの強靱化に関する緊急対策
(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/jyuyouinfura/sankanen/siryou5-2.pdf)

資源エネルギー庁 災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金
(https://www.enecho.meti.go.jp/appli/public_offer/1901/190130c/pdf/3.pdf)

資源エネルギー庁 平成31年度「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」に係る補助事業者(執行団体)の公募について
(https://www.enecho.meti.go.jp/appli/public_offer/1901/190130c/)

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